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濁度計とは?測定単位や種類別の原理・注意点を分かりやすく解説

TUF-1600

工業・製造業・建築業など、さまざまな場所で使われる濁度計は、水の濁りを測定し、水質を監視する目的で使われています。濁度の測定は水質の変化をリアルタイムで把握できるため、例えば半導体製造に使う工業用水が、超純水の状態になっているかどうかなどをチェックするのに濁度計は必須です。

この記事では、濁度計および濁度の意味、測定単位、および代表的な濁度計の原理や使うときの注意点を解説します。また、測定原理別の濁度計のメリット・デメリットについても解説しているため、濁度計導入の参考にしてください。

目次

1. 濁度計とは
1-1. 濁度とは
1-2. 濁度の測定単位
1-3. 濁度と浮遊物質量(SS)の違い

2. 【種類別】濁度計の原理
2-1. 表面散乱光方式
2-2. 透過散乱光方式
2-3. 透過光方式
2-4. 散乱光方式
2-5. 積分球方式
2-6. 粒子数計測方式

3. 濁度計を使うときの注意点

まとめ

1. 濁度計とは

濁度計とは、水や液体中の濁りの程度を数値化して測定するための装置です。濁度計を使用すれば、水の透明度や汚染の程度を定量的に把握でき、適切な水処理や環境保全につながります。

濁度計は、飲料水の品質管理、河川や湖沼の環境モニタリング、上下水道の処理、工業排水の監視、養殖場の水質管理など、さまざまな分野で活用されています。

1-1. 濁度とは

濁度とは、水中に存在する土砂や化学物質などの不純物によって生じる水の濁りの程度を示す指標です。濁度が高いほど、水は不透明になり、品質や安全性に影響を及ぼす可能性があります。

濁度を計測するときは、水中の浮遊物質が光を散乱・吸収する性質を利用して、濁りの度合いを数値化します。

対して、水の透明度合いを計測する場合に使われる指標は「透視度」です。透視度は「透視度計」という標識板を使い、標識板が目で見えなくなる深さによって計測します。

1-2. 濁度の測定単位

濁度を測定する際には、校正の基準となる液体としてホルマジン標準液・カオリン標準液・混和ポリスチレン標準液の3種類が用いられます。標準液、および濁度計の計測方式によって、濁度の測定単位は変わります。

カオリン標準液白陶土(はくとうど)と呼ばれる鉱物を水に加えた液体で、1904年に上水試験法で規定されて以来長く濁度計測に使われています。

精製水1リットル中に標準カオリン1mgを含むときの濁りに相当するものは、「1カオリン度」と呼ばれます。
ホルマジン標準液濁度の校正に用いられる、最も標準的な液体です。粒子が均一で安定した計測が行えるのが特徴です。日本ではJIS K0101「工業用水試験方法」およびJIS K0801「濁度自動計測器」に規定されています。

ホルマジン1mgを蒸留水1リットル中に混濁させたときの濁度は「1ホルマジン度」と呼ばれます。

また、国際標準の濁度であるNTU・FTUは、ホルマジン標準液を使った指標です。
混和ポリスチレン標準液5種類のポリスチレン系粒子を、所定の割合で混和させた標準液で、上水道法によって水道水の濁度計測用の測定液に定められています。通常、低濁度の液体にのみ使用されます。

濁度単位は、「度」あるいは「1mg/L」を使用します。

1-3. 濁度と浮遊物質量(SS)の違い

濁度と浮遊物質量(SS:Suspended Solids)は、どちらも水中の不純物に関する指標です。ただし、意味や測定方法は異なります。

濁度は、水中の微細な粒子が光を散乱・吸収する性質を利用して、水の透明度や濁りの程度を光学的に評価するものです。濁度計を使用すれば、リアルタイムに素早く水質を確認できます。

対して、SSは、水中に浮遊する固形物質の総量を質量として測定したものです。通常、水試料をろ紙でろ過し、ろ紙に残った物質を乾燥・質量測定することで求められます。リアルタイムには水質を計測できない一方、水中の固形物質の正確な質量を得られるのがメリットです。

片方の指標が高いからといって必ずしももう片方が高いとは限らないため、水質管理においては、より詳細な水の状態を把握する目的で、複数の指標が組み合わせて使われます。

2. 【種類別】濁度計の原理 

濁度計は光学的に水の透明度を評価する測定器のため、測定方式によって測定単位が決まります。以下では、主要な6つの測定方式について、原理や特徴、それぞれのメリットとデメリットを詳しく解説します。

(出典:日本電気計測器工業会「5-2-3 濁度・色度計測器」/https://www.jemima.or.jp/tech/5-02-03.html

2-1. 表面散乱光方式

液面に光を照射し、散乱される光をセンサーで検出する方式です。水面に当たった光は、水中の懸濁物質によって散乱し、懸濁物質の濃度に比して反射光の強度が変わります。

受光器は液面の上に設置されており、直接水に触れないことから、汚れの付着による測定誤差が発生しにくい点がメリットです。また、表面の散乱光を測定するため、水の色による光吸収の影響が実用上無視できるレベルに抑えられます。

