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顕微鏡とは?原理や用途・種類および製品を選ぶポイントを解説

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顕微鏡は16世紀後半に開発されて以来、医療や生物学分野、精密機器の製造工程、教育現場など幅広い場所で使われてきました。主にレンズを使って試料を拡大する光学顕微鏡と、高電圧で加速した電子を物体に当てて微小な物体の形を観察する電子顕微鏡の2種類があります。

この記事では顕微鏡の原理や用途、種類について紹介するとともに、観察方法の違いや顕微鏡を選ぶポイントについても解説します。顕微鏡を自社で活用したい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 顕微鏡とは
1-1. 顕微鏡の原理
1-2. 顕微鏡の倍率

2. 顕微鏡の主な用途
2-1. 肉眼で見えない生物標本を観察する
2-2. 物体の形を拡大して観察する
2-3. 金属や合金などの表面を観察する
2-4. 超微細な物体を観察する

3. 顕微鏡による観察方法の違い

4. 顕微鏡を選ぶポイント

まとめ

1. 顕微鏡とは

顕微鏡とは、2枚のレンズを使用して物を拡大して観察できる装置です。16世紀後半、オランダの眼鏡職人であるヤンセン親子が2枚のレンズを合わせると物を拡大できることを発見したのをきっかけに、現在の形まで発展しました。両目で観察できる顕微鏡を複式顕微鏡、片目で観察する顕微鏡を単式顕微鏡と言います。

顕微鏡を使用すれば、人の目には見えない細胞や微生物まで拡大して観察することが可能です。現在、顕微鏡は研究開発や医療、教育現場など、さまざまなシーンで使用されています。

1-1. 顕微鏡の原理

代表的な顕微鏡として、光学顕微鏡と電子顕微鏡の2種類があります。

光学顕微鏡は、光を利用して対象物を拡大し観察します。観察する対象物の間近にある対物レンズと、目で覗き込む用の接眼レンズの2種類のレンズにより、対象物を拡大する仕組みです。照明や外光を試料にあてて透過することで観察が可能となります。

一方、電子顕微鏡は、高電圧で加速した電子を観察対象に当てることで試料の形を測定し、微小な物質を観察するものです。加速電圧を発生させる装置や真空構造など、特殊な装置・構造が必要となるため、精密かつ高価な顕微鏡となります。

理科の授業や製造業の工程で顕微鏡を使うときは、光学顕微鏡を使用するのが一般的です。電子顕微鏡は拡大できる倍率が非常に高く、研究開発や医療の現場で用いられることが多い傾向です。

1-2. 顕微鏡の倍率

顕微鏡の倍率は、対物レンズと接眼レンズの倍率を掛け合わせた総合倍率によって決められます。例えば、対物レンズの倍率が20倍、接眼レンズの倍率が10倍のとき、対象物は200倍に拡大されて観察できます。

肉眼で見えるものは低倍率で、目に見えない物質は高倍率で観察するのが一般的です。顕微鏡の倍率によって観察できる主なものを紹介します。

倍率観察可能なものの例
1倍肉眼で見えるもの
50倍電子基板
100倍プランクトン
200倍花粉
400倍細胞
800倍~1500倍染色体、細胞の内部構造
2000倍~数百万倍ウイルス、DNA、原子

対象物をしっかりと観察するには、対物レンズと接眼レンズそれぞれの倍率を確認し、適した総合倍率を得られるよう調整しましょう。

2. 顕微鏡の主な用途

物の詳細を観察するニーズは幅広く存在するため、医療現場や調査研究、教育機関など、さまざまな場面で適した顕微鏡が利用されています。顕微鏡の主な用途として、4つを紹介します。

2-1. 肉眼で見えない生物標本を観察する

顕微鏡は、肉眼で見えない生物標本を観察するのに適しています。中でも、生物顕微鏡は細胞や細菌、生体組織など、通常肉眼ではよく見えない対象物の観察に向いています。

生物顕微鏡は、培養容器やプレパラートに対象物を載せ、光で透過させて構造を観察する仕組みです。そのため、対象物は透明・半透明で光を通すものに限られます。

肉眼で見えない細胞や生体組織などの生物標本を正確に観察し、医療分野や生物学研究に活用する目的で使われます。

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2-2. 物体の形を拡大して観察する

物体の形を拡大して観察できるのも、顕微鏡の担う役割です。実体顕微鏡を使用すれば、物体を立体的に拡大して観察ができ、細部の形状を把握するのに役立ちます。

実体顕微鏡は複式顕微鏡を採用し、両目にそれぞれ角度の異なる像を写すことで、対象物を立体的に観察できるタイプの顕微鏡です。精密な電子部品や植物、食品など、主に製造業の現場で幅広い試料を観察するのに利用されます。

