COLUMN製品コラム
熱分析装置とは?種類ごとの原理や使用目的を分かりやすく解説

材料の性能や安定性を正確に把握することは、製品開発や品質管理の現場で重要です。特に温度変化によって物質がどのように変化するかを調べるために使われるのが熱分析装置です。熱分析装置は、物質の融解や熱分解、ガラス転移などの熱的特性を測定する装置であり、さまざまな原理で分析を行います。
この記事では、熱分析装置の種類ごとの測定原理や用途について解説するとともに、メーカーの特徴など装置選定に役立つ情報を紹介します。研究・開発や製造現場において、適切な熱分析装置を導入したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次 1. 熱分析装置とは 2. 熱分析装置の種類と原理 2-1. 示差走査熱量計(DSC) 2-2. 示差熱分析装置(DTA) 2-3. 熱重量測定装置(TG) 2-4. 示差熱・熱重量同時測定装置(TG-DTA) 2-5. 熱機械分析装置(TMA) 2-6. 動的粘弾性分析(DMA) 3. 熱分析装置の主なメーカー まとめ |
1. 熱分析装置とは
熱分析装置とは、物質を加熱、または加熱後冷却する際に起こる変化を測定する装置です。融解、凝固、熱分解、ガラス転移など、温度によって変わる物質の性質(熱物性)を記録できます。
熱分析装置は、樹脂や金属、セラミックスなどの材料研究や検査の現場で、素材の性能や安定性を評価するために使われています。また、創薬や食品製造分野でも欠かせない存在です。
装置は主に、温度をコントロールする部分、変化を検出する部分、測定データを記録・解析するソフトウェア部分で構成されています。現在は、測定から解析までを自動で行える機種が一般的です。
2. 熱分析装置の種類と原理
熱分析手法は多様なため、熱分析装置にも複数の種類が存在し、それぞれ測定の対象とする物理量や原理は異なります。主に測定対象となるのは、温度変化に伴う熱量、質量、寸法、力学特性などです。
以下では、代表的な熱分析装置の原理と用途について解説します。
2-1. 示差走査熱量計(DSC)
示差走査熱量計(DSC)は、試料と基準物質を同じ温度プログラムで加熱・冷却し、両者に生じる温度差から熱変化を測定する装置です。温度変化に応じた吸熱・発熱の反応があると、試料と基準物質の間に生じる熱流の差をセンサーが検出する仕組みです。
物質が融解や結晶化、ガラス転移などの反応を起こす際の熱の変化を定量的に評価できるため、樹脂・セラミックス・金属などの研究開発や品質管理に広く活用されています。
主な用途は、素材の融点測定、ガラス転移点の評価、結晶化挙動や熱安定性の分析、反応熱の測定などです。近年では、電池材料の熱特性評価にもよく用いられています。
2-2. 示差熱分析装置(DTA)
示差熱分析装置(DTA)はDSCと同様に試料と基準物質を同時に加熱し、両者の温度差を測定する装置です。ただし、DTAは吸熱・発熱の有無や反応温度の把握を主な目的とし、熱量ではなく温度差の変化に着目するのが特徴です。
DTAでは、温度差の変化をピークとしてとらえ、ピークの向きによって、吸熱反応か発熱反応かを識別します。
用途としては、高分子材料や金属、セラミックスの相転移温度や分解温度の決定、酸化や脱水反応の評価などが挙げられます。
2-3. 熱重量測定装置(TG)
熱重量測定装置(TG)は、試料の重量が温度変化によってどのように変化するかを測定する装置です。温度に応じて質量が変化する反応(例:蒸発・脱水・分解・酸化・還元など)を観測します。
サンプルを精密な天秤に吊るし、一定の加熱速度または等温保持で温度を変化させると、重量の減少や増加が時間または温度の関数として記録がされる仕組みです。そのため、TGは熱天秤とも呼ばれます。
有機材料の熱分解挙動の解析、無機材料の含水量や結晶水の定量、食品や薬品の乾燥や含水量測定、金属の酸化や還元反応の評価などに活用されます。
また、TGは素材の耐熱性評価や製造プロセスの管理にも広く用いられています。
2-4. 示差熱・熱重量同時測定装置(TG-DTA)
