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クリーンオーブンとは?基礎知識や使用用途・選び方・注意点を解説!

クリーンルーム用の熱処理装置「クリーンオーブン」は、異物混入を防ぎつつ高温処理を行う必要がある製造現場に欠かせない設備です。しかし、初めて導入を検討する場合、「どの商品を選べばよいのか」「設置や使用時にどのような注意点があるのか」などの不安や疑問も多いでしょう。
当記事では、クリーンオーブンの仕組みから用途、選定時のポイント、安全に使用するための注意事項までを分かりやすく解説します。装置選びに迷っている方や安全対策を強化したい方に向けて、必要な情報を整理していますので、自社に最適な機種を選ぶための参考にしてください。
1. 基礎知識|クリーンオーブンとは?
クリーンオーブンとは、クリーンルーム内などの無塵環境で使用される熱処理装置です。高性能なHEPAフィルターを備え、内部の清浄度を高水準で維持できるほか、集塵能力や温度分布の均一性にも優れており、異物混入を防ぎつつ高精度な熱処理を行えます。
小型の卓上タイプから大型製品、ウェーハ対応の全自動タイプ、高性能タイプまで、さまざまな仕様があり、製品や工程に応じて最適な装置を選ぶことが可能です。
1-1. クリーンオーブンの主な用途と使用目的
クリーンオーブンは、半導体・電子部品・光学レンズ・精密機器などの乾燥やベーキング、封止といった熱処理工程に広く使用されています。これらの製品は微細で繊細な構造を持つため、異物混入による品質低下や歩留まりの悪化を防ぐ目的で、クリーンな環境での熱処理が必要です。
特に近年は製品の微細化・高性能化が進み、クリーンルーム内での高精度かつ高温の処理ニーズが増加しています。クリーンオーブンは、高性能なHEPAフィルターと独自の撹拌・集塵機構により高い清浄度を保ち、温度ムラの少ない安定した処理を実現するため、厳格な品質基準が求められる製造現場で欠かせない設備の1つです。
2. クリーンオーブンの原理
クリーンオーブンは、装置内部の空気を高性能なHEPAフィルターでろ過し、清浄な状態を保ちながら加熱処理を行う仕組みです。内部の空気はファンによって循環し、浮遊微粒子がHEPAフィルターによって捕集されることで、クリーン度が維持されます。
製品によっては耐熱仕様のHEPAフィルターが採用されており、高温下でもクリーンな環境を維持することが可能です。温度制御や空気の流れの構造、清浄度の安定性などは装置により異なるため、使用場所や目的に応じた仕様かどうか確認する必要があります。
3. クリーンオーブンを選ぶときのポイント
クリーンオーブンを選ぶ際は、使用目的や対象製品に応じて、容量・清浄度・温度仕様・オプション機能などを総合的に検討することが重要です。ここからは、クリーンオーブンを選ぶときに重視すべき各ポイントについて詳しく解説します。
3-1. 製品の大きさ・容量
クリーンオーブンを選ぶ際は、設置場所の広さや処理対象のサイズに応じた製品の寸法・容量を事前に確認しましょう。研究開発などの省スペースが求められる現場では、設置場所を選ばない容量27リットルほどの卓上型の小型クリーンオーブンが適しています。
一方、大量処理や大型試料の熱処理には、216リットルや300リットル以上の大型クリーンオーブンが有用です。大容量タイプは多数のワークや大型の試料を一度に処理できるため、生産効率の向上に寄与します。近年では、大容量でありながら設置床面積を抑えた製品も登場しており、研究開発や量産ラインの省スペース化に貢献しています。
3-2. 清浄度
清浄度とは、空気中に含まれる微粒子の数を基準に空間の清浄さを評価する指標です。「アメリカ連邦規格(Fed.Std.209E)」「JIS方式(JIS B9920)」「ISO規格(ISO 14644-1)」に基づき等級が定められています。たとえば、清浄度クラス100(JISクラス5、ISOクラス5)は、0.5μm以上の粒子が1立方フィート中に100個以下であることを意味し、高度な清浄環境が求められる半導体や精密機器の処理に適しています。
