COLUMN製品コラム
X線透視/CT検査装置とは?原理や用途・主要メーカー6選も紹介
さまざまな産業におけるものづくりの現場では、製品を破壊せず内部に問題がないか検査する場面が生じます。そのようなときに活躍するのが「X線透視/CT検査装置」です。製品に欠陥がないか異物混入はないか確認することは、納品後のクレーム防止や製品の研究開発の促進につながります。
当記事では、「X線透視/CT検査装置とは何か」という基礎知識から使用目的、X線透視/CT検査装置を手がける主要メーカーまでを解説します。X線透視/CT検査装置の基本的な情報を押さえ、装置の選定基準を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次 1. 【基礎】X線透視/CT検査装置とは? 1-1. X線とは? 1-2. CTとは? 2. X線透視/CT検査装置の使用目的 3. X線透視/CT検査装置の代表的なメーカー6選 3-1. コメットテクノロジーズ・ジャパン株式会社 3-2. カールツァイス株式会社 3-3. 中外テクノス株式会社 3-4. JOHNAN株式会社 3-5. 株式会社ユー・エイチ・システム 3-6. 株式会社島津製作所 まとめ |
1. 【基礎】X線透視/CT検査装置とは?
X線透視/CT検査装置とは、X線を用いて物体の内部構造や欠陥の有無などを調べる装置のことです。照射する物体によってX線の透過や吸収に違いが生じるという仕組みを利用し、X線を全方向に当てることによって物体の構造を観察します。
X線を透過させて撮影したデータは、画像として出力することはもちろん、3D(3次元)イメージにすることも可能です。なお、X線透視/CT検査装置を用いた検査は、対象物を破壊することなく内部を調べる非破壊検査の1つです。
1-1. X線とは?
X線とは、可視光線や紫外線などと同じ電磁波の一種で非常に波長が短く、物質を通り抜ける透過作用に優れている点が特徴です。X線を発生させる際は、X線管と呼ばれる真空管を用います。
X線の透過量は物質の密度によって異なり、またX線が物質を通過する際に散乱や回折、蛍光といった現象が起きることから、X線はさまざまな検査や解析に応用されています。たとえば、レントゲン撮影や非破壊検査が挙げられます。蛍光X線を基礎にした分析法では、物質の原子構造や割合の分析が可能です。
医療や産業分野において幅広い用途があるX線ですが、人体に悪影響を及ぼす危険性もあります。万が一大量にX線を浴びると、健康被害が出る可能性があるため、安全に配慮したX線の利用が求められています。
1-2. CTとは?
CTはComputed Tomographyの略称で、コンピュータ断層撮影のことです。X線が試料を透過する際の吸収率の違いを利用して断面画像を作成します。レントゲンをはじめとするX線検査装置では物体の平面画像が得られますが、CT検査装置では立体画像の撮影が可能です。対象物を全方位から撮影し、得られたデータをコンピュータで画像処理し再構成することで、内部構造の三次元データを生成します。
産業用のCT検査は、X線管と検出器を固定し、対象物を回転台に載せて360°方向からX線を照射します。長時間にわたって低線量で撮影するため、高精度で低ノイズのデータを取得できるのが特徴です。CTによる3D画像によって、物体内部に異物があるかどうかだけでなく、異物の形状やサイズなどが測定できるようになります。
2. X線透視/CT検査装置の使用目的
X線透視/CT検査装置は、工業はもちろん、食品や衣料品、学術研究などさまざまな分野で活躍しています。X線透視/CT検査装置の主な使用目的は、下記の3つです。
非破壊検査 |
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X線を利用することで、対象物を切断したり変形させたりすることなく、内部を調べられます。たとえば、鋳物部品の内部に空洞がないかどうか検査することで、製品開発の試作段階で不具合を発見するのに役立てられています。また、文化財の研究も非破壊検査が行われている分野の1つです。貴重な文化財や出土品などを破損させることなく内部調査するために、X線透視/CT検査装置が用いられています。 |
品質管理 |
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電子部品や食品、衣料品などの品質管理も、X線透視/CT検査装置の主な使用用途です。たとえば、自動車製造の分野では、部品がCADデータと同様に製造できているかを調べる際にX線透視/CT検査装置を活用し、製品の高品質化につなげています。そのほか、食品の異物混入や衣服の検針など、多くの製品に対する品質管理に役立てられています。 |
対象物の3Dデータ化 |
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X線透視/CT検査装置は複雑な部位も高精度でスキャンでき、光沢のある素材や透明な素材でも3Dデータが取得可能です。そのため、透明樹脂で作られた製品や光沢のある金属製品の計測・データ解析にも利用されています。 |
