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高速液体クロマトグラフとは?HPLCの基礎や用途・使用目的を解説

クロマトグラフとは、化学・物理的な性質や相互作用を利用して物質を分離する技術であるクロマトグラフィー法を用いた分析機器のことです。食品や医療、科学といったさまざまな産業分野で頻繁に用いられています。

クロマトグラフと一口にいっても、固定相と移動相の種類や分離に用いる相互作用・器具の形状によっていくつかの種類に分けられます。数あるクロマトグラフの種類の中でも、幅広い用途で使われるのが「高速液体クロマトグラフ(HPLC)」です。

当記事では、高速液体クロマトグラフの基礎知識や高速液体クロマトグラフによる分離手法の種類、さらに高速液体クロマトグラフにおける定性・定量について詳しく説明します。

目次

1. 高速液体クロマトグラフとは?HPLCの基礎知識
1-1. 高速液体クロマトグラフで分析できるもの
1-2. 高速液体クロマトグラフの原理

2. 高速液体クロマトグラフによる分離手法の種類
2-1. 逆相クロマトグラフィー
2-2. 順相クロマトグラフィー
2-3. ゲル浸透クロマトグラフィー

3. 高速液体クロマトグラフにおける定性・定量とは?

まとめ

1. 高速液体クロマトグラフとは?HPLCの基礎知識

高速液体クロマトグラフとは、送液ポンプや自動圧力調整弁などを用いて液体の移動相を加圧しカラムを通過させ、固定相・移動相との相互作用を利用して液体の混合物から成分(分析種)を分離・検出する分析装置です。

高速液体クロマトグラフは英語で「High Performance Liquid Chromatograph」と表記し、その頭文字を取って「HPLC」と略称されるほか、日本語では「液クロ」と呼ぶこともあります。

そもそも「クロマトグラフ」とは、化学・物理的な性質や相互作用による影響を利用した物質の分離手法である「クロマトグラフィー」を用いた分析機器のことです。なお、クロマトグラフ・クロマトグラフィーによる測定結果は「クロマトグラフ」と呼びます。

高速液体クロマトグラフィーは、定性・定量の2つを行う際に利用する分析手法の中で最もポピュラーな方法といわれています。

1-1. 高速液体クロマトグラフで分析できるもの

高速液体クロマトグラフは、液体中に溶解している成分を分離して定性・定量分析できます。対象となる分析種は、低分子から高分子、さらにイオン性・非イオン性まで多種多様で、医薬品から食品、工業製品、環境水などの幅広い産業分野で用途があります。

分野ごとの主な対象化合物群の例は、下記の通りとなっています。

医療・製薬原薬・低分子医薬品・核酸・ペプチド・糖たんぱく質・脂質 など
飲食料糖類・ビタミン・抗生物質・残留農薬・食品添加物・トランス脂肪酸 など
化学・工業原料・化成品・合成物・反応生成物 など
環境・水・土壌農薬・除草剤・無機酸・有機酸・有機フッ素化合物 など

1-2. 高速液体クロマトグラフの原理

高速液体クロマトグラフィーは、液体または液化した物質サンプルをカラムに注入し、注入された複数の試料成分がカラム内を通過する際の通過速度を利用して成分を分離するというのが原理となっています。

基本的に、カラム内は「試料成分」「固定相」「移動相」の3つの要素があります。

試料成分分析対象の液体中に溶解している成分
移動相ポンプで送液される液体
固定相カラム内に充填されている球状粒子に化学修飾された官能基

カラムに注入されたサンプル中の複数の試料成分は、カラム内を通過する際に固定相と移動相に対する相互作用の違いによって、通過速度の差が生じます。

試料成分と移動相の相互作用が強ければ通過速度が上がり、早い段階でカラムから出てきます。反対に、試料成分と固定相の相互作用が強ければ通過速度は下がり、比較的ゆっくりと出てくることが特徴です。

2. 高速液体クロマトグラフによる分離手法の種類

高速液体クロマトグラフは、送液ポンプや試料注入装置、カラム、検出器、データ処理器といった装置で構成されており、用途に応じて3つの分離モードを選択できます。

ここからは、高速液体クロマトグラフにおける「逆相クロマトグラフィー」「順相クロマトグラフィー」「ゲル浸透クロマトグラフィー」の3つの分離モードについて、それぞれ詳しく説明します。