近年のクリーンオーブンは、温度安定時はもちろん、温度上昇・下降時にも清浄度を維持できる構造が採用されている製品もあり、より高い品質管理が可能になっています。クリーンオーブンを選ぶ際には、装置内部の清浄度が製品や用途に適しているかもチェックしましょう。
3-3. 温度仕様
クリーンオーブンを選定する際は、温度仕様も判断基準の1つとなります。使用温度範囲は一般的に室温+50℃から260~360℃程度までが多く、一部の高性能モデルでは最大500℃までの加熱にも対応しています。小型機種でも最高使用温度が300℃に達する製品があり、省スペースで高温処理が可能です。
温度調節精度は±0.3~0.5℃、温度分布精度は±2~5℃程度と、仕様により異なります。さらに、最高温度までの到達時間も製品ごとに差があり、約60~150分が一般的です。設定温度に加えて、温度変動や勾配といった熱処理の温度均一性を左右する性能にも注目する必要があります。
3-4. オプション
クリーンオーブンには、使用環境や処理内容に応じて多彩なオプションが用意されており、用途に応じた最適なカスタマイズが可能です。たとえば、排気管理を行うための手動またはオートの排気ダンパ、清浄度をさらに高める高性能フィルタタイプ、処理物に応じた棚板(ワイヤ・パンチング・カゴ式)などがあります。
また、N₂ガス導入装置や記録計・外部通信端子・警報出力端子などの計測・制御機能も追加搭載できます。さらに、重ね金具を使用すれば、省スペースで2台設置することも可能になり、限られた設置環境でも柔軟に対応できます。オプションを活用することで、クリーンオーブンの機能性や運用効率を高められるでしょう。
4. クリーンオーブンを使うときの注意点
クリーンオーブンを安全かつ効果的に使用するためには、取り扱いに関する注意点をあらかじめ把握する必要があります。以下では、使用時に特に注意すべきポイントを解説します。
4-1. 爆発・可燃の恐れがある試料は使わない
クリーンオーブンは基本的に防爆仕様ではないため、爆発性・可燃性のある試料の使用は厳禁です。ガスを発生させる物質や酸化性の薬品、耐熱性の低い樹脂容器などを加熱すると、火災や爆発につながる恐れがあります。
また、試料は必ず棚板に乗せて使用し、装置底面への直置きや棚板の密着設置は避けましょう。空気の対流が妨げられると温度制御が乱れ、局所的な加熱によって焼損事故が発生する可能性があります。試料の性質や設置方法を十分に考慮した上で、クリーンオーブンを使用するようにしましょう。
4-2. 許容発熱量を超える試料は使わない
発熱量の大きすぎる試料を加熱すると、槽内温度が異常に上昇し、火災や機器の損傷につながるリスクがあります。特に、生物や発熱性の高い材料は、予期せぬ反応や過熱を引き起こす恐れがあるため、使用は避けるべきです。
また、試料を詰め込みすぎると内部の空気循環が妨げられ、均一な温度分布が保てなくなります。その結果、一部が過熱状態となり、温度制御の異常や安全装置の作動につながることがあります。運転前に試料の性質と発熱特性をよく確認し、装置の仕様に適した範囲で使用することが重要です。
4-3. 取扱説明書を必ず読む
クリーンオーブンを安全に使用するためには、取扱説明書を事前によく読み、内容を正しく理解する必要があります。可燃性物質や発熱量の制限に加え、腐食性ガスの発生や高温部への接触、異物の混入、さまざまなリスクを回避するための注意事項が取扱説明書に記載されています。
そのほかには、高温時の扉開放による火傷や、装置停止後の内槽の高温など、見落としやすい注意事項も記載されています。取扱説明書は装置の近くに常備し、必要時にすぐ確認できる状態にしておくとよいでしょう。
まとめ
クリーンオーブンは、微細化・高性能化が進む製造業において、異物混入リスクを抑えつつ精密な熱処理を実現する加熱装置です。選定時は、処理対象やクリーン環境に応じた容量・清浄度・温度仕様・オプション機能を比較しましょう。
また、可燃性や腐食性の試料の扱い、取扱説明書の熟読などの基本的な注意点を守ることも、安全性と装置寿命の確保につながります。自社の工程や品質管理体制に適したクリーンオーブンを選び、安定した生産活動を支える設備として最大限に活用しましょう。
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