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自動細胞処理システムとは?主な機能・用途や導入のメリットを解説

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細胞培養の際に、細胞の分離や洗浄、培養、保存といった一連の処理は、従来であれば熟練した作業者がクリーンベンチ内で行ってきました。しかし、手作業による操作にはばらつきやコンタミネーションのリスクが伴います。

自動細胞処理システムは、細胞を無菌的に取り扱いながら、操作の標準化と効率化を実現できる装置です。自動化によって作業の標準化や品質の安定が図れるため、研究開発の現場や再生医療分野において導入が進んでいます。

この記事では、自動細胞処理システムの基本的な仕組みや特徴、主な機能と用途、導入によって得られるメリットについて紹介します。

目次

1. 自動細胞処理システムとは
1-1. 細胞処理とは

2. 自動細胞処理システムの機能と用途
2-1. 免疫磁気分離前処理
2-2. 白血球アフェレーシス細胞洗浄
2-3. 培養細胞回収&培地置換
2-4. 凍結解凍品洗浄&DMSO除去

3. 自動細胞処理システムを導入するメリット
3-1. 自動化によりミスを防ぎやすくなる
3-2. 作業を効率化・短縮できる
3-3. 高まる細胞治療需要に対応しやすくなる
3-4. 閉鎖系のシステムの場合は無菌管理を行いやすくなる

まとめ

1. 自動細胞処理システムとは

自動細胞処理システムとは、細胞の分離・洗浄・培地交換・継代・凍結保存といった、細胞培養の一連の流れを自動化する処理装置のことです。無菌性を保ったまま細胞を扱えるよう、チューブとバッグから成る使い捨てのキットと、閉鎖的な構造を組み合わせているのが特徴です。

人間の手を介さずに細胞処理を行うため、コンタミネーションの発生リスクを低下させ、作業の質を標準化できることから、細胞医療をはじめとした研究機関で導入が進んでいます。

1-1. 細胞処理とは

そもそも細胞処理とは、細胞を培養皿やバイアル内で育て、必要に応じて性質を変化させる一連の操作を指す言葉です。

処理工程の最初に行うのは、細胞を均等に皿へまき栄養豊富な培地に浸す「播種」です。その後、増殖で密度が高まったときは、細胞を酵素でほぐして新しい皿に移す継代を行い、過密によるストレスを減らせる仕組みとなります。

培地を新しいものに替えると老廃物が除去され、栄養と酸素が補給されるため、細胞の代謝が整います。目的に応じて薬剤や遺伝子を導入し、タンパク質を作らせたり分化を誘導したりする操作も欠かせません。十分に増えた細胞は遠心分離で集め、洗浄後に凍結保存することで、研究や治療に使える状態を長期間保てます。

各工程はクリーンベンチ内で無菌的に行い、CO2インキュベーターで増殖に適した環境を維持します。

わずかな汚染や環境の変化でも細胞は死んでしまうため、極めて慎重な作業が求められてきました。

2. 自動細胞処理システムの機能と用途

自動細胞処理システムと一口に言っても、さまざまな機能があります。以下では、アズサイエンスが扱っている、Fresenius Kabi社の「自動細胞処理・閉鎖式細胞処理 LOVO」の製品情報をもとに、自動細胞処理システムの機能と用途を紹介します。

自動細胞処理・閉鎖式細胞処理 LOVO | アズサイエンス株式会社

2-1. 免疫磁気分離前処理

免疫磁気分離は、混合された細胞集団から目的の細胞を高純度で分離する技術です。細胞表面の特定抗原に結合する抗体を磁性粒子に結合させて標識を行い、磁場を利用して標的細胞のみを吸着させる仕組みです。残った細胞は除去されるため、ポジティブセレクションおよびネガティブセレクションの両方に対応できます。

自動細胞処理システムでは、分離工程の前処理を標準化可能です。例えば、洗浄や反応条件の設定、磁性粒子の添加・除去などを自動化することで、再現性の高い分離操作が可能になります。高純度・高生存率を保った状態での細胞回収ができる点がメリットです。

2-2. 白血球アフェレーシス細胞洗浄

白血球アフェレーシスは、患者またはドナーの血液からT細胞や造血幹細胞などを採取する工程です。CAR-T細胞療法や造血幹細胞移植といった治療法では、白血球アフェレーシスによる採取が前提となります。アフェレーシスで回収された細胞は血漿や不要な成分と混在しているため、精製処理が必要です。

