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バイオリアクターとは?原理や用途・メーカーについて徹底解説

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バイオリアクターは、微生物や細胞などの生体触媒を活用して有用物質を生産する装置であり、医薬品や食品、燃料など多様な分野で注目されています。特に、発酵や細胞培養などの工程において、温度やpHといった環境を最適に保ちながら、効率的な生産を実現できる点が特徴です。

当記事では、バイオリアクターの原理やケミカルリアクターとの違い、活用されている分野の具体例、代表的なメーカーについて詳しく解説します。

目次

1. バイオリアクターとは
1-1. バイオリアクターの原理
1-2. バイオリアクターとケミカルリアクターの違い

2. バイオリアクターの主な用途
2-1. 食品
2-2. 医薬品
2-3. 燃料
2-4. 環境保護

3. バイオリアクターの主なメーカー

まとめ

1. バイオリアクターとは

バイオリアクターとは、微生物や植物細胞、動物細胞などの生体触媒を利用して、目的とする物質を効率的に生産するための装置です。医薬品や食品、バイオ燃料などの製造に活用されており、細胞の成長や反応を最適な状態で進めるための環境制御機能を備えています。

近年は遺伝子工学や細胞工学の進歩により、より高性能で多様な用途に対応したバイオリアクターが開発されています。生産性の向上と省資源化を両立できる装置として、持続可能な産業プロセスの要と言える存在です。

1-1. バイオリアクターの原理

バイオリアクターの内部には微生物、植物細胞、動物細胞、酵素などの反応素が配置され、これらが反応物質と化学反応を起こすことで、有用な生成物を得られます。

反応素はリアクター内に固定化されており、繰り返し使用できます。これにより、反応の安定性が高まり、コストや資源の削減にもつながります。さらに、反応の進行には温度、pH、圧力、溶存酸素などの条件が厳密に制御され、微生物や細胞が最適な環境で代謝を行えるよう設計されています。

1-2. バイオリアクターとケミカルリアクターの違い

バイオリアクターとケミカルリアクターは、いずれも目的物質の合成や分解を行う装置ですが、仕組みや運用条件にさまざまな違いがあります。

ケミカルリアクターは主に高温・高圧下で化学触媒を用いた反応を行い、ポリマーや燃料、医薬品などの合成に用いられます。一方、バイオリアクターは微生物や酵素、細胞といった生体触媒を用い、発酵や細胞培養などの生物学的プロセスに適しています。

また、バイオリアクターは温度、pH、溶存酸素などの環境を緻密に制御し、生物が最適に働けるよう設計されています。反応速度は一般的に化学反応より遅いですが、繰り返し利用できる点や省エネルギーである点がメリットです。

ケミカルリアクターとバイオリアクターとの違いを把握し、用途に応じて適切なリアクターを選定しましょう。

2. バイオリアクターの主な用途

バイオリアクターは、生物の働きを活用して有用物質を生産する装置として、多くの産業で導入が進んでいます。食品・医薬品分野での発酵や培養にとどまらず、再生医療やエネルギー、環境浄化といった分野においても重要な役割を果たします。

ここでは、各分野でバイオリアクターがどのように活用されているかを紹介します。

2-1. 食品

食品分野では、バイオリアクターは発酵や微生物培養を高度に制御しながら行う装置として、伝統製法の進化形と位置づけられています。

たとえば、ビールやワイン、日本酒などのアルコール飲料は、酵母による発酵によって製造されますが、バイオリアクターを用いることで発酵条件の最適化が可能となり、品質の安定化と生産性の向上が実現できます。ヨーグルトやチーズ、納豆といった発酵食品も、乳酸菌や納豆菌といった微生物の力を生かして作られます。

これらの微生物は温度やpHに対して繊細であり、安定した生産には高度な環境制御が欠かせません。バイオリアクターでは環境を正確にモニタリング・制御できるため、製品ごとの風味や栄養価のばらつきを抑えられます。

