COLUMN製品コラム
粘度計とは?種類ごとの測定原理や用途・選び方を解説

液体や半固体の製品を取り扱う産業では、「粘度」の管理が品質を左右します。粘度とは、物質がどれほど流れにくいかを示す物理量であり、温度や濃度、組成などの条件によって大きく変化します。そのため、食品、化学薬品、塗料、医薬品などの分野では、粘度の測定が製品開発や品質保証に欠かせません。
粘度計は、液体や半固体の流動性を定量的に評価するための装置で、試料に加わる力(せん断応力)と流れる速さ(せん断速度)との関係をもとに粘度を算出します。近年は高精度化やデジタル化が進み、リアルタイム監視や自動記録にも対応する装置が登場しています。
当記事では、代表的な粘度計の種類や測定原理、選定のポイントを詳しく解説します。目的や環境に応じて最適な粘度計を選び、正確なデータ取得に役立てましょう。
| 目次 1. 粘度計とは 1-1. 流体による粘度の違い 2. 【種類別】粘度計の測定原理と用途 2-1. 細管式粘度計 2-2. 回転式粘度計 2-3. 振動式粘度計 2-4. 落球式粘度計 3. 粘度計の選び方 3-1. 流動特性 3-2. 測定可能な粘度の範囲・精度 3-3. 測定環境 まとめ |
1. 粘度計とは
粘度計とは、液体や半固体の「流れにくさ(粘度)」を定量的に測定する装置です。粘度は、流体に加わる力(せん断応力)を流れる速さ(せん断速度)で割った値として表され、単位はmPa・s(ミリパスカル秒)が一般的です。つまり、粘度が高いほど流れにくく、低いほど流れやすい液体であることを示します。
粘度計は、化学・食品・塗料・医薬品など幅広い分野で用いられています。品質管理や製品開発では、温度や濃度による粘度変化を把握することで、製品の安定性や加工性を評価できます。
1-1. 流体による粘度の違い
流体の粘度は、力を加えたときに変化するかどうかで「ニュートン流体」と「非ニュートン流体」に分けられます。
ニュートン流体は、加える力(せん断応力)が変化しても粘度が一定の流体を指し、水や蜂蜜、食用油などが代表例です。これらはせん断応力とせん断速度が比例関係にあり、グラフにすると原点を通る直線となります。
一方、非ニュートン流体は、力の加え方によって粘度が変化します。代表的なものは3種類あり、「ビンガム流体」はバターのように、ある一定以上の力を加えないと流れ出さない性質を持ちます。「擬塑性流体」は、マヨネーズやケチャップのように力を加えると粘度が下がり、流れやすくなる流体です。そして「ダイラタント流体」は、片栗粉と水を混ぜた液体のように、力を加えるほど硬くなる特徴があります。
多くの純粋な液体はニュートン流体ですが、複数の物質が混ざった混合物は非ニュートン流体であることが多く、工業材料や食品ではこの性質を理解することが品質評価に欠かせません。
2. 【種類別】粘度計の測定原理と用途
粘度計は、原理ごとに得意な粘度域や試料の流動特性が異なります。測定条件(温度・せん断速度・サンプル量)と対象流体(ニュートン/非ニュートン)を整理し、目的に合った粘度計を選びましょう。
ここでは、粘度計の種類について解説します。
2-1. 細管式粘度計
細管式(毛細管)粘度計は、細いガラス管の中を液体が一定温度で流れる時間から粘度を求める方法です。構造がシンプルで、試料を少量で測定できる点が大きな特徴です。主にニュートン流体の測定に適しており、潤滑油や溶剤などの低~中粘度液体の評価に広く使われています。
代表的な装置にはウベローデ粘度計やキャノン–フェンスケ粘度計があります。測定精度を保つためには、温度の管理と試料中の気泡除去が欠かせません。
2-2. 回転式粘度計
回転式粘度計は、液体の中でスピンドルや円盤を一定速度で回転させ、その回転に必要なトルクから粘度を計算します。非ニュートン流体の測定に最も広く利用されており、塗料・インク・食品・化粧品などの流動性評価に欠かせない機器です。
温度制御機能やデータ記録機能を備えたモデルも多く、品質管理から研究開発まで幅広く活用されています。測定時は、スピンドルの選定や試料量、気泡の混入などに注意が必要です。
