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ナノ粒子サイズ分布・粒子濃度測定システムとは?測定原理を解説

VIDEO DROP

ナノテクノロジー分野の研究や製品開発において、ナノ粒子の粒径や濃度を正確に測定することは欠かせません。ナノ粒子サイズ分布・粒子濃度測定システムは、サンプル中の粒子の大きさや数を解析し、材料特性や品質評価に役立つデータを提供する装置です。測定原理には、写真画像法や沈降法、光散乱回折法、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)などがあり、それぞれに得意とする粒径範囲や特徴があります。

当記事では、ナノ粒子サイズ分布・粒子濃度測定システムの仕組みや測定原理、代表的な手法などを分かりやすく解説します。

目次

1. ナノ粒子サイズ分布・粒子濃度測定システムとは
1-1. ナノ粒子とは

2. ナノ粒子サイズ分布・粒子濃度測定システムの測定原理
2-1. 写真画像法
2-2. 沈降法
2-3. CHDF法
2-4. 電気的検知法
2-5. 光散乱回折法
2-6. ナノ粒子トラッキング解析法

3. ナノ粒子サイズ分布・粒子濃度測定システムの主なメーカー

まとめ

1. ナノ粒子サイズ分布・粒子濃度測定システムとは

ナノ粒子サイズ分布・粒子濃度測定システムとは、液体中に分散するナノメートルサイズの粒子を対象に、その粒径の分布や粒子数濃度を正確に解析するための装置です。代表的な原理として、粒子のブラウン運動を可視化する粒子軌跡解析法(NTA)や、散乱光のゆらぎを解析する動的光散乱法(DLS)が用いられます。これにより、ナノ粒子の平均径だけでなく、粒子ごとの分布やサンプル中の濃度を同時に把握できる点が特徴です。

1-1. ナノ粒子とは

ナノ粒子とは、直径が1~100nm(ナノメートル)の大きさを持つ微小な粒子のことを指します。1nmは1mの10億分の1にあたり、髪の毛の太さのおよそ10万分の1という極めて微細なサイズです。そのため、肉眼はもちろん通常の顕微鏡でも観察できないほどの小ささを持ちます。
ナノ粒子は、金属・酸化物・高分子・生体由来物質など多様な素材から成り、サイズの微小性により表面積が非常に大きく、特異的な光学的・電気的・化学的性質を示します。これらの特徴を利用した研究・応用分野は「ナノテクノロジー」と呼ばれ、医薬品のドラッグデリバリーシステム(DDS)、化粧品や食品の機能性向上、環境計測、エネルギー材料など多岐にわたります。こうした背景から、ナノ粒子は次世代の先端技術を支える重要な素材と位置付けられています。

2. ナノ粒子サイズ分布・粒子濃度測定システムの測定原理

ナノ粒子のサイズ分布や濃度を正確に測定するためには、粒子の性質や用途に応じて複数の原理が活用されます。代表的なものとして、写真画像法や沈降法、CHDF法、電気的検知法、光散乱回折法、ナノ粒子トラッキング解析法などがあり、それぞれに特徴と適用範囲があります。ここでは、それぞれの測定原理について順に解説します。

2-1. 写真画像法

写真画像法は、光学顕微鏡や電子顕微鏡など各種顕微鏡を用いて、粒子を直接観察し、その画像を解析することで粒径や粒度分布を測定する方法です。対象となる粒子の大きさに応じて顕微鏡を使い分けるのが特徴で、数ミクロン以上なら光学顕微鏡、ナノメートルオーダーでは走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、さらには走査型透過電子顕微鏡(STEM)や原子間力顕微鏡(AFM)などが利用されます。
直接観察のため形状や表面状態まで把握でき、特にナノ粒子の結晶性や欠陥評価にも有効です。従来は写真を物差しで測定していましたが、現在は画像解析ソフトを活用し、数百個以上のデータを統計処理することで信頼性の高い粒度分布を得られるようになっています。

2-2. 沈降法

沈降法は、液体中の粒子がサイズによって異なる速度で沈降する性質を利用した測定法です。粒子は大きいほど速く、小さいほどゆっくり沈降します。この現象はストークスの法則で表され、沈降速度と流体の粘度・密度、粒子の密度を用いて粒径を算出します。
実際の測定では、混合した粒子を液体に投入すると、大粒子は先に、小粒子は遅れて沈んでいくため、沈降過程で自然に分級されます。この濃度変化を光学的に検出することで、高分解能の粒度分布を得ることが可能です。ただし、測定時間は粒径の2乗に反比例するため、1μm以下の微粒子では測定に長時間を要し、誤差も大きくなります。そのため、沈降法は比較的大きな粒子の測定に適した手法とされています。

2-3. CHDF法

CHDF法(Capillary Hydrodynamic Fractionation)は、キャピラリー内の流速分布を利用して粒子をサイズごとに分離し、粒度分布を高精度に測定する方法です。キャピラリー管の中央部は流れが速く、壁面に近い部分は遅いという「ポアズイユ流」が生じるため、大粒子は速い流路を、小粒子は遅い流路を通り、それぞれ異なる速度で移動します。

この原理により、粒子を効率的にサイズ別に分画できます。従来の光散乱法では粒径が大きい粒子の散乱光が強すぎて、多分散サンプルの解析が難しいという課題がありましたが、CHDF法では分級してから検出するため、多分散系でも正確で高分解能な測定が可能です。さらに、紫外線の2波長分析を組み合わせることで、粒子表面の官能基解析にも対応できます。測定範囲は0.015~3.0μmと広く、サンプル注入からわずか10分程度で結果が得られる迅速性も大きな特徴です。

