COLUMN製品コラム
小動物用マイクロCTとは?CTの基礎・原理から製品の仕様まで解説

目次 1. 小動物用マイクロCTとは? 2. 小動物用マイクロCTの原理 2-1. CTの基礎 2-2. CTの原理・構造 3. 小動物用マイクロCTの種類 3-1. 卓上型マイクロCT 3-2. 床置き型マイクロCT 4. 小動物用マイクロCTの製品仕様・特長 4-1. 製品仕様 4-2. 製品特長 まとめ |
1. 小動物用マイクロCTとは?
小動物用マイクロCTとは、マウスやラット、ウサギなどの小型実験動物を対象に、体内の構造を高解像度で非侵襲的に可視化できるX線CT装置です。生体試料用マイクロCTやIn vivoマイクロCTスキャナとも呼ばれ、生きたままの動物を何度もスキャンできることから、縦断的な生理・病理変化の観察に適しています。
特に、骨の成長や腫瘍の進行、臓器の形態変化といった微細な変化を、高い空間解像度で連続的に記録できる点が大きな特長です。投薬、食事、ホルモン処理といった介入による生理反応を、同一個体で時間を追って比較できるため、前臨床段階の評価において重要な役割を果たします。
また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸機能評価や、肺容積・気道解析にも使用され、肺の3D構造や換気変化の可視化にも対応しています。micro-PETやmicro-SPECTといった核医学系モダリティとの画像重ね合わせ(レジストレーション)において、形態の参照基準としても活用されており、マルチモダリティ解析の中核的な技術と言えます。
2. 小動物用マイクロCTの原理
小動物用マイクロCTも、基本的な構造や動作原理は医療用CTスキャナと同様です。ここでは、小型化された装置がどのようにして高精細な3D画像を生成しているのか、その仕組みを解説します。
2-1. CTの基礎
CTとは「Computed Tomography(コンピュータ断層撮影)」の略で、X線を使って対象物の内部構造を断面的に捉える装置です。X線を多方向から照射し、その透過データをコンピュータで再構成することで、任意の断面画像や三次元画像を生成できます。一般的なレントゲンが平面(2D)画像であるのに対し、CTは立体的(3D)な情報を得られる点が大きな違いです。
CTは医療診断をはじめ、工業製品の内部検査や材料評価にも活用され、観察対象や目的に応じてさまざまなタイプがあります。中でもマイクロCTは、微細構造の観察に特化した高解像度タイプで、μmレベルの詳細な画像を取得できます。小動物用マイクロCTはこの技術を生体動物に応用したもので、非侵襲的に骨や臓器の変化を追跡でき、前臨床研究で広く用いられています。
2-2. CTの原理・構造
CTは、X線の透過特性を利用して物体の内部構造を画像化する技術です。X線は物質を透過する際に減衰する性質があり、密度や厚みによって減衰率が異なります。この性質を活用し、対象物に多方向からX線を照射し、透過したX線量を検出器で取得することで、内部の構造を把握できます。
CT装置の基本構造は、X線発生器・回転テーブル・X線検出器の3つです。X線はX線管で発生し、ターゲットに高速電子を衝突させることで生成されます。医療用CTではX線源と検出器のガントリーが、マイクロCTでは対象物が回転し、各角度からの透過像をX線検出器が取得します。検出器にはフラットパネルディテクター(FPD)が使われ、間接式(シンチレーターとフォトダイオードの組み合わせ)と直接式(高電圧膜による電流検出)の2種類があります。
取得された透過データは、コンピュータで再構成処理され、任意の断面や三次元画像として出力されます。小動物用マイクロCTもこの基本原理に基づき、高解像度かつ非侵襲的な撮影を実現しています。
3. 小動物用マイクロCTの種類
小動物用マイクロCTには、設置場所や用途に応じていくつかのタイプがあります。ここでは、代表的な「卓上型」と「床置き型」の2種類に分けて、それぞれの特徴や活用シーンを紹介します。導入を検討する際の参考にしてください。
3-1. 卓上型マイクロCT
卓上型マイクロCTは、省スペース設計の装置で、実験室のベンチや机の上に設置できるコンパクトさが特長です。小動物用としても広く用いられ、マウスやラットの全身撮像に対応した高分解能モデルも登場しています。
