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分注機(自動分注機)とは?基礎知識や用途を解説

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分注機(自動分注機)とは、分注を自動的に行う装置です。そもそも分注とは、研究・検査において、液体を同量ずつ複数の容器に注入することを指します。分注機を用いると、連続して大量の分注を的確に行えるため、作業の効率化を図ることが可能となり、幅広い分野で活用されています。
この記事では、分注機についての構造や方式などの基礎知識に加え、代表的な用途について詳しく解説します。分注機の導入を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 分注機(自動分注機)とは?

2. 分注機の基礎知識
2-1. 構造
2-2. 分注方式
2-3. ピペットチップ
2-4. 分注ヘッド

3. 分注機の代表的な用途
3-1. 創薬>
3-2. 臨床試験
3-3. 遺伝子研究
3-4. 細胞培養
3-5. 食品・化粧品などの製造・検査

まとめ

1. 分注機(自動分注機)とは?

分注とは、医療・理化学分野における研究や検査において、ピペットなどを用いて液体を同量ずつ複数の容器に吐出する作業です。分注を自動的に行う装置が、分注機(自動分注機)です。ディスペンサーやドロッパーとも呼ばれています。

分注機は現在、医療・理化学分野のみならず、生物化学や創薬、食品や化粧品の製造など多種多様な分野で活用されています。的確に連続して大量の分注を行えるため、作業の効率化や正確性の向上を図ることが可能です。

分注機を使えば、人的な分注で起こりがちな検査対象の取り違えや計量ミスといったヒューマンエラー、異なる液体が混合してしまうコンタミネーションなどを防止できます。このため、作業者の負担軽減にもつながります。

分注機は単体としてはもちろん、インキュベーターやスタッカーなど他の装置と組み合わせて操作することも珍しくありません。製品によっては、分注ヘッドなどの部位を交換して操作できるなど、汎用性を備えています。

2. 分注機の基礎知識

分注機の導入を検討している人に向け、分注機の基礎知識として装置の構造を簡潔に解説するとともに、選ぶ際に注目したいポイントなどを紹介します。導入時の参考にしてください。

2-1. 構造

分注機には持ち運び可能な小型製品から複数の機能を備えた大型製品までさまざまなサイズがあります。仕様は製品によって異なるものの、基本的な構造としてはリキッドハンドリングと搬送部、コントローラーといった部位に大別できます。

リキッドハンドリングは液体を操作する部位で、ポンプやチューブ、ノズルヘッドから構成されています。正確性や連続性など分注機の性能を決定づける重要な部位です。リキッドハンドリングや搬送など、作業全般の制御はコントローラーが行います。

2-2. 分注方式

分注方式には、液体の吸引方式や吐出方式が異なるいくつかの種類があります。4つの方式について簡潔に解説します。

往復ポンプ方式プランジャーポンプなどの往復運動によって液体の吸引および吐出を行う方式
シリンジ方式容器に充填した液体に圧縮エアを加えることで、ノズルから液体を吐出する方式
チュービング方式チューブに圧力をかけ続けることで、チューブ内の液体を押し出す方式
スクリュー方式スクリュー状ロッドを回転させ、液体を吐出する方式

取り扱う液体の種類や使用目的などによって、分注方式を選択することが可能です。

2-3. ピペットチップ

ピペットチップの品質は、分注機の性能を左右します。精密に設計・製造されたピペットチップを採用した分注機は高い精度を備えています。ピペットチップの容量範囲は、ごくわずかな数マイクロリットルから大容量の数ミリリットルまで多様です。

ピペットチップは、ディスポーザブルチップとも呼ばれます。ピペットチップ内で異なる液体が混合するのを防ぐため、使い捨てすることが多いためです。一方で、ピペットチップを殺菌や洗浄して再利用できるシステムを採用した製品もあります。

2-4. 分注ヘッド

分注ヘッドは、分注ノズルとシリンダーブロックで構成されています絶対精度や繰返精度と呼ばれる分注の精度に関わる部位です。分注ノズル本数が1本のみのシングルチャンネルや、複数の分注ノズルを備えたいマルチチャンネルといった種類があります。