2-3. 振動式粘度計
振動式粘度計は、音叉や棒状センサーを液体中で振動させ、その抵抗の大きさから粘度を算出する装置です。センサーを液体に浸すだけで測定できるため、操作が簡単でリアルタイム測定にも対応します。製造ラインでの連続監視や反応過程の粘度変化を確認する用途に適しており、高温・高圧下でも安定した測定が可能です。
少量のサンプルで測定できることから、貴重な試料を扱う研究現場でも重宝されています。
2-4. 落球式粘度計
落球式粘度計は、液体中に球を落とし、その落下速度から粘度を求める方法です。粘度が低い液体では球が速く落ち、高い液体ではゆっくり落ちます。構造がシンプルで操作も簡単なため、比較的低~中粘度の透明な液体の測定に向いています。主にニュートン流体に適用され、溶媒や潤滑油、化粧品などの品質管理に利用されています。
測定では、温度の均一化や容器の垂直度など、基本的な条件を一定に保つことが精度向上のポイントです。
3. 粘度計の選び方
粘度計を選ぶ際は、測定対象の性質や粘度の範囲、求める精度、使用環境などを総合的に考えることが大切です。同じ粘度でも流動特性や温度条件によって適した測定方式は変わります。また、測定の目的が研究開発か品質管理かによっても最適な機種は異なります。
ここでは、粘度計の選定時に押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
3-1. 流動特性
まず、測定対象が「ニュートン流体」か「非ニュートン流体」かを確認しましょう。ニュートン流体(水や潤滑油など)は力を加えても粘度が変化しないため、細管式や落球式などの古典的な粘度計で正確に測定できます。一方、非ニュートン流体(マヨネーズや塗料など)は力の加え方によって粘度が変化するため、回転式や振動式が適しています。
特に非ニュートン流体では、せん断速度を調整しながら測定できる回転式が有効です。測定対象の性質を理解しないと、正確なデータが得られない点に注意が必要です。
3-2. 測定可能な粘度の範囲・精度
粘度計にはそれぞれ得意な粘度範囲があります。低粘度の液体には細管式や落球式、高粘度の試料には回転式や振動式が向いています。また、研究開発や品質管理のように高精度が求められる場合は、再現性の高いデジタル制御型の粘度計を選ぶのが望ましいでしょう。
一方、日常的な工程管理では、多少の誤差よりも操作の簡便さや測定スピードが優先されることもあります。測定目的に応じて「必要な精度」と「操作性」のバランスを取ることが、最適な粘度計選定のポイントです。
3-3. 測定環境
測定を行う環境も粘度計の選定に大きく影響します。高温や高圧条件で使用する場合は、耐熱・耐圧構造の装置が必要です。工場ラインや屋外での使用には、振動式などの耐久性と安定性に優れたタイプが適しています。一方で、研究室での精密測定には温度制御機能を備えた回転式が便利です。
また、試料量が限られている場合は、少量で測定可能な振動式や小型セル対応型を選ぶと効率的です。使用環境に合わせて最適な設計・機能を持つ粘度計を選ぶことで、長期的な信頼性と精度を確保できます。
まとめ
粘度計は、液体や半固体の流れやすさを定量化し、製品の品質と安定性を維持するために欠かせない測定機器です。細管式・回転式・振動式・落球式など、方式ごとに得意な粘度範囲や特性が異なります。特に非ニュートン流体のように粘度が条件で変化する試料では、回転式や振動式などの制御機能付き粘度計が有効です。
装置の選定では、測定対象の流動特性、粘度範囲、精度、使用環境を十分に検討することが大切です。研究開発では精密さを重視し、製造現場では操作性やスピードを優先するなど、目的に応じた選び方が求められます。正確な粘度測定は、製品品質の向上だけでなく、生産効率やコスト削減にもつながる工程です。
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