COLUMN製品コラム
CNC真円度・円筒形状測定機とは?原理や用途・メリットを解説

製品の品質は、企業の競争力を左右する重要な要素です。特に、精密機械部品などの形状精度が要求される製品においては、真円度や円筒度といった幾何公差の厳密な管理が不可欠です。
CNC真円度・円筒形状測定機は、精密な形状測定を自動で行うための装置です。測定対象物を回転させながら、高精度のセンサーで形状を測定し、真円度や円筒度といった幾何公差を数値化します。
当記事では、CNC真円度・円筒形状測定機について分かりやすく紹介します。
目次 1. CNC真円度・円筒形状測定機とは 1-1. 真円度とは 1-2. 円筒度とは 2. 真円度・円筒形状測定機の原理 2-1. 真円度・円筒形状測定機の使用目的 3. 真円度・円筒形状測定機を利用するメリット 4. 真円度・円筒形状測定機と三次元測定機・画像寸法測定器の違い 4-1. 三次元測定機 4-2. 画像寸法測定器 5. 真円度・円筒形状測定機を製造している主なメーカー まとめ |
1. CNC真円度・円筒形状測定機とは
CNC真円度・円筒形状測定機とは、コンピュータ数値制御(CNC:Computer Numerical Control)の技術を用いて、ワーク(測定対象物)の真円度や円筒度を自動かつ高精度に測定する装置です。
以下では、幾何偏差(幾何公差)の種類の1つである「真円度」と「円筒度」について紹介します。幾何偏差は、設計図で示された寸法や形状から逸脱した状態、つまり許容範囲を超えたズレを指します。幾何公差は、その寸法や形状がどの程度変動しても許容されるかを定量的に示したものです。
1-1. 真円度とは
真円度とは、ある閉じた曲線がどれだけ真円に近い形状をしているかを表す指標です。簡単に言うと、どれだけ完璧な円に近い形をしているかを示す数値です。
JIS規格では、以下のように定義されています。
・真円度とは、円形形体の幾何学的に正しい円からの狂いの大きさのこと ・真円度は、円形形体を2つの同心の幾何学的円で挟んだときに、同心二円の間隔が最小となる場合の、二円の半径の差で表す ・真円度_mm、または真円度_μmと表示する |
(出典:日本規格協会 JSA Group Webdesk「JIS B 0621:1984 幾何偏差の定義及び表示」/https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS%20B%200621:1984)
真円度の測定方法にはいくつかの手法が存在します。
ノギスやマイクロメータを用いる場合、軸部品の直径を複数か所で測定し、最大値と最小値の差を2で割ることで真円度を求めます。
また、Vブロックに製品を載せてダイヤルゲージを当て、1回転させた際の最大値と最小値の差からも真円度を算出できます。
さらに、真円度測定機や三次元測定機を用いる方法もあり、これらの機器は製品の全周を測定して精密に真円度を評価します。これにより、JIS規格に基づいた高精度の結果が得られます
1-2. 円筒度とは
円筒度とは、ある部品がどれだけ完璧な円筒形をしているかを表す指標です。つまり、円筒形の部品が、どれだけまっすぐで、かつ、どの断面も完全な円形をしているかを数値で表したものです。
JIS規格では、以下のように定義がされています。
・円筒度とは、円筒形体の幾何学的に正しい円筒からの狂いの大きさのこと ・円筒度は、円筒形体を2つの同軸の幾何学的円筒で挟んだときに、同軸二円筒の間隔が最小となる場合の、二円筒の半径の差で表す ・円筒度_mm、または円筒度_μmと表示する |
(出典:日本規格協会 JSA Group Webdesk「JIS B 0621:1984 幾何偏差の定義及び表示」/https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS%20B%200621:1984)
真円度は、円筒形状の任意の断面がどれだけ円に近いかを示します。例えば、テーパー形状のように直径が変化する部品でも、断面ごとの円の形状が真円かどうかを評価できるのが特徴です。
一方、円筒度は、円筒全体がどれだけ理想的な円筒形に近いかを評価します。つまり、円筒度は円筒全体のまっすぐさや曲がり度合いを含む精度を示すもので、軸方向にわたる全体の形状を管理します。
2. 真円度・円筒形状測定機の原理
真円度・円筒形状測定機は、部品の形状精度を高精度に評価する装置であり、主に接触式と非接触式の測定法があります。
