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自動滴定装置とは?導入のメリットや対応している滴定の種類を解説

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研究開発や品質管理の現場では、精度の高い分析データをいかに効率よく得るかが常に課題となります。「もっと安定したデータがほしい」「複数の試料を効率的に処理したい」という課題を解決するのが、「自動滴定装置」です。

当記事では、自動滴定装置の仕組みや対応可能な滴定の種類、導入メリット、主要メーカーについて解説します。データの信頼性と作業効率の向上を両立させたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 自動滴定装置とは
1-1. 自動滴定装置で測定可能な滴定の種類
1-2. 自動滴定装置が活用できる場所

2. 自動滴定装置のメリット
2-1. 正確性や再現性が高い
2-2. 終点計算や濃度計算が不要になる
2-3. 滴定作業のスピードが上がる

3. 自動滴定装置の主なメーカー

まとめ

1. 自動滴定装置とは

自動滴定装置とは、滴定分析を自動化するために開発された実験装置です。滴定とは、既知の濃度を持つ標準溶液を試料に少しずつ加え、化学反応が完了する点(終点)を確認することで、試料中の特定成分の濃度を測定する方法です。
従来は、ビュレットなどを用いて手作業で行われてきました。しかし、自動滴定装置を使えば、試薬の滴下から反応の監視、データの記録まで自動化され、研究開発や品質管理において精度と効率を高めることが可能です。

1-1. 自動滴定装置で測定可能な滴定の種類

自動滴定装置は、人の目視に頼らず電極やセンサーを用いて終点を検出するため、多様な滴定法に対応できます。酸塩基や酸化還元のような基本的な方法に加え、微量水分や金属イオンの定量など、幅広い分析に利用されています。代表的な滴定の種類を以下に紹介します。

酸塩基滴定(中和滴定)酸と塩基を反応させ、中和点を終点として濃度を求める基本的な滴定法です。食品や医薬品の酸度・アルカリ度測定に多用されます。
酸化還元滴定酸化剤と還元剤の反応を利用し、電位差計や指示薬で終点を検出します。二酸化硫黄や過マンガン酸カリウムなどの定量に用いられます。
電位差滴定参照電極と指示電極を用いて溶液の電位変化を測定する方法です。色の変化が乏しいものでも精密に終点を判断できます。
逆滴定試料に既知濃度の試薬を過剰に加え、残量を別の試薬で滴定して計算する方法です。反応速度が遅い場合や固体試料を分析したい場合に有効です。
カールフィッシャー滴定試料中の微量水分を高精度に定量する方法で、容量法と電量法があります。化学品や食品、医薬品の水分管理に利用されています。
沈殿滴定試料と滴定剤が不溶性塩を形成する反応を利用する方法です。銀滴定法などが代表で、塩化物イオンなどの定量に使われます。
キレート滴定EDTAなどのキレート剤で金属イオンを定量する方法です。水質分析や硬度測定、医薬品原料の金属管理に幅広く利用されています。

1-2. 自動滴定装置が活用できる場所

自動滴定装置は、研究開発や品質管理以外の分野でも活用されています。滴定は費用対効果が高く再現性に優れ、専門的な知識がなくても正確な分析が可能なため、多くの産業において欠かせない手法です。ここでは、自動滴定装置が利用される代表的な分野と、その分析方法や試験方法の位置づけを紹介します。

食品・飲料産業乳製品やジュース、醤油、食酢などの酸度や塩分測定に広く使われています。食品の味や品質、保存性を管理する上で重要な役割を果たすため、JAS規格や国税庁の分析法でも滴定法が採用されています。
製薬・医薬品業界医薬品の純度や有効成分濃度・含有量を確認するために使用されます。日本薬局方でも滴定が公式分析法として規定されており、新薬開発から製造段階まで幅広く活用されています。
化学・石油化学工業酸や塩基、各種溶液の濃度測定、潤滑油の酸価・塩基価の測定などに利用されます。石油製品や工業原料の品質管理に必須で、JIS・ISO・ASTMなどの国際規格にも対応しています。
環境分析・水質検査水道水や廃水の硬度、金属含有量を調べるために利用されます。キレート滴定によるカルシウムやマグネシウムの定量は、水処理や環境保全に欠かせないものとなっています。
めっき・金属加工業めっき液中の金属イオンや薬剤の濃度を正確に測定し、製品品質の安定化に貢献します。銀や銅、亜鉛などの定量に沈殿滴定やキレート滴定が活用されます。