対象物を設置するステージから対物レンズまでの距離が遠いのも実態顕微鏡の特徴です。そのため、ステージに微小生物を載せたまま解剖作業をするなど、対象物を観察しながら作業ができる点は実体顕微鏡のメリットの1つとなります。

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2-3. 金属や合金などの表面を観察する

顕微鏡は、金属や合金などの表面に焦点を当てて観察する際にも使われます。金属や合金、半導体を観察するのに適しているのが金属顕微鏡です。

金属顕微鏡は、光を透過させない対象物の観察に用いられます。金属以外にも、ゴムや樹脂、石などを観察することも可能です。レンズ側に照明が付いているのが特徴で、対象物を透過させず光が反射した像から観察します。

対象物の構造を観察するだけでなく、研磨などの加工処理や測定を実施するための技術的な別機能を兼ね備える金属顕微鏡が多いものです。品質管理や化学研究・分析の現場において活躍する顕微鏡です。

2-4. 超微細な物体を観察する

目に直接見えない超微細な物体を観察できるのも、顕微鏡の大きな特徴です。電子顕微鏡なら、細胞やウイルスなどを拡大して観察できます。

電子顕微鏡は、ガラスレンズではなく電子レンズを使用することで、超微細な対象物の観察が可能です。製品によって拡大できる倍率は異なるものの、最大約100万倍まで拡大可能な電子顕微鏡が存在します。

電子顕微鏡は、医療検査や生物学研究、工業分野など、幅広い分野で活用され成果をあげています。ただし、特殊な構造や機能性から、使用方法が難解であったり高価格であったりと、導入には慎重な判断が必要です。

3. 顕微鏡による観察方法の違い

顕微鏡の種類によって観察できるものが異なるように、対象物に合った観察方法を選択することも大切です。顕微鏡に用いられる、主な観察方法の種類と特徴は下記のとおりです。

観察方法特徴向いている対象物の例
明視野観察法生物顕微鏡の中でスタンダードな観察方法です。対象物を光で照らして観察します。植物、細胞
暗視野観察法暗い視野の中で対象物に光を当て、散乱した光から観察する方法です。細胞、微生物
位相差観察法位相と呼ばれる光のずれを利用して、明暗のコントラストから対象物を観察します。血液などの生きた細胞
微分干渉観察法無色透明の対象物に光を当てて、光の進みかたの違いを明暗のコントラストに表現し観察する方法です。筋肉や神経などの生きた細胞

上記以外にも、変調コントラスト観察法や蛍光観察法、反射照明観察法などが存在します。通常顕微鏡には、想定される観察対象に応じて複数の観察方法を可能にする機能が搭載されています。

4. 顕微鏡を選ぶポイント

顕微鏡は種類豊富なため、購入を検討する際にどれを選んでよいか迷う人も珍しくありません。目的に合った顕微鏡を選ぶポイントを紹介します。

・顕微鏡の倍率やズーム範囲、視野数
一般的に倍率が高いほど、顕微鏡は高機能かつ高価格になります。細胞などの物質を観察したいときは高倍率の電子顕微鏡が必要となるものの、植物や鉱物などの観察には電子顕微鏡ほどの倍率は必要ありません。また、ズーム倍率を調整するシーンが多い場合、低倍率から高倍率までスムーズに調整できる顕微鏡を、広範囲を観察するシーンが多い場合、レンズの視野数が大きい顕微鏡を選びましょう。

・顕微鏡の操作性
複数のオペレーターが顕微鏡を使って作業する場合、高さや角度の調整がしやすい顕微鏡を選びましょう。また、作動距離(対物レンズ先端から試料面までの距離)が広いほど試料を取り扱いやすくなります。

・照明の有無・照度
対物レンズ付近やステージ下に、LEDランプのついた顕微鏡が主流なものの、搭載されていないものであれば外光を取り込む必要があります。使用場所によっては光源の確保が難しい場合もあるため、顕微鏡を選ぶ際には使用場所も想定しておきましょう。

まとめ

顕微鏡を選ぶときには、試料に合った倍率のものを選びましょう。倍率は対物レンズと接眼レンズの倍率を掛け合わせて決まります。また、用途に応じた顕微鏡の選び方も重要です。例えば、生物顕微鏡は細胞や細菌などの生物標本の観察に適しており、実体顕微鏡は主に製造業における微細製品のチェックに適しています。

加えて、倍率やズーム範囲、視野数、操作性、照明の有無といったポイントも考慮する必要があります。特に操作性は作業する人間が確認してこそ判断できる部分であり、生産性にも影響するため、実際に触れた上で扱いやすいものを選ぶのが大切です。

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