自動細胞処理システムでは、遠心や洗浄を組み合わせることで白血球成分から目的細胞を分離できます。

2-3. 培養細胞回収&培地置換

継代培養を行う際には、増殖した細胞を一度回収し、新たな培地に移す作業が不可欠です。この作業では、剥離、遠心、再懸濁といったいくつもの工程が発生し、人手による操作が多いほど、手技差による細胞品質のばらつきが問題となります。
自動細胞処理システムは、一連の作業を一括で処理できます。例えば、適切な時間でのトリプシン処理、遠心条件の標準化、新培地への分注などを装置が担うことで、細胞へのダメージを最小限に抑えた継代が可能になります。

2-4. 凍結解凍品洗浄&DMSO除去

細胞バンクや細胞製品は、凍結保存された状態で納品されることが一般的です。凍結保存剤として用いられるDMSOは、解凍後の毒性が高いため、すぐに除去する必要があります。しかし、解凍後の希釈や洗浄操作を誤ると、細胞の生存率が著しく低下します。

自動細胞処理システムを用いれば、きまった速度で解凍し、DMSOを含む上清を洗浄・除去する一連の工程を自動化することが可能です。

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3. 自動細胞処理システムを導入するメリット

自動細胞処理システムの導入は、再生医療や細胞治療の現場において、生産性と品質管理の両面から多くのメリットがあります。

以下では、自動化によって得られる主要なメリットを4つ紹介します。

3-1. 自動化によりミスを防ぎやすくなる

自動細胞処理システムを導入すれば、ヒューマンエラーを防ぎやすくなる点がメリットです。細胞製造の工程は多岐にわたり、培養機器操作や手作業の際に起こる温度やpH、培地交換のタイミング間違いなど培養過程の些細なミスが製品の品質に直結します。手作業では作業者のスキルに依存するため、経験や疲労の違いによるばらつきが避けられません。

自動細胞処理システムでは、各工程の条件があらかじめ設定され、自動的に制御・記録されます。温度や流量などのパラメータをリアルタイムで監視することで、人為的なエラーの発生を抑制し、再現性や信頼性の高い細胞処理ができます。

3-2. 作業を効率化・短縮できる

自動細胞処理システムの導入により、オペレーターの負担が小さくなる点もメリットです。

手作業による細胞培養や分離、洗浄などの工程はオペレーターの処理能力に依存し、拘束時間も長くなりがちです。

自動化されたシステムでは、一度プロセスを設定すれば、温度管理や培地の交換、遠心操作などが自動で行われ、オペレーターは待ち時間にほかの業務を進められます。また、定期的な培養状態の確認もセンサーやソフトウェアによって自動的に実行されるので、ヒューマンエラーによるやり直しも減り、作業時間を短縮できます。

3-3. 高まる細胞治療需要に対応しやすくなる

自動細胞処理システムを導入すれば、治験用から商用製造への移行やスケールアウトにも対応しやすくなる点もメリットです。

iPS細胞医療製品をはじめとした細胞治療は、がんや難治性疾患への新たな治療法として注目されており、今後の需要拡大が見込まれます。

特にモジュール型の自動化装置では、特定の処理ステップを組み合わせることで柔軟な生産体制を構築できるため、製造規模や治療対象数の拡大にも対応可能です。

3-4. 閉鎖系のシステムの場合は無菌管理を行いやすくなる

自動細胞処理システムは閉鎖系で設計されているものが多く、チューブ接続や遠心処理、培地交換などの一連の操作がシステム内部で完結します。

細胞製品の製造では、外部環境からのコンタミネーションを防ぐための無菌操作が欠かせません。開放系のシステムでは、その都度クリーンベンチ内での操作が必要で、作業者の熟練度や動作の正確性が求められます。

閉鎖系の細胞処理システムであれば、無菌環境を維持したまま複数の処理が実行できるため、製造環境の清浄度を保って、細胞製品の安全性を高められます。

まとめ

自動細胞処理システムは、細胞分離や培養、凍結解凍などの工程を一貫して自動化できる装置です。免疫磁気分離やアフェレーシス後の洗浄、DMSO除去といった煩雑で繊細な操作にも対応しており、細胞を安全かつ高品質な状態で処理することが可能です。

自動化によって人的ミスを減らし、作業時間を短縮できるだけでなく、処理条件の標準化や無菌環境の維持にも貢献します。また、細胞治療の普及に伴って量産ニーズが高まる中、モジュール型の自動システムであれば製造スケールの拡大にも柔軟に対応できます。

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