COLUMN製品コラム
多検体ナノ粒子径測定システムとは?基礎から用途・原理を解説

ナノ粒子を用いた研究や製品開発では、「粒子径が均一に制御できているか」「保存中に凝集や沈殿が起きていないか」などの課題に直面することが少なくありません。こうした悩みを解決するのが、多検体ナノ粒子径測定システムです。
当記事では、多検体ナノ粒子径測定システムの中でも大塚電子株式会社のnanoSAQLAについて取り上げ、その用途や使用目的、測定原理、仕様について解説し、導入によって得られるメリットを紹介します。
| 目次 1. 多検体ナノ粒子径測定システムnanoSAQLAとは? 1-1. 用途 1-2. 使用目的 2. 多検体ナノ粒子径測定システムnanoSAQLAが採用する動的光散乱法の原理 2-1. 粒子のブラウン運動と動的光散乱法の測定原理 2-2. 光子相関法により得られる自己相関関数 2-3. 自己相関関数により得られる粒子径・粒子径分布 3. 多検体ナノ粒子径測定システムnanoSAQLAの仕様 まとめ |
1. 多検体ナノ粒子径測定システムnanoSAQLAとは?
多検体ナノ粒子径測定システム「nanoSAQLA(ナノサクラ)」は、動的光散乱(DLS)法を用いてナノ粒子や微粒子の粒径・分布を測定する装置です。粒径0.6nmから10μmまで幅広く対応し、高出力半導体レーザーを採用した非浸漬型光学系により、コンタミネーション(汚染)の影響を受けにくい設計が特徴です。
さらに、1検体あたり約1分で高速測定が可能で、最大5検体を連続して処理できるため、ラボでの効率的な多検体解析を実現します。軽量・小型化も図られ、研究や品質管理の現場で高い実用性を発揮します。
1-1. 用途
多検体ナノ粒子径測定システムnanoSAQLAは、ナノ粒子を利用する幅広い分野で活用されています。製薬・バイオテクノロジー分野では、ワクチンやドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究開発、タンパク質や核酸といった生体分子の凝集状態の解析、医薬品の品質管理に役立ちます。
化学・材料科学の領域では、半導体・二次電池・燃料電池用材料の評価、インクや塗料、化粧品、コロイド・高分子研究など、多彩な用途があります。食品科学においても乳製品や飲料の粒子安定性評価、食品添加物の品質管理に利用されています。
ナノ粒子は色材、セラミックス改質剤、蛍光材料、電子部品や研磨材など、幅広い産業素材に用いられており、nanoSAQLAは大学や研究機関から企業まで、研究開発と品質管理の両面で重要な役割を果たしています。
1-2. 使用目的
多検体ナノ粒子径測定システムnanoSAQLAの主な使用目的は、ナノ粒子の物理的特性を正確に評価し、その機能を最適化・管理することにあります。まず重要なのは粒子径と粒子径分布の把握です。ナノ粒子のサイズが均一であるか、または特定の範囲に収まっているかを確認することは、医薬品の体内動態や材料特性に直結する重要な要素です。
また、安定性の評価も可能です。温度やpHといった環境変化、経時的な影響により発生する凝集や沈殿を監視し、製品の有効性や保存期間を左右する粒子の安定性を見極めることができます。さらに、製造現場における品質管理にも活用できます。ロット間でナノ粒子のサイズや分布が均一であるかを確認することで、製品が仕様通りに安定して供給されることを保証します。
2. 多検体ナノ粒子径測定システムnanoSAQLAが採用する動的光散乱法の原理
nanoSAQLAが採用する動的光散乱法(DLS)は、溶液中で粒子が示すブラウン運動を解析することで粒径を求める手法です。粒子は小さいほど速く、大きいほどゆっくりと動き、その運動によって散乱光の強度が時間的に揺らぎます。この散乱強度の変化を光子相関法で自己相関関数として解析し、拡散係数を算出、さらにストークス・アインシュタイン式に基づいて粒子径に換算します。
DLSは光の波長よりも小さいナノ領域の粒子に適しており、直接的に形状を測るのではなく熱運動を指標とするため、粒径分布や凝集状態など粒子の動的特性を反映した結果が得られるのが特徴です。そのため、ナノ粒子の均一性や安定性を迅速に評価できます。
2-1. 粒子のブラウン運動と動的光散乱法の測定原理
