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摩擦摩耗解析装置とは?摩擦力の測定方法・製品仕様も解説

部品同士の接触による抵抗や摩耗の進行は、製品の性能や寿命、安全性に大きく関わるため、信頼性の高い測定が求められます。しかし、摩擦は荷重・速度・温湿度など多くの要因に影響されるため、再現性のあるデータを得るのは容易ではありません。こうした課題を解決する手段として活用されているのが「摩擦摩耗解析装置」です。
当記事では、摩擦摩耗解析装置の基本原理や摩擦力の測定方法、主要な試験方式を解説します。自社の研究や品質評価に最適な装置を選定する際のヒントとしてぜひご活用ください。
1. 摩擦摩耗解析装置とは
摩擦摩耗解析装置とは、固体同士が接触して動く際に発生する「摩擦」や「摩耗」の特性を定量的に評価するための装置です。試料と接触子の間で生じる摩擦力や摩擦係数を測定し、滑り性や耐久性などの評価に活用されます。ここからは、摩擦力の基本原理と、摩擦摩耗試験(トライボロジー試験)の概要について解説します。
1-1. 摩擦力とは
摩擦力とは、お互いに接触する2つの固体表面が動こうとする際に生じる抵抗力のことです。静止している物体が動き出すのを妨げる「静止摩擦力」と、動いている物体の動きを妨げる「動摩擦力」に分けられます。静止摩擦力は、物体に力を加えた際にまだ動かないときに働く力で、動き出す直前に最大値となり、このときの力を最大静止摩擦力(fmax)と呼びます。
最大静止摩擦力は、垂直抗力Nと静止摩擦係数μの積で表され、「fmax=μN」という式で計算されます。摩擦係数は接触する素材や表面状態によって異なり、粗い面ほど値が大きくなります。物体が動き始めると摩擦力はやや減少し、動摩擦力に変化します。摩擦力の大きさを正確に把握することは、材料の滑りやすさや摩擦摩耗特性を評価する上で欠かせません。
1-2. 摩擦摩耗試験(トライボロジー試験)とは
摩擦摩耗試験(トライボロジー試験)とは、物体同士が接触して相対運動する際に生じる摩擦・摩耗・潤滑特性を評価するための試験です。トライボロジー(tribology)とは「摩擦・摩耗・潤滑を科学的に研究する分野」とも呼ばれ、摩擦や摩耗の発生メカニズムを理解し、これを制御する技術体系を指します。自動車や航空機、鉄道、医療機器、精密機械など、幅広い産業で不可欠な分野です。
摩擦摩耗試験では、試料同士を一定条件で接触させ、摩擦係数の変化や摩耗量を測定することで、材料の耐久性・信頼性・潤滑性能を評価します。近年はCAE解析の発展によりシミュレーション精度が高まっていますが、摩擦・摩耗現象は理論的に再現が難しく、依然として実験的評価が重要です。試験では、試料の形状、荷重、速度、温湿度などの条件を実際の使用環境に近づけることが求められます。
2. 摩擦の測定方法
摩擦の測定方法には、接触の形状や試験条件、測定条件によってさまざまな方式があります。測定では、試料間に一定の荷重をかけて摩擦力や摩擦係数を求め、材料の滑り性や耐摩耗性を評価します。ここでは、代表的な試験方式を紹介します。
2-1. ピン・オン・ディスク方式
平板状のディスク試料を回転させ、その表面にピン状の試料を押し当てて摩擦力を測定する方式です。接触は面で行われるため、一定の接触面積を維持しやすく、安定したデータが得られるのが特長です。
摩耗の進行が比較的緩やかで、材料の耐摩耗性や潤滑条件の影響を評価するのに適しています。構造がシンプルで試料や試験片の準備が容易なことから、研究機関や企業の基礎評価で最も広く利用されています。
2-2. ボール・オン・ディスク方式
平板状のディスク試料を回転させ、固定されたボールを押し当てて摩擦を測定する方式です。点接触で摩擦を開始するため初期なじみがよく、セラミックスや金属膜など硬質材料の滑り特性・摩擦特性を評価するのに適しています。
試験では摩擦力の変化や摩耗痕の観察を行い、材料の表面処理や潤滑剤の有効性を判断できます。コンパクトな装置構成で操作が容易なため、短時間で定性的な比較評価を行いたい場合にも用いられます。
2-3. ブロック・オン・リング方式
