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表面張力計とは?用途・活用分野や表面張力の測定方式も解説

DY-300

表面張力は、インクの広がり方や塗料の密着性、乳化や泡の安定性など、製品品質に大きく関わる物理的特性です。しかし、液体の性質を正確に把握するにあたり、「どの測定方法を選べばよいのか」「どのような測定器が自分の研究や業務に最適なのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。

当記事では、表面張力計の基本的な仕組みや活用分野、代表的な測定方式を分かりやすく解説します。研究や品質管理の精度を高めたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 表面張力計とは
1-1. 表面張力とは
1-2. 表面張力計の用途・活用分野

2. 表面張力計の測定方式
2-1. ウィルヘルミー法(プレート法)
2-2. デュヌイ法(リング法)
2-3. ペンダントドロップ法(懸滴法)
2-4. バブルプレッシャー法(最大泡圧法)
2-5. 毛細管法

3. 自動表面張力計(DY-300)の特長・仕様

まとめ

1. 表面張力計とは

表面張力計とは、液体の表面張力や界面張力を正確に測定するための精密機器です。液体のぬれ性や泡の安定性、乳化性などの界面科学的特性を数値化して評価します。ここからは、表面張力の基本的な仕組みや表面張力計の用途について解説します。

1-1. 表面張力とは

表面張力とは、液体がその表面積をできるだけ小さくしようとする力のことです。液体内部の分子はお互いに均等に引き合っていますが、表面の分子は外側(気体側)からの引力をほとんど受けないため、内部へと引き寄せられる界面現象が生じます。その結果、液体の表面には収縮しようとする性質が生まれ、これが表面張力として観察されます。

たとえば、水滴が球形になるのは、表面張力が働き、表面積を最小限に抑えようとするためです。また、気体と液体の境界に働く力を「表面張力」と呼び、液体同士や固体と液体の境界に働く力は「界面張力」として区別されます。これらは分子間力に由来する同一の現象であり、物質のぬれ性や接触角などを理解する際にも重要となる概念です。

1-2. 表面張力計の用途・活用分野

表面張力計による表面張力測定は、さまざまな液体の性質を評価する測定分析装置として幅広い分野で活用されています。たとえば、インクや塗料、コーティング剤の分野では、レベリング特性や泡の安定性、ぬれ性を測定し、製品の塗りムラや発泡を防ぐための品質管理に役立ちます。洗剤では、界面活性剤の洗浄力や濃度を評価し、液体の管理や改良に活用されます。

化粧品では乳化性や使用感の安定化、消火液では起泡性や拡張性の確認、半導体製造ではレジスト液やエッチング液の工程管理にも用いられます。このように表面張力計は、液体のぬれ性や界面挙動を科学的に解析し、研究開発から製造プロセスの最適化まで幅広く貢献する測定装置です。

2. 表面張力計の測定方式

表面張力計には、液体の特性や測定目的に応じて複数の測定方式があります。ここでは、代表的な5つの測定方法について、それぞれの測定原理と特徴を解説します。

2-1. ウィルヘルミー法(プレート法)

ウィルヘルミー法(プレート法)とは、薄い白金板などを液体に接触させ、そのときに働く引き込み力を測定して表面張力を求める方法です。現在最も一般的な表面張力の測定方式の1つです。薄い白金プレート(測定子)を液体表面に接触させると、液体がプレートの表面をぬれ上がり、その周囲に沿って表面張力が働きます。

このとき、液体はプレートを液中に引き込もうとする力を生じ、その力を精密に計測することで表面張力を算出します。計算では、プレートと液体の接触角がゼロ(完全に濡れている状態)と仮定するため、プレートの清浄度が測定精度に大きく影響します。白金プレートを使用することで高い再現性と精度を得られる反面、測定ごとに洗浄が必要となりコストがかかる点がデメリットです。

2-2. デュヌイ法(リング法)

デュヌイ法(リング法)は、リング状の測定子を用いて表面張力を測定する代表的な方法で、JIS K2241にも採用されている標準的な測定法です。リングを液体に沈めた後、ゆっくりと引き上げていくと、リングと液面の間に液膜が形成されます。この液膜が切れる瞬間にリングへ作用する最大の力を測定し、その値から表面張力を算出します。