液体や気体中に分散した微粒子は、周囲の分子から常に衝突を受け、不規則に動く「ブラウン運動」をしています。この運動は粒子が小さいほど活発で、大きい粒子ほど緩やかです。動的光散乱法(DLS)では、このブラウン運動を利用して粒径を推定します。
溶液中の粒子にレーザー光を照射すると、粒子の動きに応じて散乱光の強度が揺らぎます。光子検出器で散乱光の強度の揺らぎを捉えると、干渉により強弱が変化するパターンとして観測されます。小さな粒子は散乱光が速い変動を示し、大きな粒子はゆっくりとした変動を示すため、この違いを自己相関関数として解析することで拡散係数が導かれます。
2-2. 光子相関法により得られる自己相関関数
動的光散乱法において、粒子のブラウン運動による散乱光強度の揺らぎは、粒径に応じて異なる特徴を示します。これらの揺らぎを光子相関法(Photon Correlation Spectroscopy, PCS)で解析すると、自己相関関数が得られます。自己相関関数は、任意の時間tでの散乱強度I(t)と、τ時間後の散乱強度I(t+τ)との相関を示すものです。
τが小さいときは高い相関を、τが大きいと相関が減衰し、最終的には指数関数的にゼロへ近づきます。
2-3. 自己相関関数により得られる粒子径・粒子径分布
動的光散乱法で得られる自己相関関数は、粒子のブラウン運動に基づく拡散の様子を時間的に表現したものです。観測の基準時刻における散乱強度と、一定の遅延時間τ後の散乱強度との相関を計算することで導かれ、時間が経過するほど相関は減衰します。小さな粒子は拡散が速いため相関関数も急速に減衰し、大きな粒子は拡散が遅く、相関の減衰も緩やかになります。
この減衰挙動は拡散係数と直結しており、ストークス・アインシュタイン式により流体力学的径として粒子径に換算されます。さらに、自己相関関数をキュムラント法やヒストグラム法で解析することで、平均粒子径だけでなく粒子径分布も求めることができます。これにより、サンプルの均一性や凝集状態を定量的に把握でき、研究開発や品質管理において有用な情報が得られます。
3. 多検体ナノ粒子径測定システムnanoSAQLAの仕様
多検体ナノ粒子径測定システムnanoSAQLAは、動的光散乱法(光子相関法)を原理とし、高出力半導体レーザー(660nm, 70mW)と高感度APD検出器を搭載した多検体対応の粒子径測定システムです。測定粒子径範囲は0.6nm~10μmと広く、希薄系サンプルから濃厚系(最大濃度40%)まで対応可能です。温度も0~90℃の範囲で制御できる温度グラジエント機能を備えています。
サンプル容量は角セルで1.2mLから、微量セルでは20μLから測定できるほか、複数検体に対応しており、最大5検体の連続測定が可能です。ソフトウェアはキュムラント法による平均粒子径解析や、Marquardt法・Contin法・NNLSなど多彩なアルゴリズムを用いた粒径分布解析を提供しています。また、21 CFR Part11対応のセキュリティ機能や分子量計算機能、粒度分布重ね書き機能も搭載しています。装置サイズや重量などの製品仕様は、W240×D480×H375mm、重量約18kgとコンパクトです。オプションのオートサンプラAS50と組み合わせれば最大50検体まで自動測定が可能です。
まとめ
多検体ナノ粒子径測定システムnanoSAQLAは、動的光散乱法を用いてナノ粒子のサイズや分布を迅速かつ高精度に測定できる装置です。製薬・化学・食品など、多様な分野で研究や品質管理を支える役割を果たしています。
粒子径や分布、安定性を正確に評価することは、医薬品の有効性や材料の性能、食品の品質保持といった成果に直結します。さらに、自己相関関数解析によって粒径や分布の定量化が可能で、凝集状態や均一性の確認にも有効です。
nanoSAQLAは、1検体あたり約1分という高い測定効率と、多検体を連続測定できる機能を兼ね備えており、研究のスピードアップや品質保証体制の強化に貢献します。本装置を活用することで正確なデータに基づいた判断が可能となれば、研究成果の信頼性向上や製品開発の加速といった大きなメリットを得られるでしょう。
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