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遠心分離機の仕組みと原理は?使用されるシーンと目的も解説

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化学分野・工業分野における研究・開発・製造の場においては、遠心分離機が多く用いられています。遠心分離機とは、名前の通り遠心力を利用して固体・液体や液体同士を分離させる装置のことです。

遠心分離機を利用することによって、重力沈降よりも短時間でのサンプル分離が可能となり、生産プロセスの効率化につながるほか、製品の品質向上・従業員の負担軽減にも寄与します。

今回は、遠心分離機の仕組みから主な活用シーン、さらに遠心分離機の種類まで詳しく説明します。遠心分離機の導入を検討している化学分野・工業分野の研究者の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 遠心分離機の仕組み
1-1. 遠心力とは?
1-2. 遠心分離機の動作過程

2. 遠心分離機はどのような場面で使われる?
2-1. 研究用遠心分離機
2-2. 工業用遠心分離機

3. 遠心分離機の種類
3-1. 運転方法による分類
3-2. 排出方法の違い

まとめ

1. 遠心分離機の仕組み

遠心分離機とは、高速回転によって発生する遠心力を利用して、物質の密度や重量の異なる「固体と液体」や、水と油のように互いに溶け合うことのない「液体と液体」を分離(液液分離)させる装置です。「遠心機」とも呼ばれ、化学製品・医療製品・食品・金属製品などあらゆる分野の業界で活躍しています。

遠心分離機の理解度をより深めるには、遠心力や遠心分離機に関する知識の習得が不可欠です。そこでまずは、遠心力の仕組みと遠心分離機の動作過程について詳しく紹介します。

1-1. 遠心力とは?

遠心力とは、回転する物体・物質に作用する慣性力の1つです。回転中心部から外側に向かって放射状にはたらく力を指し、円運動のスピードが速いほど遠心力も大きくなります。

例えば、水を入れたバケツを単純に横向きにしたり逆さまにしたりすると、中にある水は当然こぼれます。しかし、バケツの取っ手を掴んで勢いよく振り回したときは重力よりも強い遠心力がはたらき、バケツ内の水は外側、つまりバケツの底に押し付けられます。そのため、たとえバケツが逆さまになっても中の水はこぼれ落ちません。

なお、遠心力の大きさを加速度の形で表したものを「遠心加速度」と言います。遠心加速度は「G」と表記され、遠心分離機を利用する際には非常に重要な数値となります。
そして、遠心力を利用して混合物を分離させる技術・手法を「遠心分離」と言います。遠心分離機は遠心分離によって複数の物質を強制的に分離させられるため、自然分離が難しい物質にはもちろん、短時間で分離させたい物質がある場合にも用いられています。

1-2. 遠心分離機の動作過程

「遠心効果や遠心分離の原理は把握できたものの、遠心分離機は具体的にどのような過程で物質の分離を行うのか分かっていない」という方も多いでしょう。

濾材を使用して固体と液体・液体と液体を分離する「遠心濾過機」は、基本的に下記のような過程で動作します。

(1)起動・給液まずはバスケット内に濾布を装着し、ケーシングを閉じて起動します。設定された給液回転速度に回転数が達すると給液が開始されます。このとき、「スラリー」と呼ばれる分離前の混合液を給液パイプから送り込みます。
(2)脱液給液の開始後は、スラリーが濾過されるとともに分離された濾過液はバスケット外へ排出され、固形物(脱水ケーキ)はバスケット内に堆積されます。この脱液工程は、あらかじめ設定された時間で行われます。
(3)結晶洗浄・脱水・制動バスケット内の固形物を洗浄する必要がある場合は、脱液後に洗浄パイプからバスケット内に洗浄液が送り込まれ、ケーキ洗浄が行われます。注入された洗浄液は、最終的にバスケット外に排出されます。
(4)掻取ケーキ洗浄・脱水が終わったら、バスケットの回転速度を徐々に落とし、掻取工程に入ります。掻取工程では、掻取装置を起動してバスケットに付着した脱水ケーキに掻取刃を食い込ませて掻き落とし、機外へ排出させます。

また、濾過分離が困難な場合は、それぞれの物質の比重差を利用する「遠心沈降分離」という方法を用いることもあります。

2. 遠心分離機はどのような場面で使われる?

遠心分離機は幅広い業界・分野で活躍する装置ですが、中でも研究分野や工業分野では特に使われています。

ここからは、研究用遠心分離機と工業用遠心分離機がそれぞれどのような目的で使用されているのかを詳しく説明します。

2-1. 研究用遠心分離機

研究用遠心分離機(研究用遠心機)は、主にライフサイエンス系の研究室やプラント工場などに設置されており、小規模な処理テストや小ロット製品の研究・開発に用いられることが特徴です。「実験用遠心分離機(実験用遠心機)」や「理化学用遠心分離機(理化学用遠心機)」とも呼ばれています。

研究用遠心分離機の具体的な用途としては、液体中の細胞・ウイルスの特定や改修、さらにタンパク質やDNAなどの成分の精製などが挙げられます。

40,000rpm以上の超高速回転を行える「超遠心タイプ」や、卓上での遠心分離が可能な「小型タイプ」など、具体的な使用目的・シーンに応じたあらゆるタイプがあることも特徴です。