製品によっては、シングルチャンネルとマルチチャンネルを交換したり、分注ノズル本数が異なるマルチチャンネルを交換したりすることが可能です。また、吐出する容器の形状や厚さに応じて分注ノズルの間隔を変更できる可変ピッチタイプと呼ばれる製品もあります。

3. 分注機の代表的な用途

分注機は現在、医療分野や理化学分野をはじめとする多くの分野において活用されています。
代表的な5つの分野を取り上げ、それぞれの概要や分注機の使われ方について説明します。

3-1. 創薬

創薬とは、医薬品を製品化するまでの過程です。医薬品は通常、病気治療への有効性が期待される物質を合成し、化合物に対する実験や治験を繰り返して製品化に至ります。分注機は創薬において、スクリーニングやサンプル調整、毒性試験などで活用されています。

有効な化合物を探し出す高速スクリーニングは、分注機が重用されている作業の1つです。化合物の選定には大量の物質を調べる必要があります。分析評価の手段として分注機を用いて高速スクリーニングを行うことで、迅速な創薬に貢献しています。

3-2. 臨床試験

臨床検査は、病気の有無や原因などを数値として明らかにするための検査です。被検者から採取した血液・尿・便・体液といったさまざまな検体の状態を調べる検体検査も臨床試験の1つです。分注機は、被検者の検体検査で活用されています。

検体検査の中でも血液検査や尿検査は頻繁に行われる検査であり、大量の検体を数多く検査する必要があります。分注機の活用によって、必要最小限な分量の検体で検査することが可能となるうえ、作業時間を短縮化できる点はメリットです。

3-3. 遺伝子研究

病気治療や創薬につながる遺伝子研究の分野でも分注機は欠かせません。人をはじめとする生物の中には膨大な量の遺伝子があり、それぞれの遺伝子も膨大な情報を有しています。こうした遺伝子情報の解析に、高速かつ正確に作業を行う分注機が役立っています。

遺伝子研究における活用の場は、核酸抽出や精製、リアルタイムPCRなどです。遺伝子研究に対応した分注機の種類は多彩です。サンプル量の微量化やチップ再利用機能の採用などによってコスト削減を実現するコンパクトな製品も豊富にそろっています。

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3-4. 細胞培養

細胞培養は、創薬や生物学における基礎研究の一部です。例えば、創薬では培養した細胞を試験に利用したほうが動物試験よりも安価で、作業量も減ります。こうした背景もあり、複雑な細胞培養に対応する分注機が重宝されています。

細胞培養における分注機の役割は、細胞播種や培地交換、継代といったさまざまな作業の自動化です。従来の手作業に必要だった操作時間を大幅に短縮できるほか、複数の研究者が作業を担当した場合も均等な品質の細胞培養を保てます。

3-5. 食品・化粧品などの製造・検査

分注機は、食品や化粧品などの製造・検査においても必須の装置です。例えば、製造の現場では加工フルーツが入った瓶にシロップを充填したり、ボトルにローションなどの液体化粧品を充填したりといった作業を行う分注機が活躍しています。

食品や化粧品の検査において分注機が行うのは、微生物や原料などを調べる検査の前処理工程です。
品質管理に関わる重要な検査の過程で、分注機は精度の高い作業を効率よく行うため、検査員の作業量や検査コストを軽減できるというメリットがあります。

まとめ

分注機には小型製品から大型製品までさまざまな規格があります。一般的に、リキッドハンドリング・搬送部・コントローラーなどの部位で構成されており、リキッドハンドリングにはノズルヘッドなどが取り付けられています。

分注機の代表的な用途は、創薬・臨床試験・遺伝子研究・細胞培養・食品や化粧品の製造や検査などです。特に遺伝子研究では分注機が欠かせず、核酸抽出・精製やリアルタイムPCRなど幅広い分野で使われています。

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