接触式では、測定対象の物体を回転させ、プローブが表面の微小な凹凸を検出します。このデータから円周上の形状偏差を計算し、真円度や円筒度を求めます。回転テーブル型や検出器回転型の主に2種類があり、回転テーブル型では、測定物自体を回転させながらその表面を検出器で測定します。検出器回転型は、測定物を固定し、検出器が回転してデータを取得する方法です。後者は、大型や重量物に適しています。
一方、非接触式は、レーザーや画像認識を利用して物体の表面を測定し、同様に形状偏差を計算します。
2-1. 真円度・円筒形状測定機の使用目的
真円度・円筒形状測定機は、設計図に記載された真円度・円筒度などの幾何公差を、実際に製造された製品が満たしているかを確認できます。製造過程で発生した形状の歪みや、材料の不均一性などによる不良品を早期に発見し、品質の低下を防ぐことが可能です。
近年の真円度・円筒形状測定機は、心出しや水平出しといった調整を自動で調整する機能が搭載されているものもあります。心出しとは、機械加工や測定において、ワークの中心軸と、機械の回転軸や測定機の測定軸を一致させる作業のことです。水平出しとは、中心軸と回転軸が平行になるように調整する作業のことです。
3. 真円度・円筒形状測定機を利用するメリット
真円度・円筒形状測定機を利用するメリットは、まず、三次元測定機よりも高い精度で、真円度や円筒度だけでなく同軸度や平行度など、複数の幾何公差を高精度に測定できる点が挙げられます。導入コストも三次元測定機より安価であるため、中小規模の企業にも適しています。
また、1周あたり1万点もの細かいデータを取得でき、より詳細な形状評価が可能です。さらに、設定・操作が簡単なため測定を短時間で行えるのも大きな利点です。
4. 真円度・円筒形状測定機と三次元測定機・画像寸法測定器の違い
真円度や円筒度といった幾何公差の測定には、真円度・円筒形状測定機以外にも、三次元測定機や画像寸法測定器など、さまざまな機器が利用できます。
それぞれの機器には特徴があり、目的に合わせて使い分けられています。
4-1. 三次元測定機
三次元測定機とは、製品の寸法を高精度に測定する装置で、対象物の縦・横・高さを基にXYZ座標を取得します。接触型と非接触型に大別され、接触型はプローブが対象物に直接触れて座標を測定し、単純な形状の測定に向いています。一方、非接触型はレーザーや光を使用し、複雑な曲面や柔らかい素材も容易に測定できるため、自由度が高いと言えます。
真円度・円筒形状測定機は大型の対象物や寸法の測定には対応できません。対して、三次元測定機はより多様な対象物に対応していることや、設置や操作の簡便さもあって多くの産業で使用されています。
4-2. 画像寸法測定器
画像寸法測定器は、カメラと画像処理技術を活用して製品の寸法を高精度で測定する装置です。従来の目視や手作業による検査に比べ、測定精度が非常に高く、主に品質管理や寸法検査の場面で使用されます。μm単位の精度で測定ができるため、製品の品質保証には欠かせない存在です。
画像寸法測定器の大きな利点は、非接触で測定できる点です。対象物を傷つけることなく、複数の部位を一度に測定することが可能です。また、ボタン操作1つで自動的に結果が得られるため、測定作業におけるヒューマンエラーや測定のばらつきを大幅に減らせます。
5. 真円度・円筒形状測定機を製造している主なメーカー
真円度・円筒形状測定機を製造している主なメーカーとして、ミツトヨが挙げられます。
ミツトヨは、1934年に創業した精密測定機器の総合メーカーであり、世界的な市場展開を行っています。精密測定技術の向上と革新を追求し、産業の発展や技術進展に貢献することを使命としている企業です。
計測技術に加え、ソフトウェアや光学、機械、電子といった幅広い技術を自社で開発し、新しい価値を提供するために研究開発を続けています。また、国家標準と同等の設備を保有し、測定機器のトレーサビリティを確保しているのも特徴です。ISO/IEC 17025に基づく校正サービスも国内外で提供し、信頼性の高い品質保証を行っています。
まとめ
CNC真円度・円筒形状測定機は、コンピュータ数値制御技術を用いて、真円度や円筒形状の精密な測定を行う装置です。
アズサイエンスが取り扱っている「CNC 真円度・円筒形状測定機 ROUNDTRACER EXTREME」は、真円度や輪郭形状、表面粗さの測定機能を1台に集約した高性能な機器です。スピード、精度、操作性のすべてにおいて高い基準を満たしており、カムシャフトやベアリングなどの多様な形状のワークにも対応しています。
新開発された電動スライド軸と角度変更が可能な検出器・検出器ホルダによって、ワークの干渉を回避しながら測定が行えます。また、X軸、Z軸、θ軸の駆動速度はクラス最高で、位置決め時間を大幅に短縮できます。
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