COLUMN製品コラム
酸化安定度試験器とは?測定方式の違いと選び方のポイント

酸化安定度試験器は、油脂や燃料、潤滑油、化粧品などがどれくらい酸化しにくいかを数値で評価する分析機器です。酸化による劣化は、食品の風味低下や燃料系統のトラブル、配合製品の変質など、さまざまな不具合の原因となるため、製造現場では定量的な評価が欠かせません。
当記事では、酸化安定度と酸化安定度試験の基本的な考え方を整理し、代表的な測定方式であるランシマット法、シャルオーブン法、誘導期間法の違いを解説します。
| 目次 1. 酸化安定度試験器とは 1-1. 酸化安定度とは 1-2. 酸化安定度試験の用途・活用分野 2. 酸化安定度試験の測定方式 2-1. ランシマット法(CDM法) 2-2. シャルオーブン法(AOM法) 2-3. 誘導期間法(RSSOT法) 3. 酸化安定度試験器「RapidOxy100」の特長・仕様 3-1. 「RapidOxy100」の特長 3-2. 「RapidOxy100」の仕様 まとめ |
1. 酸化安定度試験器とは
酸化安定度試験器とは、油脂や食用油などがどれくらい酸化しにくいかを評価するための装置です。試料を高温に保ちながら空気を連続的に吹き込み、酸化反応を人工的に早めることで、劣化が始まるまでの時間(誘導時間)を測定します。揮発した酸化生成物を気流で水の入った容器へ運び、水の電気伝導度が急激に上昇するタイミングを検出するのが一般的な方式です。
誘導時間が長いほど保存中に酸化しにくく、食品メーカーでは品質管理や賞味期限設定、油脂配合条件の検討に広く利用されています。近年は、マーガリンやスナック菓子、揚げ油だけでなく、化粧品や潤滑油などの安定性評価にも応用されており、配合設計や規格適合を確認するための基礎データを得る上で重要な分析機器となっています。
1-1. 酸化安定度とは
酸化安定度とは、物質がどれだけ酸化しにくいかを示す指標です。酸化とは、物質が酸素と反応したり、電子を失ったりすることで性質が変化し、新たな物質が生じる反応を指します。身近な例では、鉄が空気中の酸素と反応して赤褐色のさび(酸化鉄)になる現象や、食用油が空気や熱、光の影響で劣化し嫌なにおいや風味の低下を起こす現象が挙げられます。
こうした酸化反応が進むと、強度の低下、色やにおいの変化、栄養価の低下などが起こり、本来期待される性能や品質を保てなくなります。酸化安定度が高い材料や油脂は、酸化反応が起こりにくく、一定の条件下で長期間品質を維持しやすいことから、食品、化粧品、潤滑油などの分野で重要な評価項目とされています。
1-2. 酸化安定度試験の用途・活用分野
酸化安定度試験は、「どのくらい酸化しにくいか」「どの条件でどの程度まで劣化するか」を数値で把握するために行われ、さまざまな分野の品質保証に欠かせない評価手法です。
| 分野 | 主な対象サンプル例 | 主な目的・活用シーン |
|---|---|---|
| 食品分野 | 食用油脂(ごま油・オリーブオイルなど)、バター、マーガリン、マヨネーズ、ナッツ類、スナック菓子 | 保存中の風味劣化・油焼けのしやすさを評価/賞味期限設定/ロットごとの品質管理(QC) |
| 石油化学・燃料分野 | ガソリン、軽油、バイオディーゼル、潤滑油(グリース)、エンジンオイル | 貯蔵中・使用中の酸化劣化の予測/ASTMなど各種規格への適合確認/製品設計・評価 |
| 化粧品・医薬品分野 | クリーム、軟膏、油脂を含む基剤、香料 | 成分の酸化劣化の有無を確認/処方の安定性評価/使用期限・保管条件設定の根拠づくり |
2. 酸化安定度試験の測定方式
酸化安定度試験には、加速劣化を再現して油脂や燃料などの酸化しやすさを比較するための複数の測定方式があります。ここでは代表的なランシマット法、シャルオーブン法、誘導期間法の原理と特徴を紹介します。
2-1. ランシマット法(CDM法)
ランシマット法は、油脂などの酸化安定度を短時間で評価する代表的な加速試験法です。専用容器にサンプルを数グラム入れて高温に保ち、一定量の空気を連続的に吹き込みます。酸化が進むと揮発性の分解生成物が発生し、気流に乗って純水を入れた別容器へ移動します。この水の電気伝導度の変化を自動で記録し、急激に立ち上がるポイントまでの時間を「誘導時間」として読み取ります。誘導時間が長いほど酸化しにくく、油脂や燃料の保存性が高いと判断できます。
