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振とう培養機とは?関連機器との違い・主な製品の仕様を紹介

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振とう培養機は、細胞や微生物などの培養において、溶液を効率よく撹拌しながら温度や湿度を一定に保つために使用される装置です。研究や品質管理、製造など幅広い現場で使用されており、再現性の高い培養条件を確保する上で欠かせない機器の1つです。

当記事では、振とう培養機の基本的な特徴をはじめ、組み合わせて使用されることの多い「振とう機」や「インキュベーター」などの関連機器も紹介します。振とう培養機の製品仕様を知りたい方も、ぜひご覧ください。

目次

1. 振とう培養機とは?

2. 振とう培養機の関連機器
2-1. 振とう機
2-2. インキュベーター

3. 振とう培養機の製品仕様
3-1. New Brunswick S41i
3-2. RemoteShake 加湿対応ロータリーシェーカー
3-3. RemoteRoll 加湿対応セルローラー
3-4. ローラーボトル用回転培養装置

まとめ

1. 振とう培養機とは?

振とう培養機とは、微生物や細胞の培養を目的として、液体を一定の速度で揺らしながら温度を一定に保つことができる実験装置です。主に微生物学やバイオテクノロジーの分野で使用されており、振とう機に温度管理機能を加えたもので、培養に必要な環境を安定して維持できる点が特徴です。

そもそも「振とう」とは、容器に入れた液体を水平方向または円運動で揺り動かす操作を意味し、「培養」とは微生物や細胞を増殖させることを指します。振とうによって液体中の酸素がよく行き渡るようになり、酸素を必要とする微生物や細胞の成長が促進されます。また、多くの振とう培養機には温度制御機能が搭載されており、一定の温度環境下での培養が可能です。

2. 振とう培養機の関連機器

振とう培養機は、振とう機とインキュベーターという2つの要素を組み合わせた装置であり、それぞれの機能が培養環境の安定化に大きく寄与しています。以下では、振とう培養機を構成するこれらの関連機器について、それぞれの特徴や役割を詳しく解説します。

2-1. 振とう機

振とう機とは、試験管やフラスコ、分液ロートなどに入れた試料を水平方向や円運動で振り動かすことで、撹拌・混合を行う装置です。「シェーカー」とも呼ばれ、生命科学・化学・環境分野など幅広い領域で使用されています。なお、一般的な振とう機には温度管理機能はありませんが、一部のモデルでは加温や冷却機能を備えているものもあります。

振とう形式には往復式や旋回式、8の字運動式などがあり、試料の性質や実験の目的に応じて使い分けられます。用途としては、好気性微生物の培養、薬品の溶出試験、残留農薬の抽出、土壌中の有害物質の分析などが挙げられます。

また、微生物の培養においては、振とうによって液体中に酸素が拡散しやすくなるため、酸素移動速度(kLa)を確保するための手段としても重要です。一部の機種では加熱や冷却機能を持つものもあり、振とう培養を簡易的に行えるタイプも存在します。撹拌だけでなく、粉体のふるい分けに使われるふるい振とう機など、多様なバリエーションがあります。

2-2. インキュベーター

インキュベーターとは、温度・湿度・ガス濃度を一定に保ち、細胞や微生物を培養するための装置です。細胞を生体内に近い環境で維持・増殖させることを目的としており、特に生命科学や再生医療、製薬分野などで不可欠な機器とされています。なお、インキュベーターには振とう機能は搭載されておらず、振とう培養機とは用途が異なります。

一般的な哺乳類細胞の培養では、温度は約37℃、湿度は95%前後、CO2濃度は5%程度に設定されることが多く、細胞の増殖に適した環境を安定的に提供します。これにより、長期にわたる細胞の培養や観察が可能となります。

インキュベーターは、細胞培養専用のCO2インキュベーターのほか、酸素濃度も制御可能なマルチガスインキュベーターなど種類はさまざまです。細胞以外にも細菌や酵母、バクテリアの培養に使用されることもあります。

細胞の培養は、病気のメカニズム解明や新薬の開発、ウイルス研究など多くの分野で活用されており、インキュベーターはこうした研究を支える基盤技術の1つです。

3. 振とう培養機の製品仕様

振とう培養機には、研究目的や培養対象に応じて多様な製品が展開されています。温度や湿度の制御機能に加え、シェーカーやローラーの構造、遠隔操作の可否など、製品ごとの特徴にも注目する必要があります。以下では代表的な製品例を紹介します。

