COLUMN製品コラム

振とう機とは?用途・種類・主な製品の仕様を解説

振とう機は、試料を撹拌・混合することで反応の効率を高める研究・実験用機器です。生化学や細胞培養、分子生物学など幅広い分野で活用されており、混合精度の向上や再現性の確保に欠かせない存在となっています。振とうの方式や構造は製品によって異なり、使用目的や容器の種類に応じた適切な選定が重要です。

当記事では、振とう機の基本的な仕組みと用途に加え、代表的な振とう方式やタイプの違いを解説します。各製品の仕様や対応容器などの特徴を知りたい方も、ぜひご覧ください。

目次

1. 振とう機とは?
1-1. 振とう機の用途

2. 振とう機の振とう方式

3. 振とう機の種類・仕組み

4. 振とう機の製品仕様
4-1. 細胞培養向け傾斜角可変シェーカー TiltStation
4-2. 加温冷却対応シェーカー BioShake Q1
4-3. MixMate
4-4. ThermoMixer C
4-5. 加湿対応マグネチックスターラー(4ポジション)

まとめ

1. 振とう機とは?

振とう機(しんとうき)とは、試験管やフラスコなどの容器を一定のリズムで振動・揺動させる実験用装置です。液体や試料を混合したり、撹拌したりするために使用されます。外部から力を加えることで内部の成分を均一に混ぜたり、反応を促進したりすることが可能です。

化学・生物・環境・食品などの研究や品質管理の現場で広く使われており、「シェーカー」と呼ばれることもあります。実験の効率化や再現性の確保において重要な役割を果たす装置です。

1-1. 振とう機の用途

振とう機は、特に試験管やフラスコ内の液体や粉末を効率的に撹拌する必要がある場面で活躍します。以下のように、使用される分野ごとに目的や作業内容は多岐にわたります。

分野主な用途・使用例
化学分野有機化学や無機化学の実験で溶媒と溶質の混合、反応試薬の調製、抽出操作などに用いられます。
たとえば、水質検査での反応試験や土壌・産業廃棄物中の有害物質(重金属、PCBなど)の溶出試験にも使われています。
生化学・分子生物学DNAやRNAの抽出、抗体・酵素反応、電気泳動ゲルの染色と脱色、メンブレンフィルターの洗浄など、多くの前処理工程に用いられます。
農学・生物学大腸菌やカビなど微生物の培養、植物細胞や動物細胞の培養にも使用されます。
振とうによって酸素や栄養分の供給が均一に行われることで、培養環境が安定します。

2. 振とう機の振とう方式

振とう機にはさまざまな振とう方式があり、用途や目的に応じて適切な方式を選ぶことが重要です。主な振とう方式には以下のようなものがあります。

振とう方式特徴
往復振とう(水平・レシプロ振とう)最も一般的な方式で、左右に往復運動を行います。反応、溶解、培養など多目的に使え、酵母や大腸菌の培養にも適しています。
旋回振とう(ロータリー・オービタル振とう)円を描くような動きをする方式で、物理的なストレスが少なく、微生物や植物細胞の培養、DNA抽出、タンパク質の生産などに用いられます。
8の字振とう往復と旋回を組み合わせた動きで、撹拌・混合効率に優れています。ELISAやウエスタンブロッティングなどの反応にも適しています。
垂直振とう上下方向に振とうする方式で、特に液体の抽出操作や粉体の混合に用いられることが多く、分液ロートを使用する前処理にも適しています。
モノード振とう円弧を描くように上下する方式で、液体と空気の接触効率が高く、微生物の培養やBOD測定に使用されます。
シーソー振とうゆるやかに傾斜しながら上下する動きが特徴です。主にハイブリダイゼーションやゲルの染色・脱色処理に用いられます。

振とう機の動作方式は多岐にわたり、各分野・工程での効率と目的達成に直結する要素となっています。適切な方式を選定することで、試験・培養の精度や再現性を高められます。

3. 振とう機の種類・仕組み

振とう機には、振とうさせる目的や試料の性質に応じてさまざまな種類が存在します。それぞれの装置は、構造や仕組みに特徴があり、研究分野や用途に応じて使い分けられます。以下に代表的な種類とその仕組みを紹介します。

■磁石式(マグネチックスターラー)
力で容器内の撹拌子(スターラー)を回転させて溶液を混合します。加熱機能や回転速度調整が可能なモデルもあり、実験室で広く使用されています。

