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クリーンベンチとは?原理や用途・種類・適切な使い方について解説

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クリーンベンチは、実験・研究において作業環境を一定の清浄度に保つために欠かせない設備です。ホコリや浮遊微生物などが実験対象に混入するのを防ぐため、特に微生物や細胞の培養、医薬品の調整など高い清浄レベルが求められる作業に広く用いられています。

この記事では、クリーンベンチの基本原理や種類、使い方について詳しく解説します。また、安全キャビネットやドラフトチャンバーとの違いも伝えるため、クリーンベンチの利用を考えている方はぜひ参考にしてください。

目次

1. クリーンベンチとは
1-1. クリーンベンチの原理
1-2. クリーンベンチと安全キャビネットの違い
1-3. クリーンベンチとドラフトチャンバーの違い

2. クリーンベンチの種類

3. クリーンベンチの適切な使い方
3-1. クリーンベンチの準備
3-2. 実験者および使用器具の準備
3-3. 無菌操作のコツ

4. クリーンベンチの用途

まとめ

1. クリーンベンチとは

クリーンベンチとは、実験・研究の作業環境が一定の清浄度になるように管理された設備で、清浄作業台とも呼ばれます。作業対象物に、ホコリや浮遊微生物などが付着・混入するのを防ぐための囲いが付いた実験台です。

高性能のHEPAフィルターを通した清浄空気で気流を作ることで、清浄度レベルが低い室内でも局所的に清浄度の高い環境が実現できます。多くの工場や研究室に導入されている垂直層流型のクリーンベンチは、前面に上下スライドのシャッターが付いた形状が特徴です。

送風機と高性能フィルター、照明の基本的な設備に加え、必要に応じて水道・ガス・排気といった機能を備えているクリーンベンチもあります。殺菌灯を設置するなど、作業内容に合わせたカスタマイズも可能です。

1-1. クリーンベンチの原理

クリーンベンチは、作業台となる机と左右前面の壁、及び屋根から構成される装置です。箱型の装置内に手を差し入れて、実験・研究作業を行います。

ベンチ外から取り込んだ空気をフィルターで清浄した上で、作業スペースに送り込むのがクリーンベンチの基本原理です。また、クリーンベンチは気流方式によって、垂直送風型と水平送風型の大きく2種類に分けられます。

垂直型のクリーンベンチは、装置の天井面から下向きに気流を生み出します。一方、水平型のクリーンベンチは、正面の壁面から前方に向かって空気を送り出すのが特徴です。水平気流の装置では、使用者の手元周辺に空気が滞って無菌処理ができないケースもあるため、培養などの無菌操作には垂直気流型のクリーンベンチが用いられます。

1-2. クリーンベンチと安全キャビネットの違い

クリーンベンチと似た実験用保護装置として挙げられるのが、安全キャビネットです。安全キャビネットは、バイオハザード対策用キャビネットとも呼ばれます。

クリーンベンチは、作業空間内を陽圧にして清浄環境を保ち、無菌状態で試料を扱うことを目的とした装置です。一方、安全キャビネットは装置内部を陰圧にして、実験作業者・環境・試料それぞれの相互汚染や試料間の相互汚染を防ぐことを目的としています。安全キャビネットは、感染性物質を使った実験・研究に適している点で、クリーンベンチとは異なります。

また、クリーンベンチはフィルターでろ過された空気が装置背面、または上部から作業面を通過して作業者方向に流れる仕組みです。安全キャビネットでは、庫内上部から作業空間に向かって発生させた気流が作業空間における試料間の相互汚染を防ぐとともに、グリルを経由して循環・排気されます。

1-3. クリーンベンチとドラフトチャンバーの違い

ドラフトチャンバーは、実験・研究で発生する有害ガスを排気することで、薬品などを安全に扱うための換気装置です。局所排気装置として、労働安全衛生法で設置が義務付けられています。

ドラフトチャンバーには、クリーンベンチのようなHEPAフィルターが搭載されていません。発生したガスなどを処理するためのスクラバーを備えた構造が特徴で、排気ファンとダクト接続が必要です。

