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シングルセル装置とは?解析の原理や主な製品の仕様を紹介

CellCut

シングルセル装置とは、1つの細胞に着目して解析を行う装置のことです。個々の細胞ごとに識別できるタグを付けて、それぞれについてデータの取得・分析が行えます。生命科学の分野で幅広く活用されている装置です。

この記事では、シングルセル装置とはどのようなものであるのかについて、詳しく解説します。さらに、シングルセル解析の実施フローや、主な装置の特長・仕様についても取り上げるため、シングルセル装置への理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。

目次

1. シングルセル装置とは?

2. シングルセル解析とは?
 2-1. シングルセル解析の原理・フロー

3. 主なシングルセル装置の特長・仕様
 3-1. シングルセル解析プラットフォームChromiumシリーズ
 3-2. 自動シングルセル解析プラットフォーム Chromium Connect
 3-3. シングルユースバイオリアクター PBSシリーズG
 3-4. キャピラリーシングルセルソーティングシステム CellEctor

まとめ

1. シングルセル装置とは?

シングルセル装置とは、1つの細胞(cell:セル)に着目して解析を行う、シングルセル解析に用いる装置のことを指しています。個々の細胞ごとに識別可能なタグ付けをすることで、1つ1つの細胞に関する独立したデータの取得・分析が可能です。「シングルセル遺伝子発現解析」や「シングルセル免疫プロファイリング」などにおいて、数百~数万個に及ぶ細胞を対象にできます。

2. シングルセル解析とは?

シングルセル解析とは、細胞をまとまった集団として解析せず、1つ1つの細胞単位で解析する方法のことを指しています。次世代シーケンサー(NGS)と呼ばれる、大量のDNA配列を一度に解析できる装置が開発された後に発展した解析方法です。

シングルセル解析が普及する前は、解析したい細胞全体の平均データ情報を取得する「バルク解析」が主に用いられていました。さまざまな細胞が含まれたサンプルから、その平均値を割り出す方法です。一方でシングルセル解析では、個々の細胞に関する独立した差異データが得られます。組織や種、見た目が同じでも、1つ1つの細胞に含まれるタンパク質のほか、メッセンジャーRNA(mRNA)などの発現量に違いがあることを確認可能です。

従来では解明できなかった事象も細胞1つを対象として解析することで、少しずつ明らかになる点が増えています。シングルセル解析は、今後さらなる活躍や技術の応用が期待されている解析方法です。

2-1. シングルセル解析の原理・フロー

シングルセル解析は細胞培養ののち、細胞単離・測定・データ解析と大きく3つのステップに分けられます。それぞれの詳細は下記の通りです。

(1)細胞単離(サンプリング)
細胞培養ののち、培養中の細胞から単一細胞の採取を行います。単一細胞を採取する際は、さまざまな技術や手法、装置を用いて実施します。たとえば、キャピラリーピッキングやフローサイトメーター、マイクロ流路などが代表的な採取方法です。
(2)測定
測定では採取した単一細胞ごとにサンプルを調製して分析を行います。シングルセル解析には、1つの手法として「シングルセルRNAシーケンス」という遺伝子発現解析があります。次世代シーケンサー(NGS)を用いる方法で、cDNAの配列データ取得が可能です。
(3)データ解析
シングルセルRNAシーケンスでは、測定によって取得した配列データから遺伝子発現量を解析できる、トランスクリプトーム解析が行えます。主成分の分析などを行って、細胞の1つ1つを特徴ごとにグループ分けするクラスタリングが可能です。

上記フローは解析に用いるシングルセル装置の製品の違いによって、多少異なるケースがあります。中には、細胞単離から測定までを一連の流れとして行うよう設定されている製品もあることを把握しておきましょう。

3. 主なシングルセル装置の特長・仕様

シングルセル装置にはいくつかの種類があり、それぞれ特長や仕様が異なります。研究や目的に合った適切な装置を導入できるよう、製品を選ぶ際はそれぞれの違いを確認しましょう。ここでは、4つのシングルセル装置を紹介します。

3-1. シングルセル解析プラットフォームChromiumシリーズ

「Chromiumシリーズ」とは、NGSライブラリー調製用の機器のことです。「RNAseq」や「VDJレパトア」をはじめとする、さまざまなアプリケーションに対応している利便性の高さが魅力です。

Chromiumシリーズには、下記の3つの機種があります。

  • Chromium iX
  • Chromium コントローラー
  • Chromium X

それぞれ1ランで解析できる細胞の数や解析できる範囲、インターネット接続の可否など、オプションが異なるため注意しましょう。

(出典:10x Genomics「Chromium X シリーズ」
/https://www.10xgenomics.com/jp/instruments/chromium-x-series

