COLUMN製品コラム

旋光計とは?測定原理・測定項目(比旋光度・糖度)を解説

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光学活性物質の純度や濃度を評価する必要があるにもかかわらず、「旋光計で何が分かるのか」「比旋光度や光学純度の扱い方がよく分からない」と感じる方は少なくありません。製薬・食品・化学などの分野では、光学異性体のわずかな違いが品質や安全性に影響するため、計測器に関する測定原理の正しい理解と適切な機種選定は必須と言えます。

当記事では、旋光計の基本原理や旋光度・比旋光度・国際糖度といった主要な測定項目、代表的な機種の特徴を解説します。自社の品質管理や研究開発に旋光計を効果的に活用するための知識を、この機会に整理してみてください。

目次

1. 旋光計とは
1-1. 物質の「旋光性(光学活性)」とは
1-2. 旋光計の用途・活用分野

2. 旋光計の基本的な測定原理

3. 旋光計の主な測定項目(分かること)
3-1. 旋光度(α)と比旋光度([α])
3-2. 光学純度(比旋光度を用いた応用)
3-3. 国際糖度(ISS)

4. 主な旋光計の特長・仕様
4-1. モジュール型旋光計 MCP4100/5X00
4-2. 旋光計 MCP100/150

まとめ

1. 旋光計とは

旋光計とは、溶液中に含まれる光学異性体の純度や濃度を測定する装置です。光学異性体は偏光を回転させる性質(旋光性)を持ち、その回転角度は溶液中の濃度におおむね比例します。旋光計はこの「旋光度」を精密に測定し、物質の定量や品質評価に役立ちます。

1-1. 物質の「旋光性(光学活性)」とは

光学活性(旋光性)とは、特定の物質が平面偏光を通過させた際に、その偏光面を回転させる性質です。観測者から光源を見て偏光面が右(時計回り)に回転する場合は右旋性(d, +)、左(反時計回り)に回転する場合は左旋性(l, −)と定義されます。この性質は、分子が「キラル」であるかどうかに由来します。

キラルとは右手と左手のように互いに重ね合わせられない構造を持ち、その一対をエナンチオマー(鏡像異性体)と呼びます。エナンチオマーは同じ分子式を持ちながら、旋光方向が正反対である点が特徴です。また、(+)体と(−)体が1:1で混ざると互いの回転が相殺され、旋光度が0となるラセミ体となります。

1-2. 旋光計の用途・活用分野

旋光計は、光学活性物質を扱う多様な業界で、品質管理や成分評価のために広く利用されています。代表的な分野は製薬・製糖・食品・香料・化学の5つです。製薬業界では、医薬品成分に含まれる光学異性体の識別や純度試験に欠かせず、化合物の特定にも旋光度の測定が活用されます。製糖業界では、ショ糖をはじめとする糖類の種類や純度を確認する指標として重要です。

食品分野では、L-グルタミン酸ナトリウムなど光学活性を示す成分の品質管理に使用されます。また、香料や化学品の製造においても、光学異性体の比率や濃度を把握する目的で旋光計が導入されています。このように、旋光計は光学活性物質を正確に評価するための基盤となる測定装置として、多くの産業で不可欠な役割を果たしています。

2. 旋光計の基本的な測定原理

旋光計の測定原理は、「偏光した光が試料を通過する際にどれだけ回転するか」を捉える仕組みに基づきます自然光は多方向に振動する波で構成されており、このままでは旋光による回転角を測定できません。そこでまず偏光子を通し、特定の振動方向のみを持つ平面偏光へと整えます。次に、この平面偏光を光学活性物質を入れたセルに通過させると、分子との相互作用によって偏光面が右または左に回転します。

旋光計は、この回転した偏光面を検光子と呼ばれる2つ目のフィルターで検出します。検光子を回転させ、光が最も透過する(または透過しない)位置を見つけることで、偏光がどれだけ回転したかを角度として読み取ることが可能です。この値が実測旋光度であり、光学活性物質の種類や濃度を評価する基礎データとして利用されます。

3. 旋光計の主な測定項目(分かること)

旋光計では、偏光の回転角から物質の性質や状態を評価できます。ここでは、基本となる旋光度や比旋光度、光学純度、国際糖度といった代表的な測定項目について、その概要と活用場面を紹介します。

3-1. 旋光度(α)と比旋光度([α])

旋光度(α)は、旋光計で測定される偏光の回転角であり、光学活性物質がどれだけ偏光面を回転させたかを示す基本的な値です。しかし、実測される旋光度は一定ではなく、溶液の濃度、試料セルの長さ、温度、光の波長など複数の条件に左右されます。

