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近赤外分光光度計(NIR)とは?原理や主な製品の仕様を紹介

近赤外分光光度計(NIR)は、近赤外線領域の光を用いて物質を測定・分析する装置です。物質の水分量や成分を迅速かつ非破壊的に測定でき、化学・食品・製薬などの幅広い業界で活用されています。

近赤外分光法の原理や分析手法の理解は、現場での実務に大いに役立つだけでなく、特定の用途における適切な近赤外分光光度計の使用にもつながります。

そこで今回は、近赤外分光法の原理から用途、歴史、メリット・デメリットまで詳しく説明します。近赤外分光光度計の主な製品・仕様も紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。

目次
 
1. 近赤外分光法の原理とは?
 
2. 近赤外分光法の用途・歴史
 
3. 近赤外分光法のメリット・デメリット
 
4. 近赤外分光光度計(NIR)の主な製品・仕様
4-1. 近赤外分光計(マルチFT-NIRアナライザ)
4-2. 近赤外分光計(コンパクトFT-NIR)
4-3. 近赤外分光計(プロセス用FT-NIR)
4-4. LAMBDA 850+/1050+ 紫外可視近赤外分光光度計
 
まとめ

1. 近赤外分光法の原理とは?

近赤外分光法とは、物質と光の相互作用を分析して赤外スペクトルを生成する測定手法です。英語では「Near Infrared Spectroscopy:NIRS」と言い、「NIR分光法」とも呼ばれます。

近赤外領域とされる「波長域約800~2500nm」の近赤外光を測定対象物に照射することで、物質内の分子が特定のエネルギーをもつ光を吸収し、振動や回転を始めます。この現象によって、特定の波長の光が物質に吸収(反射・透過)されます。

赤外吸収・赤外透過データを測定し、赤外吸収スペクトル・赤外透過スペクトルとして記録することで、「物質中にどのような成分が含まれているのか」「その物質がどのような状態なのか」といった化学的特性を特定することが可能です。これにより、各成分の構造解析や定量分析を行えるという原理・仕組みとなっています。

2. 近赤外分光法の用途・歴史

近赤外分光法は透過性に優れており、紫外線や可視光に比べて物質を通り抜けやすいという性質をもっています。非破壊で物質を迅速に測定できる便利な分析法であることから、化学・食品・製薬・農業などのさまざまな業界で広く利用されています。

化学物質の構造解析や反応のモニタリング
食品食品の成分分析(水分・脂肪・コレステロール値など)や品質管理
製薬原材料の確認や製品の均一性の評価
農業作物の成分分析(水分・糖分など)

また、近赤外分光法の歴史は1970年代に遡ります。米国農務省のDr. Karl Norrisらによって開発された近赤外分光法は、農産物や食品の主要成分である水分・タンパク質・脂肪分を迅速かつ非破壊で測定するための自動分析装置として実用化されました。

そして1970年代後半からは日本国内でも農産業を中心に導入が進み、1990年代以降は製薬業界や石油化学業界にも応用が拡大しました。現在では食品・農業分野のみならず、多様な分野で成分分析や品質管理に欠かせないツールとなっており、特に栄養成分の品質管理においては重要な役割を果たしています。

3. 近赤外分光法のメリット・デメリット

近赤外分光法には、メリット・デメリットの両面があります。

【近赤外分光法のメリット】

非破壊で迅速に分析できるサンプル前処理の必要がない試薬や消耗品を使用する必要がなく、廃棄物の削減につながる複数の成分を同時に測定できる

近赤外分光法の最大のメリットは、非破壊測定が可能な点です。サンプル試料を破壊することなく分析できるため、分析後も試料として用いた食品や農産物、医薬品などをそのまま利用できます。

サンプル試料の複雑な前処理も不要で、液体や固体、粉体などあらゆる形態の試料をスムーズに測定できるほか、コスト削減にもつながります。

【近赤外分光法のデメリット】

スペクトルが複雑で解析が困難となりやすい

近赤外分光法では、複数の倍音・結合音による禁制遷移が大きく、スペクトルも複雑に生成される傾向にあります。複雑なスペクトルは分光データの解析が難しく、分子レベルでの詳細な構造情報を得るハードルも高まることに注意が必要です。

4. 近赤外分光光度計(NIR)の主な製品・仕様

近赤外分光光度計(NIR)とは、近赤外分光法を利用して、物質の化学成分や構造を迅速かつ非破壊で分析できる装置です。近年では、「フーリエ変換型の近赤外分光器(フーリエ変換赤外分光光度計」が主流化しつつあります。

