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屈折計とは?測定原理・用途から屈折計の種類を分かりやすく解説

屈折計は、光の曲がり方を利用して液体や固体の屈折率を測り、濃度や糖度を定量的に把握する計測器です。食品・化学・金属加工など多様な分野で品質管理を担う機器として広く利用されています。測定は少量の試料で短時間に行えるため、生産ラインでの連続チェックから研究開発における材料評価まで用途が広く、現場の効率化と品質の安定に大きく貢献します。
当記事では、屈折計の原理、種類、測定手法、食品・工業分野における具体的な用途などを分かりやすく解説します。
| 目次 1. 屈折計とは 1-1. 屈折計の種類 2. 屈折計の測定手法の種類と原理 2-1. 最小偏角法 2-2. 臨界角法 2-3. Vブロック法 3. 屈折計の主な用途 3-1. 糖度計 3-2. 塩分濃度計 3-3. 切削油濃度計 3-4. 洗浄液濃度計 まとめ |
1. 屈折計とは
屈折計は、光が曲がる性質を利用して液体の濃さを調べる計測器です。水の入ったコップにストローを入れると曲がって見える「光の屈折」を応用して屈折率を測り、糖度や濃度へ換算します。
使い方はシンプルで、プリズムと呼ばれる部分に試料を1~2滴のせて測定します。測定時間が短く、少量で測れるため、生産ラインや品質管理でよく使われています。食品分野では果汁やはちみつの糖度確認に、化学・金属加工では塩分や切削油・洗浄液の濃度管理に用いられます。
屈折計という名称は共通ですが、測る対象によって糖度計や濃度計と呼び分けるケースがあります。品質を一定に保つためのチェックに欠かせない機器です。
1-1. 屈折計の種類
屈折計は、主に「手持屈折計」「アッベ屈折計」「デジタル屈折計」の3種類に分類できます。
手持屈折計は最も身近なタイプで、プリズムに液を1~2滴のせてのぞくだけで測れるため扱いやすく、果汁・調味料・切削油・洗浄液など多様な濃度管理にも応用できます。近年は温度補正や防水機能を備えたモデルも普及しています。
アッベ屈折計は、臨界角法を利用して屈折率を精密に測る装置で、顕微鏡に似た外観が特徴です。プリズムに試料をのせ、明暗の境界を目視で読み取り、光学ガラスやフィルムなどの材料評価に利用されます。液体から固体、薄膜まで対応できるため、研究・製造の現場で欠かせない装置です。
デジタル屈折計は、表示やデータ管理を自動化したタイプで、少量の試料で高精度に測定できます。温度補正機能により安定した値が得られ、スマートフォン連携でデータ管理を行える機種もあります。
2. 屈折計の測定手法の種類と原理
屈折計で屈折率を測る方法は複数あり、それぞれに特徴があります。代表的なものが「最小偏角法」「臨界角法」「Vブロック法」の3つです。どの手法も光が試料に入るときの曲がり方を観察し、そこから屈折率を計算しますが、測定精度・対象試料・必要な加工などが異なります。
ここでは、それぞれの原理について詳しく解説します。
2-1. 最小偏角法
最小偏角法は、光学ガラスなど固体の屈折率を最も精密に測れる手法として古くから使われています。試料を三角形のプリズム形状に加工し、光を通したときの「最も曲がった角度(最小偏角)」を読み取り、その値とプリズムの角度から屈折率を計算します。高い精度を得るためには、プリズムの2面を丁寧に研磨する必要があります。
この方法はJIS B 7071-1:2022で規格化されており、光学機器メーカーでも標準的な評価方法です。試料加工が必要という手間はありますが、信頼性の高い測定方法です。
2-2. 臨界角法
臨界角法は、構造がシンプルで液体・固体どちらにも使えるため、手持ちの糖度計やアッベ屈折計、食品工場のインライン屈折計などに広く採用されています。
原理は、プリズムと試料の境界に光を入れたとき、屈折の限界となる「臨界角」で光がちょうど境目のように進む性質を利用します。観察すると、臨界角を境に明るい部分と暗い部分が分かれるため、その境目の角度から屈折率を計算できます。ただし、明暗の境界がややぼやけて見えることがあり、精度が左右されるため注意が必要です。
