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リークディテクターとは?リークテストの手法も解説

製造業や研究の現場では、製品の気密性確保が極めて重要です。自動車部品や電子機器、工場のガス配管や水道管でガスや液体がリークする(漏れる)と、動作の安全性や品質が損なわれたり、エネルギーロスの原因となったりします。さらに、気付かないうちに環境汚染につながる恐れもあります。
リークディテクターは、こうしたリークによる問題を解決するために使用される、漏れを検出する装置です。当記事ではリークテストとは何か、代表的な手法や、リークディテクターの種類・特徴について基礎から解説します。
目次 1. リークテストとは? 1-1. リークテストの種類 2. リークディテクターの種類 2‐1. ヘリウムリークディテクター 2‐2. 水素リークディテクター 2‐3. 超音波リークディテクター 2‐4. 赤外線リークディテクター 3. ヘリウムリークディテクターの優れている点 まとめ |
1. リークテストとは?
リークテストとは、機器や配管などの接合部にガス漏れがないか確認するための品質検査(漏れ試験)の一種です。
製品内部の微小な空隙やシール不良による漏れを検出する目的で行われ、リークチェックや漏れ検査とも呼ばれます。対象となる製品は、冷媒ガスを用いるエアコン・冷蔵庫、圧縮ガスを扱うコンプレッサーや空圧機器、圧力容器、真空チャンバー、各種タンクなど多岐にわたります。これらの装置は、ガスを媒体としたり真空状態を利用したりするため気密性が重視され、リークテストをクリアしない限り出荷できません。
1-1. リークテストの種類
リークテストにはさまざまな方法がありますが、大きく分けて「加圧方式」と「真空方式」の2つのアプローチが代表的です。
・加圧方式 加圧方式のリークテストは、試験対象物の内部に圧力を加えて漏れを検査する方法です。例えば窒素ガスなどで製品内部を所定圧力まで加圧し、一定時間放置した後に内部圧力の変化量を測定します。内部圧力が低下していれば、ガスがどこかから漏れていると判断できます。また、製品を水槽に沈めて加圧し、気泡が出ないか目視確認する水中漏れ試験(水没法)や、加圧後に石鹸水を塗布して泡の発生を調べる方法でも漏れを検知できます。 ・真空方式 真空方式のリークテストは製品内部を真空ポンプで減圧し、外部からの空気の侵入具合などで漏れを検査する方法です。内部を真空に保持し、時間経過による真空度の悪化(圧力の上昇量)を測定することで漏れ量を確認します。真空度が時間とともにどれだけ劣化するかを調べ、劣化が大きければ外部から空気が入り込む漏れがあると判断できます。 |
加圧方式・真空方式それぞれに、さまざまな具体的手法があります。中でもヘリウムリークテストは、試験体にヘリウムガスを封入して漏れを調べる手法で、加圧方式でも真空方式でも利用できる利便性の高い検査方法です。ヘリウムガスだけを検出するリークディテクターを使うことで、微小な漏れも精度よく発見できます。
2. リークディテクターの種類
リークディテクターには、検知の原理や使用するトレーサガスの違いによって複数の種類があります。用途や目的に応じて適切な方式のリークディテクターを選定することが重要です。
ここでは代表的なリークディテクターとして、ヘリウムリークディテクター、水素リークディテクター、超音波リークディテクター、赤外線リークディテクターの4種類について、原理と特徴を紹介します。
2‐1. ヘリウムリークディテクター
ヘリウムリークディテクターは、トレーサガスにヘリウムを使用した漏れ検知装置です。ヘリウム専用の質量分析計と真空ポンプを内蔵し、ヘリウムガスのみを選択的に検出するのが特徴です。検出感度は極めて高く、他の方法では見つけにくい微小な漏れまで捉えることが可能です。
高精度ゆえ、真空装置や半導体製造装置、航空宇宙分野の部品など、非常に厳しい気密検査が要求される製品の検査に広く用いられています。
2‐2. 水素リークディテクター
