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細胞凍結/融解とは|具体的な手順・必要なもの・研究機器を紹介

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細胞の凍結保存と融解は、生物学研究や医療研究に不可欠な技術です。細胞の凍結保存とは、生きた細胞や生物学的材料を極低温下で長期間保存し、生存能力を維持するための手法です。

細胞株の維持、初代細胞の保存、実験の再現性向上などに重要であり、医学分野では細胞療法や再生医療、臓器移植、生殖医療など幅広く活用されています。

この記事では、細胞凍結と融解の手順、必要な材料や機器について、詳しく解説します。

目次

1. 細胞凍結/融解とは
1-1. 細胞凍結とは
1-2. 細胞融解とは

2. 細胞凍結の方法
2-1. ガイドライン・手順
2-2. 必要なもの

3. 細胞融解の方法
3-1. ガイドライン・手順
3-2. 必要なもの

4. 細胞凍結/融解に役立つ研究機器
4-1. ThawSTAR CB 凍結細胞融解ステーション(凍結バッグ用)
4-2. ThawSTAR(ソースター) 凍結細胞融解ステーション Model CFT2 / CFT1.5

まとめ

1. 細胞凍結/融解とは

細胞凍結の主な目的は、汚染や遺伝的変化、老化による細胞の損失を防ぎ、必要な時にいつでも利用できる状態で細胞を保存することです。大量の細胞を保存できるため、継続的な培養の手間を省くとともに、細胞ベースの研究における信頼性の維持にも貢献します。

1-1. 細胞凍結とは

細胞凍結とは、生物学や医学において、細胞を極低温下で保存するプロセスを指します。細胞を一時的に凍結させ、必要な時に融解して使用することが目的です。

適切な冷却速度を確保し、細胞を効果的に凍結・保存するために、液体窒素タンク、-80℃冷凍庫、プログラムフリーザーなどの装置や容器が用いられます。

凍結時には、細胞内の水分が氷結する際に氷晶が形成されます。この氷晶による損傷を防ぐため、通常はDMSO(ジメチルスルホキシド)やグリセロールなどの凍結保護剤を添加しなければなりません。さらに、約-1℃/分の冷却速度で凍結保存を行います。

1-2. 細胞融解とは

細胞融解とは、凍結保存された細胞を再び活性化させるプロセスです。一般的には、凍結保存された細胞を、37℃のウォーターバスで急速に温めます。迅速な融解は、細胞内に有害な氷晶が再形成されるのを防ぎ、細胞の生存率を高めるために重要です。

融解後、細胞は培養培地に移され、適切な条件下で培養を再開します。細胞の種類やプロトコルによっては、遠心分離による凍結保護剤の除去など、追加の工程が必要となります。

2. 細胞凍結の方法

細胞凍結を成功させるポイントは、健康で生存率が90%以上の細胞を使用することです。また、マイコプラズマなどによる汚染チェックを事前に行うことも推奨されます。汚染があるまま凍結すると、再融解後の実験結果や細胞の性質に大きく影響を及ぼす可能性があります。

特に、細胞は対数増殖期に回収するのが理想的です。この時期の細胞は代謝が活発で損傷に強く、凍結後の生存率や増殖能力が高くなります。

2-1. ガイドライン・手順

細胞凍結をする際の一般的なガイドラインと手順は以下の通りです。

培養培地の準備
細胞が培養されている培地を準備します。

細胞の取得
凍結保存する細胞を培養容器から回収します。接着細胞の場合は、トリプシンなどの解離試薬を使用してください。浮遊細胞の場合は、遠心分離で集めます。

細胞数の測定
血球計算盤や自動細胞カウンターなどを用いて、細胞数と生存率を測定します。生存率が90%以上であることを確認します。

凍結培地の準備
細胞種に適した凍結培地を用意します。一般的には、培養培地にDMSOなどの凍結保護剤を加えたものを使用します。市販の凍結培地も利用可能です。

細胞懸濁液の調製
冷却済みの凍結培地で細胞を懸濁し、細胞濃度を1×10⁶~5×10⁶細胞/mLに調整します。

クライオバイアルに分注
細胞懸濁液を滅菌済みのクライオバイアルに分注します。ラベルに「細胞株名/継代数/凍結日」などを明記します。

緩慢凍結
細胞を緩やかな速度で凍結します。具体的には、プログラムフリーザーか、-80℃の凍結容器で一晩冷却します。

液体窒素での保存
凍結したクライオバイアルを液体窒素タンクに移し、長期保存します。通常は気相での保存が推奨されます。

2-2. 必要なもの

細胞凍結に必要な主な材料と機器は以下の通りです。

・培養容器(対数増殖期の細胞を含む)
・完全増殖培地
・解離試薬(接着細胞用/例:トリプシン-EDTA)
・バランス塩溶液(D-PBSなど)
・滅菌済み遠心チューブ(15mLまたは50mL)
・血球計算盤または自動細胞カウンター
・トリパンブルー溶液(細胞生存率測定用)
・凍結培地(DMSO、グリセロール、または市販の凍結培地)
・滅菌済みクライオバイアル
・制御速度凍結装置(プログラムフリーザー)またはイソプロパノール凍結コンテナ
・液体窒素保存容器
・液体窒素対応ラベルとマーカー
・70%エタノール(消毒用)
・個人用保護具(低温用手袋、保護メガネ、実験衣など)

