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環境モニタリング機器の温湿度センサーとは?原理や用途を解説
製造業や農業、倉庫業などの現場では、品質を一定に保つために、環境モニタリング機器が不可欠です。中でも、温度と湿度を同時に測定できる温湿度センサーはさまざまな場でモニタリング機器として使われています。温湿度の管理は、製造業では不良品の削減、農業では作物の病害リスク低減などに役立つため、目的や設置環境に合った温湿度センサーを選びましょう。
この記事では、温湿度センサーの基本的な原理や種類、選び方のポイントを解説します。
目次 1. 環境モニタリング機器の温湿度センサーとは 1-1. そもそも温度・湿度とは 2. 温湿度センサーの原理・種類 2-1. 温度センサーの仕組み 2-2. 湿度センサーの仕組み 3. 温湿度センサーの用途 4. 温湿度センサーの選び方 まとめ |
1. 環境モニタリング機器の温湿度センサーとは
環境モニタリング機器は、製造業や農業などで活用される装置です。製造環境や農作物の生育環境を計測し、品質の安定化を図る役割を担います。各機器から得られるさまざまな環境データを上手に活用すれば、生産性向上とともに、安全性や効率性を向上できる可能性が高まります。
その中でも、温湿度センサーは、温度と湿度を計測することに特化したセンサーです。温湿度センサー機器は1台で温度と湿度の両方を同時測定できるため、狭いスペースでも設置が簡単です。
家庭用から産業用まで用途は幅広く、たとえばエアコンや換気システムなどにも搭載され、快適な環境の維持や生産性の向上に役立っています。温湿度センサーは、現代の産業活動において欠かせない機材の1つです。
1-1. そもそも温度・湿度とは
温度とは、物質がどれだけ熱エネルギーを持っているかを示す指標です。物質内の熱エネルギーの状態を数値化したもので、単位は摂氏(°C)やケルビン(K)、華氏(°F)などがあります。温度管理は、製品の品質や作業環境を左右する重要な要素です。
湿度は、空気中に含まれる水蒸気の量を表す指標です。湿度には「相対湿度」と「絶対湿度」の2種類があります。相対湿度は、空気中の水蒸気量がその温度で可能な最大量に対してどのくらいの割合かを「%(%RH)」で示します。一方、絶対湿度は、空気中の水蒸気そのものの量を「g/m3」表し、温度に依存しない指標です。
湿度が高すぎると腐食やカビの発生、低すぎると静電気や材料の脆性が問題となります。このような理由から、温湿度センサーを使用した環境管理が重要です。
2. 温湿度センサーの原理・種類
温湿度センサーは、温度センサーと湿度センサーが組み合わされて構成されており、温度と湿度の両方を同時に測定できます。温度センサーと湿度センサーの仕組み・種類は、以下の通りです。
2-1. 温度センサーの仕組み
温度センサーは、接触式と非接触式の2種類に大別されます。それぞれの特徴は以下の通りです。
接触式 | 接触式温度センサーは、対象物に直接触れて温度を測定します。主な種類は以下の5つです。 ・測温抵抗体(RTD) 金属の電気抵抗が温度に比例して変化する性質を利用します。高精度かつ寒冷地でも使用可能です。 ・サーミスタ 温度変化による抵抗値の変化を測定します。小型で衝撃に強く、感度が高いのが特徴です。 ・熱電対 異なる金属を接続した際に発生する電位差を利用して温度を測定します。測定できる温度の範囲が広く、応答速度が速いのが特徴です。 ・バイメタル 異種金属を貼り合わせ、熱膨張率の差でできた歪みを利用して温度を測定します。構造が簡単で耐久性が高めです。 ・膨張式/圧力式 ガラス管に封入した液体や気体の膨張を利用して温度を測定します。精度が高い反面、測定できる温度の範囲は狭いのが特徴です。 |
非接触式 | 非接触式温度センサーは、対象物から放たれる熱エネルギーを測定します。代表的なのは赤外線センサーです。 ・赤外線センサー 対象物から放出される赤外線を検出し、温度を測定します。瞬時に測定可能な上、対象に触れる必要がないため衛生的です。 |
接触式は高精度で広く使用されますが、対象と直接接触させなければなりません。一方、非接触式は距離が離れていても測定できるため、粉塵や危険物がある環境でも測定できます。
2-2. 湿度センサーの仕組み
湿度センサーは、伸縮式・乾湿球式・電子式の3種類に大別されます。それぞれの特徴は以下の通りです。
