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pH・イオンメーターとは?測定原理やイオン選択性電極の種類を解説
精密な水質管理や実験データの信頼性確保のために、pHや特定イオン濃度の正確な計測が必要です。pH・イオンメーターは、水素イオン濃度(pH)と特定イオンの濃度を同時に測定可能な機器であり、研究室から工場、環境調査の現場まで幅広く活用されています。
この記事では、pHやイオンとは何か、pH・イオンメーターの測定原理やイオン選択性電極の種類、異なるタイプのpH・イオンメーターの特徴について詳しく解説します。測定機器を調達する際の参考としてお役立てください。
目次 1. pH・イオンメーターとは 1-1. pHとは 1-2. イオンとは 1-3. pH・イオンメーターの原理 1-4. pH・イオンメーターとORP(酸化還元電位)メーターの違い 2. イオン選択性電極の種類 2-1. ガラス電極 2-2. 固体膜電極 2-3. 液体膜電極 2-4. 隔膜型電極 3. pH・イオンメーターの種類 まとめ |
1. pH・イオンメーターとは
pHメーターとは、溶液中の水素イオン活量をもとに、酸性やアルカリ性といった性質を明らかにできる測定機器です。一方、イオンメーターは、溶液中のさまざまなイオンの濃度を測定する用途で使われます。
pH・イオンメーターは、pHメーターとイオンメーター双方の機能を備えた測定装置です。試料溶液中の特定イオンに反応するイオン選択性電極を用いることで、pHとイオン濃度の両方を測定できます。
1-1. pHとは
pHとは、水素イオン指数を示す略称です。水溶液の性質は水素イオン濃度で決まるため、「水溶液の酸性・アルカリ性の度合いを表す単位」として、pHが用いられています。pHは0~14の数値で表現され、中性を示すpH7より値が小さい場合は酸性、大きい場合はアルカリ性を意味します。
水溶液中の水は、常に安定した水分子の形で存在している訳ではありません。電離と反応によって、ごく一部は「水素イオン」と「水酸化物イオン」という、イオンの形で存在しています。温度が一定であれば、どのような水溶液でも水素イオンと水酸化物イオンの積は一定になるため、水素イオン活量が分かると水溶液の性質も求められます。
一方、水溶液以外の溶液で得られるpH値は「測定溶液における水素イオン活性の程度を表す指標」であり、通常のpH値には変換できません。水溶液と非水溶液では、酸・塩基平衡が全く異なるためです。
1-2. イオンとは
イオンとは、何らかの刺激によって、原子がプラスまたはマイナスの電気を帯びた状態を指します。イオンは、陽イオンと陰イオンの大きく2つに分類可能です。通常、原子はプラスの電気を帯びた陽子と、マイナスの電気を帯びた電子の数が釣り合って電気的に中性の状態で存在しています。
しかし、何らかの刺激で原子が電子を失うと、マイナスの電気を帯びた電子よりもプラスの電気を帯びた陽子の数が多いイオンができます。このような電気的にプラスのイオンが、陽イオンです。一方、電子を追加で受け取り、マイナスの電気を帯びた原子は陰イオンと呼ばれます。溶液中のイオン濃度を示す単位としては、mg/Lやppmが用いられます。
1-3. pH・イオンメーターの原理
pH・イオンメーターは、電位差測定法によって目的成分を分析する測定器です。電位差測定法では、溶液中に含まれる対象イオンの濃度に反応する「作用電極」と「参照電極」との起電力差を電位差計で測定します。
pH・イオンメーターでは、作用電極として、目的イオンの活量に応答する感応膜をもつイオン選択性電極を用います。参照電極には、水素電極の使用が基準とされてきました。しかし、取り扱いが難しいため、水銀と塩化水銀を使用したカロメル電極や銀/塩化銀電極も広く普及しています。
イオン選択性電極の応答膜で発生した電位を参照電極と組み合わせ、電池を構成させた際の起電力差の測定値をもとに、イオン濃度を求めるのがpH・イオンメーターの仕組みです。
1-4. pH・イオンメーターとORP(酸化還元電位)メーターの違い
pH・イオンメーターではpHやイオン濃度が分かるのに対し、ORP(酸化還元電位)メーターでは名前の通り「酸化還元電位」を測定する点で、両者は異なります。Redox(レドックス)電位とも呼ばれるORPは、溶液の酸化力または還元力の強さを表す尺度のことです。
