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測定投影機とは?原理や測定方法を詳しく解説

PJ-PLUS

「投影機」という言葉は、一般には映像や画像をスクリーンなどに映し出すプロジェクターのことです。製造業や測定分野においては、「測定投影機」の略称として使用されることがあります。測定投影機は、部品や製品の輪郭を拡大投影し、寸法を測定するための光学機器であり、精密な測定が求められる現場で広く使用されています。

特にミツトヨが代表的なメーカーの1つとして広く知られており、「測定投影機 PJ-PLUS」を販売しているので、「測定投影機」と言えばミツトヨ製品を指すことも少なくありません。

当記事では、投影機・測定投影機について分かりやすく解説します。

目次

1. 測定投影機とは?

2. 測定投影機の原理
2-1. 測定投影機の部品
2-2. テレセントリック光学系とは?

3. 測定投影機の測定方法

4. 測定投影機を使用するメリット・デメリット
4-1. 測定投影機のメリット
4-2. 測定投影機のデメリット

まとめ

1. 測定投影機とは?

測定投影機とは、光の性質を応用して被検体の形状を拡大投影し、寸法や形状を測定する装置の総称です。投影式光学測定機とも呼ばれ、工業製品の検査や品質管理など、高精度な測定が求められる現場で広く使用されています。

なお、ミツトヨが「測定投影機 PJ-PLUS」という製品を展開していることから、文脈によってはこの特定製品を指して「測定投影機」と呼ぶケースもあります。また、業界内では略して単に「投影機」と呼ばれることも一般的です。

測定投影機の原理は光学顕微鏡に類似しており、光の透過および拡大の原理に基づいています。試料の下方から光を照射し、被検体の輪郭を影として形成し、その影をレンズ系(光学系)によって拡大して、スクリーン上に投影像として映し出します。

測定は、投影スクリーン上に設けられたスケール、クロスヘア(十字線)、または画像処理システムを用いて行われ、非接触で正確な寸法評価が可能です。

2. 測定投影機の原理

投影機は、主に部品の寸法を正確に測定するための装置ですが、対象物の形状を観察する目的にも広く活用されます。ここでは、投影機の基本的な動作原理と、構成部品について解説します。

2-1. 測定投影機の部品

投影機は、以下の主要な部品で構成されています。

・光源
・透過ステージ(XYステージ)
・拡大レンズ(光学系)
・投影スクリーン

透過ステージ・拡大レンズ・スクリーンについて、以下で補足して説明します。

・透過ステージ
透過ステージは、測定対象を設置するためのベース(台)であり、通常はガラスなどの光を透過する素材で作られています。下方からの光が試料を通過することで影が生成される、いわゆる透過照明方式に対応しています。また、精密な位置決めのために、左右(X軸)・前後(Y軸)に可動するXYステージ構造となっており、マイクロメータなどを用いて正確な移動量の読み取りが可能です。

・拡大レンズ
拡大レンズは、光源によって作られた測定対象物の影を大きく拡大し、スクリーン上に投影する役割があります。高精度な測定のため、複数枚のレンズが組み合わされた補正光学系が使用され、屈折誤差や像の歪みを最小限に抑える設計が施されているのが特徴です。また、投影された像は、カメラと同様に上下左右が反転するため、これを補正するための反転補正レンズ系が組み込まれていることもあります。測定対象の大きさや精度要件に応じて、交換可能な倍率レンズやズーム機能が用意されている場合もあります。

・スクリーン
スクリーンは、拡大された投影像を表示するための観察面です。顕微鏡とは異なり、大型のスクリーンを備えることで複数の作業者による同時確認が可能という利点があります。スクリーン上には、長さ・角度・形状を測定するための基準線(クロスライン)やスケール、比較チャートなどが描かれており、迅速かつ直感的な測定や判別が可能です。

2-2. テレセントリック光学系とは?

テレセントリック光学系(Telecentric Optical System)とは、レンズの主光線が光軸に対して平行になるように設計された光学系のことです。通常のレンズ(セントリックレンズ)では、被写体の位置によって像の倍率が変化しますが、テレセントリック光学系では倍率変化が最小限に抑えられ、視差の影響を受けにくくなります。

通常のレンズでは、対象物とレンズの距離によって像の大きさが変化しますが、テレセントリック光学系を用いることで、視野内のどの位置に物体があっても投影される像の倍率が一定に保たれます。この特性により、奥行きのある対象物でも正確な寸法測定が行え、視差による誤差を排除することが可能です。

テレセントリック光学系を実現するためには、像側の焦点位置に絞りを設ける代わりに、照明側のコンデンサレンズの焦点位置にランプのフィラメントを配置し、平行光で照射する構造が採用されています。これにより、安定した照明と視差のない像形成が可能になります。