伸縮式 | 感湿素子として、湿度変化に伴い伸縮する素材(毛髪やナイロンなど)を使用します。構造がシンプルで安価な上、連続で測定できるものの、測定精度はやや低めです。環境条件によって誤差が生じやすくなります。 |
乾湿球式 | 乾球(通常の温度センサー)と湿球(湿らせた布で覆った温度センサー)を用いる方法です。湿球の水分が蒸発して冷え、生じた温度差を基に湿度を算出します。測定データの精度が高く、安定して運用できるものの、気温や風速の影響を受けやすいのが欠点です。 |
電子式 | 感湿材を利用して電気的な特性変化を測定するセンサーです。さらに「電気抵抗式」と「静電容量式」に分かれます。 ・電気抵抗式 湿度によって変化する抵抗値を測定します。高湿度に強く、構造がシンプルで安価な反面、低湿度での誤差は大きめです。 ・静電容量式 感湿材が水蒸気を吸着すると静電容量が変化する特性を利用します。応答が速く、高温環境でも使用可能です。抵抗式より精度が高いものの、価格もやや高めです。 |
湿度センサーの精度を重視する場合は乾湿球式を、コストを抑えたい場合は電気抵抗式を選択するなど、それぞれの特性や設置環境に応じて選ぶ必要があります。
3. 温湿度センサーの用途
温湿度センサーは、以下をはじめとした多くの分野で利用されています。
・農業での作物管理・工場や倉庫での品質管理・博物館や美術館での展示品保護・気象観測での温湿度データ収集システム・医療現場での環境モニタリング・家庭内の快適な環境づくり |
農業での主な用途は、作物が最適な環境で成長するための管理です。湿度や温度を適切に維持することで、収穫量と品質を向上させます。工場や倉庫では、食品や薬品の劣化を防ぎ、安全性を保つために温湿度管理システムが欠かせません。
博物館や美術館では、温湿度の変化による劣化を防ぎ、貴重な文化財を長期間にわたり保存するのが目的です。気象観測では、測定値データが天気予測や気候分析に役立てられます。
医療現場では、特定の機器や薬剤の保管環境を監視するほか、手術室や患者の居室内の空調管理にも温湿度モニタリングシステムは必須です。さらに、家庭内では快適な室内環境を維持するために、空調設備やスマートホームシステムに組み込まれています。
4. 温湿度センサーの選び方
温湿度センサーを導入する際は、目的や使用環境に応じて適切な機能を持つ測定装置を選ぶことが重要です。以下の4点を基準に選定するとよいでしょう。
・精度 温湿度センサーデータの精度は、用途によって求められるレベルが異なります。たとえば、研究施設や医療機関では1度以下の高精度が必要となるでしょう。しかし、一般的な家庭用であれば、そこまで精度にこだわる必要はありません。 ・反応スピード 使用目的によっては、環境の変化に素早く対応できるセンサーが必要です。たとえば、農業や工場では、急激な温度や湿度の変化に即時対応できれば品質管理の向上が期待できます。用途に応じて応答速度を確認しましょう。 ・測定環境 測定対象の環境条件によっても、適切なセンサーは異なります。低湿度環境では静電容量式センサーが、高温環境では耐久性の高いタイプが適しています。屋外で使用する場合は防水機能も確認してください。 ・設置しやすさ 小型で簡単に設置できるセンサー端末は、特に持ち運びが必要な場合や限られたスペースで使用する際に便利です。また、センサー素子が一体化したICタイプは、初心者でも扱いやすい設計になっています。 |
用途に適した製品を選べば、効率的かつ正確な環境状況把握・管理が可能となります。定期的なメンテナンスや校正の必要性も考慮して、長期的に安定した管理データを取得できる製品を選ぶとよいでしょう。
まとめ
温湿度センサーを導入することで、工場の製造ラインでは部品や製品の不具合を減らし、倉庫や美術館では保管物の劣化を防ぐことができます。農業では温室内の温度・湿度を的確にコントロールして、野菜や果物の品質や収量向上につながる点がメリットです。
温湿度センサーは、接触式・非接触式に分類できます。計測の仕組みは、乾湿球式や電子式などさまざまです。種類によって精度や耐久性、価格が異なるため、導入前に計測精度や応答速度、防水・防塵性能などの仕様を確認し、設置場所や目的に合ったタイプを選ぶのが大切です。
また、長期間にわたって正確な測定値を得られるように、定期的なメンテナンスや校正を行いましょう。
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