不透明な試料にも対応できる点が実用上の大きなメリットです。
2-3. Vブロック法
Vブロック法は、精密測定を比較的手軽に行える方式として利用されている手法です。測定精度は最小偏角法ほどではありませんが、繰り返しの測定がしやすく、レンズ材料などの品質管理に適しています。
Vブロック法では、V字型のブロックプリズムの上に、90°の角を加工した試料をのせ、光を入射したときの出射角度(偏角)を測定して屈折率を計算します。JIS B 7071-2:2024で規格化されており、測定手順が明確に定められています。試料加工は必要ですが、測定スピードと扱いやすさから現場で選ばれるケースが多い方式です。
3. 屈折計の主な用途
屈折計は、光の曲がり方から液体や固体の屈折率を測り、濃度や糖度に換算する計測器です。ここでは、屈折計の主な用途を、糖度・塩分・切削油・洗浄液の4分野に分けて解説します。
3-1. 糖度計
屈折計は、果汁やはちみつ、ジャムなどに含まれる可溶性固形分(Brix)を測り、糖度の目安にするために広く使われています。屈折計で測れるBrixは糖だけでなく酸なども含みますが、果実では糖分が多いため甘さの判断に役立ちます。方式は屈折式(アナログ・デジタル)と非破壊式があります。屈折式は数滴で素早く測れ、非破壊式は大量測定に向いています。
屈折計による糖度測定は、受入検査、加工の濃縮度チェック、出荷ロットの品質判断など、食品分野の品質管理で欠かせない手法です。
3-2. 塩分濃度計
屈折計は、食塩水の屈折率から塩分濃度を求める用途でも活躍します。食塩水は濃度によって光の曲がり方が変わるため、屈折計で濃度を直接測れます。特に10~28%のような高濃度食塩水は、電気伝導度式の塩分計では希釈が必要になる場合がありますが、屈折計なら希釈なしで測定できます。
漬け込み液や麺づくりの食塩水、加工食品の調味液の管理など、多くの現場で使われています。屈折計を使うことで、誰でも短時間で塩分のばらつきを確認でき、品質の均一化に役立ちます。
3-3. 切削油濃度計
屈折計は、金属加工で使用される水溶性切削油の濃度管理にもよく使われます。切削油は原液を水で薄めて使用するもので、濃度が適正範囲から外れると、工具摩耗、悪臭、仕上げ面の粗れ、泡立ちなど多くの問題が発生します。
屈折計は、切削油の屈折率を測り、Brixに換算し、さらに油ごとの換算係数を掛けることで実際の濃度を求められます。測定は、新液作成時・作業中・補充時の3つのタイミングが基本です。ATC搭載の屈折計やインライン屈折計を組み合わせると、工場全体の濃度管理の精度が向上し、トラブル予防とコスト削減につながります。
3-4. 洗浄液濃度計
屈折計は、工業用洗浄液の希釈状態や汚れ具合を確認するためにも使用されます。洗浄液は濃度が低いと洗浄力が弱くなり、高すぎると再付着や乾燥不良、コスト増の原因になります。
屈折計では、洗浄液の屈折率を測り、Brixとして読み取り、換算表で濃度を求めます。前処理槽・超音波洗浄槽・リンス槽など、場所ごとに採取位置を決めて測ると変動を管理しやすくなります。屈折計を使うことで、洗浄不良を早期に発見でき、品質トラブルの予防につながります。
まとめ
屈折計は、光の屈折という物理現象を利用し、液体・固体の性質を短時間かつ高精度で評価できる計測器です。食品分野では果汁・はちみつ・ジャムなどの糖度管理に、工業分野では塩分濃度や切削油・洗浄液の希釈状態の確認に利用され、品質の均一化やトラブル防止に欠かせない存在です。
屈折計には手持型から研究用のアッベ屈折計、デジタル屈折計まで幅広い種類があり、最小偏角法・臨界角法・Vブロック法といった測定原理によって精度や適用範囲が変わります。目的に合った最適な機種を選び、品質管理の精度向上を目指しましょう。
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