回転する円筒の側面に、ブロック状の試料を押し付けて摩擦を測定する方式です。初期は線接触で摩擦が発生し、試験が進むと摩耗によって面接触に変化します。
この変化を通じて、摩耗過程や潤滑油膜の保持特性を評価できる点が特長です。比較的高荷重条件でも試験可能なため、自動車部品や軸受など、実使用環境に近い状態での評価に活用されます。
2-4. ピン・ブロック方式
円筒形または棒状の試料を両側のブロックで挟み込み、試料を回転させて摩耗や焼付き特性を測定する試験方式です。ブロックの材質や接触圧を変えることで、金属同士の相性や潤滑油膜の破断挙動を観察できます。
また、潤滑設計の改良や材料選定の指針としても役立ちます。潤滑油や添加剤の性能試験に用いられることが多く、特に高荷重条件下での潤滑特性を確認するのに適しています。
2-5. ブロック・オン・プレート方式
往復動する平板試料に固定したブロックを押し当て、面接触で摩擦を測定する方式です。接触面積が一定に保たれるため、長時間の摩耗試験に適しており、摩耗量の経時変化を安定して観察できます。
面圧が比較的低いため摩耗が緩やかで、潤滑剤やコーティング膜の耐久評価に適切です。また、試験後に摩耗痕を観察することで、表面損傷の進行過程を可視化できるという利点もあります。
2-6. ボール・オン・プレート方式
固定したボールを往復動する平板試料に押し当てて摩擦を測定する方式です。点接触のため初期摩擦が安定しやすく、微小な荷重条件でも測定可能です。
ボールや試料の材質を変えることで、異種材料間の摩擦挙動を比較でき、薄膜コーティングや潤滑剤の効果確認にも適しています。接触面積の変化が少ない短時間試験に向いており、研究開発段階での評価に多用されます。
2-7. 四球式(曽田式・シェル式)
4個の同一寸法の鋼球を潤滑油中でピラミッド状に配置し、上部の1個を押し付けて回転させ、潤滑油や潤滑膜の耐荷重性能を評価する方式です。試験後は摩耗痕の大きさや表面状態を観察します。
摩耗の発生や焼付き限界を調べられることから、潤滑剤の摩擦潤滑性能比較や極圧添加剤の効果検証に活用されます。潤滑条件の最適化や新規材料の評価にも役立てられます。
2-8. スラストシリンダー方式
円筒の端面を平板試料に押し付けて回転させる面接触方式です。摩耗が進行しても摺動面の接触面積がほとんど変化しにくいとされています。
一定の面圧条件を維持できるため、焼付きや摩耗の進行を安定的に観察できます。特に滑り軸受や樹脂系材料など、実機に近い摩擦環境の評価に適しており、摩耗形態や摩擦トルクの変化を詳細に分析することが可能です。
3. 自動摩擦摩耗解析装置(TSf-503)の特長・仕様
自動摩擦摩耗解析装置「TSf-503」は、摩擦力をより正確に測定するために開発された高精度試験装置です。新しいコンセプトに基づいた「二軸天秤方式」を採用し、荷重を支えるアームと摩擦力を検出するアームを分離することで、慣性や不要な力の影響を最小化しました。
これにより、摩擦の微細な変動を正確に波形として取得でき、従来機では検出が難しかった微小摩擦の解析も可能です。さらに、分銅交換時のロードセル保護構造により耐久性が向上。解析ソフトウェア「Triboster2」を標準搭載し、直感的な操作で静摩擦・動摩擦の測定やグラフ表示が行えます。多彩な測定モードを備え、材料評価から潤滑試験まで幅広く活用できる汎用性の高い装置です。
まとめ
摩擦摩耗解析装置は、材料表面の摩擦力や摩耗特性を定量的に測定し、滑り性や耐久性を客観的に評価するために欠かせない装置です。摩擦力測定は、接触面の材質や粗さ、荷重、速度、温湿度などの影響を受けるため、計測条件を適切に設定しなければ正確な評価はできません。
ピン・オン・ディスクやボール・オン・ディスクなど、多様な測定方式を理解することで、自社の研究目的や試料特性に最適な試験法を選定できます。研究や品質管理において信頼性の高い結果を得るためには、装置の特性と摩擦評価方式を正しく理解し、最適な評価環境を整えることが重要です。
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