2. 自動滴定装置のメリット

自動滴定装置を導入することで、測定の正確性や再現性が向上し、操作性や測定方法の標準化にも寄与します。ここからは、自動滴定装置を活用する具体的なメリットについて詳しく解説します。

2-1. 正確性や再現性が高い

自動滴定装置は、滴下速度や反応条件を精密に制御できるため、人間の感覚や経験に頼ることなく高い正確性を実現します。手動滴定では、試薬の滴下速度や温度管理のわずかな差が測定結果に影響しますが、自動化によってその誤差を最小限に抑えることが可能です。

また、同じ条件で繰り返し測定しても、常に安定した結果を得られるため、再現性も優れています。測定者によるばらつきを排除できる点は、特に品質管理や規格に基づいた分析においてメリットとなり、信頼性の高いデータを蓄積できるでしょう。

2-2. 終点計算や濃度計算が不要になる

従来の手動滴定では、終点の判断や濃度計算を分析者自身が行う必要があり、その過程で読み間違いや計算ミスが発生するリスクがありました。自動滴定装置では、終点を電極やセンサーで正確に検出し、その結果をもとに濃度を自動で計算して出力します。

これにより、人為的な誤差が大幅に減少し、誰が操作しても同じ結果を得ることが可能です。また、データは自動的に記録されるため、後から条件や結果を確認でき、分析業務の効率化とトレーサビリティの確保にもつながります。

2-3. 滴定作業のスピードが上がる

自動滴定装置は、滴定液の滴下速度を自動的に調整し、効率的に反応を進められるため、作業スピードが向上します。手動で行う場合は慎重に試薬を加えるのに時間がかかりますが、自動滴定装置では自動化により短時間で終点へ到達できるのが特徴です。大量のサンプルを測定する際は、作業時間の削減効果を顕著に感じられるでしょう。

さらに、測定結果が即座に表示され、次の試料にスムーズに移れるため、現場で求められる迅速性を確保できます。効率性と精度を両立できる点が、自動滴定装置の大きなメリットと言えるでしょう。

3. 自動滴定装置の主なメーカー

自動滴定装置は、さまざまなメーカーから提供されており、それぞれ独自の強みを持っています。自動滴定装置を導入する際は、分析対象や求める精度、サポート体制を考慮してメーカーを選ぶことが重要です。ここでは代表的な3社を紹介します。

・日東精工アナリテック株式会社
三菱化成工業や三菱油化をルーツに持ち、1970年代からカールフィッシャー水分計や各種分析機器を開発してきた老舗メーカーです。
現在は日東精工グループの一員として、元素計や水分計をはじめ、高性能・高耐久の装置を提供しています。
環境保全や社会課題に応える技術開発を掲げ、世界中で高い評価を得ています。

・東亜ディーケーケー株式会社
「水・大気・医療・ガス」を柱に、環境計測から化学分析まで幅広く対応する総合計測機器メーカーです。
水質や大気の分析機器では国内トップクラスのシェアを誇り、pH計やPM2.5測定装置などで高い信頼を得ています。
開発から販売、アフターサービスまで一貫体制を整えており、きめ細やかなサポートが特徴です。

・メトロームジャパン株式会社
スイスに本社を持つメトローム社の日本法人で、世界的に高精度なイオン分析機器メーカーとして知られています。
自動滴定装置をはじめ、イオンクロマトグラフやカールフィッシャー水分計、近赤外分析計など、多様なラインナップを展開しています。
すべての製品をスイス本社で製造し、一貫した品質管理に基づく信頼性を確保しています。

自動滴定装置 – 物性計測機器|アズサイエンス株式会社

まとめ

自動滴定装置は、滴定作業を自動化することで正確性や再現性を高め、人為的な誤差を抑えながら効率的に分析を行える装置です。酸塩基滴定や酸化還元滴定、カールフィッシャー法などの幅広い滴定法に対応しており、食品・飲料、製薬、化学工業、環境分析といった多岐にわたる分野で活用されています。

自動滴定装置の導入により、品質管理や研究開発の精度を確保しながら、作業時間の短縮や業務効率化が期待できます。分析精度や作業スピードに課題を感じている場合は、自動滴定装置の導入を前向きに検討してみましょう。

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