COLUMN製品コラム
医療・研究用保冷庫の選び方|血液・試薬の適正管理と安全機能を解説

病院の薬品・ワクチン、検査室の試薬、輸血部門の血液製剤は、どれも「決められた温度条件で保管すること」が前提です。温度逸脱は、試薬の失活や薬効の低下だけでなく、輸血用血液の品質にも直結します。そこで重要になるのが、用途に合った“医療・研究用保冷庫”を選び、温度の安定運用(記録・警報・施錠・復帰性能)まで含めて管理体制を整えることです。
当記事では、薬用・研究用・血液用の分類、血液製剤の保存条件、選定時に見るべき性能と安全機能、アズサイエンスが取り扱う製品例を、購入・更新担当者が判断しやすい形で紹介します。
1. 医療・研究現場で使用される保冷庫の主な分類
医療・研究用の保冷庫は、家庭用冷蔵庫のように冷えれば良いわけではありません。医薬品や試薬は、わずかな温度変動でも品質に影響することがあり、庫内の温度制御・温度ムラ抑制・警報・記録など管理の仕組みが求められます。
ここでは、現場でよく分かれる「薬用」「研究用」「血液用」の3分類で整理します。
1-1. 薬用保冷庫(薬品・ワクチン用)
薬用保冷庫は、要冷蔵(例:2~8℃)や禁凍結の医薬品・ワクチンを、安定した温度帯で守るための機器です。現場では「温度の安定性(温度ムラ・霜取り時の変動)」「警報」「施錠(盗難・誤使用対策)」が特に重視されます。
PHCの薬用保冷庫カタログでは、庫内9点測定で2~8℃に収まる温度分布(同社基準)など、温度制御性能の考え方が示されています。
薬剤部・ワクチン保管では「誰が、いつ、どの温度で保管したか」を説明できる体制が求められるため、警報の種類(高温・低温・ドア開放・停電など)やログ出力(USB等)も、購入前に確認しておくと運用が止まりません。
1-2. 研究用保冷庫(試薬・サンプル用)
研究用保冷庫は、試薬・培地・サンプルなどを用途に応じた温度帯で保管し、再現性と安全性を支える機器です。ポイントは「温度の均一性」「出し入れ頻度に耐える復帰性能」「交差汚染を避けやすい運用設計(棚・ゾーニング)」に加えて、揮発性物質を扱う可能性がある現場では安全設計の考え方も重要になります。
アズサイエンス掲載の研究用保冷庫(例:MPR-722-PJ)では、大型ファンによる強制循環で温度復帰と精度を高める点、棚耐荷重やサービスコンセントなど実験機器を入れて使う運用を意識した仕様を示しています。
1-3. 血液保冷庫(輸血・血液製剤用)
血液保冷庫は、輸血用血液製剤を決められた条件で保管する専用機器です。血液は保存温度が厳格で、赤血球製剤は2~6℃での保存が基本とされ、専用保冷庫での保管が推奨されています。
PHC系のカタログでも「血液は必ず血液保冷庫で保存(薬用冷蔵ショーケース・薬用保冷庫では保存できない)」という注意喚起が明記されています。
また、血液保冷庫では温度制御だけでなく、温度記録・警報・施錠・運用のしやすさまで含めて輸血部門の手順に組み込みやすいかが選定の軸になります。
2. 血液製剤の種類に応じた適切な保存条件
輸血用血液は、成分ごとに「保存温度」「保存期間」「保管方法」が異なります。誤った温度管理は、溶血や機能低下など品質に影響するため、保冷庫の温度帯選定と運用ルールがセットで必要です。
まずは全体像を表で押さえると、購入時の温度帯のミスマッチを防げます。
| 血液製剤 | 代表的な保存条件 | 補足(運用で迷いやすい点) |
|---|---|---|
| 赤血球製剤 | 2~6℃で冷蔵保存 | 凍結させない(低すぎる温度もNG) |
| 血漿製剤 | -20℃以下で凍結保存(目安1年) | 施設の冷凍能力・温度監視が重要 |
| 血小板製剤 | 20~24℃で振とうしながら保存(目安4日) | 低温だと活性化が進みやすい |
2-1. 赤血球製剤(2~6℃の低温保存)
赤血球製剤は、2~6℃で代謝を抑えて品質を保つ考え方が基本です。温度が上がると代謝が進み、ATP消費などを通じて性状に影響し得るため、冷蔵域を安定して維持する必要があります。
一方で、2~6℃より低く凍結状態になると溶血リスクが高まるため、冷やし過ぎないことも同じくらい重要です。そのため、赤血球を扱う現場では、温度ムラを抑える循環方式、ドア開閉後の温度復帰、警報と記録を重視して血液保冷庫を選ぶのが基本になります。
2-2. 血漿製剤(-20℃以下の冷凍保存)
血漿製剤は、-20℃以下で凍結保存し、有効期間の目安は採血後1年です。
(出典:日本赤十字社 大分県赤十字血液センター「血液製剤の種類」/https://www.bs.jrc.or.jp/bc9/oita/process/m3_02_type.html)