■撹拌棒式・羽根式
モーターに接続された棒状または羽根状の撹拌子が回転し、粘性の高い液体の混合にも対応します。

■ボルテックス式(ボルテックスミキサー)
ゴムヘッドに試験管などを押し当てて振動を伝える方式で、小容量の試料を短時間で強力に撹拌できます。

■ロータリーシェーカー(回転ディスク式)
プレート状の振とう台を一定速度で回転させ、細胞や血液などの繊細な試料を穏やかに均質化するのに用います。

■リニア式(リニアスターラー)
前後に直線運動することで、マイクロプレート内の液体を静かに混合します。主に免疫学や分子生物学の分野で使用されます。

4. 振とう機の製品仕様

振とう機には、細胞培養や遺伝子解析、温度制御など、使用目的に応じた多彩な製品があります。以下では、角度調整機能や加温冷却機能、マルチポジション対応といった特徴を備えた代表的なモデルを紹介します。

4-1. 細胞培養向け傾斜角可変シェーカー TiltStation

細胞培養向け傾斜角可変シェーカー TiltStationは、細胞培養の自動化を目的とした傾斜角可変型のシェーカーです。速度調整可能なシーソー運動により、培養中の細胞を均一に分散させ、酸素や栄養の供給を効率的に行うことが可能です。

±8°の傾斜角と2~100rpmの範囲で細かく調整できる振とう速度により、細胞の偏りを防ぎ、トリプシン処理や継代培養などの工程にも対応します。3つの固定ポジション(±0.2°精度)を設定できるため、プレートの受け渡しや培地交換も自動化しやすくなっています。

外部制御用インターフェース(RS232)による外部制御に対応し、既存のBioShakeとの統合も容易です。最大500gの搭載重量に対応し、6~48ウェルプレート(SBS準拠)を使用できます。

4-2. 加温冷却対応シェーカー BioShake Q1

加温冷却対応シェーカー BioShake Q1は、高速撹拌機能と高精度な温度制御を兼ね備えた自動化対応型のシェーカーです。200~3,000rpmの範囲で混合でき、円軌道の回転により効率的な撹拌を実現します。加温・冷却は-10℃から99℃まで対応しており、±1℃以内の温度均一性を保ちながら、短時間で目的の温度に到達できます。

アダプターの交換により、マイクロプレート、チューブ、バイアルなど多様な容器に対応可能です。オープン構造とRS232接続によりロボットとの連携も容易で、研究や実験の自動化環境にも適しています。

4-3. MixMate

MixMateは、PCRの前処理やペレットの再懸濁、粘性試料のミキシングに適した高速ミキサーです。最大3,000rpmの高速混合と、2DMix-Control技術による水平方向の均一な撹拌が特徴で、再現性の高いミキシングが可能です。垂直方向の動きを排除することで、サンプルのリッド濡れやコンタミネーションを防ぐ「Anti-spillテクノロジー」も搭載されています。

0.2~50mLまでの各種チューブに対応するホルダーを用意しており、プレートは本体に直接取り付け可能です。コンパクトな設計ながら安定性に優れ、最大速度でも本体が動かない構造です。操作音は50dB以下とされており、作業中のストレスを軽減します。

4-4. ThermoMixer C

ThermoMixer Cは、サンプルの混合と温度制御を1台で行える多機能機器です。5~50mLのチューブやプレートに対応したSmartBlockの使用により、容器の交換が簡単に行えます。最大3,000rpmの高速ミキシングと1~100℃の温度制御によって、実験の再現性と信頼性を確保できます。

また、Anti-spill技術によりリッドの濡れやクロスコンタミネーションを防ぎます。USBによる操作やプログラムキーの設定によって、直感的な運用も可能です。Eppendorf ThermoTop®との併用で結露を防ぐことができ、安全かつ効率的なアッセイ作業を支援します。

4-5. 加湿対応マグネチックスターラー(4ポジション)

加湿対応マグネチックスターラー(4ポジション)は、細胞培養用途に適した加湿対応型マグネチックスターラーで、低速から高速まで幅広い回転数を設定できます。最大4ポジションで同時撹拌でき、再現性の高い培養環境をサポートします。
視認性に優れた大型ディスプレイにより、運転状態を即座に把握することも可能です。ブラシレスDCモーターを搭載し、発熱が少なく高湿度下でも安定して動作します。モーター制御回路によって負荷変動にも対応し、常に一定の回転数を維持し、異常停止時にはブザーで警告を発するため安全性にも配慮されています。

まとめ

振とう機は、試験管やフラスコなどの容器を一定のリズムで振動・揺動させる実験用装置です。「シェーカー」とも呼ばれ、化学・生物・環境・食品などの分野で液体や試料の混合・撹拌に広く使用されています。

主な振とう方式には往復振とう、旋回振とう、8の字振とう、垂直振とうなどがあり、用途に応じた選択が可能です。種類には磁石式、撹拌棒式、ボルテックス式、ロータリーシェーカーなどがあり、実験の効率化と再現性確保に重要な役割を果たしています。

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