2-2. 工業用遠心分離機

工業用遠心分離機(工業用遠心機)は、化学製品や医薬品、食品、金属製品などの製造工程で活躍します。研究用遠心分離機に比べてスケールがやや大きく、大容量の処理テストに用いられることも特徴です。

また、工業用遠心分離機は主に「遠心沈降機」と「遠心濾過機」の2種類に大別されます。遠心沈降機とは、通常の遠心分離機と同様に遠心力を利用して物質を分離するもので、用途や産業に応じて円筒型・デカンタ型などさまざまな装置型式があります。

一方の遠心濾過機とは、布や金属フィルターなどの濾過材が回転体に取り付けられており、遠心力を用いて液体のみを分離させ沈降物である結晶が濾過器内に残ります。粘度の高い固体と液体を分離する際に適した種類と言えます。

3. 遠心分離機の種類

遠心分離機は、仕組みや構造によっていくつかの種類に分けられており、種類によって適切な使用目的も異なります。

最後に、「運転方法による遠心分離機の種類」と「排出方法の違いによる遠心分離機の種類」を分かりやすく説明します。自社に適した遠心分離機を導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

3-1. 運転方法による分類

遠心分離機の運転方法には、「バッチ式」と「連続式」の2つがあります。それぞれの概要とメリット・デメリットは、下記の通りです。

●バッチ式

バッチ式とは、一定量の物質を一度に処理する運転方法です。給液から分離・脱液・排出・洗浄・停止までの動作工程は1サイクルとしてみなし、「1バッチ目、2バッチ目…」とバッチごとに繰り返します。

洗濯機で例えると、衣類の投入後に洗剤を投入、洗いが終わってからすすぎの工程があり、脱水の工程、それが終わってから衣類を取り出します。2回目の洗濯を行うには再び衣類の投入の工程から始まります。

【バッチ式遠心分離機のメリット・デメリット】

メリット・分離時間を自由に調整できる
・連続式と比べて初期コストを抑えられる
デメリット・タンクや容器などの設備が増える
・連続投入・連続排出ができない

●連続式

連続式とは、大容量の物質を連続的に処理する運転方法です。給液から分離・脱液・排出・洗浄の一連の流れを連続して行います。

【連続式遠心分離機のメリット・デメリット】

メリット・大容量の物質処理にかかる時間や手間を軽減させられる
・連続投入・連続排出ができる
デメリット・分離時間が短く制限される
・処理条件を柔軟に調整できない

バッチ式と連続式の違いは、洗濯機に例えるとより分かりやすくなるでしょう。バッチ式は、衣類・洗剤を投入してボタンを押してから「洗浄→すすぎ→脱水」が終わらない限り衣類を取り出せない一般的な洗濯機と同様のイメージです。

一方の連続式は、洗濯機の上から衣類を入れ続けると下から洗濯後の衣類が出てきて、次々に取り出せるというイメージに近いでしょう。

3-2. 排出方法の違い

遠心分離機の排出方法には、主に「上部排出型」「底部排出型」「吸引式」の3つがあります。それぞれの概要とメリット・デメリットは、下記の通りです。

●上部排出型

上部排出型は、分離した固体をバスケット上部から人の手によって排出する方法です。3つの排出方法の中でも、最も構造がシンプルな点が特徴となっています。

【上部排出型のメリット・デメリット】

メリット・全量を回収でき、無駄の削減・生産効率の向上につながる
・機械内部の洗浄を簡単に行える
・初期コスト・メンテナンスコストを抑えられる
デメリット・排出に時間がかかる
・異物混入リスクがある

●底部排出型

底部排出型は、分離した固体をバスケット底部から掻取装置を用いて排出する方法です。

【底部排出型のメリット・デメリット】

メリット・工程の自動化(全自動運転)が可能で、オペレーターの負担軽減・作業効率の向上につながる
・大容量の物質を連続的に処理できる
デメリット  ・1階への設置が困難となる
・スラリーが給液中にしぶくことによって結晶排出口に液ダレが起こる可能性がある

●吸引式

吸引式は、掻取装置で掻き崩した固体を、機械内部に設置されたノズルから空気輸送で排出する方法です。

【吸引式のメリット・デメリット】

メリット・工程の自動化が可能となる
・1階にも設置できる
・異物混入リスクが低い
デメリット・多品種の生産には不向きとなる
・空気輸送装置を設置しなければならずコストがかかりやすい

このように、遠心分離機とひとくちに言っても、構造や機能性によって使い勝手も大きく異なります。自社に適した遠心分離機選びに失敗しないためには、遠心分離機を販売する店舗やメーカーに直接問い合わせて相談してみるのも一案です

まとめ

遠心分離機とは、遠心力を利用して物質の密度や比重の異なる固体と液体や、互いに溶け合わない液体と液体を分離させる装置です。

「研究用遠心分離機と工業用遠心分離機」「遠心沈降機」と「遠心濾過機」「バッチ式遠心分離機」と「連続式遠心分離機」など、構造や機能性によってさまざまな種類があるため、それぞれの特徴を踏まえて自社に適した遠心分離機を選ぶことが大切です。

アズサイエンス株式会社では、主要メーカーが製造する遠心分離機も豊富に取り扱っております。「どのような遠心分離機が自社に適しているか分からない」という方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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