COLUMN製品コラム
粘着・皮膜剥離解析装置とは?測定方式・製品仕様を解説

粘着テープや保護フィルム、薄膜材料の性能を正確に評価する上で欠かせないのが「剥離強度」の測定です。材料がどの程度の力で剥がれるのかを把握することは、品質の安定化だけでなく、製造工程の効率化や不良低減にも直結します。特に、電子部品や二次電池、光学フィルムなどの分野では、剥離角度や剥離速度を細かく制御しながら粘着力を数値化できる試験機が求められています。こうしたニーズに応える装置として注目されているのが、粘着・皮膜剥離解析装置です。
当記事では、粘着・皮膜剥離解析装置の仕組みや用途、測定方式、解析手法を分かりやすく解説します。
| 目次 1. 粘着・皮膜剥離解析装置とは 1-1. 粘着・皮膜剥離解析装置のアプリケーション 1-2. 粘着・皮膜剥離解析装置は引張試験・万能試験機の一種 2. 粘着・皮膜剥離解析装置の測定方式・解析方式 2-1. 多角度剥離試験法 2-2. 平板クロスステージ法 2-3. 角度分散推定曲線 3. 粘着・皮膜剥離解析装置の仕様 まとめ |
1. 粘着・皮膜剥離解析装置とは
粘着・皮膜剥離解析装置とは、粘着テープや皮膜材料の「剥離強度」や「粘着力」を正確に測定し、材料特性を解析するための装置です。粘着テープは日用品に限らず、液晶・半導体・太陽電池などの製造工程でも重要な役割を持ち、その性能評価には客観的な剥離試験が欠かせません。
従来はJIS Z 0237に基づく180度・90度剥離試験が広く用いられてきましたが、治具の調整や剥離角度の維持が難しいなどの課題がありました。粘着・皮膜剥離解析装置では、角度制御を精密に行える機構を備え、アプリケーションごとに異なる剥離角度・速度の条件設定を容易に実現します。生産現場や研究開発において、粘着性能の最適化や品質評価に大きく貢献する装置です。
1-1. 粘着・皮膜剥離解析装置のアプリケーション
粘着・皮膜剥離解析装置は、粘着テープや保護フィルムの剥離強度・粘着特性を評価するだけでなく、各種材料の密着性を可視化するために幅広い分野で活用されています。電子部品では、二次電池の電極材やラミネートフィルムの密着力、積層セラミックコンデンサ(MLCC)のシートとフィルムの密着性評価に用いられます。
さらに、機能性薄膜・転写膜の微小剥離力測定、離型紙・離型フィルムの軽剥離性、塗膜やコーティング皮膜の密着評価、炭素繊維プリプレグと剥離紙の剥離特性の確認など、製造現場から研究開発まで多様な用途に対応します。材料性能の最適化や品質保証に欠かせない解析装置です。
1-2. 粘着・皮膜剥離解析装置は引張試験・万能試験機の一種
粘着・皮膜剥離解析装置は、材料に力を加えて性能を測定する「引張試験機(万能試験機)」の一種に分類されます。引張試験機は、金属・樹脂・フィルムなどに引張力を加え、強度や伸び、破断特性を調べる装置で、世界中の研究開発や品質管理で広く使用されています。
粘着・皮膜剥離解析装置は、この基本原理を応用し、粘着テープ・保護フィルム・薄膜材料などの剥離強度や密着性を高精度で評価することに特化しています。剥離角度や速度を制御しながら粘着力を数値化できるため、電子部品・電池材料・コーティング製品など、多様な分野の材料開発・品質保証に重要な試験機です。
2. 粘着・皮膜剥離解析装置の測定方式・解析方式
粘着・皮膜剥離解析装置では、材料の粘着力や密着性をより正確に評価するため、さまざまな剥離条件を再現できる測定方式が採用されています。ここでは、代表的な多角度剥離試験法や独自技術の平板クロスステージ法、剥離挙動を可視化する角度分散推定曲線について解説します。
2-1. 多角度剥離試験法
多角度剥離試験法は、粘着テープや保護フィルムなどの剥離特性を、任意の剥離角度で測定するための評価手法です。一般的な粘着力評価では、JIS Z 0237で規定された「180度剥離試験法」と「90度剥離試験法」が広く用いられています。180度剥離は装置構成が比較的シンプルで再現性も高い一方、粘着テープの厚さや弾性率の影響を受けやすい特徴があります。一方で90度剥離は支持体の影響が少なく、より純粘着力に近い評価が行えるため理想的な測定法ですが、治具が複雑でテープのたるみ・伸びにより角度がずれやすく、実用上の課題が残されています。