ドラフトチャンバーは前面開口部より室内の空気を取り込み、作業面・装置上部を経由して屋外に排出させることで、有害ガスから作業者を保護します。

2. クリーンベンチの種類

クリーンベンチには以下のように、さまざまな種類が存在します。

装置組み込み型床置きの装置を組み込むことで、作業台が取り外せるタイプのクリーンベンチです。
乾燥型赤外線ランプが搭載されており、作業空間を乾燥状態に保てます。乾燥作業が必要な実験操作で活躍します。
無振動型作業空間に振動が直接伝わらない構造のため、繊細な作業や測定を行うシーンでも活用可能です。
ライトテーブル型視認性アップを目的として、アクリルやガラスなどを組み合わせた構造の作業台面に、蛍光灯が組み込まれています。
給排水型作業台の一部や全面が流し台になっており、正面に給水栓が備え付けられたクリーンベンチです。
排気型作業台の一部や全面から排気可能なクリーンベンチです。作業エリアの有害物質などを排出できます。
循環型清浄空気をクリーンベンチ外に放出させずに循環させることで、作業環境の清潔を継続的に保ちます。

3. クリーンベンチの適切な使い方

クリーンベンチの使い方を誤ると、作業環境を清浄に保つ効果が得られず、コンタミネーションによって細胞培養などに失敗してしまう可能性も否定できません。クリーンベンチで無菌操作をするときの適切な使い方として、次の3つを解説します。

3-1. クリーンベンチの準備

クリーンベンチを使う前に、ベンチ内部の作業エリアを無菌状態にする準備が必要です。使用の1時間ほど前から殺菌用のUVランプを点灯しておきます。ただし、UVランプは人や細胞にとって害があるため、直視しないように注意が必要です。

UVランプを消灯後に、作業用ライトとファンのスイッチを入れて、ドアを20㎝ほど開けた状態で5分程度稼働させます。エタノールやベンザルコニウム塩化物液などの消毒剤をベンチ内全体に吹き掛け、紙ワイパーや滅菌ガーゼで拭き取ったらクリーンベンチの準備は完了です。

3-2. 実験者および使用器具の準備

実験者の皮膚や使用器具の表面にも菌が存在しています。無菌操作における汚染を防ぐために、それぞれ滅菌準備が必要です。

まず、実験者は作業前に爪を短く切り、手を石けんで洗って清潔な状態にしておきます。手洗い後にペーパータオルなどで水気をよく拭き取ったら、エタノールやベンザルコニウム塩化物液など消毒剤で手指を消毒しましょう。さらに、クリーンベンチ内部に入れる肘の手前も同じく消毒します。

実験器具の滅菌方法には、主に以下のような種類があります。

  • 高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)
  • 乾熱滅菌
  • アルコール滅菌

高圧蒸気滅菌と乾熱滅菌は、器具を滅菌袋に入れて滅菌する方法です。器具を滅菌袋に入れたままクリーンベンチ内に入れ、ベンチ内で開封を行います。アルコール滅菌は、実験器具の表面を消毒剤で拭く滅菌処理です。

3-3. 無菌操作のコツ

無菌操作では、以下のようなポイントを意識しましょう。

  • 扉を開ける高さは25cmまでにする
  • 試薬や培地が入った容器の開封は最小限にし、蓋を開けた状態の上で作業しない
  • 実験中にしゃべったり、実験者の近くを通ったりしない
  • 作業を中断する際は容器の蓋を閉めて、手をゆっくりクリーンベンチから出す

さらに、試料間の感染を招く恐れがあるため、同時に複数の試料を持ち込む行為は避ける必要があります。培地や試薬も1種類の試料ごとに1組ずつ用意しましょう。

また、クリーンベンチのそばでガスバーナなどの熱源を使うと、上昇気流が起こって菌やホコリが浮遊します。作業場付近には実験に必要ない物を置かず、熱源になる道具も使わないように注意が必要です。

4. クリーンベンチの用途

クリーンベンチは、浮遊微生物やホコリなどの異物混入を避けたい作業で用いられます。特に、高い清浄レベルが求められる微生物や細胞の培養、医薬品の調整といった医薬分野の実験作業時に欠かせない装置です。

半導体・液晶をはじめとする精密機器や食品の製造の現場などでも使われており、幅広い分野で活躍しています。中には、作業エリアに囲いが存在しないオープン型のクリーンベンチもあり、作業効率を高める装置として活用されています。

まとめ

クリーンベンチは、微生物やホコリの混入を防ぐために清浄な環境を提供する装置であり、主に医薬品や精密機器、食品製造などを行う工場や研究室で使用されています。HEPAフィルターを通した清浄空気で気流を作り出すことで、清浄度が低い環境でも局所的に高い清浄度を確保できるのが強みです。

クリーンベンチの使用にあたっては、作業エリアおよび作業者の滅菌が必須です。また、試料のコンタミネーションを防ぐため、複数の試料をクリーンベンチ内に持ち込まないようにしましょう。加えて、上昇気流によって微生物やホコリが浮遊し試料を汚染するのを防ぐため、作業場付近からは熱源を排除してください。

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