COLUMN製品コラム
パーティクルカウンターの原理|使用用途や種類も解説
医療機器や医薬品の製造現場、さらに半導体をはじめとした精密機器の製造は、クリーンルームで行われます。クリーンルームとは、微細な不純物の影響を最小限に抑えながら製品を製造するための、高度な清浄度が維持された特殊な空間です。
クリーンルームの性能評価には、空気中の微粒子や不純物の測定が不可欠となります。そこで重要な役割を果たすのが「パーティクルカウンター」です。パーティクルカウンターは、空気中の微粒子の数や大きさを高精度に測定するものであり、クリーンルームのきれいさを評価するために使用されています。
当記事では、パーティクルカウンターの概要や動作原理、さらに用途や種類について詳しく紹介します。
目次 1. パーティクルカウンターとは? 1-1. パーティクルカウンターの原理 1-2. 粉塵計との違い 2. パーティクルカウンターの使用用途 2-1. 気中パーティクルカウンターの場合 2-2. 液中パーティクルカウンターの場合 3. パーティクルカウンターの種類 3-1. パーティクルカウンターの選び方 まとめ |
1. パーティクルカウンターとは?
パーティクルカウンターとは、空気中または水中に浮遊する塵埃や不純物などの目には見えにくい微粒子の数・大きさを測定する機械です。「微粒子計測器(微粒子測定器)」とも呼ばれており、主にクリーンルームの清浄度を評価するために用いられます。
そもそもクリーンルームとは、HEPAフィルタやULPAフィルタなど高性能なフィルタを通して、空気中の微粒子や有害物質を極めて少ないレベルに管理した部屋を指し、「防塵室」とも呼ばれます。医療機器・医薬品や精密機器の製造現場においては、不純物が製品の不良の原因となることから、クリーンルームが不可欠です。
クリーンルーム内部の清浄度評価には「浮遊微粒子濃度試験」があり、その基準は「JIS B 9920」で詳細に定められています。パーティクルカウンターは、クリーンルームの清浄度を客観的に評価し、浮遊微粒子濃度試験において重要な役割を果たします。
1-1. パーティクルカウンターの原理
パーティクルカウンターは、機械の中に空気や水の流れをつくった後、その中の微粒子にレーザー光を照射し、発生した光をセンサーで検出して粒子の特性を測定する仕組みです。
この測定原理にもとづき、「光散乱方式」または「光遮断方式」のいずれかの測定方法を用いて粒子の数や大きさを測定します。光散乱方式と光遮断方式の仕組みと用途について、以下で解説します。
●光散乱方式 微粒子にレーザー光を照射した際に発生する散乱光を測定する方法です。 散乱光を受光素子(フォトダイオード)で検知し電気信号に変換させることで、電気信号の強度から粒子径を、散乱光の受光回数から粒子量を算出できます。 光散乱方式は、0.1~10μm程度の非常に微細な粒子の測定に適した方式です。 ●光遮断方式 微粒子がレーザー光を遮った際に発生する光の減少量を測定する方法です。 受光素子と光源を対面させ、光を電気信号に変換します。粒子が光路を通過する際、受光素子が受ける光は減少します。この減衰量からは粒子径を、そして光の遮断回数からは粒子量を算出できます。 光遮断方式は、比較的大きな粒子(2μm以上)の測定に適した方式です。 |
1-2. 粉塵計との違い
パーティクルカウンターと混同されやすい機器に、「粉塵計」があります。パーティクルカウンターと粉塵計はいずれも空気中の微粒子を測定する装置ですが、測定対象と用途に大きな違いがある点を覚えておきましょう。
粉塵計は、検出部に導入された粉塵にレーザー光を照射し、散乱光を検出することで微粒子の質量濃度を測定する装置です。主に、工場や建設現場などの大気汚染調査に用いられています。
一方で、パーティクルカウンターは微粒子の数や大きさを評価する装置です。粉塵濃度や粒子数濃度を評価する粉塵計とは一般的な使用場面も異なるため、測定目的に応じて適切な装置を選ぶことが重要です。
2. パーティクルカウンターの使用用途
空気中の微粒子を測定するものは「気中パーティクルカウンター」、そして水中(液体中)の微粒子を測定するものは「液中パーティクルカウンター」と呼びます。いずれのパーティクルカウンターも、さまざまな分野で活用されている機器です。
ここでは、気中パーティクルカウンターと液中パーティクルカウンターの具体的な活用場面を解説します。
2-1. 気中パーティクルカウンターの場合
空気中の微粒子を計測する気中パーティクルカウンターは、主にクリーンルームのきれいさを評価するために使われています。