2-1. 逆相クロマトグラフィー

逆相クロマトグラフィーとは、低極性のカラムに高極性の溶媒を流すことによって、炭素鎖の短い成分から炭素鎖の長い成分までを溶出させる分離手法です。高速液体クロマトグラフにおける3つの分離モードの中でも、最も頻繁に用いられます。

逆相クロマトグラフィーの場合、固定相には「ODSカラム」など低極性の充填剤を使用します。移動相には溶出力の強い溶媒としてメタノールやアセトニトリルを、溶出力の弱い溶媒として水を用いることが基本です。

固定相低極性の充填剤(ODS)
移動相メタノール・アセトニトリル・水
相互作用疎水性

2-2. 順相クロマトグラフィー

順相クロマトグラフィーとは、高極性のカラムに低極性の溶媒を流し、低極性成分から高極性成分までを溶出させる分離手法です。逆相クロマトグラフィーをサンプルの「疎水性の差」に応じた分離手法とするなら、順相クロマトグラフィーはサンプルの「親水性の差」に応じた分離手法といえます。

順相クロマトグラフィーの場合、固定相にはシリカゲルをはじめとした高極性の充填剤を仕様します。移動相には溶出力の強い溶媒としてクロロホルムや酢酸エチルを、溶出力の弱い溶媒としてヘキサンを用いることが基本です。

逆相クロマトグラフィーと違って用途が限定されているものの、ほかの分離モードとは異なる特性をもつことから使用目的によっては非常に有用となります。

固定相高極性の充填剤(シリカゲル)
移動相有機溶媒(クロロホルム・酢酸エチル・ヘキサン)
相互作用親水性・吸着

2-3. ゲル浸透クロマトグラフィー

ゲル浸透クロマトグラフィーとは、合成高分子物質の分子量および分子量分布を測定する分離手法です。英語では「Gel Permeation Chromatography」と表記し、頭文字をとって「GPC」と略称します。クロマトグラフによっては、「ゲルろ過クロマトグラフィー」とあわせて「サイズ排除クロマトグラフィー」とも総称されます。

ゲル浸透クロマトグラフィーの場合、固定相にはサンプル分子のサイズに適した「物質がシートを通過できるポアサイズのカラム」を、移動相にはサンプルを適切に溶解する非水系の有機溶媒を使用します。

一般的に化学工業分野におけるポリマー分析に導入されており、3つの分離モードの中では最も用途が限定されています。

固定相サンプル分子のサイズに適したポアサイズのカラム(ポリマー)
移動相非水系の有機溶媒
相互作用ゲル浸透

3. 高速液体クロマトグラフにおける定性・定量とは?

高速液体クロマトグラフィーでは、クロマトグラムに示されたピーク時間と面積値によって分析種の定性・定量を行います。しかし、定性・定量が具体的に何を指すのかが分からないという方もいるでしょう。

定性とは、「分析種のピーク時間」を指します。したがって、定性分析では「各成分がどのような化合物なのか」を把握することが可能です。例えば、標準試料のアスパルテームと清涼飲料水を試料として同条件で測定するケースにおいて、清涼飲料水のクロマトグラムに「標準試料と同じタイミングで溶出した一定のピーク」があった場合、そのピークはアスパルテームによる検出器の応答だと判断できます。

そして定量とは、「分析種のピークの大きさ」、いわゆる面積値や積分値を指します。ピークの大きさは成分濃度に比例するため、定量分析を行うことによって「各成分がどれくらいの質量・濃度なのか」を把握できます。

分析種の分析実施前には標準溶液を複数測定し、「試料濃度」と「定性分析によって得られたピーク」にもとづいて検量線を作成します。定量分析では、作成した検量線にもとづいて試料中の存在量を算出し、定量を行うことが基本です。

まとめ

高速液体クロマトグラフとは、固定相・移動相との相互作用を利用して液体の混合物から「分析種」と呼ばれる各成分を分離・検出する分析装置です。定性・定量を行う際に利用する分析手法の中では最もポピュラーな方法とされており、「HPLC」や「液クロ」とも呼ばれています。

医薬品から食品、工業製品、環境水などの幅広い産業分野で用途があり、使用目的に応じて「逆相クロマトグラフィー」「順相クロマトグラフィー」「ゲル浸透クロマトグラフィー」の3つの分離モードを利用できます。

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