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透過電子顕微鏡とは?仕組みや応用分野について解説

透過電子顕微鏡とは

透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope, TEM)とは、電子線を用いて物質の微細構造を観察する顕微鏡の一種になります。通常の光学顕微鏡では観察できないナノメートルオーダー以下の構造を観察することができます。透過電子顕微鏡は、透過型の試料を使用し、電子線が試料を透過した後に像を形成するため、高解像度かつ高倍率で試料を観察することができます。

透過電子顕微鏡には、電子銃から発射された電子線が、一次レンズ、コンデンサレンズ、試料、対物レンズ、投影レンズ、そして検出器までの経路を通ります。試料に入射した電子線は、試料内部の原子や分子と相互作用し、散乱、吸収、反射などが起こります。その後、透過した電子線は対物レンズによって集められ、像を形成するための検出器に向けて投影されます。

透過電子顕微鏡は、分析精度が高く、高解像度で試料を観察できるため、材料科学、生物学、医学などの分野で幅広く活用されています。また、電子線を用いるため、試料が透過する必要がありますが、化学組成や結晶構造、欠陥構造などの情報を得ることができます。さらに、EDX(エネルギー分散型X線分光器)と組み合わせることで、試料中の元素分析も可能になります。

透過電子顕微鏡の仕組み

透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope, TEM)とは、電子ビームを用いて試料を照射し、透過した電子をレンズで集めて拡大することで試料を観察する顕微鏡です。一般的な光学顕微鏡では限界を超える高い解像度で試料の微細な構造を観察することができます。

TEMは主に以下のような構成要素で構成されています。

電子銃

高電圧をかけることで電子を発射する部分で、一般的には熱電子放出法により発射されます。

加速管

電子銃から発射された電子を加速する部分です。

出射口

加速された電子が試料に照射され、透過電子が発生する部分です。

レンズ系

透過電子を集め、拡大する部分で、一般的には電磁石で作られた磁場を用いて透過電子を制御します。

検出器

透過電子を検出する部分で、一般的にはフィルムやデジタルカメラを用いて透過電子を記録します。

試料は非常に薄くスライスされたものが用いられ、通常は金属メッシュ上に乗せられます。電子ビームはこの薄い試料を透過し、レンズ系で集められた透過電子が検出器によって記録されます。試料中にある原子や分子の構造や配置、結晶の欠陥などを高精度に解析することができます。また、透過電子顕微鏡は拡大率が非常に高く、細胞やタンパク質などの生物学的な試料や、ナノテクノロジーの研究分野でも幅広く利用されています。

透過電子顕微鏡の応用分野

透過電子顕微鏡は、その高解像度と高倍率の特性から、多くの科学分野で広く使用されています。透過電子顕微鏡の応用分野は以下のようなものになります。

材料科学

透過電子顕微鏡は、材料の構造解析に欠かせないツールです。特に、ナノ材料の評価に有用です。透過電子顕微鏡を使用することで、材料の微細な構造や結晶構造を観察することができます。

生物学

透過電子顕微鏡は、生物学分野での細胞や組織の研究に広く用いられています。特に、細胞内の構造や生物分子の構造解析に有用です。

医学

透過電子顕微鏡は、医学分野でも広く使用されています。例えば、細胞内に存在する病原菌の形態解析や、病気による組織の変化の観察に利用されます。

環境科学

透過電子顕微鏡は、環境汚染物質の微細な構造解析にも役立ちます。例えば、微小な微生物がどのように環境中に存在し、影響を与えているかを調べることができます。

鉱物学

透過電子顕微鏡は、鉱物の微細構造の研究にも使用されます。鉱物の成長過程や結晶の構造、欠陥などを詳細に観察することができます。

以上が、透過電子顕微鏡の応用分野の一部です。透過電子顕微鏡は、その高い解像度と拡大率により、多くの分野で重要な役割を果たしています。

透過電子顕微鏡のメリットとデメリット

透過電子顕微鏡のメリットとデメリットをまとめると以下のようになります。

【メリット】

高い解像度

光学顕微鏡に比べ、透過電子顕微鏡は分解能が数百倍も高く、微細な構造を観察することができる。

大きな倍率で観察が可能

透過電子顕微鏡は、非常に高い倍率で試料を観察できるため、微細な構造を観察することができる。

試料の構造解析が可能

透過電子顕微鏡は、試料の内部構造を観察することができるため、試料の構造解析が可能である。

試料の化学分析が可能

高度な透過電子顕微鏡には、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)が装備されており、試料の化学分析が可能である。

【デメリット】

高価

透過電子顕微鏡は、非常に高価な機器であるため、購入や維持費用がかかる。

試料の準備が困難

透過電子顕微鏡は、試料の準備に時間がかかるため、試料を準備することが困難な場合がある。

真空中で観察する必要がある

透過電子顕微鏡は、真空中で観察するため、試料の性質によっては観察が困難な場合がある。

試料が破壊される場合がある

高エネルギーの電子線を使用するため、試料が破壊される場合がある。また、試料が非導電性である場合、試料表面に金属蒸着処理が必要である。

透過電子顕微鏡の最新技術と今後の展望

透過電子顕微鏡の技術は常に進化しています。

最近の進歩には、高速・高解像度・高感度のカメラ、3Dイメージング、およびラベルフリーイメージングなどが含まれます。今後の展望については、さらに高解像度化、高速化、多角的なイメージング法の開発が期待されています。

具体的には、以下のような透過電子顕微鏡の最新技術があります。

高速・高解像度・高感度のカメラ

CCDカメラやCMOSカメラの進歩により、より高速で高解像度かつ高感度の画像取得が可能になりました。これにより、より高速なリアルタイム観察や、より微細な構造の解析が可能になりました。

3Dイメージング

3D透過電子顕微鏡は、電子ビームをサンプルにスキャンすることで、高解像度の3D画像を作成することができます。これにより、より正確な形状や構造の分析が可能になり、材料科学や生物学などの分野での応用が期待されています。

ラベルフリーイメージング

従来の透過電子顕微鏡では、サンプルにラベルをつける必要がありましたが、最近の技術では、ラベルフリーでのイメージングが可能になりました。これにより、化学反応や生物学的プロセスなどをより正確に観察できるようになります。

今後の展望としては、より高速・高解像度・高感度な透過電子顕微鏡の開発や、より多角的なイメージング法の開発が期待されています。例えば、透過電子顕微鏡とラマン分光法を組み合わせたラマン透過電子顕微鏡は、サンプルの構造や化学的性質を同時に解析できることが期待されています。また、電子スピン共鳴法を用いた透過電子顕微鏡も開発が進んでおり、スピン情報を観察することができるようになると、より幅広い分野での応用が期待されています。

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