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ゲル撮影装置とは?用途や使用・選び方を分かりやすく解説

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ゲル撮影装置は、生命科学分野の研究現場で広く使われている実験機器です。電気泳動によって分離されたDNAやタンパク質などのゲル上のバンドを可視化し、写真として記録するのが主な役割です。通常は暗室状のボックス内でゲルに紫外線や青色LEDの光を当てて蛍光色素を励起し、発光したバンドをカメラで撮影します。

当記事では、ゲル撮影装置の仕様やゲル撮影装置の選び方などを、生命科学分野の研究者・技術者の方に向けて分かりやすく解説します。

目次

1. 【基礎】ゲル撮影装置とは?
1-1. ゲル撮影装置の用途

2. ゲル撮影装置の仕様
2-1. 検出器
2-2. 励起光源

3. ゲル撮影装置の選び方
3-1. カメラの性能
3-2. 光源の種類
3-3. 操作性

4. ゲル撮影装置に関連するQ&A
4-1. 電気泳動とは?
4-2. ゲル撮影装置は自作できる?

まとめ

1. 【基礎】ゲル撮影装置とは?

ゲル撮影装置とは、アガロースやポリアクリルアミドなどのゲル上に分離した、核酸(DNAやRNA)・タンパク質のバンドを撮影してデータ化する装置です。下から紫外線や青色LED光などでゲルを照らし、染色されたバンドの蛍光を上部のカメラで撮影することで、電気泳動の結果を画像として残します。

装置はカメラやフィルター、光源、ゲル台が一体化した構造で、周囲の光を遮断して微弱なバンドも鮮明に捉えられるようになっています。また一部の製品では、フードを開けてゲル中の目的バンドを切り出せるようになっていたり、解析用のソフトが付属していて画像からバンド強度を定量できたりするものもあります。

1-1. ゲル撮影装置の用途

ゲル撮影装置は、電気泳動の結果を記録・分析する目的で使用されます。PCRで増幅したDNA断片や制限酵素で切断したDNAのサイズ確認、タンパク質電気泳動の分離パターンの記録など、分子生物学実験の確認に欠かせません。アガロースゲル電気泳動でエチジウムブロマイド(EtBr)やSYBR Safeなどで染色したDNAバンドを撮影する場面が典型例です。

さらに最近では、ウエスタンブロットの発光シグナル撮影や蛍光プレートの解析、コロニーのカウントなど、多目的に利用できるイメージングシステムへと発展した機種もあります。

2. ゲル撮影装置の仕様

ゲル撮影装置には、さまざまな仕様があります。搭載している検出器の種類や励起光源の種類、装置サイズ、操作インターフェースの他に、データ保存方法なども機種ごとに異なります。

以下では代表的な仕様の違いとして、検出器と光源に着目して解説します。

2-1. 検出器

ゲル上のバンドを読み取るカメラ(検出器)には、CCDカメラ、CMOSカメラ、市販デジタルカメラやスマートフォンを利用するタイプがあります。

・CCDカメラ
CCD(電荷結合素子)カメラは、高感度・低ノイズで微弱なバンド検出に優れます。

・CMOSカメラ
CMOS(相補型金属酸化膜半導体)カメラは低コストで、現在多くの装置に採用されています。高感度モデルの登場によって、用途によってはCCDに匹敵する性能を持ちます。

・市販デジタルカメラ対応
一部の装置は、デジタル一眼レフカメラなど、市販のカメラを取り付けて使用することが可能です。手持ちの高画質カメラを活用できるためコストを抑えられ、必要に応じてレンズや設定を自由に変更できるというメリットがあります。軽量で安価なタイプが多いのも特徴です。

・スマートフォン対応
スマホをカメラとして利用できるタイプも登場しています。専用の遮光ボックスにスマホをセットし、アプリで撮影・保存します。装置が小型で手軽な反面、専用カメラに比べ感度・画質が劣るため、鮮明な画像が得られるのは比較的強いバンドに限られます。

2-2. 励起光源

ゲル中の試料を励起する光源には、大きく分けて紫外線(UV)ランプとLEDがあります。

・UV光源
従来から使われている紫外線(主に波長300nm前後)は、EtBrなど古典的なDNA蛍光試薬を効率よく励起できます。「検出感度が高い」「さまざまな染色試薬に対応できる」「装置の汎用性が高い」などの特徴があります。ただし、UV光は有害なので、実験時には保護眼鏡やグローブの着用が必須です。また、UVはゲル中のDNAそのものにもダメージを与えるため、バンドを切り出して精製する場合には露光時間を短くする配慮が必要となります。