シングルセル解析に取り組みはじめたばかりの人や、現時点で大規模な解析の予定がない人は、比較的コストが抑えられるChromium iXから検討するのもおすすめです。Chromium iXはソフトウェアアップデートによって、広範囲を解析できるChromium Xにアップグレードできます。Chromiumシリーズは拡張性がある製品のため、さまざまな解析者や研究環境に対応可能です。

3-2. 自動シングルセル解析プラットフォーム Chromium Connect

「Chromium Connect」とは、シングルセルNGS解析におけるライブラリー調製のワークフローを、すべて自動化した機器のことです。細胞からシーケンス用ライブラリーまでの作成・調製を自動で進めるため、解析や研究に関する生産性を高められるメリットがあります。

自動化によって解析者が機器から離れられるタイミングが増えるため、時間を有効活用してほかの解析や作業に充てるなど、効率化を図ることが可能です。

ほかにもChromium Connectには、下記のようなメリットがあります。

・解析者間の技術的なばらつきを抑えて、安定性のある結果が取得できる
・自動化によって手動で発生するエラーを減らせる
・細胞不均一性の探索やバイオマーカーの発見のほか、複雑な細胞プロセスの理解など、1台で多数のシングルセル解析ができる

(出典:10x Genomics「Chromium Connect」
/https://www.10xgenomics.com/jp/instruments/chromium-connect
テクニカルサポートが整っているため、何らかの問題が発生した場合に問い合わせられるのも、安心して利用できるポイントです。

3-3. シングルユースバイオリアクター PBSシリーズG

「PBSシリーズG」とは、幹細胞の培養に最適なシングルユースのバイオリアクターです。独自の水車型攪拌翼による攪拌によって、低いシェアストレスを実現しています。細胞ダメージを抑えて生存率を高めているだけではなく、高密度の培養も可能です。

PBSシリーズGは、下記のような特長も持っています。

・シェアストレスが少ない培養にくわえ、細胞にかかるシェアストレスも均一にできる
・少ない電力で効率的に攪拌ができる
・攪拌速度を調整し、細胞塊のサイズをコントロールできる

また、PBSシリーズGは同じ攪拌方式でスケールアップが可能です。60mLから80Lまでの各スケールで培養ができるため、解析や研究内容によってモデルを選択できます。小規模の基礎研究から大規模な生産に至るまで、さまざまなスケールに対応可能です。
(出典:株式会社スクラム「PBS バイオリアクター」
/https://www.scrum-net.co.jp/product/list/bio-reactor/pbs/series-top

3-4. キャピラリーシングルセルソーティングシステム CellEctor

「CellEctor」とは、顕微鏡ベースでシングルセルを認識し、取得・回収できるキャピラリーシングルセルソーティングシステムです。シングルセルを分子実験などに適した形にし、ナノリッターボリュームで自動回収できます。

CellEctorのそのほかの特長は、下記の通りです。

・セルの自動検出
蛍光画像下でセルを自動的に検出・識別するため、細胞を肉眼で捉えられます。

・高精度なセルの取得
機器には3Dロボットアームが搭載されています。高精度なアームによって制御されたガラスキャピラリーからセルの吸引が可能です。

・目視で確認できるセルの回収
IBIDIやほかのスライドベース容器にセルが回収されるすべての作業工程を、目視で確認できます。

3Dロボットアームは先端が回転する仕様となっているため、簡単にキャピラリーの交換が可能です。また、使用者が安全に取り扱いできるよう可動保護キャップが付属しています。滅菌状態を維持することにも役立ち、キャピラリーを清浄に保管できます。
(出典:Digital Biology「キャピラリーシングルセルソーティングシステム CellEctor」
/https://www.digital-biology.co.jp/allianced/products/cellector-plus/

まとめ

シングルセル装置は、1つ1つの細胞に識別可能なタグを付けて各細胞のデータを取得・分析できる装置です。細胞をまとまった集団としては解析せずに、1つ1つの細胞に着目することで、従来の手法では解明できなかった事象を解析できます。このようなシングルセル解析は、生命科学の世界で注目を集めている解析手法です。

シングル解析の原理・フローは、細胞単離・測定・データ解析という流れになっています。製品によって多少異なる場合があるものの、このような流れで解析を行うことで、1つ1つの細胞を解析することが可能です。シングルセル装置は、このような最先端の生命科学の研究に、今後も大きな役割を果たしていくことでしょう。

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