ORPの値は、溶液の溶存酸素濃度や温度、pHといった条件によって変化します。ORPの測定指標は、溶液の状態確認や排水処理、還元水の還元力チェックなどに役立てられています。
2. イオン選択性電極の種類
イオン選択性電極には、大きく分けてガラス電極・固体膜電極・液体膜電極・隔膜型電極の4種類があります。それぞれの特徴を紹介するため、イオン選択性電極を選ぶ際の参考にしてください。
2-1. ガラス電極
ガラス電極は、先端にあるイオン応答膜部分がリチウム系のガラス薄膜でできた電極です。水素イオンの活性を測定できるため、pH測定用の電極として知られています。
pHの値は、ガラス電極と比較電極の2本を測定水に浸した際に、電極間に発生する電位差を測定して求めます。ガラス電極を用いると、水素イオンの活性以外に、ナトリウムイオンの活性も測定可能です。
ガラス応答膜の内部は、一定濃度の内部液と安定した起電力を発する内部電極で構成されています。ガラス膜は非常に薄くて破損しやすいため、衝撃を与えないように注意が必要です。
2-2. 固体膜電極
固体膜電極には、大きく分けて2種類の電極があります。1つは、難溶性金属塩の単結晶、もしくは難溶性金属塩を主成分とする粉末を加圧形成した膜が応答部分に使用されている電極です。特定のイオン電極を使うことで、塩化物イオン・臭素イオン・銀イオンといったイオン濃度測定が行えます。
固体膜電極には、フッ化ランタンの単結晶をイオン応答膜とするものもあり、フッ化物イオン活性の測定に使われます。固体膜電極は他の電極よりも内部抵抗が小さく、電気的に安定な測定を実施しやすい点が特徴です。
電極表面は沈殿性の物質が付着しやすいため、定期的に膜表面を磨く、汚れ予防の樹脂膜を被せるといった配慮が求められます。
2-3. 液体膜電極
液体膜電極は、液体膜を応答膜とするイオン選択性電極です。液状イオン交換体などを有極性有機溶媒に溶解し、多孔性隔膜で保持したもの、高分子物質に染み込ませて固定したものなどがイオン応答膜として採用されます。液体膜電極は、プラスチック固化膜とも呼ばれ、硝酸イオン・カルシウムイオン・カリウムイオンなどの活性を測定できます。
液体膜電極は、イオン選択性に優れている点、電位の応答速度が速い点などが魅力です。ただし、液体膜は不安定で耐久性が低いため、汚れや損傷に注意して取り扱う必要があります。
2-4. 隔膜型電極
隔膜型電極は、pHガラス電極と比較電極を支持管に挿入し、内部液を満たしてガス透過性に優れた隔膜で覆った構造の電極です。隔膜型電極を用いた測定方式は、溶存酸素測定などに用いられます。
さらに、隔膜型電極を用いた測定は選択性に優れているため、アンモニアなどの毒性ガスを検知する際にも活用されています。隔膜型電極を使って安定的に正確な測定を継続するには、状態に応じて、ガス透過性膜や内部液を交換するのが大切です。
3. pH・イオンメーターの種類
pH・イオンメーターには、コンパクト型・ポータブル型・卓上型の3種類があります。コンパクト型は、体温計やペンほどの小型メーターです。センサーにサンプルを1滴落とすだけで分析対象を測定できるため、幅広い分野で使われています。
ポータブル型は、持ち運び可能なタイプのpH・イオンメーターです。メーター本体から伸びるコードの先に検出部がついており、川や海の水質分析などに適しています。また、屋外に持ち運んでも安定的に正確な測定ができるように、高い強度で作られています。
卓上型は、研究室や実験室の作業台に据え置いて使えるタイプです。大きな表示画面や電極が固定できるスタンドなどを備え、高い研究精度を実現できます。卓上型pH・イオンメーターの中には、測定結果改ざん防止機能がついた製品も存在します。
まとめ
pHとは水溶液中の水素イオン活性を示す指標であり、イオンメーターは多様なイオン濃度を測定する装置です。両方の機能を併せ持つpH・イオンメーターを用いれば、対象溶液の酸・塩基平衡や特定イオンの濃度を同時に把握でき、研究や品質管理などで高い精度の分析が行えます。
イオンの測定に使う、イオン選択性電極にはガラス電極・固体膜電極・液体膜電極・隔膜型電極などの種類があります。それぞれ測定できるイオンが異なるため、測定対象に合わせた電極の選択が欠かせません。また、コンパクト型やポータブル型、卓上型のそれぞれで使い勝手が変わるので、用途に応じて選定しましょう。
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