クリーンルームが導入される主な分野としては、半導体工場や精密機器(電子部品・光学機械)工場、薬品工場、食品工場、手術室・治療室などが挙げられます。
なお、クリーンルームは「ISO 14644-1」の国際規格によってクラス1からクラス9まで9段階のクラス分けが行われており、クラスが小さいほど求められる清浄度が高くなります。
分野 | 清浄度クラス |
---|---|
半導体工場 | クラス3~5 |
精密機器工場 | クラス5~7 |
薬品工場食品工場 | クラス5~8 |
手術室・治療室 | クラス7~8 |
各施設では、適切なクリーンルームの選定と定期的な清浄度測定が不可欠です。
2-2. 液中パーティクルカウンターの場合
液体中の微粒子を計測する液中パーティクルカウンターは、主に薬液管理や洗浄工程の管理に使われます。
●薬液管理における液中パーティクルカウンターの用途・役割 薬液の中に含まれる微粒子の濃度測定を行い、異物や不純物が混入していないかを確認します。これにより、製造プロセスの品質維持と製品の安全性・信頼性の確保が可能です。 |
●洗浄工程における液中パーティクルカウンターの用途・役割 製造ラインで使用する機器や容器の洗浄後、液体中に残存する微粒子を測定し、洗浄工程が十分に行われているかを確認します。これにより、製品の適切な製造環境の維持が可能です。 |
3. パーティクルカウンターの種類
パーティクルカウンターには、計測できる粒径や用途によってさまざまな種類があります。代表的な種類としては、「ハンディタイプ」と「ベンチトップタイプ」が挙げられます。
●ハンディタイプ 小型のパーティクルカウンターです。軽量かつコンパクトサイズで持ち運びがしやすい一方で、ベンチトップタイプに比べて吸引流量が低くなっています。 |
●ベンチトップタイプ テーブルやカメラスタンドなどの定位置に設置して使用するタイプのパーティクルカウンターです。ハンディタイプに比べて吸引流量が高く、微粒子のより詳細なモニタリングや長時間の連続測定が必要な用途に適しています。 |
また、どのパーティクルカウンターが適切なのかは測定粒径によっても変わります。たとえば、高い清浄度が求められる精密機器や半導体の製造現場では、0.1μm以下の非常に細かな粒子を測定できるパーティクルカウンターが役立ちます。
一方で、2μm以上の比較的大きな粒子を測定したい場合は、光遮断方式のパーティクルカウンターが最適です。
3-1. パーティクルカウンターの選び方
パーティクルカウンターを選ぶ際は、用途を確認した上で仕様を決定する必要があります。確認しておきたい主な仕様としては、「粒径」「吸引流量」「最大可能粒子濃度」の3点です。
●粒径 計測可能な粒径は、パーティクルカウンターによって異なります。たとえば、0.1μmから5.0μmまでの8区分に対応したモデルや、0.3μmから10μmまでの6区分に対応したモデルなど、幅広い粒径範囲をもつ製品が存在します。 用途に応じて、どのサイズの粒子を測定するかを明確にし、その粒径範囲に対応するパーティクルカウンターを選ぶことが重要です。 |
●吸引流量 吸引流量とは、パーティクルカウンターがどれほどの量の空気を吸引できるかを示す指標です。吸引流量が高いほど短時間で多くの空気を測定でき、測定の効率性が高まります。 一般的な吸引流量の目安は、ハンディタイプで2.83L/min程度、ベンチトップタイプで28.3L/min程度です。広範囲な測定を求める場合は、吸引流量が高いパーティクルカウンターを選ぶと良いでしょう。 |
●最大可能粒子濃度 最大可測粒子濃度とは、パーティクルカウンターで検出可能な最大粒子数を示す指標です。クリーンルームをはじめとした高精度な測定が求められる環境においては、最大可測粒子濃度の高いパーティクルカウンターを選ぶことで、より詳細かつ正確な測定が可能となります。 |
まとめ
パーティクルカウンターとは、空気中・水中における浮遊粒子の数と大きさを測定する装置であり、「微粒子計測機」とも呼ばれています。あらゆる分野の製造現場の清浄度管理や品質確保において重要な役割を果たしています。
パーティクルカウンターは用途に応じた適切な製品選びが重要です。アズサイエンス株式会社では、パーティクルカウンターをはじめとしたさまざまな計測機器を取り扱っております。用途に合った計測機器を使用したいという方は、ぜひアズサイエンス株式会社にお問い合わせください。
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