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遺伝子解析ソフトウェアとは?主な製品の特長・仕様を解説

遺伝子

遺伝子解析ツール・ソフトウェアとは、遺伝子情報の解析をコンピューターを使用して行うためのソフトウェアのことです。遺伝子解析や遺伝子研究、細胞研究では膨大なデータを効率的に処理するために、コンピューター・ソフトウェアを利用する必要があります。

この記事では、遺伝子解析の技術について、PCR・マイクロアレイ・シーケンス(サンガーシーケンス)を中心に詳しく解説します。また、主要な遺伝子解析・遺伝子研究・細胞研究に使用するソフトウェアについても紹介するため、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 遺伝子解析ツール・ソフトウェアとは?

2. 遺伝子解析とは?
2-1. 遺伝子解析の技術

3. 遺伝子解析・遺伝子研究・細胞研究に使用するソフトウェア
3-1. ショットガンプロテオミクス解析ソフトウェア Progenesis QI for proteomics
3-2. 配列情報マルチ解析ソフトウェア Geneious Prime
3-3. FCSマルチカラー解析クラウドソフトウェア OMIQ

まとめ

1. 遺伝子解析ツール・ソフトウェアとは?

遺伝子解析ツール・ソフトウェアとは、遺伝子研究に用いるツールのことを指しています。遺伝子解析や遺伝子研究、細胞研究などでは多くのデータ処理が必要となり、人の力だけで解析・研究を進めるのは容易ではありません。そこで、専用のソフトウェアを用いることで多くの研究結果を基にした解析や、さまざまな観点からさらなる研究成果の獲得へとつなげやすくなります。

2. 遺伝子解析とは?

遺伝子解析とは、DNAやRNAに関する塩基配列を分析することです。親から子へと受け継がれる遺伝子を分析し研究を進めると、病気の発症リスクや危険性、薬物から受ける影響のほか、遺伝子の病的変化などの調査に役立てられます。

たとえば、自分の意思と関係なく手足・顔面を動かしたり、精神症状や認知機能障害などを引き起こしたりする「ハンチントン病」は遺伝性の神経疾患の1つです。遺伝子変化が原因の疾患と言われていますが、発症に至るすべての要因を明確にするのは困難を極めます。そこで、遺伝子解析により他者との違いを0.1%でも把握することで、特定の疾患にかかる可能性を示すのに有効な数値データとして活用が可能です。

遺伝子変化に関する解析は、遺伝子の違いによってどの疾患と関連づくのかの研究だけではなく、病気の原因特定などにもつなげられます。医療現場では、何らかの感染症に関するウイルスの特定や、患者さんの病的変化が起きている部位の診断にも活用されています。

2-1. 遺伝子解析の技術

遺伝子解析は、病気の発症リスクや薬物による影響の診断・確定などができる技術です。多くの人の健康維持につなげられる遺伝子解析は、下記のような技術が開発されています。

・PCR
ごく微量のDNAを複製して大量に増やせる技術です。血液やウイルス、組織などの検体がわずかな量であっても、そこに含まれるDNAに目的の遺伝子配列が存在しているのか研究したり、DNA鑑定に利用したりできます。近年では新型コロナウイルスの検査として活用されたことをきっかけに、広く認知された技術です。

・マイクロアレイ
遺伝子の変化を網羅的に調べられるのがマイクロアレイです。スライドガラスなどを利用して検体に関する複数の変化を一度に比較解析できる手法で、網羅的な遺伝子発現の解析につなげられます。

・シーケンス(サンガーシーケンス)
遺伝子やタンパク質の構造に関わるDNAの塩基配列を読み取り解析する方法で、疾患の原因特定に用いられる技術です。あらかじめ調べやすい長さにカットしたDNAを機械で読み取り解析します。DNAをカットすることにより大量に調べられ、素早い情報の解析が可能です。以前は複雑な工程と手作業が必要となる手間があったものの、技術の進歩により解析スピードの向上と作業コストの削減を実現しています。

それぞれの技術は解析方法が異なるため、各特性を生かせる研究や分野、解析目的に沿って使用されます。

3. 遺伝子解析・遺伝子研究・細胞研究に使用するソフトウェア

遺伝子解析・遺伝子研究・細胞研究に使用するソフトウェアには、いくつかの種類があります。それぞれ仕様や特長が異なるため、導入する際は目的にあった解析・研究ができるか、また使用できるシステム環境が整っているか事前に確認しましょう。ここでは、3つのソフトウェアを紹介します。