リングの表裏両面に液膜が形成されるため、測定力は理論的に2倍となり、Zuidema&Waters補正やHarkins&Jordan補正などの理論補正項を用いて正確な値を求めます。白金製リングを使用するのが一般的で、測定精度が高く、古くから広く利用されてきました。ただし、界面活性剤を含む液体のように、時間とともに表面張力が変化する試料には不向きとされています。

2-3. ペンダントドロップ法(懸滴法)

ペンダントドロップ法(懸滴法)は、細い管の先端から液体をゆっくり押し出し、先端にぶら下がった液滴(懸滴)の形状を解析して表面または界面張力を求める方法です。この方法は、粘性の高い液体やプレートにぬれにくい試料にも対応できる点が特徴です。

液滴の形は液体の密度や重力、表面張力のバランスによって決まり、Young–Laplaceの式をもとに液滴形状を理論計算することで張力値を算出します。特に、溶融ポリマーや液体と液体の間の界面張力測定、高温下での金属や酸化物の測定に適しています。他の物質との接触による汚染を避けながら、高精度なデータを得ることが可能です。

2-4. バブルプレッシャー法(最大泡圧法)

バブルプレッシャー法(最大泡圧法)は、液体中に挿入した細い管(プローブ)から気体を送り込み、発生した気泡が破裂する瞬間の最大圧力(最大泡圧)を測定して表面張力を求める方法です。

原理はYoung–Laplaceの式に基づき、毛細管先端の気泡が半径rの半球形で破裂するときの圧力から算出されます。測定では、液体の密度や浸漬深さによる圧力差も考慮します。短時間で気泡を連続的に生成できるため、時間変化を伴う動的表面張力の測定に適しており、特に界面活性剤溶液や高温融体の評価などに活用されています。

2-5. 毛細管法

毛細管法とは、液体中に細いガラス管を垂直に立て、表面張力によって液体が管内を上昇または下降する高さから表面張力を求める方法です。液体の表面張力を測定する最も基本的でシンプルな方法です。測定は比較的簡単で、特に純粋な液体に対して高精度な結果が得られます。

液体中にガラス製の毛細管を垂直に立てると、表面張力の作用によって液体が毛細管内を上昇または下降します。この液柱の高さと毛細管の内径、液体の密度差などの関係から、表面張力を算出します。接触角がゼロ(完全にぬれる場合)のとき、上昇高さは表面張力に比例し、毛細管半径と密度に反比例します。反対に、ぬれにくい液体では液面が下降します。こうした測定の性質上、毛細管法は粘性の高い液体や不均一な試料には不向きです。

3. 自動表面張力計(DY-300)の特長・仕様

自動表面張力計「DY-300」は、液体の表面張力を自動・簡単・高精度に測定できるベーシックモデルです。Wilhelmy法による測定では、ゼロ点調整からプリウエット、測定開始、安定値の検出までの一連の操作を自動で実行し、専門知識がなくても安定したデータを取得できます。品質管理向けに繰り返し測定機能を搭載し、再現性の高い結果を得ることが可能です。

また、オプションの白金リングを使用すれば、デュヌイ法(リング法)による測定やラメラ長の評価も行えます。さらに、液体密度測定キットや沈降性測定キットを追加することで、液体密度や分散粒子の沈降性など、多角的な分析にも対応します。測定範囲は0~1000mN/m、表示分解能0.01mN/m、繰り返し性0.2mN/mと高精度です。操作性に優れたソフトウェア「DYNALYZER」との連携により、誰でも着実に測定できるでしょう。

まとめ

表面張力計は、液体や界面の性質を定量的に評価し、品質管理や研究開発に欠かせない分析機器です。測定方法には、ウィルヘルミー法(プレート法)やデュヌイ法(リング法)などがあります。試料や目的に応じて最適な方式を選ぶことで、より精度の高いデータを得られます。

表面張力の理解と正確な測定は、インク、塗料、化粧品、半導体など、多様な産業分野における製品品質の向上や研究効率化につながります。研究や業務で液体特性をより深く把握したい方は、測定方式の特徴を比較した上で目的に合う表面張力計を導入することで、より信頼性の高い成果を得られるでしょう。

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