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紫外可視分光光度計とは?基礎知識や構成・分析できる光の種類を解説
光の波長を操作し、物質が吸収または透過する特性を詳細に調査する紫外可視分光光度計は、現代の科学技術において不可欠な装置の1つです。化学反応の監視や医薬品の品質評価、生物学的検査など、さまざまな目的で活用されています。優れた性能と柔軟性は科学研究や産業の進展に貢献しており、今後の技術革新と組み合わせることでさらなる発展が期待される装置です。
当記事では、紫外可視分光光度計とは何か、分光の意味や使用目的・用途、紫外可視分光光度計の構成、測定できる光について解説します。
目次 1. 紫外可視分光光度計の基礎 1-1. 紫外可視分光光度計とは 1-2. 分光とは 1-3. 紫外可視分光光度計の使用目的と用途 1-4. 紫外可視分光光度計の基本原理 2. 紫外可視分光光度計の構成 2-1. 光源 2-2. モノクロメータ 2-3. サンプル室 2-4. 検出器 3. 紫外可視分光光度計で測定できる光 3-1. 透過光 3-2. 反射光 まとめ |
1. 紫外可視分光光度計の基礎
紫外可視分光光度計を使うと、溶液の濃度や物質の特徴、分子の構造が分かります。工業製品や市販品の性能評価にも広く活用されている装置です。例えば、日焼け止めクリームの効果も調べることができ、時間やコストの削減に貢献しています。
以下では、紫外可視分光光度計の概要や使用目的などについて詳しく解説します。
1-1. 紫外可視分光光度計とは
紫外可視分光光度計とは、光を用いて溶液や固体の定量分析や特性評価を行う装置です。溶液や固体の試料を装置の中に入れて光を照射し、試料に照射した光量と、試料を透過したり反射したりした光量との関係性から透過率や吸光度、反射率などを導き出します。
光には、異なる波長(nm・ナノメートル)の領域があります。目に見える可視領域や目に見えない紫外領域・真空紫外領域・近赤外領域などです。紫外可視分光光度計による試料の分析に必要となる波長は、約400~800nmの可視領域と約200~400nmの紫外領域です。
1-2. 分光とは
分光とは、光を波長ごとに分けることを意味します。たとえば虹を例に考えてみましょう。青や黄色、赤など異なる色から成る虹は、太陽光が分光されてできる現象です。太陽光が大気中の水滴を通過する際に屈折して分光が起こり、波長ごとに分かれて虹が出現します。
プリズムで起こる現象も分光です。光は波長ごとに屈折率が異なり、波長が短いと屈折率は大きく、波長が長いと屈折率は小さくなります。このため、光がプリズムを通過する際に、波長ごとにさまざまな色に分光されます。
紫外可視分光光度計で分光を行う部位は回折格子です。回折格子で分光された単色光が試料に入射するよう設計されています。
1-3. 紫外可視分光光度計の使用目的と用途
紫外可視分光光度計は、環境・食品・工業・生化学など多様な分野で測定や分析に使用されています。それぞれの分野における使用目的などを簡潔に説明します。
環境分野における主な使用目的は水質分析です。飲料水や排水に含まれる窒素やリンといった成分を測定し、水質分析を行います。食品分野では、着色剤や保存料、酸化防止剤などを分析し、安全性の確保に貢献しています。
工業分野においては、紫外可視分光光度計を用いて製品が含有する六価クロムなどを定量分析することが可能です。生化学分野では核酸の濃度や純度の検査、UV法によるタンパク質の分析などに用いられています。
1-4. 紫外可視分光光度計の基本原理
紫外可視分光光度計の基本原理について説明します。
個々の溶液や固体には異なる電子が含まれており、各電子の光に対する反応も異なります。
電子によって、透過したり反射したりする光量や波長の領域は千差万別です。紫外可視分光光度計は、溶液や固体の電子と光の関係性を生かし、物質の特性や濃度などを測定します。
測定では、光源から発した光をプリズムや分光器で分光し、溶液や固体の試料に入射します。
光源を切り替えて異なる波長を連続的に試料に入射し、最も透過または吸収した波長を探り、試料の状態や濃度などを明らかにするという仕組みです。
2. 紫外可視分光光度計の構成
紫外可視分光光度計は基本的に、光源部・分光部・試料部・測光部・記録部で構成されています。以下では、さらに詳しい構成として、「光源」「モノクロメータ」「サンプル室」「検出器」の4つについて解説します。
