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オートクレーブとは?原理や使用手順・注意点・選び方を徹底解説

オートクレーブは、高温高圧の水蒸気を利用して、医療器具や実験器具などを滅菌するための装置のことです。日本語では「高圧蒸気滅菌器」とも呼ばれます。
例えば、医療現場や研究室では、再利用する器具を安全に使うために、オートクレーブが欠かせません。手術で使うメスやピンセット、微生物を培養するシャーレなどが、オートクレーブによってしっかりと滅菌されています。
当記事では、オートクレーブの原理から選び方まで、分かりやすく解説します。
目次 1. オートクレーブとは 1-1. オートクレーブの原理と仕組み 1-2. 滅菌・殺菌・除菌の違い 2. オートクレーブを使った滅菌の手順 2-1. オートクレーブを利用するときの注意点 3. オートクレーブ以外の滅菌の種類 4. オートクレーブの選び方 まとめ |
1. オートクレーブとは
オートクレーブは、飽和蒸気を用いて高温高圧状態を作り出し、微生物を滅菌する装置です。「高圧蒸気滅菌器」とも呼ばれ、医療現場やバイオ系の実験室において、器具や培地、試薬などの滅菌に広く利用されています。
オートクレーブの基本的な原理は、家庭で使われる圧力鍋と同様です。圧力を加えることで、通常100℃で沸騰する水の沸点を上昇させ、より高温の状態を作り出すことで滅菌力を高めます。
オートクレーブという名称は、フランス語の「autoclave」に由来し、「自己閉鎖するもの」という意味があります。
1-1. オートクレーブの原理と仕組み
オートクレーブは、飽和蒸気を利用して滅菌を行います。水は大気圧下では100℃で沸騰しますが、圧力を加えると沸点が上昇します。例えば、2気圧の圧力下では、水の沸点は約121℃に達します。オートクレーブはこの原理を利用し、加圧によってより高い温度で水を沸騰させることで、高いエネルギーを持つ飽和蒸気を生成します。
飽和蒸気は空気よりも熱伝導率が高く、物質の表面から内部まで均一に熱を伝えることができるため、短時間で効率的な滅菌が可能です。また、高圧下では高温でも水が液体の状態を保てるため、水分を含む培地や試薬なども滅菌することができます。さらに、加熱後に蒸気は水に戻るため、滅菌対象物に有害な残留物が残る心配もありません。
1-2. 滅菌・殺菌・除菌の違い
微生物に関する用語として、「滅菌」「殺菌」「除菌」などがありますが、これらはそれぞれ意味合いが異なります。
滅菌 | 病原性・非病原性を問わず、すべての微生物を死滅または除去することです。 |
殺菌 | 文字通り「菌を殺す」という意味ですが、殺す対象や殺した程度は明確に定義されていません。一部の菌を殺しただけでも「殺菌」と表現できるため、厳密には有効性を保証したものではない可能性があります。 |
除菌 | 目的とする対象物から微生物を除去することです。対象物から増殖可能な細菌の数の有効数を減少させることを指します。 |
2. オートクレーブを使った滅菌の手順
オートクレーブを使った滅菌の具体的な手順は以下の通りです。ただし、機種によって操作方法が異なる場合があるので、必ず使用するオートクレーブの取扱説明書を確認してください。
1 | 準備する |
オートクレーブの缶体底部にあるスノコが少し浸る程度に、適切な量の滅菌用水を入れます。一般的には水道水を使用しますが、機種によっては精製水や蒸留水を推奨する場合もあります。 | |
2 | 滅菌物をセットする |
滅菌したい実験器具や試薬、サンプルをオートクレーブ用のカゴやバケツにセットし、スノコの上に設置します。滅菌対象物同士が密着しないように配置し、水蒸気が適切に通り抜けられるようにしましょう。 | |
3 | ドアを閉める |
被滅菌物がセットできたら、圧力計が0MPaになっていることを確認し、水蒸気を排出する回収ボトルの水位が適切かどうか確認した後、ドアを閉めます。 | |
4 | 運転を始める |
安全弁や排気ホースに問題がないか確認し、温度と時間を設定して運転を開始します。滅菌条件は、滅菌対象物や容量によって異なりますが、一般的な実験器具等の滅菌は121℃で20分間行うことが多いです。 | |
5 | 滅菌が終了すれば取り出す |
設定時間をすぎると滅菌工程が終了し、徐々に温度と内圧が下がります。圧力計が0MPaになり、缶体温度が十分に下がるまで待ってからドアを開けてください。滅菌が終わった直後にふたを開けると、高温の水蒸気で火傷をする危険があります。 | |