水素リークディテクターは、水素ガスをトレーサとして利用する漏れ検知装置です。通常は5%の水素と95%の窒素からなる非可燃性ガスを試験体に充填し、漏れ出た水素を水素センサで検知して漏れを判定します。
ヘリウムに比べガスコストが安価で安全性も高いため、低コストで大量の製品を検査できる利点があります。また、必要十分な検出感度を備えており、小さな漏れの検知にも対応可能です。空調機器や自動車部品の生産工程などで、ヘリウムに代わる手法として活用が進んでいます。
2‐3. 超音波リークディテクター
超音波リークディテクターは、漏れ箇所から発生する超音波を検知して漏れを発見する装置です。高圧下でガスがわずかな隙間から漏れると超音波が発生し、センサでそれを捉えて漏れを検出します。
一般的には、漏れ源に近づくほど超音波信号が強くなるため、装置の指示に従ってセンサを動かすことで漏れ箇所を特定できます。工場の圧縮空気配管の漏れや真空装置のシール不良箇所を探すメンテナンス用途で広く用いられています。
2‐4. 赤外線リークディテクター
赤外線リークディテクターは、ガスの赤外線吸収特性を利用して漏れを検知する装置です。NDIR(非分散型赤外線)センサで特定ガスによる赤外線の吸収量を測定し、ガス漏れを検出します。
特定のガスに対して高感度・高選択に検知でき、誤報が少ないのが利点です。赤外線式のリークディテクターは主に冷媒ガスの漏れ検知に用いられ、エアコンや冷凍冷蔵庫など冷媒を使う機器の点検などに使用されます。
3. ヘリウムリークディテクターの優れている点
数あるリーク検査手法の中でも、ヘリウムリークディテクターを用いた検査は特に高い性能と信頼性があります。以下は、ヘリウムリークディテクターの優れている点です。
・精度が高い ヘリウムリークテストでは、他の方法では検知が難しい極微小な漏れまで発見可能です。体積変化や圧力変化で判断する他の検査方法と異なり、作業者の熟練度に依存せず圧倒的な高感度・高精度で漏れを検出できます。ヘリウム原子は非常に小さく拡散性が高いため、わずかな隙間からでも漏れ出して検知器に到達することから、漏れ検知媒体として理想的です。質量分析計を用いてヘリウムのみを選択的に検出するため、環境中の空気成分に影響を受けにくく、正確な測定が可能です。 ・安全性に優れている ヘリウムガスは不活性ガスであり、毒性も引火性もありません。そのため検査時の安全性が極めて高く、作業者や周囲の設備へのリスクが低いです。他の手法で用いられる水素ガスは可燃性であり取り扱いに注意が必要ですが、ヘリウムなら引火爆発の心配なく安心して使用できます。 ・環境負荷が少ない ヘリウムは非フロン系で、自然界に存在する不活性ガスです。温室効果ガスやオゾン層破壊物質ではないため、環境への影響が非常に少ないです。大気中に放出しても地球温暖化やオゾン層破壊につながる心配がなく、検査後にガスを回収せず放出しても環境汚染を引き起こしません。加えて、不活性なヘリウムは製品への悪影響もなく、検査によって検体を汚染したり腐食させたりしないという利点もあります。フロン系のリークテストに代わる環境に優しい選択肢と言えるでしょう。 |
以上のように、ヘリウムリークディテクターは高精度で安全かつ、環境に優しいリーク検査を実現できる点で優れています。
なお、非フロン系とは、フロンを使用しない技術や製品、冷媒、ガスなどのことです。従来、冷蔵庫やエアコンの冷媒、スプレーの噴射剤、発泡剤などに使用されていたフロンは、オゾン層破壊や地球温暖化への影響が懸念されており、国際的な規制のもと削減が進められています。
まとめ
リークディテクターとは、製品からのガス漏れ・液漏れを検知するための専用装置です。
リークディテクターを選定する際は、検査対象や求められる検出感度、安全性、コストなどを総合的に考慮することが重要です。例えば、生産ラインで多数の製品を迅速に検査したい場合は水素リークディテクターによる低コスト検査が適しています。一方で、極めて微小な漏れも見逃せない真空機器の検査ではヘリウムリークディテクターが必要となるでしょう。
当記事を参考に、各工場に合ったリークディテクターを選んでみてください。
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