3. 細胞融解の方法

細胞融解は「迅速に」「適切な温度で」行うことが重要です。37℃のウォーターバスで約1分以内に融解します。融解が遅いと氷晶再形成を招き、細胞死につながります。

また、凍結保護剤は速やかに希釈・除去しないと毒性を示すため注意が必要です。

3-1. ガイドライン・手順

細胞融解をする際の一般的なガイドラインと手順は以下の通りです。

準備
適切な細胞培養培地を37℃に温めておき、培養フラスコや遠心チューブなど必要な器具を準備します。

凍結バイアルの取り出し
液体窒素タンクからクライオバイアルを迅速に取り出します。低温用手袋・保護メガネなどの個人用保護具を着用します。

急速融解
クライオバイアルを37℃のウォーターバスに浸し、穏やかに揺らしながら急速に融解します。通常1分以内、わずかに氷が残る程度で完了です。バイアルのキャップが水没しないように注意します。

バイアルの消毒
融解後、バイアルを層流フード内に移し、外側を70%エタノールで拭いて消毒します。

細胞懸濁液の希釈
滅菌済みのピペットを用いて、融解した細胞懸濁液を、あらかじめ温めておいた培養培地が入った遠心チューブにゆっくりと滴下しながら移します。培地の量は細胞懸濁液の少なくとも10倍を目安とします。

遠心分離(必要に応じて)
凍結保護剤(DMSOなど)除去のために、細胞の種類に応じて遠心します(約200×gで5~10分)。接着細胞の場合は遠心せずにそのまま培養し、翌日に培地を交換して除去することも可能です。

細胞の播種
遠心分離を行った場合は、上清を捨て、ペレットを新しい培養培地に再懸濁し、培養容器へ播種します。遠心分離を行わなかった場合は、希釈したまま直接培養容器へ播種します。

培養
細胞を適切な培養条件下でインキュベートします。

観察と培地交換
24時間後を目安に顕微鏡で細胞の状態を観察し、必要に応じて培地を交換します。

3-2. 必要なもの

細胞融解に必要な主な材料と機器は以下の通りです。

・凍結細胞が入ったクライオバイアル
・37℃に予熱した完全増殖培地
・滅菌済み遠心チューブ
・37℃のウォーターバス
・70%エタノール
・組織培養処理済みフラスコ、プレート、またはディッシュ
・滅菌ピペット
・層流フード
・遠心分離機(推奨)
・倒立顕微鏡または位相差顕微鏡
・血球計算盤およびトリパンブルー(生存率確認用、任意)
・個人用保護具

4. 細胞凍結/融解に役立つ研究機器

制御速度凍結装置は、通常-1℃/分の最適な冷却速度にて、正確で再現性のある冷却速度を提供し、細胞の生存率を向上させます。イソプロパノールコンテナを使用することで、複数のサンプルを均一に凍結し、凍結結果のばらつきを排除することが可能です。

一部のモデルでは、特定の細胞の種類に合わせて凍結プロファイルをプログラムできます。

4-1. ThawSTAR CB 凍結細胞融解ステーション(凍結バッグ用)

ThawSTAR CBは、再生医療および細胞療法分野で重要な、凍結細胞バッグの融解プロセスを標準化するために設計された自動融解システムです。25~1,000mLの範囲の凍結バッグに対応しており、水を使用しないため、ウォーターバスに伴う汚染リスクを排除します。操作は非常にシンプルで、誰でも容易に使用できます。
ThawSTAR CBの特長の1つは、専用のシングルユース保護バッグを使用することで、凍結バッグの損傷による製品損失のリスクを防ぎ、コンタミネーションを防止することです。リアルタイムでの温度測定と分析機能も備わっており、異なる培養バッグに対応するためのカスタマイズオプションも提供されています。ThawSTAR CBは、凍結バッグを2~8分以内に融解することが可能です。

4-2. ThawSTAR(ソースター) 凍結細胞融解ステーション Model CFT2 / CFT1.5

ThawSTAR(ソースター) Model CFT2 / CFT1.5は、クライオチューブに入った凍結細胞サンプルのための卓上型自動融解システムです。特許取得済みのSTARセンシング技術を利用しており、融解プロセスを標準化し、手動法による主観性や汚染リスクを排除することで、高い再現性を保証します。水を使用しないため、ウォーターバスに関連する汚染のリスクもありません。
Model CFT2は1.8~2mLのクライオチューブに対応し、Model CFT1.5は1.5mLのクライオチューブに対応しています。操作は簡単で、クライオチューブを挿入するだけで、約2~3分で融解が完了します。チューブが自動的にポップアップして取り出せるため、DMSOなどの細胞保存液による潜在的な毒性を最小限に抑えることが可能です。

まとめ

細胞の凍結・融解は、細胞株の長期保存や実験の再現性向上に欠かせない重要な技術です。

細胞凍結では、緩やかな冷却と凍結保護剤を併用し、氷晶による細胞損傷を防ぎます。細胞は生存率の高い状態で回収し、-1℃/分で凍結後、液体窒素などで保存します。

一方、融解では37℃のウォーターバスで迅速に解凍し、凍結保護剤を速やかに希釈・除去することが重要です。適切なプロトコルと機器を用いることで、細胞の品質と生存率を維持し、安定した研究成果につなげられるでしょう。

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