ここからは、代表的な近赤外分光光度計4つを、仕様・特長・用途を挙げながら詳しく紹介します。ニーズに適した近赤外分光光度計を導入したいという方は、ぜひ参考にしてください。

4-1. 近赤外分光計(マルチFT-NIRアナライザ)

「マルチFT-NIRアナライザ(MPA II)」は、食品や農産物、飼料を中心に、あらゆる業界の成分分析・品質管理に対応できる近赤外分光光度計です。

分子の振動・回転エネルギーに基づくスペクトル分析を迅速かつ非破壊で正確に行えます。特に、水分や脂肪、タンパク質などの主要成分のスピーディーな測定を得意としており、検査時間の短縮や効率化が期待できるでしょう。

また、FT-NIRアナライザは「分かりやすい操作性」「メンテナンスの手間・コスト削減」にも強みをもっています。システムの操作は非常にシンプルで、トレーニングを受けていない従業員でもすぐに操作できます。

堅牢性の高い最先端の光学部品を採用しているほか、簡単にメンテナンスできるよう設計されており、メンテナンスコスト・作業者負担の削減や作業効率の向上を実現することが可能です。

(出典:アズサイエンス株式会社「近赤外分光計(マルチFT-NIRアナライザ)」/https://azscience.jp/machine/detail/item_1167/

4-2. 近赤外分光計(コンパクトFT-NIR)

「コンパクトFT-NIR(TANGO)」は、コンパクトな設計と優れた堅牢性を兼ね備えた近赤外分光計です。直感的な操作性に特化しており、ユーザーが簡単に赤外測定を開始できるため、分析作業の効率化に寄与します。

また、自動バックグランド測定機能を備えており、測定準備の手間を軽減し、確実な測定データを提供します。原材料の試験や工程内分析、製品の品質検査やリリース分析など、多くの用途に対応できる点も特長です。

小型ながらも頑丈で耐久性に優れているため、日常の業務負担を軽減しつつ、安定した測定結果を求める現場での使用に適しています。

(出典:アズサイエンス株式会社「近赤外分光計(コンパクトFT-NIR)」/https://azscience.jp/machine/detail/item_1155/

4-3. 近赤外分光計(プロセス用FT-NIR)

「プロセス用FT-NIR(MATRIX-F II)」とは、製造プロセスに組み込み、リアルタイムで成分をモニタリングできる近赤外分光計です。MATRIX-F IIには光ファイバー技術が活用されており、接触と非接触の両方の測定が可能となっています。

プロセス内での連続測定をサポートし、製造ラインの効率的な管理を実現することから、化学や製薬、食品業界などでは特に高い実績を誇っています。

また、MATRIX-F IIはインライン測定が可能です。リアルタイムで反応容器内や配管内の成分を確認できるため、プロセスの深い理解と効率的な制御に役立つでしょう。堅牢で高い耐久性を備えていることから、連続的なプロセス管理を求める現場においては安定した性能を発揮します。

(出典:アズサイエンス株式会社「近赤外分光計(プロセス用FT-NIR)」/https://azscience.jp/machine/detail/item_1138/

4-4. LAMBDA 850+/1050+ 紫外可視近赤外分光光度計

「紫外可視近赤外分光光度計(LAMBDA 850+/1050+)」は、紫外・可視・近赤外領域の高精度な光学測定が可能な赤外分光装置です。吸光度8Aという広いダイナミックレンジを持ち、非常に高い正確性、精度、再現性を提供します。さらに、超高感度3D検出器を備えており、超低迷光による微量成分の分析にも適しています。

LAMBDA 850+/1050+は、化学・材料・環境科学の研究や開発の分野での使用が推奨され、幅広いスペクトル解析に対応しています。高い精度を保ちながら、光学機器としての堅牢性も備わっており、長期間にわたって安定した分析が可能です。
(出典:アズサイエンス株式会社「LAMBDA 850+/1050+ 紫外可視近赤外分光光度計」/https://azscience.jp/machine/detail/item_564/

まとめ

近赤外分光法(NIRS)とは、物質と光の相互作用を分析してスペクトルを生成する手法です。そして、近赤外分光法を利用して、物質の化学成分や構造を迅速かつ非破壊で分析できる装置は近赤外分光光度計(NIR)と言います。

近赤外分光光度計はさまざまなメーカーから販売されており、製品によっても機能性・適切な用途は異なります。

アズサイエンス株式会社では、主要メーカーが製造した高性能な近赤外分光光度計を多数取り扱っております。研究や分析に近赤外分光光度計を利用したいという方は、ぜひ一度アズサイエンス株式会社にお問い合わせください。

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