2-4. 電気的検知法

電気的検知法は「電気抵抗法」あるいは「コールターカウンター法」とも呼ばれ、粒子が細孔(アパチャー)を通過する際に生じる電気抵抗の変化を利用して粒径や粒子数を測定する手法です。アパチャーチューブの両側に設置された電極間に電流を流し、粒子が電解液とともに細孔を通過すると、瞬間的に電気抵抗が変化します。

この変化を電圧パルスとして検出・増幅することで、粒子のサイズと数を同時に評価できます。電圧変化の大きさは粒子の体積に相当するため、体積基準径や個数分布を精度高く得られるのが特徴です。1回の測定で数万個規模の粒子をカウントでき、信頼性の高いデータが得られます。

測定範囲はおおよそ50nm~500μmと広く、微量分析にも適していますが、基本的に水系の希薄溶液に限定されるため適用対象に制約があります。また、凝集した粒子は超音波処理で分散させることで一次粒子径の測定も可能です。

2-5. 光散乱回折法

光散乱回折法は、レーザー光や光源を粒子に照射し、その散乱パターンを解析することで粒子径分布を求める手法です。光が粒子に当たると回折や散乱が生じ、その強度分布は粒子の大きさと密接に関係しています。特に、粒子が小さいほど散乱角は大きく、大きいほど散乱角は小さくなる性質を利用しています。

測定方法には「静的光散乱」と「レーザー光回折」があり、前者は液中や気中で10~500nm程度の粒子を対象に光散乱径を重量基準で表示します。一方、レーザー光回折法は液中測定に用いられ、10nmから最大3mmまでの広範囲の粒子を球相当径として評価できます。重量基準で分布を示すため、全体の粒度バランスを把握しやすいのも特徴です。液相・気相いずれにも対応でき、ナノ粒子からマイクロ粒子まで幅広い粒径を効率的に測定できるため、工業材料や化学分野で広く利用されています。

2-6. ナノ粒子トラッキング解析法

ナノ粒子トラッキング解析法(Nanoparticle Tracking Analysis, NTA)は、ナノ粒子が液体中で行うブラウン運動をビデオ撮影し、その動きを解析することで粒子径を求める手法です。粒子はサイズが小さいほど速く動き、大きいほどゆっくり動くため、その動態から粒子の大きさを算出できます。

従来の平均値的な測定とは異なり、粒子一つひとつを個別に解析できるのが大きな特徴です。これにより、サイズの異なる粒子が混在するサンプルでも、分布を精密に把握できます。さらに粒子濃度の定量化も可能であり、試料の均一性評価にも役立ちます。

医薬品研究ではドラッグデリバリー用ナノカプセルやリポソームの特性評価に、また環境分野では微小プラスチックやウイルス粒子の挙動解析に活用されています。多様な分野で応用できる実用性の高い解析法です。

3. ナノ粒子サイズ分布・粒子濃度測定システムの主なメーカー

ナノ粒子のサイズや濃度を正確に測定するシステムは、研究開発や品質管理に必要な装置です。ここでは、日本国内で代表的なシステムを提供しているメイワフォーシスと大塚電子の2社を紹介します。

■メイワフォーシス
メイワフォーシスが提供するナノ粒子イメージングアナライザー「VIDEO DROP」は、干渉光顕微鏡観察(ILM: Interferometric Light Microscopy)の原理を利用した装置です。高速カメラ(140fps)でナノ粒子の軌跡を追跡し、ストークス–アインシュタイン方程式を用いて流体力学的直径を算出します。

観察映像から干渉パターンを検出・解析することで、サイズと濃度をわずか40秒・5µLのサンプル量で測定可能です。ブラウン運動をトラッキングする方式のため、ナノ粒子のサイズ分布と濃度を高精度かつ再現性高く評価でき、TRPS法との高い相関も実証されています。貴重なサンプルを少量で効率的に解析できることから、ライフサイエンスやナノ材料研究で幅広く活用されています。

■大塚電子
大塚電子が展開する多検体ナノ粒子径測定システム「nanoSAQLA(ナノサクラ)」は、動的光散乱法(DLS)をベースとした高機能測定装置です。粒径0.6nm~10µmの広範囲をカバーし、濃度も0.00001~40%まで対応。標準で5検体の連続測定が可能で、1検体あたりわずか1分程度で解析が完了します。

さらに、非浸漬型セルを採用しているためコンタミネーションのリスクを抑え、温度グラジエント機能による温度制御測定も可能です。シンプルな操作性と小型設計により、研究室や製造現場における日常的な品質管理に適しています。

まとめ

ナノ粒子サイズ分布・粒子濃度測定システムは、ナノメートル領域の粒子径や濃度を高精度に解析する装置で、研究開発や品質管理に不可欠です。測定には動的光散乱法(DLS)、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)、電気的検知法など多様な原理が利用され、サンプル特性に応じた選択が可能です。

国内メーカーとしては、少量サンプルを高速測定できるメイワフォーシスの「VIDEO DROP」や、多検体を効率的に解析できる大塚電子の「nanoSAQLA」が代表的です。用途や試料に応じた装置選定が重要となります。

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