このままでは物質ごとの比較ができないため、条件を標準化した比旋光度[α]が定義されています。比旋光度は、実測旋光度αをセル長l(dm)と濃度c(g/mL)で補正した値で、次式で表されます。

[α]tλ = α /(l・c)

ここで「t」は温度(℃)、「λ」は光の波長(nm)を示します。一般的に旋光計ではナトリウムD線(589nm)が使用され、この場合は[α]Dと表記されます。

3-2. 光学純度(比旋光度を用いた応用)

比旋光度は、光学活性物質の濃度や光学純度を評価する際の指標として利用できます。旋光度が濃度に比例する性質を持つため、比旋光度[α]を用いれば溶液中の光学異性体の濃度を定量することが可能です。さらに、エナンチオマーが混在する場合は、それぞれの比旋光度値から混合比を逆算できます。

たとえば、(+)-体と(−)-体をそれぞれ[α+][α−]とすると、混合物の比旋光度は[α]=[α+]×x+[α−]×yで表されます。この原理を応用した指標が光学純度(エナンチオマー過剰率)で、純粋なエナンチオマーの比旋光度を基準として「光学純度(%)=[α]混合物/[α]純粋体×100」の式で算出します。旋光計のデータから混合比を直接求められるため、品質管理や反応評価において非常に有効な手法です。

3-3. 国際糖度(ISS)

国際糖度(International Sugar Scale, ISS)は、製糖・食品業界でショ糖溶液の濃度や純度を評価するために用いられる標準指標で、単位は°Zで表されます。国際糖度は20.0℃における測定値を基準としており、精製糖の品質評価において欠かせない尺度です。

本来は恒温水を循環させて温度を一定に保ちながら測定しますが、ショ糖に限定される測定項目であるため、温度による旋光度の変化が体系化されており、20.0℃以外で測定した値も温度補正によって正確な°Zに換算できます。実際の旋光計には、温度補正なしのISSと、補正を自動反映したISS(TC)の両方が搭載されている機種もあります。

4. 主な旋光計の特長・仕様

旋光計には、測定精度や測定条件、測定範囲、操作性、対応する試料条件に応じてさまざまなモデルがあります。ここでは、研究・品質管理の現場で利用される代表的な旋光計の製品情報を紹介します。

4-1. モジュール型旋光計 MCP4100/5X00

MCP4100/5X00は、製薬分野など高い精度と信頼性が求められる現場に適したモジュール型旋光計です。石英校正標準にはIDと温度別の校正値が内蔵されており、装置側で自動認識して安定した測定を実現します。

サンプルセルにはハステロイを採用し、耐食性と高速温調を両立している点が特長です。さらに、Filling Check(カメラオプション)により気泡の有無を可視化でき、測定誤差の低減に役立ちます。標準589 nmに加え最大7波長を追加でき、多様な分析条件に対応可能です。測定データや監査証跡のエクスポート、バックアップ機能、PC運用ソフトにも対応しており、データ管理面でも高い利便性を備えています。

モジュール型旋光計 MCP4100/5X00の詳細はこちら

4-2. 旋光計 MCP100/150

MCP100/150は、製薬企業の品質管理や研究用途に適した、A3~A4サイズ相当のコンパクトな旋光計です。最大セル長を100mm以下に絞った設計により省スペースで設置でき、ペルチェ素子による迅速かつ安定した温度調整が可能です。

測定セルはステンレスやハステロイB-3など耐久性の高い材質を採用し、塩酸に対する耐性も確保しています。石英校正標準は温度別の校正データとIDを内蔵し、正確な校正を自動化します。セル情報や温度情報は無線で本体に送信されるため、操作性も向上しました。MCP150では21CFR Part11にも対応し、データ信頼性が求められる環境での使用に適したモデルです。

旋光計 MCP100/150の詳細はこちら

まとめ

旋光計は、光学活性物質が偏光をどれだけ回転させるかを測定することで、濃度・純度・光学異性体の比率など、研究開発や品質管理に欠かせない情報を得られる分析装置です。旋光度や比旋光度、光学純度、国際糖度といった測定項目を理解することで、自社製品の評価精度を高め、分析結果の再現性向上にもつながります。

また、用途に応じて最適な機種を選ぶことで、測定効率やデータ管理の質も改善できます。自社の分析目的や求める精度を明確にした上で、適切な旋光計を導入し、製品品質の向上や研究の高度化を実現しましょう。アズサイエンスでは旋光計も取り扱っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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