食品分野ではごま油やオリーブオイルなどの品質管理に広く用いられ、さらに添加した抗酸化剤の効果比較にも利用されます。装置の操作は自動化されているため、少ない手間で再現性の高いデータを得られる点も大きな特徴です。
2-2. シャルオーブン法(AOM法)
シャルオーブン法(AOM法:Active Oxygen Method)は、主に食用油脂の酸化安定性を評価するための古典的な加速試験です。試料油を一定温度(例:97℃前後)に保ちながら、連続的に空気を吹き込み、酸化反応を意図的に進めていきます。その際に過酸化物価(POV)の上昇を一定間隔で測定し、POVが基準値(一般に100meq/kg)に達するまでに要した時間を「AOM安定性」として評価します。AOM安定性の時間が長いほど、その油脂は酸化されにくく、貯蔵や加熱に対して安定していると判断できます。
近年は装置や評価指標の異なる新しい手法も使われていますが、シャルオーブン法は食品油脂の品質比較や抗酸化剤の効果検証などで、今も参考データとして用いられる測定方式の1つです。
2-3. 誘導期間法(RSSOT法)
誘導期間法(RSSOT法)は、試料を高温・高圧の酸素雰囲気下に置き、酸化が急激に進み始めるまでの時間(誘導期間)を測定することで酸化安定度を評価する方法です。密閉容器に少量の燃料や油脂を入れて加熱・加圧し、酸化反応によって圧力や流量が変化するポイントを自動的に検出します。この誘導期間が長いほど、実際の貯蔵中にもガムやスラッジが発生しにくく、酸化に対して安定していると判断できます。
自動車ガソリンやディーゼル燃料、バイオディーゼルなどの石油・燃料分野で広く用いられており、JISや各種規格において貯蔵安定性や品質判定の指標として活用されている試験方式です。また、短時間で結果が得られることから、研究開発や品質管理の現場でも利用頻度が高い方法です。
3. 酸化安定度試験器「RapidOxy100」の特長・仕様
酸化安定度試験器「RapidOxy100」は、各種サンプルの酸化安定性を短時間で評価できる加速試験装置です。ここでは、その主な特長と基本仕様について整理し、どのような現場でどのように活用できるのかを分かりやすく紹介します。
3-1. 「RapidOxy100」の特長
「RapidOxy100」は、軽油・バイオ燃料などの酸化安定度を短時間で評価できる加速酸化試験器です。経産省告示第72号およびASTM D8206などの規格に準拠したRSSOT方式を採用し、従来法の約1/10の時間で誘導期間を測定できます。サンプルは液体なら約5mL、粉体・半固体なら約4gと少量で前処理も不要です。
コンパクトなスタンドアロン設計でPC接続なしに測定・結果確認ができる上、自動測定と高い再現性により、研究用途から日常の品質管理まで効率的な酸化安定度評価を実現します。さらに、安全フードの自動ロックなど安全機能も充実しており、現場で安心して運用できる点も大きな特長です。
3-2. 「RapidOxy100」の仕様
「RapidOxy100」は、小容量サンプルで酸化安定度を評価できる卓上型試験器です。最大180℃・1800kPaに対応した耐圧チャンバーとペルチェ+ファンによる再冷却機能を備え、約10分で次の測定準備が整います。
ASTM D8206などの規格に準拠し、圧力・温度・圧力/時間曲線をディスプレイにライブ表示できます。USB・LANインターフェースや100件分の内部メモリ、安全フードや過圧・過熱時の自動停止機能を搭載し、研究・品質管理の現場で使いやすい仕様となっています。
まとめ
酸化安定度試験器は、油脂や燃料、化粧品などがどれくらい酸化しにくいかを、誘導時間などの指標で定量的に評価する装置です。ランシマット法やシャルオーブン法、RSSOT法などの試験により、保存中の劣化傾向や抗酸化剤の効果を短時間で比較できます。
RapidOxy100はRSSOT方式を採用した卓上型試験器で、少量サンプル・前処理不要・高い再現性を備え、ASTM規格にも準拠しています。最大180℃・1800kPaで自動測定が可能な上、安全機能とデータ保存機能を備え、研究開発から日常の品質管理、賞味期限や配合条件の検討まで幅広く活用できる、実用性の高い一台です。アズサイエンスでは、そのほか、多くの機器・装置を取り扱っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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