3-1. New Brunswick S41i

New Brunswick S41iは、CO2インキュベーターとシェーカー機能を一体化させた中型モデルであり、限られたスペースや予算で実験室を運営する研究者に適した製品です。コンパクトながら、CO2制御と振とう機能を高いレベルで両立させており、従来のオープンエアーシェーカーの課題を解決した装置として評価されています。

最大5Lのフラスコまで対応可能な高い柔軟性を有し、25~400rpmの振とう速度を実現します(積み重ね設置時は下段250rpmまで)。CO2濃度の精度は±0.2%(5%CO2環境下)、チャンバー内の均質性は±0.1と高水準です。また、ドライブホイールやケーブルを排除したシームレス構造により、清掃が容易で、120℃での高温消毒機能も備えています。
さらに、Innovaのトリプルエキセントリックドライブによって、安定かつ低振動な振とうが可能であり、スタティック培養用の棚を同時に設置することも可能です。ダブルドア構造により、光やCO2の変動を最小限に抑えるなど、微細な条件管理にも配慮されています。多用途に使える信頼性の高い振とう培養機として、多くの研究室で採用されています。

3-2. RemoteShake 加湿対応ロータリーシェーカー

RemoteShakeは、加湿環境下のインキュベーター内で使用できるよう設計されたロータリーシェーカーです。駆動部と制御部が分かれており、湿度の高いチャンバー内ではシェーカーのみを稼働させ、制御は外部から行えます。FreeStyle293などの浮遊系細胞の培養に適しています。

高さ95mmの薄型設計で、インキュベーター内の限られたスペースを有効に活用できます。低振動・低騒音で環境への影響も少なく、標準プラットフォーム上に専用アクセサリーを載せるだけで簡単に交換が可能です。

回転数は30~300rpm、旋回直径22mm、タイマー・ステップ機能も搭載し、用途に応じた柔軟な運転もできます。プラットフォームは300×330mmでシリコンマット付属。容器1本あたり最大1Lのフラスコに対応し、培養環境の最適化に貢献します。

3-3. RemoteRoll 加湿対応セルローラー

RemoteRollは、湿度の高いCO2インキュベーター内でのローラーボトル培養に特化した回転培養装置です。標準的な165~180Lクラスのインキュベーターに適したサイズで、省スペースかつ高効率な細胞培養を可能にします。

加湿環境下での安定駆動を実現し、操作部は外部に設置できる独立型のタッチパネルコントローラーを採用。マグネット付きで設置も容易です。装置本体は1段あたりローラーボトル3本を搭載可能で、増加デッキを加えることで最大4段まで拡張できます。
0.05~6.00rpmまで幅広い回転数設定が可能で、超低速での繊細な培養にも対応します。また、ボトル直径の入力による自動回転補正機能も備えています。直感的に操作できる液晶パネルとともに、高性能かつ柔軟性に富んだ設計が特徴です。

3-4. ローラーボトル用回転培養装置

ローラーボトル用回転培養装置は、付着細胞を大量に培養するために最適化された装置です。米国製従来品との完全互換性を保ちつつ、操作性や拡張性、耐久性などにおいて国内開発ならではの改良が施されています。

装置は最大10段まで増設可能で、最大50本のローラーボトルに対応可能です。超低速の0.05rpmから最大6.00rpmまでの幅広い回転数設定ができ、繊細な播種から本格的な培養まで柔軟に対応します。

本体は耐久性に優れたオールステンレス製で、制御部には見やすく操作しやすい液晶タッチパネルを搭載しています。また、ローラーボトルの径に応じた回転数自動補正機能や、各段・各ローラーが個別に駆動する「全位置駆動」方式により、均一な回転を実現します。

設置時にはキャスターとアジャスターフットで移動と固定が容易に行える点も、実験室での取り扱いにおいて大きな利便性となります。標準的なインキュベーター内でも柔軟に運用できる仕様となっており、スケールアップにも適した培養装置です。

まとめ

振とう培養機は、生命科学や製薬分野で広く活用されている、微生物や細胞培養において液体を揺動して酸素を供給しつつ、一定の温度環境で微生物や細胞を培養するための装置です。振とう機能により液体中への酸素供給を促進し、インキュベーター機能で培養環境を安定的に維持します。

製品には一体型のNew Brunswick S41iや、インキュベーター内設置型のRemoteShakeシリーズ、ローラーボトル専用のRemoteRollなどがあり、研究目的や培養対象に応じて選択可能です。

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