COLUMN製品コラム
アルコール濃度計とは?種類・原理やアルコール分の測定手順を解説

アルコール濃度計は、酒類製造や飲料開発の工程管理に欠かせない計測機器であり、製品品質の安定性を支える基盤になります。アルコール分は発酵の進行度や規格適合性を判断する重要な指標であり、数値のわずかな誤差が最終製品の味わいや安全性に影響するため、適切な測定方式の選定と正確な操作が求められます。
当記事では、主要な濃度計の原理、特徴、測定手順を整理し、酒類製造の現場で求められる基本的な知識を解説します。酒類製造や飲料開発に関わる方はぜひ参考にしてください。
| 目次 1. アルコール濃度計とは 2. アルコール濃度計の種類と原理 2-1. 振動式密度計 2-2. 浮ひょう計 2-3. 屈折計 3. 振動式密度計を使ったアルコール分の測定手順 3-1. マニュアルに沿って校正をする 3-2. 試料を採取する 3-3. 検体を調整する 3-4. 測定を行う 3-5. 結果を記録する まとめ |
1. アルコール濃度計とは
アルコール濃度計とは、液体や気体に含まれるアルコール分を定量的に測定する計測機器です。酒類製造や飲料開発の工程管理では、製品の品質を維持するために正確なアルコール分の把握が欠かせません。特に醸造・蒸留の各工程では、発酵の進行度合いや製品規格の確認に使用され、製造の安定運転を支える基礎的な計測手段になります。
濃度計にはアルコール専用機だけでなく、糖度計やガス濃度計など幅広い関連機器が存在し、メーカーによって分類方法が異なる場合があります。製造工程に最適な機種を選ぶには、測定原理や試料特性を理解した上で選定することが大切です。
2. アルコール濃度計の種類と原理
アルコール濃度計にはいくつかの測定方式がありますが、酒類製造の現場で一般的に用いられる方式は「振動式密度計」「浮ひょう計」「屈折計」の3種類です。ここでは、それぞれの原理と特徴を分かりやすく解説します。
2-1. 振動式密度計
振動式密度計は、測定管やパイプを振動させ、その固有振動周期から液体の密度を求める方式です。内部に液体を満たした細いパイプの横方向の自由振動数を高精度で測定し、密度と振動周期の間に成り立つ一定の関係式を使って濃度を算出します。密度が大きい液体ほど振動はゆっくりになり、密度が小さいほど振動が速くなるという物理特性を利用しています。
この方式は必要な試料量が非常に少なく、測定時間も短く済むことから、酒類製造の現場で広く採用されています。振動式は再現性や精度が高く、発酵中の醪や調整液の経時変化を正確に追える点が大きな利点です。また、温度補正機能を備えた機種も多く、温度変化に伴う密度の揺らぎを最小限に抑えながら測定できます。
2-2. 浮ひょう計
浮ひょう計は、アルキメデスの原理に基づく最も古典的な密度測定器です。液体に浮かべたガラス製の浮ひょうが沈んだ深さを読み取り、浮力との関係から密度を求めます。浮ひょうが液体中で静止した位置は、浮ひょうが押しのけた液体の質量が浮ひょう本体の質量と等しくなる点であり、その位置が密度目盛として設計されています。構造はシンプルで、胴部に重りを調整したガラスの本体と、密度目盛を挿入した細長い茎(けい部)で構成されています。
石油製品や化学製品に多く用いられる浮ひょう計ですが、酒類製造でも特定の工程や補助的測定として利用されるケースがあります。電源を必要とせず、取り扱いが簡単な点がメリットです。ただし、温度の影響や表面張力によるわずかな誤差が出やすく、高精度が求められる工程では補正が必要になります。コストを抑えて密度を確認したい場面や、簡易測定を行いたい現場で役立ちます。
2-3. 屈折計
屈折計は、液体に光を通した際の屈折角から屈折率を求め、その値をアルコール濃度に換算する測定器です。光が物質を通過する際の屈折挙動を示す「スネルの法則」を応用しており、入射角90°の光に対する出射角を測定することで屈折率を算出します。屈折率は溶液組成と密接に関係するため、日本酒の日本酒度(ボーメ)測定にも活用されています。
近年は、発酵管理における成分変化を少量サンプルで確認したいニーズが高まり、ポータブル屈折計の利用が広がっています。特に屈折と旋光を同時に測定できる機種は、醪の状態を効率的に把握でき、小規模仕込みの研究開発などで重宝されています。サンプル量が限られる自家醸造キットの試験にも適しており、持ち運び性の高さも強みです。