6 | 排水を行う |
滅菌用水が十分に冷めてから、排水を行います。オートクレーブを長期間使用しない場合は、貯水タンクを空にし、電源を切ってください。 |
2-1. オートクレーブを利用するときの注意点
オートクレーブを安全に利用するために、以下のような注意点を守りましょう。
密閉された容器を滅菌しない メディウム瓶のような密閉された容器は、内部の圧力が上昇し破裂する危険性があるため、絶対に滅菌しないでください。 不適合な材料を滅菌しない 油やグリスのような防水性のもの、グローブパウダーのような乾燥したもの、通常のプラスチックやポリエチレン製のトレイなどは、滅菌しないでください。 オートクレーブに物を詰め込みすぎない 詰め込みすぎると、蒸気がすべての滅菌物に均等に行き渡らなくなり、滅菌が不完全になる可能性があります。特に、容器の中や複雑な形状の器具の隅々まで蒸気が届かなくなることがあります。 圧力と温度が下がる前にオートクレーブを開けない 高温の蒸気が放出され、火傷する恐れがあります。 |
他にも、加熱中はオートクレーブの外部も高温になるため、触れないように注意が必要です。注意点はこれ以外にも多数あるので、必ず取扱説明書を確認してください。
3. オートクレーブ以外の滅菌の種類
オートクレーブによる高圧蒸気滅菌は有効な方法ですが、対象物の材質や特性によっては、他の滅菌方法を選択する必要があります。代表的な滅菌方法としては、以下のものがあります。
エチレンオキサイドガス滅菌 酸化エチレンガス(EOG)を使用して微生物を化学的に殺滅する方法です。低温(40~60℃)で高い滅菌効果が得られるため、熱に弱いプラスチック製品・ゴム製品・カテーテル類・光学機器・内視鏡など、さまざまな医療器材の滅菌に適しています。ガス浸透性が高いため、複雑な形状の器具や包装された状態での滅菌も可能です。 放射線滅菌 ガンマ線や電子線などの放射線を利用して、微生物のDNAを損傷させ、死滅させる方法です。最終梱包された状態でも滅菌が可能で、常温で処理できるため、熱に弱い素材にも適用できます。ガスや薬品を使用しないため、残留物の心配がなく、処理後すぐに使用できるというメリットがあります。連続処理が可能で工程管理も容易です。一方で、材質によっては色や臭いなどが変質する可能性があるため注意が必要です。 乾熱滅菌 高温の乾燥空気(160~200℃)で一定時間加熱することにより、微生物を酸化させたり、タンパク質を変性させたりして滅菌する方法です。主にガラス器具・金属器具・磁器製品など、熱に安定した乾燥したものの滅菌に適しています。水分に弱い物質や、蒸気が浸透しにくい物質の滅菌にも有効です。オートクレーブよりも高温で長い処理時間が必要となるため、熱に弱いものには適していません。また、蒸気滅菌に比べて熱伝導率が低いため、滅菌に時間がかかるという欠点があります。 |
4. オートクレーブの選び方
適切なオートクレーブを選ぶためには、まず、何を滅菌したいのかを明確にすることが重要です。滅菌対象物の種類(医療器具・実験器具・培地など)や材質・形状・大きさを考慮し、オートクレーブ滅菌が適しているかを確認する必要があります。医療現場で使用する場合は、医療機器としての販売許可が義務付けられているなどの法規制も確認が必要です。
また、一度にどれくらいの量のものを滅菌したいかを考慮して、適切な容量のオートクレーブを選びましょう。実験用オートクレーブには、10L程度の小型卓上タイプから120Lを超える大型のものまで、さまざまな容量のラインナップがあります。
滅菌したい器具の素材や種類によって、必要な滅菌温度と時間は異なります。機種によっては、あらかじめ温度や時間がプログラムされているものや、幅広い温度設定が可能なものがあります。複数の異なる種類のものを滅菌する場合は、柔軟に条件設定ができるオートクレーブがおすすめです。
まとめ
オートクレーブの基本的な内部構造は、耐圧性の容器と、水を加熱するためのヒーター、滅菌する物品を置くための穴あき円盤状のスノコで構成されています。ヒーターによって水が加熱され、圧力が加わることで100℃以上の飽和蒸気が発生します。
オートクレーブにかける際には、その物品がオートクレーブに適している素材でできているか、適切な前処理(洗浄・包装など)がされているかを確認することが重要です。また、オートクレーブの機種や滅菌物の種類によって、適切な温度・圧力・時間の設定が異なるので、取扱説明書を必ず確認してください。
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