示差熱・熱重量同時測定装置(TG-DTA)は、一度の測定でTGとDTAの両方を同時に行える装置です。
TG-DTAでは、試料の重量変化(TG)と温度差(DTA)を同時に測定できるため、試料の熱分解温度や分解時の熱の挙動、脱水反応や結晶化反応を包括的に評価できます。
効率よく複合的な情報が得られるため、ゴムやプラスチックの成分分析・分解挙動解析、セラミックスや金属の熱安定性評価、食品の含水量測定などに用いられます。
2-5. 熱機械分析装置(TMA)
熱機械分析装置(TMA)は、温度変化による試料の寸法変化を測定する装置です。
試料に一定の荷重をかけながら加熱すると、熱膨張や軟化などの物理的な変形が起こります。TMAはこれらの変位を高い測定精度で検出し、線膨張率やガラス転移温度、軟化温度を測定します。
TMAには通常、以下のような数種類の測定モードがあるのが特徴です。
・垂直方向に荷重をかけて線膨張率を測定 ・圧縮や曲げ荷重をかけた状態で変形挙動を測定 ・応力下でのクリープやリカバリ(時間依存変形)の測定 |
TMAの主な用途は、樹脂やフィルム材料の熱膨張係数の評価、金属やセラミックスの寸法・構造安定性評価、接着剤や塗膜の軟化温度測定などです。また、電子部品や光学材料の品質管理にも広く利用されています。
2-6. 動的粘弾性分析(DMA)
動的粘弾性分析(DMA)は、試料に振動する力を加え、形状変化から粘弾性を評価する装置です。測定試料に周期的な振動応力を与えてひずみを測定することで、材料の力学的性質(弾性・粘性)を評価します。
DMAは、特に材料の「温度」「時間」「周波数」による応答性を可視化できることから、複雑な動作環境下での材料挙動の理解に役立ちます。DMAの主な用途は、ゴムや高分子材料の機械的耐性評価、塗膜・接着剤の劣化挙動解析、食品の構造的特性評価などです。
3. 熱分析装置の主なメーカー
熱分析装置は、多様な材料評価に不可欠な機器であり、各メーカーから多彩な製品が展開されています。ここでは、日本国内外で高い評価を得ている代表的な3社を紹介します。
・日立ハイテクサイエンス 日立グループの一員として、分析計測装置を幅広く提供している企業です。 熱分析装置はDSC、TG-DSC、TMA、DMAの4方式に対応しています。 熱分析装置には温度変化による試料の様子を視覚的に観察できるオプションがあり、視覚と数値の両面から分析が可能です。 また、工業材料の研究・評価に適した拡張性の高い設計がされており、専門的な測定にも対応しやすいのも強みです。 ・島津製作所 1958年に国産初の熱分析装置を開発した実績を持つ老舗メーカーです。 熱分析装置は主にDSC、TG-DTA、TMAの3シリーズに対応しています。操作パネルが日本語対応で、かつ故障対応などのアフターサポートも手厚いため、熱分析装置の操作に慣れない初心者でも扱いやすい仕様です。 また、ウェビナーで初心者向け講習会を開いたり、技術資料や基礎情報を提供したりするなど、初心者向けに手厚い導入を行ってくれる点も魅力です。 ・ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(TA Instruments Japan) 米国本社TA Instrumentsの日本法人として、高性能な物性測定装置を提供している企業で、DSC、TG、TG-DTAなどの熱分析装置をラインナップしています。 熱分析装置以外のさまざまな測定装置を取り扱っており、デザイン面でもスタイリッシュです。 |
まとめ
熱分析装置は、温度変化にともなう材料の反応や性質を定量的に評価できることから、研究開発から品質管理まで幅広く活用されています。DSCやTG、TMA、DMAなど、目的や測定対象に応じて装置を選択することで、より効率的かつ精度の高い評価が可能となります。各装置には異なる特徴があるため、分析目的を明確にした上で選定を行いましょう。
加えて、メーカーによって操作性やサポート体制、拡張機能などにも差があるため、長期的な運用を見据えた導入判断が重要です。
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