2-1. 光源
光源とは、試料に照射する光を発する部位です。光源にはいくつかの種類があり、波長も異なります。
波長 | 測定に適した領域 | |
重水素ランプ | 185~400nm | 紫外領域 |
ハロゲンランプ | 350~3000nm | 可視・近赤外領域 |
キセノンフラッシュランプ | 185~2000nm | 紫外領域~近赤外領域 |
従来、紫外領域には重水素放電管を、可視領域にはハロゲンランプを用いることが一般的でした。
近年は、2つの領域に対応し、寿命も長いキセノンフラッシュランプなどを光源に用いた装置も増えています。
2-2. モノクロメータ
モノクロメータとは、光源から発せられた光を単色光にする分光器です。単色光にするには光学素子の回折格子を用います。回折格子の表面にはギザギザの刻線が等間隔で並んでおり、それぞれの刻線に反射した光が回折して分光を起こすという仕組みです。
モノクロメータにはシングルモノクロ方式とダブルモノクロ方式があります。用いる分光器が1つか、2つかの違いです。
シングルモノクロ方式は散乱性がある試料など、ダブルモノクロ方式は吸光度が高い試料など、測定に適した試料はそれぞれ異なります。
2-3. サンプル室
サンプル室とは、試料を置く部位です。サンプル室は、シングルビーム(単光束)方式と、ダブルビーム(複光束)方式の2方式に大別できます。シングルビーム方式では、分光された単色光が1つの試料のみに入射されます。安価で、定量測定に適した方式です。
ダブルビーム方式では、単色光を分岐させて測定の対象となる試料と参照試料の2つに入射させることが可能です。参照試料の入射結果は光源の補正に利用します。長時間の測定を安定して行えるという点は、ダブルビーム方式のメリットです。
2-4. 検出器
検出器とは、試料を通過した光が入る部位です。光のエネルギーを検出器の受光面が受け、電流や電圧に変換します。感度や波長によって異なる検出器があります。
感度 | 特徴 | |
光電子増倍管(PMT) | 185~900nm | 感度が高く、吸光度の高い試料などの測定に適している |
シリコンフォトダイオード | 190~1100nm | 幅広い波長に対応し、ノイズが低く、比較的安価 |
感度の違いや価格から、光電子倍増管はハイクラスの機器に、シリコンフォトダイオードはミドルクラス以下の機器に利用される傾向です。
3. 紫外可視分光光度計で測定できる光
紫外可視分光光度計は、紫外領域から可視領域の単色光を試料に照射することで、透過もしくは反射した光量を測定できます。以下では、測定できる光の種類について解説します。
3-1. 透過光
透過光とは、試料を通過している間に吸収されず、検出器に到達する光です。試料を直進して通過する光は直接透過光、試料を通過した後にさまざまな方向に進む光は拡散透過光などと呼ばれています。
直接透過光と拡散透過光をまとめて全透過光と呼びます。
透過光と試料に入射した光量から算出するのが透過率です。透過率は、試料の吸光度を導き出す数値としても用いられます。試料の濃度と吸光度は比例関係にあり、試料の濃度が小さいほど透過率は高くなります。
3-2. 反射光
反射光とは、試料の表面で反射する光です。主に固体の測定に用います。入射角度と反射角度が同じ光を正反射光、試料の表面でさまざまな方向に反射する光を拡散反射光などと呼びます。正反射光と拡散反射光を合わせた光が全反射光です。
正反射光と拡散反射光にはそれぞれ絶対鏡面反射光と相対鏡面反射光があり、測定の目的や用途に応じて反射光の種類を選んで測定できます。ただし、装置によっては、すべての反射光を測定できない場合もあります。
まとめ
紫外可視分光光度計は、光学的な原理を駆使して物質の性質を高い精度で評価するための装置です。
環境、食品、工業、生化学など多岐にわたる分野で重要な役割を果たしています。
紫外可視分光光度計は、光源部・分光部・試料部・測光部・記録部で構成されているのが特徴です。
測定できる光は主に透過光と反射光で、透過もしくは反射した光量を測定できます。紫外可視分光光度計は、今後の技術の進化によりさらなる高度な分析や新たな応用領域の開拓が期待されている装置と言えるでしょう。
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