ここでの選定ポイントは「庫内が-20℃以下を安定して満たせるか」「停電や扉開閉があっても逸脱を最小化できるか」「温度の記録と警報が取れるか」です。血漿は凍結が前提のため、薬用保冷庫(2~14℃など)では温度帯が合わないケースがあり、保存対象に合わせた冷凍機器の用意が必要になります。
2-3. 血小板製剤(20~24℃の振とう保存)
血小板製剤は少し特殊で、20~24℃の室温帯で、かつ振とうしながら保存します。貯法として「20~24℃で振とうしながら貯蔵する」とされており、有効期間は採血後4日間となっています。
低温にすると血小板の活性化が進み、生体内寿命の短縮や止血効果の低下につながり得るため、冷やすほど良いわけではありません。したがって、血小板を扱う場合は、振とう機構を備えた保管環境を含めて検討し、手順と機器仕様が噛み合う形にすることが重要です。
3. 専門機器の選定時に重視すべき性能と安全機能
保冷庫選定は温度帯が合うかだけで終わりません。医療・研究用途では、温度逸脱を起こしにくい設計と、逸脱が起きたときにすぐ気づける・証跡が残る仕組みが大切です。
購入時に仕様表で確認しやすいよう、最低限のチェック項目をまとめました。
温度性能:温度ムラ、復帰時間(扉開閉後の戻り)、周囲温度の影響
監視・記録:高温/低温/ドア開放/停電警報、ログ保存、外部出力(USB等)
安全:施錠、アクセス管理、可燃性物質を想定した設計(用途次第)
運用:収納(引出し/棚)、視認性、清掃性、設置スペース・電源条件
3-1. 温度の均一性と扉開閉後の復帰性能
庫内温度を一定に保つには、ファンによる強制循環(強制空気冷却)など、温度ムラを抑える仕組みが重要です。
また、医療・研究現場では出し入れが多く、扉開閉で温度が揺れやすいため、設定温度へどれだけ速く戻るかが実質的な安全性になります。たとえば大容量ショーケース型では、マルチフローダクトで棚ごとの冷却を均等化し温度ムラを抑える、といった設計思想が示されています。
運用面では、開閉回数が多い部署ほど「よく使う棚を決める」「在庫配置を固定する」など、運用での温度揺れ低減も合わせて設計すると、機器性能を活かしやすくなります。
3-2. 防爆構造や鍵・アラーム等のリスク管理仕様
薬品・ワクチンや高価な試薬は、品質だけでなく持ち出し防止や誤使用防止の観点も重要です。さらに温度逸脱は気づけないことが最も危険なので、警報と履歴まで含めて確認しておくと、監査対応や院内手順への落とし込みがスムーズです。
揮発性物質などを扱う研究用途では、そもそも容器密閉やルールなどの保管可否も含めて検討が必要で、カタログの注意事項や施設ルールに沿って適切な保管方法を選ぶことが前提になります。
4. アズサイエンスが取り扱っている保冷庫
アズサイエンスでは、医療・研究現場の用途に合わせた保冷庫を取り扱っています。ここでは、記事内の分類に合わせて製品例を紹介します。
血液保冷庫 MBR-506T4-PJ
血液保存温度が2~6℃で厳密に定められている点に触れつつ、庫内を4℃±1℃で制御する仕様が示されています(内容量425L)。
薬用冷蔵ショーケース MPR-1014R-PJ
大容量(1029L)で、温度ムラを抑える設計が特長として紹介されています(2~14℃)。
フリーザー付き 薬用保冷庫 MPR-N250FSH-PJ
保冷(2~14℃)+フリーザー(-30~-20℃)を一体化し、ログ機能やUSB出力など運用面の機能が記載されています。
研究用保冷庫 MPR-722-PJ
大型ファン強制循環、棚耐荷重50kg、サービスコンセントなど研究運用を意識した仕様が示されています(2~14℃/2~23℃の制御範囲)。
導入時は、現場の保管物を棚卸しして「必要温度帯」「出し入れ頻度」「記録の要否」「施錠の要否」を先に整理すると、候補が絞り込みやすくなります。
まとめ
医療・研究用保冷庫の選定は、温度帯だけでなく「温度の安定性(ムラ・復帰)」「監視と記録(警報・ログ)」「施錠などの安全機能」「現場運用(収納・動線)」まで含めて判断すると失敗しにくくなります。血液製剤は成分ごとに保存条件が異なり、赤血球は2~6℃、血漿は-20℃以下、血小板は20~24℃で振とう保存というように、要件がはっきり分かれるのが特徴です。
アズサイエンスでは血液保冷庫・薬用保冷庫・研究用保冷庫などを取り扱っているため、保管物と運用要件を整理したうえで相談すると、用途に合った機器選定につなげやすくなります。アズサイエンスでは保冷庫を取り扱っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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