COLUMN製品コラム

単一粒子サイズ・粒子濃度測定システムとは?基礎から特徴・用途まで

NanoFCM

ナノテクノロジーやライフサイエンスの分野では、ウイルスや細胞外小胞(EV)、脂質ナノ粒子(LNP)といった微小粒子の「サイズ」や「濃度」を正確に測定する技術が求められています。こうした中で注目されているのが、単一粒子レベルで解析が行えるフローナノアナライザー(Flow NanoAnalyzer)です。

電子顕微鏡と同等の解像度を持ちながら、フローサイトメトリーの高スループットを兼ね備え、従来のように複数の測定機器を使い分ける必要がありません。粒径分布や粒子濃度、蛍光強度といった複数のパラメータを同時取得できるため、研究・開発・品質管理のあらゆる場面で精度と効率の向上に寄与します。

当記事では、単一粒子サイズ・粒子濃度測定システム「フローナノアナライザー」の概要や特徴、活用分野について詳しく解説します。

目次

1. 単一粒子サイズ・粒子濃度測定システム「フローナノアナライザー」とは?

2. 単一粒子サイズ・粒子濃度測定システム「フローナノアナライザー」の特徴
2-1. サイズ分布
2-2. 粒子濃度
2-3. マルチパラメータ
2-4. 表現型(フェノタイピング)

3. 単一粒子サイズ・粒子濃度測定システム「フローナノアナライザー」の応用分野・利用用途
3-1. 細胞外小胞(EV)
3-2. ウイルス・ワクチン・ウイルスベクター
3-3. ナノメディシン・脂質ナノ粒子(LNP)

4. 単一粒子サイズ・粒子濃度測定システム「フローナノアナライザー」の仕様

まとめ

1. 単一粒子サイズ・粒子濃度測定システム「フローナノアナライザー」とは?

フローナノアナライザーは、ナノスケールの粒子を単一粒子レベルで解析できるフローサイトメーターです。電子顕微鏡に匹敵する解像度と、フローサイトメトリーの高いスループットを両立しており、ウイルスやナノ医薬品、細胞外小胞(EV)などの高精度な測定を可能にします。

複数の手法を組み合わせる必要があった従来の測定を一台で完結できる点が大きな特徴であり、現在では200件以上の論文で活用されています。

2. 単一粒子サイズ・粒子濃度測定システム「フローナノアナライザー」の特徴

フローナノアナライザーは、高解像度と高スループットを兼ね備えた次世代のナノ粒子解析装置です。ここでは、フローナノアナライザーの特徴を解説します。

2-1. サイズ分布

フローナノアナライザーは、側方散乱光(Side Scatter)検出によってナノ粒子のサイズ分布を高精度に測定します。TEM(透過型電子顕微鏡)と同等の分解能を持ちながら、サンプル固定や染色といった煩雑な準備を必要とせず、溶液中でのリアルタイム解析を可能にします。

NTA(Nanoparticle Tracking Analysis)と比較しても80nm以下の粒子を過小評価せず、TEM測定と高い相関を示すことが報告されています。95nmのシリカナノ粒子を用いた比較実験でも、NanoFCMの測定結果はTEMと一致し、40~140nmの範囲で高い再現性と信頼性を確認しています。

2-2. 粒子濃度

フローナノアナライザーは、ナノ粒子を単一レベルでカウントすることで正確な粒子濃度の定量化を実現します。従来の光学的手法では粒子集団の平均値を算出する「アンサンブル測定」が主流でしたが、フローナノアナライザーでは単一粒子ごとに散乱光を解析するため、混在粒子の中でも種類ごとの濃度を定量可能です。

TEMやAFMのように長時間のデータ取得を必要とせず、短時間で再現性の高い結果を得られます。ウイルス、EV、LNPなど、サイズの異なる粒子が混在するサンプルでも高精度な濃度測定が可能であり、研究の効率化に貢献します。

2-3. マルチパラメータ

フローナノアナライザーは、側方散乱光(SS)と2つの蛍光検出チャネルを組み合わせた3検出器構成を採用しています。これにより、1つの粒子についてサイズと蛍光シグナルを同時に取得でき、構造・成分・表面特性を統合的に解析できます。

従来のフローサイトメーターでは500nm以下の粒子測定が難しいとされていましたが、フローナノアナライザーは150nm以下の領域でも明確な検出が可能です。単一粒子レベルでの多項目データ取得(マルチパラメータ解析)により、ウイルスやナノ薬剤キャリアの物理化学的特性を同時評価でき、研究の高精度化を実現します。