一方で、水面に波や泡があると、散乱光の検出に影響を及ぼし、測定精度が低下する可能性があります。また、液体の表面を測定するため、深部の濁度分布は把握できません。

2-2. 透過散乱光方式

測定対象に光を入射し、透過光と散乱光の両方を検出する方式です。濁度が上がると、透過光の強度は減少し、散乱光の強度は増加します。透過光と散乱光の強度比は懸濁物質の濃度に比例するため、比率を計算することで濁度を測定できます。

透過散乱光方式は、透過光と散乱光の両方を測定するため外的要因の影響を相殺でき、安定した測定が可能です。また、電源不足や光源の劣化による光源の強度変化の影響を受けにくく、測定誤差も小さい点がメリットです。

一方、透過光と散乱光を同時に測定するので装置が複雑になりやすく、メンテナンスに手間がかかる点がデメリットです。

2-3. 透過光方式

測定対象の片側から光を入射し、反対側で透過した光の強度を測定する方式です。懸濁物質が増えると、入射光の透過が妨げられ、透過光の強度が減少することを利用して、濁度を算出します。

測定原理が単純で測定機器自体の作りがシンプルになるため、基本的に製品が低価格になり、操作も簡単な点がメリットです。一方で、測定結果が不安定になりやすく、河川などの懸濁物質の種類や水の色が多様な環境では精度が落ちるデメリットがあります。

2-4. 散乱光方式

測定対象の液中に光を入射し、通常90度の角度で配置された受光器が散乱光のみを検出して濁度を測定する方式です。

低濁度の水でも微細な懸濁物質による散乱光を検出できるため、高感度な測定が可能です。また、散乱光のみを測定することで、水の色による光吸収の影響が小さい点もメリットです。

ただし、懸濁物質の濃度が高くなったり液体自体が光を吸収する色だったりすると、散乱光が減少するため測定精度が落ちるデメリットがあります。

2-5. 積分球方式

光源からの平行光を試料に入射し、試料を通過した光(透過光)と懸濁物質によって散乱された光(散乱光)を積分球内で検出する方式です。積分球の内面は高反射率の白色塗料で覆われており、入射した光を均一に拡散させます。受光器は積分球内に設置されており、全方向からの光を測定します。

光の均一な拡散により、測定結果の再現性が高く、精密な測定が可能な点がメリットです。一方で、積分球方式の濁度計はサイズが大きく、コストも高くなるため、現場での連続測定には向きません。

2-6. 粒子数計測方式

半導体レーザーを用いて水中の微粒子の個数とサイズを直接測定する方法です。レーザー光を試料に照射すると、微粒子によって光が散乱され、パルス数や強度から粒子の個数濃度やサイズ分布を推定できます。

微細な粒子を高感度で検出できるため、半導体製造に使う超純水などの極めて低い濁度の測定に適しているほか、粒子のサイズ分布や個数濃度も測定できる点がメリットです。さらに、光源の安定性が高く、背景ノイズが少ないことからゼロ点校正を省略できます。

一方で、基本的に粒子数計測方式の濁度計は高価で、正しく測定するには一定の専門知識が求められます。また、試料が濁りすぎていると、レーザー光が減衰し、正確な測定が難しくなる点もデメリットです。

3. 濁度計を使うときの注意点

濁度計を使用する際には、いくつかの注意点があります。

・光源や受光器の汚れが精度に大きく影響する
光源に傷や劣化があると光の強度が低下し、測定値が低く出るほか、受光器の窓が汚れていると光の透過が妨げられ、測定値が実際より高くなる可能性があります。必要に応じて清掃や交換を行いましょう。特に水中に受光器があるタイプの濁度計は汚れやすいため、こまめな清掃が大切です。また、濁度計を水中に設置するときは、ごみが濁度計に極力絡まらないように設置してください。

・測定前に校正が必要になる
粒子数計測方式の濁度計を除いて、濁度計は標準液を使った校正が必要です。校正を行わないと、測定値が実際の濁度を反映しない場合があります。

・試料は静かに取り扱う
測定方式によっては試料中の気泡や浮遊物が計測結果に影響を与えるため、試料は静かに取り扱いましょう。河川などに設置するタイプの濁度計の場合は、泡立ちや波が少ない場所を選んでください。

・事前にサンプルを採ってから濁度計を設置する
濁度計は水中の粒子の粒度や、含まれる成分によって精度が変わります。事前にサンプルを採り、浮遊する砂などの粒径や成分、濁度を計測・分析しておきましょう。実際の測定にあたって、濁度がサンプルと大きく異なる場合は、状況に応じて校正をやり直してください。

まとめ

濁度計の各測定方式にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、目的に合ったものを選ぶのが大切です。また、機器の校正やメンテナンスを適切に行うことで、測定の信頼性を高められます。

濁度とSSの双方を測定すれば、さらに水質の測定精度をアップできます。濁度計とSS計を組み合わせた濁度・SS計や、加えて汚泥濃度も測定できる濁度・SS・汚泥濃度計なども販売・レンタルされているので、活用して水質管理や環境保全を行いましょう。

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