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超解像顕微鏡とは?原理や種類について解説

超解像顕微鏡とは?

超解像顕微鏡とは、物質や生体組織を高精度に観察するために開発された顕微鏡の一種で、可視光域の限界を超える高解像度を実現する技術です。超解像顕微鏡には、光学的な手法を用いたものと、非光学的な手法を用いたものがあります。

光学的な超解像顕微鏡には、STED顕微鏡、PALM顕微鏡、STORM顕微鏡、SIM顕微鏡などがあります。これらの顕微鏡は、可視光域の限界を超えるために、光の物理的な性質を利用した技術を用いています。

一方、非光学的な超解像顕微鏡には、電子顕微鏡を用いたものや、走査プローブ顕微鏡を用いたものがあります。これらの顕微鏡は、可視光域の限界を超えるために、物質中の電子やプローブの物理的な性質を利用した技術を用いています。

超解像顕微鏡は、微小な構造の観察において、従来の顕微鏡では解像度が不十分であった領域にも進出し、細胞内の分子構造やナノ粒子などを高精度に観察することが可能になりました。そのため、材料科学や生命科学などの分野で幅広く利用されています。

超解像顕微鏡の原理

超解像顕微鏡は、従来の光学顕微鏡の解像度制限を克服し、超高解像度のイメージングを実現する顕微鏡のことです。超解像顕微鏡は、いくつかの異なる原理に基づいて構築されていますが、以下に代表的な原理を説明します。

STED (Stimulated Emission Depletion) 顕微鏡

STED顕微鏡は、可視光や近赤外光を用いたレーザー光を、フォーカス付近のサンプルに照射します。STED顕微鏡では、フォーカスを極限まで小さくすることができ、光学分解能を向上させることができます。また、照射する光によってサンプル内のフルオロフォアが励起されると、光が反応して発光するので、これを検出することで高精度な画像が得られます。

PALM (Photoactivated Localization Microscopy) 顕微鏡

PALM顕微鏡は、可視光や近赤外光を用いたレーザー光をサンプルに照射し、発光するフルオロフォアを刺激します。刺激することで、フルオロフォアが発光し、その位置を特定することができます。これにより、発光点の座標を計算し、最終的な高精細な画像を作成することができます。

SIM (Structured Illumination Microscopy) 顕微鏡

SIM顕微鏡は、通常の顕微鏡と同様に、可視光や近赤外光を用いてサンプルを照射します。しかし、照射する光に特定のパターンを与えることで、より高精細な画像を得ることができます。具体的には、照射光によってサンプル内のフルオロフォアが発光し、それを検出することで、より高密度な情報を取得することができます。

これらの超解像顕微鏡の原理を利用することで、光学分解能を超えた高精細な画像を得ることができます。また、これらの技術は、生物学、医学、材料科学など、様々な分野で利用されています。

超解像顕微鏡の種類

超解像顕微鏡にはいくつかの種類があります。代表的なものを以下にまとめます。

STED (Stimulated Emission Depletion) 顕微鏡

励起光と消滅光を同時に照射し、消滅光の強度分布を制御することで、限られた領域のみを励起し、超解像画像を得ることができます。

PALM (Photo-Activated Localization Microscopy) 顕微鏡

点状の蛍光タグに対して光を照射し、瞬間的に蛍光を発生させ、その位置を特定することで、高精度な位置情報を取得し、解像度を向上させることができます。

STORM (Stochastic Optical Reconstruction Microscopy) 顕微鏡

PALM顕微鏡と同様に点状の蛍光タグを用いますが、短時間間隔での蛍光発生による局所的な強度変化を検出することで、位置情報を取得します。

SIM (Structured Illumination Microscopy) 顕微鏡

パターン照明を用いて、複数枚の画像を撮影し、それらを組み合わせて、高解像度画像を再構成する手法です。

RESOLFT (Reversible Saturable/switchable Optical Fluorescence Transitions) 顕微鏡

光の波長や強度を制御することで、点状の蛍光タグの位置を特定し、解像度を向上させることができます。

NSOM (Near-field Scanning Optical Microscopy) 顕微鏡

金属チップを用いて、光の強度を局所的に増幅することで、細いプローブを使わずに高解像度画像を得ることができます。

Lattice Light-sheet 顕微鏡

サンプルを細い光線でスキャンすることで、光のダメージを最小限に抑え、高速で高解像度な画像を取得することができます。

以上のように、超解像顕微鏡には複数の種類があり、それぞれ異なる原理を用いて高解像度画像を得ることができます。

超解像顕微鏡の応用分野

超解像顕微鏡は、従来の光学顕微鏡では解像度の限界を超えることができるため、多くの分野で利用されています。以下に、代表的な応用分野をいくつか紹介します。

生物学

超解像顕微鏡は、細胞や分子の研究に幅広く利用されています。細胞内の構造や機能を詳細に観察することができ、細胞生物学や神経科学などの分野で重要な役割を果たしています。

材料科学

超解像顕微鏡は、ナノスケールの材料の表面形態や構造を詳細に観察することができます。このため、材料の開発や設計、品質管理などの分野で活用されています。

半導体産業

超解像顕微鏡は、半導体デバイスの製造工程で利用されています。特に、ナノスケールの微細な構造を観察することができるため、半導体の高精度化や信頼性向上に貢献しています。

映像・表示技術

超解像顕微鏡を用いることで、高解像度・高精細な映像やディスプレイの実現が可能となっています。これにより、高品質な映像やディスプレイの開発が進んでいます。

化学・医薬品開発

超解像顕微鏡は、化学反応や医薬品の創製にも利用されています。例えば、医薬品の作用機序を詳細に観察することができ、より効果的な医薬品の開発につながっています。

超解像顕微鏡の最新技術

超解像顕微鏡の最新技術には、光源の改善や検出器の進歩、新しいレンズ技術の導入、AI技術の応用などが含まれます。これにより、より高速で高品質な画像が得られるようになり、さらなる解像度向上や3次元イメージングの実現が期待されています。また、光学系以外の波長領域を用いた超解像顕微鏡も研究が進んでおり、これらの技術の応用範囲が拡大することが期待されています。

超解像顕微鏡の今後の展望

超解像顕微鏡は、細胞や分子の詳細な構造や動態を解明する上で有用な技術として、生物学や材料科学などの分野で広く利用されています。今後の展望としては、以下のようなものがあります。

高速撮像技術の進化

超解像顕微鏡の最大の課題の1つは、撮像速度が遅いことです。高速撮像技術の進化により、高速な細胞や分子の動態を追跡することができるようになると期待されています。

柔軟性の向上

従来の超解像顕微鏡は、ある程度の制約のあるサンプルに対してしか使用できませんでした。今後の展望としては、柔軟なサンプルにも適用可能な技術の開発が求められます。

多色撮影技術の開発

現在の超解像顕微鏡は、1つの色のみを撮影することができます。将来的には、複数の色を同時に撮影できる技術の開発が期待されています。

3次元画像の取得技術の開発

現在の超解像顕微鏡は、主に2次元画像を取得することができます。将来的には、3次元画像を高精度で取得できる技術の開発が求められています。

これらの技術の進化により、超解像顕微鏡は、より高速かつ精密な細胞や分子の観察を可能にし、医学や材料科学などの分野において重要な役割を果たすことが期待されています。

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