COLUMN製品コラム
ナノ粒子凝集分散測定装置とは?原理や測定手法の違いを解説

ナノ粒子材料を用いた開発や品質評価の現場で、「性能が安定しない」「評価結果が実際の製品状態と合わない」と感じた経験を持つ方もいるでしょう。その原因の1つとして考えられるのが、ナノ粒子の凝集・分散状態です。従来の測定手法では、測定のために試料を希釈する必要があり、本来の濃厚な状態を正しく捉えられないケースも少なくありません。
当記事では、ナノ粒子凝集分散測定装置の役割、各種粒子径測定法の原理や違い、動的光散乱法における注意点を整理します。測定手法の特性を理解することで、評価精度を高め、開発や品質管理の確実性を向上させるヒントを得られるでしょう。
1. ナノ粒子凝集分散測定装置とは
ナノ粒子凝集分散測定装置とは、ナノ粒子の凝集・分散性の状態を正確に評価するための装置です。ナノ粒子とは「ナノ(10⁻⁹)」の名が示す通り、直径おおよそ1~100nmの極めて小さな粒子を指します。粒子が微細になるほど表面積が大きくなり、表面原子の影響が支配的となることで、通常の固体とは異なる物性を示す点が特長です。
材料開発にナノ粒子特有の物性を生かすためには、粒子がどのような状態で分散または凝集しているのかを正確に把握する必要があります。ナノ粒子凝集分散測定装置は、その分散・凝集状態を定量的に評価するために用いられる分析装置です。
1-1. ナノ粒子の「分散」と「凝集」の違い
ナノ粒子の分散とは、一次粒子と呼ばれる最小単位の粒子が個々に分散した状態で存在している、またはその状態へほぐされていることを指します。
一方、凝集は一次粒子同士が衝突・付着し、粒子の塊である二次粒子を形成する状態です。粒子が小さくなるほど表面原子の影響が大きくなり、ファンデルワールス力(ロンドン分散力など)による引力が支配的となるため、ナノ粒子は特に凝集しやすい傾向があります。水中では静電的斥力と引力のバランスで分散・凝集が決まり、この挙動はDLVO理論によって説明されます。
1-2. 凝集分散状態を評価する目的・活用分野
ナノ粒子の凝集分散状態を評価する目的は、材料が本来持つ性能を安定して発揮させるためです。ナノ粒子は電子材料やセラミック、医薬品、化成品など、幅広い分野で原材料から最終製品まで利用されています。自動車用タイヤやリチウムイオン電池、燃料電池、半導体、ドラッグデリバリーシステムなど、その用途はさまざまです。
材料開発ではナノ粒子を溶媒中で均一に分散させることが重要で、凝集が生じると導電性や透明性、光学特性などが大きく変化します。そのため、分散・凝集状態を正確に把握する評価手法が、品質管理や研究開発の基盤となると言えるでしょう。
2. ナノ粒子径分布の主な測定方式
ナノ粒子の測定方式ごとに原理や得意とする粒子径範囲・測定範囲、濃度条件が異なり、評価結果にも差が生じます。ここでは、代表的な粒子径分布測定方式について説明します。
2-1. 動的光散乱法(DLS)
動的光散乱法(Dynamic Light Scattering:DLS)は、溶液中でブラウン運動を行うナノ粒子にレーザー光を照射し、散乱光の揺らぎを解析することで粒子径を推定する測定手法です。nm領域の粒子径を短時間で算出できる点が特長で、サブミクロン以下の超微粒子測定にも対応します。
溶媒の屈折率や粘度のみを条件として測定でき、医薬品や化粧品など粒子径管理が品質に直結する分野で広く利用されています。一方で、散乱強度に依存しやすく、ダストの影響を受けやすい点には注意が必要です。
2-2. レーザー回折・散乱法
レーザー回折・散乱法は、粒子にレーザー光を照射した際に生じる回折(フラウンホーファー回折)やミー散乱を利用して粒子径分布を求める測定手法です。粒子径に応じて変化する散乱パターンを解析することで、0.015~3000μm程度までの広い粒子径範囲を一度に測定できます。
操作が比較的簡便で、粉体や懸濁液の評価に広く用いられています。一方で、粒子の屈折率設定が必要であり、サブミクロン領域の粒子では精度が低下しやすい点に注意が必要です。
2-3. ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)
ナノ粒子トラッキング解析法(Nanoparticle Tracking Analysis:NTA)は、液中でブラウン運動を行うナノ粒子の動きを直接観察し、粒子径を算出する測定手法です。レーザー光を照射した際に生じる散乱光や蛍光をカメラで撮影し、粒子一つひとつの移動軌跡を追跡することで、拡散係数から粒子径を求めます。
粒子径の異なる成分が混在していても個別に解析できる点が特長で、粒子径分布の均一性評価にも有効です。医薬品研究や環境モニタリングなど、粒子挙動の詳細把握が求められる分野で活用されています。