2-4. 表現型(フェノタイピング)

フローナノアナライザーでは、蛍光標識した分子を用いてナノ粒子の表面および内部構造の表現型解析(フェノタイピング)が可能です。蛍光プローブにより、細胞外小胞(EV)の表面タンパク質(例:CD9-AF488、CD63-EGFP)や内部RNA、脂質成分などを可視化し、単一粒子レベルで定量的に評価できます。これにより、EVの機能的多様性や由来細胞の状態を反映した構造変化を把握できます。

ナノ粒子の「構造」と「機能」をリンクさせる技術として、疾患診断やドラッグデリバリー研究において重要な役割を果たしています。

3. 単一粒子サイズ・粒子濃度測定システム「フローナノアナライザー」の応用分野・利用用途

フローナノアナライザーは、ナノ粒子を単一粒子レベルで「サイズ・濃度・蛍光」を同時取得できる点が強みです。細胞外小胞(EV)の表現型解析、ウイルスやワクチン・ベクターの品質評価、脂質ナノ粒子(LNP)などのナノメディシン開発まで、さまざまな場面で活用されます。

3-1. 細胞外小胞(EV)

EVは直径30~150nmの小胞で、表面タンパク質や内部核酸の指標が機能や由来を反映します。フローナノアナライザーは、側方散乱と蛍光の同時検出により、CD9・CD63などのマーカー、膜脂質、内部RNAを単一粒子で評価します。PSC由来sEVのようなサブタイプ比較や、タンパク質搭載EV(例:VSV-G利用プラットフォーム)の担持効率検証にも適します。

3-2. ウイルス・ワクチン・ウイルスベクター

従来機の検出限界を下回る領域でも、単一ウイルスのラベルフリー検出と蛍光フェノタイピングを両立します。サイズ分布と粒子濃度を同時取得しつつ、核酸色素や抗体標識で構成要素を可視化できるため、ワクチン原料の粒子均一性・純度や安定性の指標化が可能です。

レンチウイルスではRNAと外被タンパク質シグナルの同時検出により、有効粒子の比率や培養条件の最適化を評価できます。CAR-Tを含む細胞・遺伝子治療の研究開発から製造・品質管理まで、工程横断の定量指標を提供します。

3-3. ナノメディシン・脂質ナノ粒子(LNP)

mRNA/siRNA送達用LNPでは、粒径と濃度のラベルフリー解析に加え、核酸染色で担持比率やカプセル化の程度を単一粒子で定量できます。蛍光強度の較正により、粒子ごとの核酸量の相対評価やサブポピュレーション(担持LNP/非担持LNP/遊離核酸)の比率把握が可能です。

さらに、葉酸などの表面リガンドはMESF等で定量し、粒径と併せて最適密度域の設計検討に活用できます。製剤スクリーニング、バッチ間比較、スケールアップ時の品質指標づくりに有効です。

4. 単一粒子サイズ・粒子濃度測定システム「フローナノアナライザー」の仕様

フローナノアナライザーは、7~1,000nmの粒径レンジに対応し、10~100μLの少量サンプルで最短60秒の測定が可能です。光学系は488nm&638nmまたは525nm&638nmのデュアルレーザーとSPCM検出器を搭載し、SSC感度<30nm、SSC解像度40/50nm、蛍光感度はFITC<10 MESF/PE<1 MESFを実現します。

フローセルは250μm×250μmの直角フローセル、サンプル流量2~60nL/min、シース流量10~40μL/minで、スタートアップから洗浄・汚染除去・停止まで流路メンテナンスを自動化します。

データはNFAおよびFCS3.0形式で出力でき、ソフトウェアはNF Professionに対応しています。

まとめ

フローナノアナライザーは、ナノ粒子を単一粒子単位で解析できる革新的なフローサイトメーターです。TEMに匹敵する分解能と高い再現性を持ち、粒径・濃度・蛍光の3要素を一度に測定できます。

EVやウイルス、LNPなど、ナノ領域の構造解析や品質評価を効率化し、研究や製薬開発の迅速化に貢献します。また、従来法で見落とされていた粒子サブポピュレーションの特性を可視化できる点も大きな強みです。

今後、ナノメディシンや次世代バイオマーカー研究においても、フローナノアナライザーは中心的な役割を担うことが期待されます。

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