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LC-MS・LC-MS/MSとは?用途・原理・仕様などの基礎を解説

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LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析法)とLC-MS/MS(液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法)は、現代の化学分析の重要な手法として広く利用されています。これらの技術は、製薬、食品、環境分析など多岐にわたる分野で応用され、非常に高い精度で化合物の分離と分析を行うことが可能です。

当記事では、LC-MSとLC-MS/MSの基本的な原理、用途、仕様について詳しく解説します。これらの手法の理解を深め、分析技術の選定や応用に役立ててください。

目次

1. LC-MS・LC-MS/MSとは
1-1. LC-MSの基礎
1-2. LC-MS/MSの基礎

2. LC-MS・LC-MS/MSの原理
2-1. LC-MSの原理
2-2. LC-MS/MSの原理

3. LC-MS・LC-MS/MSの用途
3-1. 環境分析
3-2. 医薬品分析
3-3. 食品分析

4. LC-MS・LC-MS/MSの仕様
4-1. 基本的な仕様
4-2. 使用時の注意点

まとめ

1. LC-MS・LC-MS/MSとは

LC-MSやLC-MS/MSは、製薬や食品、環境といった幅広い分野の化学分析に使われる分析方法です。ここでは、両者の基礎的な特徴を解説し、それぞれの分析技術について概要をつかむための参考にしてください。

1-1. LC-MSの基礎

LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析法)は、化学分析の分野で広く使用される手法です。液体クロマトグラフィー(LC)と質量分析(MS)を組み合わせています。

高速液体クロマトグラフ法(HPLC)の1つに分類されるLC-MSは、複雑な混合物を分離し、質量分析計で検出・識別します。物質の分子量や構造を解析するのに優れているのが特徴です。LC-MS装置は、ポンプ部・試料導入部・分離部・データ処理部・記録部に加え、MS部と呼ばれる検出器から構成されます。

LC-MSは、幅広い分析に普及しつつあり、医薬品開発や環境分析、食品安全などの分野で重要な役割を果たしています。

1-2. LC-MS/MSの基礎

LC-MS/MS(液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法)は、LC-MSの進化版です。LC-MSは質量分離部が1つであり、イオン化された物質がそのまま検出されます。

一方、LC-MS/MSでは、質量分析計を連結させて二段階で使用します。1つのイオンを選択的に検出するだけではなく、イオンをさらに分解して分析可能です。LC-MS/MSは、LC-MSよりも詳細な分子情報を取得できるほか、複雑な混合物の精密解析にも適しています。

LC-MS/MS装置の構成は、LC-MSとほとんど同様です。ただし、LC-MS/MS装置はMS部を連結させて分析を行います。特に、医薬品代謝物の分析や生体サンプル中の微量成分の検出において強力なツールです。

2. LC-MS・LC-MS/MSの原理

LC-MSやLC-MS/MSは、液体に溶解してイオン化する化合物については、ほとんどのケースで測定できる高度な分析技術です。それぞれの分析原理を解説するため、具体的な仕組みについての理解を深める参考にしてください。

2-1. LC-MSの原理

LC-MSでは、最初に液体クロマトグラフィーでサンプルを分離した後、質量分析計でイオン化された分子を検出します。サンプルは、液体クロマトグラフィーを通過する際に異なる化合物に分離されます。分離された化合物が質量分析計に導入され、イオン化される仕組みです。

LC-MSには、高極性・高分子量の物質に適した、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)や大気圧化学イオン化法(APCI)などのイオン化モードが用いられます。

MS部にあたる質量分析計には、四重極型・イオントラップ型といったさまざまな種類があります。四重極型の質量分析計は、イオン質量対電荷比(m/z)の測定によって、化合物の同定と定量を行うのが特徴です。

イオンには、直流電圧と交流電圧を印可すると、m/zの値ごとに固有の軌道を描く性質があります。目的のm/zを持つ特定イオンのみを通過させ、検出器に到達したイオンの量を信号化してパソコンに取り込むシステムです。