2-4. 電子顕微鏡による画像解析(TEM/SEM)
電子顕微鏡による画像解析(TEM/SEM)は、粒子に電子ビームを照射して得られる情報から、ナノ粒子の形状や構造を直接観察する手法です。透過型電子顕微鏡(TEM)は電子の透過像を用いて内部構造を観察し、走査型電子顕微鏡(SEM)は反射電子から粒子表面の形態を捉えます。
粒子径だけでなく、形状や凝集構造を詳細に評価できる点が特長です。一方で、試料前処理に手間がかかり、装置や運用コストも高いことから、主にエレクトロニクスや材料工学分野の構造解析に用いられています。
2-5. 沈降法(遠心沈降法)
沈降法(遠心沈降法)は、分散媒中を沈降する粒子の速度と粒子径の関係を利用して粒子径分布を求める測定手法です。遠心力を加えることで沈降を促進し、透過光量の変化から粒子径を算出します。
比較的安価で操作が簡便な点が特長で、0.01~300μm程度の粒子径測定に対応します。一方、粒子密度や屈折率の設定が必要です。サブミクロン粒子では沈降に時間を要するため測定時間が長くなりやすい点や、吸光係数の補正が必要になる点も注意しましょう。
3. 動的光散乱法(DLS)のメカニズムと測定のポイント
動的光散乱法(DLS)は、ナノ粒子の粒子径評価に広く用いられる測定技術ですが、原理を正しく理解しないと測定結果の解釈を誤ることがあります。ここでは、動的光散乱法の基本的なメカニズムと、測定時に押さえておくべき重要なポイントを整理します。
3-1. ブラウン運動と散乱光の揺らぎ
懸濁液中のナノ粒子は、溶媒分子の熱運動によって常にブラウン運動を行っており、粒子が小さいほど速く、大きいほど緩やかに動きます。動的光散乱法では、このブラウン運動中の粒子にレーザー光を照射し、粒子位置の変化によって生じる散乱光強度の揺らぎを観測します。
散乱光は粒子同士で干渉し、その強度変動は時間とともに変化します。この揺らぎを光子相関法で解析し、自己相関関数を求めることで、粒子の拡散係数が算出され、粒子径や粒子径分布の評価が可能となります。
3-2. 測定における「希釈」のリスクと課題
動的光散乱法では、試料濃度が測定精度に大きく影響するため、希釈が必要となるケースが少なくありません。散乱光の検出方法には、ホモダイン法とヘテロダイン法があります。ホモダイン法は散乱光同士の干渉を利用するため、一定範囲の低濃度試料に適していますが、高濃度や極端に低濃度の懸濁液には不向きです。
その結果、測定のために希釈を行うと、粒子の分散・凝集状態が変化し、本来の状態を正確に反映できないリスクがあります。ヘテロダイン法や光学系の工夫により濃度対応範囲は広がっていますが、動的光散乱法では濃度条件の管理が重要な課題となります。
3-3. キュムラント法による解析(平均粒子径・分散度)
動的光散乱法では、散乱光強度の時間的な揺らぎから得られる自己相関関数を解析することで粒子径情報を導き出します。解析手法には複数ありますが、広く用いられているのがキュムラント法です。キュムラント法は、自己相関関数の減衰挙動を単純化して解析する方法です。
平均粒子径を示すキュムラント径(Z平均)と、粒子径分布の広がりを表す多分散指数(PDI)を算出できます。分布形状の詳細把握には適しませんが、分散状態の均一性を迅速に評価できる点が特長です。
4. ナノ粒子凝集分散測定装置「ナノ粒子分散凝集測定器 Nanolizer」の特長・仕様
ナノ粒子分散凝集測定器「Nanolizer」は、ナノ粒子の凝集・分散状態を非接触・非破壊でリアルタイムに評価できるインライン測定装置です。2018年度に経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)に採択され、京都大学との共同研究により、分散凝集で発現する量子効果を見出しました。
測定時間は最短0.1秒と高速で、凝集分散状態を相対値として数値化できます。受入検査では粉体にかざすだけで瞬時に判定でき、原材料のばらつきによる不良や廃棄リスクの低減に貢献します。
まとめ
ナノ粒子は粒子径が小さいほど凝集しやすく、分散・凝集状態の違いが材料性能を大きく左右します。その評価時には、測定原理や適用条件の異なる測定手法を正しく使い分けることが重要です。
分散状態を正確に把握できれば、品質トラブルの予防や開発効率の向上を図れます。自社材料や工程に適した評価方法を検討し、より信頼性の高い品質管理・材料開発へとつなげましょう。アズサイエンスではナノ粒子分散凝集測定器も取り扱っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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