・LED光源
青色LED(波長約470nm)を用いた光源は、近年普及してきました。SYBR SafeやGelGreenなど、安全な蛍光染料と組み合わせて使用されます。LEDは安全性が高く、青色光は目や試料にほとんど害を与えません。高品質な画像を取得しやすいのもメリットの1つです。EtBrなどUV励起の蛍光試薬では青色LEDだと感度が下がるため、UVとLEDを両方搭載したモデルもあります。

3. ゲル撮影装置の選び方

ゲル撮影装置を選ぶ際は「カメラの性能」「光源の種類」「操作性」の3つのポイントを重視するとよいでしょう。自らの実験ニーズを整理し、以下の観点で比較検討してみてください。

3-1. カメラの性能

撮影対象となるバンドの濃さや大きさに応じて、必要なカメラの性能も変わります。微弱なバンドまで検出したい場合は、高感度なCCDや高性能CMOSカメラ搭載モデルが適しています。バンドが鮮明なサンプルばかりの場合は、標準的なCMOSカメラでも問題ありません。

また、解像度(画素数)も確認しましょう。ゲル全体を撮影して細部まで解析したい場合は、高画素カメラのほうが有利です。最近の装置には自動露光調整やプリセットの撮影プロトコルを備えたものも多く、初心者でも簡単なボタン操作だけできれいな画像を取得できるよう工夫されています。

3-2. 光源の種類

現在ラボで使用している蛍光染料に対応した光源を選ぶ必要があります。例えば、EtBr中心ならUV光源搭載の機種が、SYBR系やGelGreenなどを使うならLED光源機種が使いやすいでしょう。

別波長の蛍光や発光検出など、将来的に別の用途にも使いたい場合は、UVと青色LEDの両方を備えたモデルや、複数の励起光を切り替えられる多機能モデルだと安心です。実験での使用目的を踏まえ、最適な光源を持つ装置を選択しましょう。

3-3. 操作性

日常的に使う機器だけに、使い勝手のよさは大切なポイントです。撮影ソフトウェアの直感的なインターフェースや自動撮影モードの有無は、初心者にとって特に重要です。USBメモリに直接保存できるのか、ネットワーク経由でPCに転送できるのかなど、得られた画像データの保存方法も確認することをおすすめします。ラボのワークフローに合う機能だと便利です。

さらに、装置のサイズや設置要件も考慮しましょう。狭いスペースにはコンパクトなモデルが適しています。特に一体型でPC内蔵のものは、外部パソコンが不要な分、省スペースです。反対に、外部PC制御タイプは画面が大きく操作しやすい場合もあります。

4. ゲル撮影装置に関連するQ&A

最後に、ゲル撮影装置および関連トピックについて、よくある疑問をQ&A形式で紹介します。

4-1. 電気泳動とは?

電気泳動とは、DNAやタンパク質などの帯電した分子を電場中で移動させて分離する実験手法です。ゲル電気泳動では、ゲル状の媒体に試料を載せて電圧をかけると、分子の大きさや電荷の違いによって移動速度が変わるため、混合物中の分子をサイズ別に分離できます。

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4-2. ゲル撮影装置は自作できる?

簡易的なゲル撮影装置を自作することも可能です。例えば青色LEDを光源に用い、遮光箱内でデジカメやスマホを使って撮影する簡易システムを自作できます。

ただし、正確性と安全性の点から、基本的にはメーカー品の利用が推奨されます。自作では光量や撮影条件が安定せず、UV光源の取り扱いも危険なため、可能であれば信頼できるメーカーの装置を使いましょう。

まとめ

ゲル撮影装置は、電気泳動実験の結果を正確に記録・解析するために欠かせない機器です。カメラ性能・光源・操作性などの観点で製品を比較し、扱いやすく安全なゲル撮影システムを導入しましょう。適切な装置を用いることでゲル上の微かなバンドも見逃さず捉えられ、実験結果をより確かなものにできます。

アズサイエンスではゲル撮影装置を取り扱っていますので、お気軽にお問い合わせください。必要な機器を揃えて、研究クオリティの一層の向上を目指しましょう。

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