3-1. ショットガンプロテオミクス解析ソフトウェア Progenesis QI for proteomics

「Progenesis QI for proteomics」とは、LC-MS差異解析ができるソフトウェアです。安定同位体標識を必要としないため、MS/MSデータがない場合でもLC-MSによるタンパク質発現差異解析が実施できます。ほかにもProgenesis QI for proteomicsには、下記のような特長があります。

欠損値のない解析結果が得られるデータ解析過程が視覚化されている
解析で得られたデータは欠損することなく分析や研究に生かせるほか、関連性のあるさまざまなデータと合わせて要約が可能です。将来的な数値変化の予測など、多変量解析に活用できます。データ解析にかかる多くの過程が視覚化されるため、不明瞭な点が少ないのも特長です。データ解析者にとって信頼性が高く、得られた記録が確認しやすいメリットがあります。

推奨されるPCのスペックは下記の通りです。

・マルチコアプロセッサ搭載64ビットWindows
・メモリ32GB以上

データ量が多い情報の分析が想定される場合は、メモリ容量を上記よりさらに増やすのがおすすめです。
(出典:Waters「Progenesis QI for proteomics v4.2: features and specifications」
/https://www.nonlinear.com/progenesis/qi-for-proteomics/v4.2/specification/
(出典:Waters「Recommended PC specification」
/https://www.nonlinear.com/progenesis/qi-for-proteomics/v4.2/faq/hardware.aspx

3-2. 配列情報マルチ解析ソフトウェア Geneious Prime

「Geneious Prime」とは、DNA塩基配列などの分析やデータの処理に必要なツールを1つにまとめた、マルチ解析ソフトウェアです。たとえば下記のような工程を、Geneious Primeのみで完結して行えます。

・アラインメント
・変異検出
・発現解析
・マッピング

幅広いデータ解析に活用できるほか、ワークフローにより解析の自動化も可能です。解析者が複数人いる場合でも、同じ工程をたどるため安定した解析結果を得られるメリットがあります。

対応OSや必要なメモリ容量は下記の通りです。

・対応OS
Windows (7/8/10/11 64ビット)
Mac OS(10.11 El Capitan以降)
Linux(Ubuntu Desktop LTS 18.04/20.04)

・メモリ:2048MB RAM以上
・HDの空き容量:2GB以上
・モニタ:1024×768以上

ソフトウェア利用におけるライセンスタイプは複数あります。たとえば「パーソナル1年ライセンス」であれば、契約者個人での使用やPC固定利用などの条件付きです。契約の際は、各ライセンスタイプの条件を忘れずに確認しましょう。
(出典:Digital Biology「配列情報マルチ解析ソフトウェア Geneious」
/https://www.digital-biology.co.jp/allianced/products/geneious/

3-3. FCSマルチカラー解析クラウドソフトウェア OMIQ

「OMIQ」とは、FCSやLMDデータといった手が加えられていない生データの取り込みから、解析に至るまでの工程を一貫して行えるソフトウェアです。複数の機器やソフトウェア間でデータを行き来させる必要がないため、解析時間の短縮が見込めます。

OMIQに関するそのほかの特長は下記の通りです。

複雑な解析方法を活用できる
「t-SNE」や「opt-SNE」といった解析における複雑な高次元データを活用できます。軸スケールを調整したりグラフレポートを作成したりと、手動での操作が必要な場合も対応可能です。

ワークフローとして解析が保存される
すべての解析がワークフローとして階層化され保存まで行われるため、解析にかかる各工程の追跡と確認が行えます。テンプレート化してほかの研究に適用したり、解析データを複数人で共有したりすることも可能です。

高いセキュリティ性で安全に管理できる
解析データは保存時と通信時ともに暗号化されます。複数人でのデータ共有時にはアクセス権限の設定もできる高いセキュリティ性で、安全な情報管理が可能です。

なお、OMIQは、Chrome・Edge・Firefoxのいずれか最新版をインストールしているPCでの使用が推奨されています。
(出典:Digital Biology「FCSマルチカラー解析クラウドソフトウェアOMIQ」
/https://www.digital-biology.co.jp/allianced/products/omiq/

まとめ

遺伝子解析や遺伝子研究、細胞研究においては膨大なデータを解析する必要があります。膨大なデータを人の手で解析することは難しいため、コンピューターを活用して、膨大なデータを解析することが生命科学研究の世界では一般的です。遺伝子解析ソフトウェアは、このような膨大なデータを解析する生命科学研究で用いられるソフトウェアです。

遺伝子解析ソフトウェアには、さまざまな製品があります。製品によって解析できる内容が異なるため、必要とされる機能を備えたソフトウェアを選択しましょう。

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