また、近年注目されているのが「培養肉」の分野です。これは動物の細胞を培養して人工的に肉を作る技術であり、バイオリアクターが細胞増殖の場として活用されています。従来の畜産に比べて環境負荷が少なく、持続可能なタンパク源としても大きな期待が寄せられています。

2-2. 医薬品

医薬品の製造においても、バイオリアクターは不可欠な装置です。抗体医薬品、インスリン、成長ホルモン、ワクチンなどのバイオ医薬品は、動物細胞や遺伝子組換え微生物を用いた培養によって製造されます。培養時は温度やpH、溶存酸素などを精密に制御する必要があるため、バイオリアクターの環境制御能力が活用されています。

バイオリアクターが特に注目されているのが、再生医療や細胞治療といった最先端医療分野での活用です。ヒト由来の幹細胞やiPS細胞を大量培養し、組織や臓器の再生に用いるプロセスでは、バイオリアクターの清浄性・均質性が高く評価されています。また、臨床用に使用される細胞製品では、無菌状態の維持やコンタミネーション(異物混入)の防止が極めて重要となるため、クリーンな設計も必須条件となります。

さらに、検査用試薬や診断キットなどの製造においても、微生物や細胞を大量に培養する工程があり、バイオリアクターが利用されています。

2-3. 燃料

エネルギー分野では、バイオリアクターは持続可能な代替燃料の生産手段として注目されています。特に、バイオエタノールやバイオディーゼルなどのバイオ燃料は、植物由来や微生物由来の有機物を原料に、酵母や細菌を活用して生産されます。

たとえば、サトウキビやトウモロコシ由来の糖質を酵母がエタノールへと変換する工程では、温度やpHの変動が発酵効率に大きく影響します。バイオリアクターでこれらの条件をリアルタイムで制御することで、連続運転や大規模生産にも対応できます。
化石燃料への依存度を下げるというSDGsの観点からも、再生可能エネルギーとしてのバイオ燃料の重要性は今後さらに高まるでしょう。バイオ燃料を支える基盤装置として、バイオリアクターの高度化が期待されています。

2-4. 環境保護

環境保護の分野でも、バイオリアクターはさまざまな形で活躍しています。特に重要なのが、下水処理や産業廃水の浄化です。水の処理には活性汚泥法や嫌気性発酵といった微生物による有機物分解が活用されており、反応の場としてバイオリアクターが使われています。

また、二酸化炭素の固定やメタンの回収など、温室効果ガスの抑制にも応用されており、カーボンニュートラルの実現につながる技術として注目されています。

3. バイオリアクターの主なメーカー

バイオリアクターは用途や培養対象、生産規模に応じて多様な設計が求められるため、各メーカーは独自の技術や強みを生かした装置開発を行っています。特に医薬品や再生医療、食品・環境分野では、高度な制御機能や細胞への負荷を抑える設計が重要視されており、信頼性の高いメーカー製品が選ばれています。

代表的なバイオリアクターのメーカーは下記の通りです。

・エッペンドルフ
ドイツ発のライフサイエンス企業で、リキッドハンドリングから細胞培養機器まで幅広い製品を展開しています。
バイオプロセス領域では、スケールに応じた各種リアクターを提供し、精密な制御と操作性の高さに定評があります。

・PBS Biotech
アメリカの企業で、シングルユース型バイオリアクターに強みを持つメーカーです。
再生医療や細胞製剤の製造に適しており、pHの制御や培地供給機能も備えています。

まとめ

バイオリアクターは、生物の力を最大限に引き出しながら有用物質を生産する装置として、医薬・食品・燃料・環境など多様な分野で活用されています。導入に際しては、用途や対象細胞、求められる生産規模に応じて、各メーカーの技術的特徴を把握した上で適切な装置を選定しましょう。今後もバイオリアクターは、持続可能な社会の実現に貢献する中核技術として進化していくことが期待されています。

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