近年では、空間分解能5μmや最短スキャン時間3.9秒を実現する製品もあり、in vivo(生体内)・ex vivo(摘出後)いずれの撮影にも対応可能です。操作性や画像解析機能も充実しており、手軽かつ高精度な撮像を実現します。
3-2. 床置き型マイクロCT
床置き型マイクロCTは、大型の筐体と高出力のX線源を備えた高性能な装置です。卓上型よりも高いX線エネルギーや拡大率に対応しており、大きな試料や高密度な素材の撮影、微細構造の詳細な観察に適しています。
小動物用としても応用され、特に高解像度での全身撮像や特殊な研究に使用されます。材料科学や地質学など産業分野でも活躍していますが、設置スペースやコスト、維持管理の面ではより多くのリソースが求められます。
4. 小動物用マイクロCTの製品仕様・特長
小動物用マイクロCTは、国内外のメーカーから多様なモデルが提供されており、研究目的や施設の条件に応じて選択が可能です。ここでは、アメリカのメーカー・ブルカー社が開発した「SkyScan 1276 CMOS EDITION」に注目し、その製品仕様と特長について紹介します。
4-1. 製品仕様
ブルカー社の小動物用マイクロCT「SkyScan 1276 CMOS EDITION」は、卓上型ながら高性能なin vivoマイクロCT装置で、以下のような仕様を備えています。
X線源 | 40~100kV、最大出力20W、スポットサイズは4W時で5µm未満。6ポジションの自動フィルターチェンジャーを搭載し、メンテナンスフリーの密閉型高分解能X線源を採用しています。 |
X線検出器 | 16メガピクセルのsCMOS検出器(4096×4096ピクセル)を搭載し、最高の分解能を実現するファインピッチ検出器です。 |
空間分解能 | 最小ピクセルサイズは2.8µm、空間分解能は6µm(10%MTF)で、invivoイメージングにおいて最高の真の分解能を提供します。 |
検体サイズ | 直径75mm、長さ310mmまでの幅広い大きさの検体のスキャンが可能です。 |
寸法と重量 | ・ATS(Animal Transport System)付:幅954mmx高さ940mmx奥行き1190mm(扉開放時1560mm)、重量360kg・LATS(Large Animal Transport System)付:幅954mmx高さ940mmx奥行き1340mm(扉開放時1740mm)、重量450kg |
電源 | 100-240V AC、50-60Hz、最大3Aで、標準的な電源での設置が可能です。 |
4-2. 製品特長
「SkyScan 1276 CMOS EDITION」は、小動物向けin vivoマイクロCTとして、効率的かつ高精度なスキャンを実現しています。装置には、マウスとラット用の交換可能な動物カセットが付属しており、同一個体に対する他モダリティ(MRIやmicro-PETなど)との情報統合も可能です。これにより、機能情報と形態情報を重ね合わせて解析できます。
ユーザーインターフェースには圧力感知型のタッチスクリーンを搭載しており、手袋を装着したままでも直感的に操作できます。また、リアルタイムの線量計により、スキャン中の被ばく量を画面上に常時表示でき、放射線管理にも配慮されています。
生理学的モニタリング機能では、呼吸・心電図・体温などのデータをリアルタイムで取得できるほか、動物の体温を一定に保つ温風調整も備え、安定した測定環境を実現しています。
まとめ
小動物用マイクロCTは、マウスやラットなどの実験動物を対象に、X線を用いて体内構造を高精度かつ非侵襲的に三次元で可視化する装置です。生体を生きたまま繰り返しスキャンできるため、骨の成長、腫瘍の進行、呼吸機能などの変化を、同一個体で経時的に観察できます。
近年は低線量・高解像度を両立したモデルも登場し、前臨床研究において薬剤や治療効果の評価、他モダリティとのデータ統合を行う上で大切なツールとなっています。小動物用マイクロCTの中でもブルカー社の「SkyScan 1276 CMOS EDITION」は、高解像度撮影や多機能な生理モニタリングを備えた代表的なモデルです。
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