3. 振動式密度計を使ったアルコール分の測定手順
振動式密度計を用いたアルコール分測定は、工程管理や品質確認に必要な基本操作です。ここでは、国税庁所定分析法の考え方も踏まえながら、酒類製造の現場で求められる標準的な手順を解説します。
3-1. マニュアルに沿って校正をする
測定の信頼性を確保するには、機器の調整と校正が不可欠です。まず、手持型振動式密度計のマニュアルに従い、水を用いて装置の調整を行います。この段階で、測定管内の気泡除去や温度状態の安定化を確認し、基本機能が正しく動作しているかを把握します。続いて、水または密度標準液を使用して校正を行います。
標準液は国家標準までトレーサビリティが確保されている製品を選ぶことで、測定精度を安定させられます。校正値はその日の測定条件や温度環境に影響を受けるため、測定前には必ず実施しましょう。
3-2. 試料を採取する
試料採取は、国税庁所定分析法に基づき、品目や製品特性に応じて行います。清酒、焼酎、ビールなど品目ごとに扱いが異なるため、採取量や容器、採取方法を誤らないようにしましょう。
また、炭酸ガスを含む製品では、ガス抜きを行う必要があります。振とうや静置など適切な方法でガスを除くことで、密度測定への影響を抑えられます。試料採取は一見単純に見えますが、測定値の再現性を左右する重要な工程です。
3-3. 検体を調整する
試料の性状や成分に応じて、検体調整を行います。エキス分を含む酒類では、蒸留操作を行い、留液を測定に使用する必要があります。
焦げ付きの恐れがある検体は、二連フラスコを用いた水蒸気蒸留法が推奨されます。アルコール度数によって採取すべき留液量(例:22度未満は93%以上)が異なるため、基準に合わせて調整します。調整後は原容に戻し、均一に混合して密度測定に適した状態に仕上げます。
3-4. 測定を行う
検体が整ったら、振動式密度計のマニュアルに従って測定を進めます。サンプルを測定部に注入する際は気泡の混入に注意し、サンプルが十分に馴染むまで数秒待ってから測定開始します。温度はアルコール分測定に大きく影響するため、機器が指定する温度安定基準を満たしている必要があります。一般的な基準として、測定精度±0.1vol%以内を達成できる温度条件で測定することが求められます。
測定中は表示される密度値や温度変化を確認し、異常がないかを逐次チェックします。測定値は、自動換算機能によりアルコール分vol%に変換されますが、必要に応じて補正係数を確認することも大切です。
3-5. 結果を記録する
測定が完了したら、結果を正確に記録します。振動式密度計では画面表示、プリントアウト、データ出力など複数の記録方法が用意されており、測定値はvol%で小数点以下2桁まで表示されます。国税庁所定分析法では、この小数点以下2桁目を切り捨てて記帳することが定められているため、記録時の処理を誤らないよう注意が必要です。
併せて、測定日時、試料名、温度条件、校正の有無、使用機器などの情報も残すことで、後のトレースや品質管理に役立ちます。データ管理を適切に行うことで、製品の一貫性と監査対応の質を高められます。
まとめ
アルコール濃度計は、酒類製造や品質管理において不可欠な計測手段であり、製品の一貫性と安全性を確保するために正確な運用が求められます。
振動式密度計・浮ひょう計・屈折計の各方式は、原理・精度・適した用途に明確な違いがあり、工程ごとに最適な機器を使い分けることが品質管理の精度向上につながります。特に振動式密度計は少量の試料で迅速かつ高精度な測定が可能なため、多くの酒類製造工程で採用されています。
また、正しい測定には校正から試料採取、検体調整、温度管理、データ記録まで一連の操作を丁寧に行うことが大切です。測定条件の統一や記録の精確性を確保することで、監査対応や品質保証の質を高められます。各測定方式の特性を理解し、目的に応じて適切に活用することが、信頼性の高い製造管理につながるでしょう。アズサイエンスではアルコール濃度計も取り扱っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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