X線透視/CT検査装置は、プローブや光投影を用いた計測器よりも、高速で精度の高いデータを得られる点がメリットの1つです。効率よく高精度の調査ができるため、多くの分野で有効活用されています。
3. X線透視/CT検査装置の代表的なメーカー6選
X線透視/CT検査装置は、さまざまな企業が開発・製造しており、それぞれ特徴が異なります。ここでは、代表的なメーカー6社の強みや独自サービスなどについて紹介します。
3-1. コメットテクノロジーズ・ジャパン株式会社
コメットテクノロジーズ・ジャパン株式会社は、ドイツを拠点とするX線非破壊検査装置のリーディングカンパニーです。電子工学や自動車、航空機など幅広い業界において、コメットテクノロジーズ・ジャパンのX線検査装置が活用されています。
高分解能ナノフォーカスX線検査装置から高出力大型CTまで、多種多様な製品ラインナップがあります。また、最新の検出器の導入やソフトウェア「Geminy」など、装置の操作性やデータの信頼性を高めるさまざまな工夫が強みです。
3-2. カールツァイス株式会社
ZEISSグループの1つであるカールツァイス株式会社は、日本法人として1911年に設立されたメーカーです。ZEISSグループはドイツで創業され、精密機器や光学部品を中心に成長してきました。日本では、半導体や医療機器分野のほか、カメラ用レンズや双眼鏡など多方面で事業を展開しています。
カールツァイス社の強みの1つは研究開発です。年間売上高の約14%である約1,400億円を投資し、最先端技術の開発に取り組んでいます。また、カールツァイス社の技術は生産工程の効率化に有効で、CTのセットアップにかかる時間を最大約80%短縮できるアクセサリも取り扱っています。
3-3. 中外テクノス株式会社
中外テクノス株式会社は、試験分析分野のコンサルティングや産業用X線検査装置の開発などを行う、1953年創業の広島県にある総合検査会社です。操作性にこだわったX線透視検査装置や、カスタマイズ対応ができるX線CT検査装置など、多様な製品ラインナップがあります。
中外テクノス社の特徴の1つは、顧客が求める仕様にマッチした検査システムをオーダーメイドで提供していることです。長年にわたり培ってきた技術と経験を生かし、機器選定から機械やソフトウェア設計、設備工事、保安メンテナンスまで、一貫したサービスで顧客の課題解決の支援をしています。また、カスタマイズ検査装置の製作や既存設備のリニューアルなどにも対応しています。
3-4. JOHNAN株式会社
1962年創業の京都府に本社を構えるJOHNAN株式会社は「ものづくりプラットフォーム企業」として、さまざまな課題に対する解決策を提案している会社です。
グループ会社であるコムスキャンテクノ株式会社は、X線CT装置「ScanXmateシリーズ」の開発から製造、販売まで行っています。11種類のX線管と15種類のX線検出器を組み合わせて、顧客の用途に合った装置製作が可能です。また、X線検査受託サービスも行っており、X線CT装置の購入に予算が足りない場合でもX線検査を受けられます。
3-5. 株式会社ユー・エイチ・システム
株式会社ユー・エイチ・システムは、神奈川県で2000年に設立されたX線非破壊検査装置の専門メーカーです。X線検査装置や画像処理ソフトの開発・製造を手掛けています。
ユー・エイチ・システムは、特許取得済みのX線解析技術「ユーセントリック機能」を搭載した装置を取り扱っている点が特徴です。検出器傾斜時や拡大時でもサンプルの着目点を捉え続けることができます。また、マッピング機能や自動調節機能を搭載したマルチデバイス制御ソフトウェアによる、操作性の高さも魅力の1つです。XVAシリーズをはじめとする3DCT検査装置は、国内大手企業にも採用されています。
3-6. 株式会社島津製作所
京都府にある1875年創業の株式会社島津製作所は、分析計測機器や医療、航空機関連など、さまざまな産業から支持されているグローバル企業で、X線透視/CT検査装置も複数リリースしています。たとえば、卓上型のX線CT検査装置である「XSeeker 8000」は、160 kVの高出力X線発生装置と高解像度フラットパネル検出器を搭載し、幅広い用途に対応可能です。
また、島津製作所の特徴の1つにX線保守サービスがあります。これは、X線透視/CT検査装置の使用時間に応じて料金を支払い、故障時には追加料金なしで対応してくれるサービスです。時期によって装置の使用頻度が違う場合などは、ランニングコストを抑えられます。
まとめ
X線透視/CT検査装置は、対象物の全方位からX線を透過・撮影し、物体の内部構造や欠陥の有無などを調べる装置です。対象物を壊すことなく中を調べる非破壊検査ができ、高速で精度の高いデータを得られることから、食品や衣料品、学術研究などさまざまな分野で使用されています。
X線透視/CT検査装置の主要メーカーは国内・海外にあり、それぞれメーカーによって特徴や機能は異なります。導入には初期費用もかかるので、よく比較検討した上で製品を選ぶとよいでしょう。
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