2-2. LC-MS/MSの原理

LC-MS/MSでは、まず初段の質量分析計で特定のイオンを選択します。さらに、選択した特定イオンをコリジョンセルで衝突分解し、生成したフラグメントイオンを二段の質量分析計で解析します。LC-MSとは異なり、2台の質量分析計を直列に接続して分析を行うのが特徴です。

このような複数のプロセスによって分子構造の詳細な情報を取得することで、より高精度な分析が実現できます。妨害成分の影響で目的化合物が検出できない場合でも、高度な分析が可能です。

3. LC-MS・LC-MS/MSの用途

適当な液体に溶解さえすれば、幅広い試料を分析できるLC-MS・LC-MS/MSは、さまざまな用途に活用可能です。具体的な用途として、環境分析と医薬品分析、食品分析を紹介します。

3-1. 環境分析

LC-MS・LC-MS/MSは、環境分析の分野で重要な役割を担う分析手法です。特に、水質分析や土壌分析などにおいて、有害物質の検出と定量に使用されます。

また、LC-MS・LC-MS/MSは有害物質の分析に加え、環境中のPPCP(医薬品および個人ケア製品)の分析にも欠かせません。環境分析の分野において、環境汚染の監視と対策に貢献しています。

3-2. 医薬品分析

高精度の分析機能が求められる、医薬品の開発と品質管理の分野においても、LC-MS・LC-MS/MS装置は不可欠なツールです。例えば、薬物の代謝経路の解析や、薬物中の微量不純物の検出などに使用されます。

医薬品の製造過程で純度試験にクリアできなかった場合は、比較的低濃度で不純物を特定する必要があり、感度と選択性に優れたLC-MS・LC-MS/MSが欠かせません。高精度の分析能力によって、薬品の安全性を守るために重要な役割を果たしています。さらに、LC-MS・LC-MS/MSは、バイオマーカーの研究や臨床検査にも広く使われています。

3-3. 食品分析

消費者の口に入る食品の安全性と品質管理においても、LC-MS・LC-MS/MSは重要です。残留農薬や添加物量などを厳しくチェックします。

農薬や食品添加物の残留分析だけではなく、栄養積分の定量分析といった幅広い食品分析に活用されているのが特徴です。LC-MS・LC-MS/MSは、高い分析機能によって、消費者の安全と健康を守るための重要なデータの提供に貢献しています。

4. LC-MS・LC-MS/MSの仕様

LC-MSとLC-MS/MSの仕様について紹介します。また、実際に装置を使用するときには、気をつけたい注意点も存在します。具体的な装置を選ぶため、また正確な分析結果を得るための参考として役立ててください。

4-1. 基本的な仕様

LC-MSとLC-MS/MSの基本的な仕様には、検出器の感度、質量範囲、分解能などが含まれます。加えて、測定可能な試料形態・測定必要量・波長範囲・波長精度も、LC-MSとLC-MS/MSの仕様を決定する要素として挙げられます。このような仕様は、分析目的や分析対象に応じて選定されるのが一般的です。

例えば、LC-MS装置やLC-MS/MS装置における検出器の感度が高いほど、微量成分が容易に検出できます。また、質量範囲は分析対象とする化合物の質量に依存し、分析能は近接するイオンを区別する能力を示します。

4-2. 使用時の注意点

LC-MS・LC-MS/MS装置を使用した分析を行う際には、サンプルの前処理や機器のメンテナンスが欠かせません。適切な前処理と定期的なメンテナンスが、安定した高精度の分析結果獲得につながるためです。

サンプルの前処理方法には、ろ過・濃縮・クリーンアップなどがあります。これにより、分析対象成分の純度と濃度を高めます。

まとめ

LC-MSとLC-MS/MSは、現代の化学分析において非常に重要な技術です。それぞれの手法は、環境分析や医薬品分析、食品分析など、多岐にわたる分野で幅広く活用されています。特に、LC-MS/MSはLC-MSに比べてより詳細な分子情報を取得でき、複雑な混合物の解析に非常に有用です。

正確な分析結果を得るためには、適切な装置の選定と前処理、メンテナンスが欠かせません。これらの基礎を理解し、実際の分析に役立てれば、より高精度な結果を得ることが可能となります。

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