3. 測定投影機の測定方法

投影機を用いた測定方法には、主に長さ・幅の測定、円の測定、角度の測定があります。

長さと幅の測定
・測定対象物をステージに載せ、スクリーン上に鮮明な像が投影されるように焦点を調整します。
・測定したい辺をスクリーン上の基準線(クロスライン)に一致させ、XYステージの値をゼロリセットします。
・ステージを移動させて、反対側の辺が基準線に重なる位置まで移動し、その時点のステージの移動量を読み取ることで、長さまたは幅を算出します。
※投影像に対して直接スケール(目盛り)を用いて、目視で寸法を読み取る簡易測定も可能です。

円の測定
・対象となる円の中心をスクリーンのクロスラインに合わせます。
・半径を測定する場合は、中心から円周上の任意の点までステージを移動させ、その移動量を読み取ります。
・直径を測定する場合は、円周上の一点から反対側の点までステージを移動させ、その移動量を読み取ります。
※同心円状の目盛りが描かれた比較用チャートをスクリーンに重ねる方法もあり、円のサイズを直感的に評価できます。

角度の測定
・まず、一方の直線をスクリーンの基準線に一致させます。
・次に、ステージを回転させてもう一方の直線が基準線と一致するまで回転させ、その回転角を読み取ることで角度を算出します。
※分度器のような角度目盛り付きチャートを用いて、直接読み取る方法もあります。
※高度なシステムでは、投影像の2本の直線を指定するだけで、ソフトウェアが自動的に角度を計算して表示する機能も搭載されています。

4. 測定投影機を使用するメリット・デメリット

投影機を使用することには、それぞれメリットとデメリットがあります。ここでは、測定投影機 PJ-PLUSではなく、あくまで一般的な投影機のメリット・デメリットについて、それぞれ解説します。

4-1. 測定投影機のメリット

投影機のメリットは主に以下の通りです。

非接触での測定が可能
対象物に直接触れることなく光を照射して影を測定するため、傷つきやすいデリケートな部品や、微細な電子部品などを変形させることなく、正確な寸法を測ることができます。また、高温の物体や、手で触れることが難しい滅菌された部品などの測定にも適しています。

小さい物の測定が可能
投影レンズによって対象物の像を大きく拡大できるため、肉眼では詳細な観察や測定が困難な微小な部品の寸法や形状を容易に把握できます。

複数人で同時に観測できる
スクリーンに投影された像を複数人で同時に観察できるため、測定結果の共有や、形状の確認、品質に関する議論などを効率的に行うことができます。

4-2. 測定投影機のデメリット

一方で、投影機の使用には以下のような課題・制約も存在します。

ピント合わせによる測定誤差が発生する
投影された像のピントがわずかにずれると、影の輪郭がぼやけ、測定誤差の原因となることがあります。ただし、テレセントリック光学系を採用している機種であれば、焦点位置のズレによる倍率変化が起きにくいため、誤差を最小限に抑えることが可能です。

観察時に技術が必要
投影像の輪郭を正確に捉え、スクリーンのスケールを読み取るには熟練した操作スキルが求められます。読み取りミスや主観的な誤差を防ぐためには、デジタル表示機能や画像処理による自動判定機能を備えたモデルの導入が有効です。

測定に工数・時間がかかる
測定には、対象物のセットアップ、焦点合わせ、測定、記録といった工程が必要であり、一連の作業に時間と手間がかかる場合があります。特に、多点測定や形状が複雑な部品の測定では時間を要するため、自動測定機能や画像処理によるエッジ検出機能を備えたモデルを活用することで、作業効率の向上が図れます。

データ管理に手間がかかる
測定結果を手動で記録する場合、転記ミスや記録漏れ、整理の煩雑さが生じる可能性があります。これを防ぐためには、データを自動記録・保存できるソフトウェアや、ネットワーク接続によるデータ連携機能を備えた機種の導入が推奨されます。

まとめ

微細な対象物の形状や寸法を高精度に測定することは、現代の製造業において品質を保証する上で不可欠です。しかし、肉眼では捉えきれない微小な部品や複雑な形状を持つ製品の測定は、技術的な課題を伴います。このような課題を克服し、精密な測定を実現するために開発されたのが投影機です。

投影機は、光学技術を応用して対象物のシルエットをスクリーン上に拡大投影し、非接触かつ高精度な寸法測定を可能にする光学測定装置です。光学顕微鏡のように対象物を拡大する機能と、影絵のようにシルエットを投影する原理を組み合わせることで、従来の測定器では難しかった微細な測定を可能にします。

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