こうした背景から、実使用に近い条件で粘着特性を捉えるためには、固定角度だけでなく、任意の角度で剥離挙動を把握できる多角度剥離試験法が重要となります。粘着剤は剥離角度によって変形挙動や応力分布が大きく変わるため、角度を変えて測定することで、材料特性や製品設計に必要なより詳細なデータが得られます。
近年では、従来のJIS試験の弱点を補うため、任意角度で安定した剥離試験が行える試験機も提案・製品化されています。これにより、半導体・ディスプレイ・光学機器・自動車・医療など、多様な現場で求められる粘着力最適化に対応できる解析が可能となっています。
2-2. 平板クロスステージ法
平板クロスステージ法は、従来の剥離試験で課題となっていた「剥離角度の維持」や「テープのたるみによる誤差」を改善するために開発された、多角度対応型の剥離試験方式です。特に90度剥離試験で問題となりがちな角度のズレを抑え、より高い再現性を実現できる点が特徴です。
この方式では、ロードセルが引張方向へ移動するのと同時に、試料を固定した平板が水平方向へ等速で移動します。内部で駆動ギアとガイドギアが連動し、平板の移動速度と引張速度が常に一致するよう制御されるため、剥離中も角度が一定に保たれます。これにより、粘着テープの伸びやたるみによる剥離角度の変動を抑え、安定した測定が可能になります。
さらに、回転ステージを回転させるだけで剥離角度を0~180度で自由に設定できる点も大きな利点です。複雑な治具交換を必要とせず、1台でさまざまな角度の剥離試験に対応できるため、多様な粘着テープや保護フィルム、薄膜材料の評価に適しています。
2-3. 角度分散推定曲線
粘着テープの剥離力は、剥離角度が変わることで大きく異なる性質があります。そのため、多角度での剥離試験を行う場合、本来であれば角度ごとに測定し直す必要があります。しかし、実際には治具の交換や角度調整に手間がかかり、効率的な評価が難しい場面も多くあります。こうした課題を補うために活用されるのが「角度分散推定曲線」です。
この推定曲線は、剥離角度θにおける剥離力P(θ)を、90°で実測した剥離力P₉₀を基準として推定する手法で、以下の関係式(特許第7522511号)を用いて算出されます。
| P(θ)=P₉₀×(1/((1−cosθ)×sinθ))ⁿ |
ここで、θは剥離角度、P₉₀は90°での剥離力、nは経験的に導かれたパラメータです(30°≤θ≤90°は0.58、90°<θ<180°は1.0)。この式を用いることで、45°~135°の範囲における剥離力を推定し、グラフとして可視化することができます。これが角度分散推定曲線です。
ただし、この推定曲線はあくまでも計算上の推定値であり、実測値を完全に代替できるものではありません。試料の種類や構造、粘着剤の特性、試験速度や環境条件によって、推定値と実測値が大きく乖離する場合もあります。そのため、実測値との比較を行いながら、推定曲線の適用性や適用範囲を慎重に判断する必要があります。
3. 粘着・皮膜剥離解析装置の仕様
粘着・皮膜剥離解析装置(VPA-H100)は、省スペースで設置でき、任意の剥離角度での試験が行える横型引張試験/万能試験機です。0.01Nオーダーの微小な剥離力まで測定できるため、保護フィルムや粘着テープなど、繊細な材料の特性評価に適しています。角度の設定は治具を付け替える必要がなく、ステージ移動速度と剥離速度が一致する構造により、条件設定が直感的で扱いやすい点も特長です。
高速剥離にも対応しており、1回の測定で低速から高速までの剥離強度の速度スペクトルを取得できます。また、材料の変形を抑えた低角度試験や、カメラと観察位置が同期した動的観察(オプション)も可能です。安全カバーはオプション選択式となり、用途や運用環境に応じて柔軟にカスタマイズできる仕様となっています。
まとめ
粘着・皮膜剥離解析装置は、粘着テープやフィルムなどの剥離強度・粘着力を高精度に測定し、材料特性を評価する試験機です。JIS規格の180度・90度剥離試験に加え、多角度での剥離評価が可能で、液晶・半導体・電池材料・コーティングなど幅広い分野で活用されています。
平板クロスステージ法により剥離角度を安定的に維持でき、0.01Nの微小剥離力測定や高速剥離試験にも対応します。また、角度分散推定曲線によって剥離挙動を可視化でき、研究開発から品質管理まで粘着特性の最適化に貢献する装置です。
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