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ポータブルガス測定器とは?用途や測定時の使い方・校正の必要性も
ビルや商業施設など、人が集まる空間では、快適な室内環境を維持するために空気中のガス濃度をはじめとした指標を管理することが大切です。そこで役立つのが、持ち運びに便利なポータブルガス測定器です。
二酸化炭素や一酸化炭素など、人体に影響を及ぼしやすいガスの濃度をリアルタイムで確認できるため、すばやい対策が可能になります。この記事では、ポータブルガス測定器の基本概要から空気環境測定の実施方法、測定機器の校正まで、正確な測定を行うためのポイントを解説します。
目次 1. 【基礎】ポータブルガス測定器とは? 1-1. ポータブルガス測定器の用途 2. 空気環境測定とは? 2-1. 空気環境測定の項目・基準 2-2. 空気環境の測定方法 3. ポータブルガス測定器の使い方 3-1. 測定時間 3-2. 測定場所 3-3. 測定高さ 4. ポータブルガス測定器の校正 まとめ |
1. 【基礎】ポータブルガス測定器とは?
ポータブルガス測定器とは、空気中の二酸化炭素をはじめとする揮発性の気体を測定できる計測器です。測定を開始すると、検知対象ガスの測定データがモニター画面に表示されます。
無色・無臭で危険度が高い毒性ガスの検知機能を備えた製品もあり、空気環境の安全管理に役立てられています。軽量タイプで持ち運び可能なため、さまざまな現場で対象ガス濃度を測定できる点が、ポータブルガス測定器の特徴です。
1-1. ポータブルガス測定器の用途
ポータブルガス測定器は、建物における空気環境の管理に貢献します。ショッピングモールや店舗、学校といった不特定多数の人が集まる施設では、空気環境の測定と管理が不可欠です。法律では、一定規模以上の建物のオーナーに対して、定期的な空気環境測定を義務付けています。
ポータブルガス測定器は、建物管理に重要な一酸化炭素濃度や二酸化炭素濃度、温度・湿度などを計測できます。複数の項目を同時測定できるため、測定効率の向上につながる点がメリットです。また、農業分野では、ビニールハウス内のガス濃度測定用として、栽培環境の管理にも役立てられています。
2. 空気環境測定とは?
空気環境測定とは、建築物衛生法に基づき、不特定多数の人が利用する建物における空気中の成分を測定することです。法律で定められた「特定建築物」のオーナーには、空気環境測定の義務が課されます。特定建築物の対象は、以下の通りです。
(1)建築基準法に定義された建築物であること(2)1つの建築物において、次に掲げる特定用途の1又は2以上に使用される建築物であること。特定用途:興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、学校(研修所を含む。)、旅館(3)1つの建築物において、特定用途に使用される延べ面積が、3,000平方メートル以上であること。(ただし、専ら学校教育法第1条に定められている学校(小学校、中学校等)については、8,000平方メートル以上であること。) |
(引用:厚生労働省「建築物衛生のページ」/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132645.html 引用日:2025/1/8)
空気環境測定の目的は、建物内にいる人が安全かつ快適に過ごせるようにするためです。空気環境測定自体を怠る、ガイドラインを満たしていないといった場合は、罰則・行政措置の対象とされます。一方、建築物衛生法では、建築物の環境衛生上の維持管理を行う事業者は都道府県知事の登録を受けることができる旨も定められています。
2-1. 空気環境測定の項目・基準
特定建築物において、空気調和設備を設けている場合の空気環境の測定項目・基準は、以下の通りです。
項目 | 基準 |
---|---|
浮遊粉じんの量 | 0.15mg/立方メートル以下 |
一酸化炭素の含有率 | 100万分の6以下(=6ppm以下) |
二酸化炭素の含有率 | 100万分の1000以下(=1000ppm以下) |
温度 | (1)17°C以上28°C以下(2)居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと。 |
相対湿度 | 40%以上70%以下 |
気流 | 0.5m/秒以下 |
ホルムアルデヒドの量 | 0.1mg/立方メートル以下(=0.08ppm以下) |
(出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/)
浮遊粉じんは、花粉・ダニなどのアレルギー源も含んでおり、基準値を大きく超えると体調不良やアレルギーにつながる恐れがあります。一酸化炭素は、中毒を引き起こし、命に関わる危険性もあるため注意が必要です。さらに、二酸化炭素も、濃度が高いと頭痛・吐き気などを引き起こす場合があります。
温度・湿度・気流は、人の快適性や体調に関わる重要な要素です。特に、湿度が高いとカビが発生しやすいため、建物の衛生と維持管理の観点からも基準を守る必要があります。
また、ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の原因として知られる物質です。健康被害を防ぐ目的で、測定が義務付けられています。
2-2. 空気環境の測定方法
空気環境の実際の測定方法は、以下の通りです。
項目 | 測定機器 | 測定回数 |
---|---|---|
浮遊粉じんの量 | ・グラスファイバーろ紙を装着し、相対沈降径がおおむね10マイクロメートル以下の浮遊粉じんを重量法により測定する機器 ・厚生労働大臣の登録を受けた者により、当該機器を標準として較正された機器 | 2か月以内ごとに1回 |
一酸化炭素の含有率 | 検知管方式による一酸化炭素検定器 | |
二酸化炭素の含有率 | 検知管方式による二酸化炭素検定器 | |
温度 | 0.5度目盛の温度計 | |
相対湿度 | 0.5度目盛の乾湿球湿度計 | |
気流 | 0.2メートル毎秒以上の気流を測定できる風速計 | |
ホルムアルデヒドの量 | ・2・4-ジニトロフェニルヒドラジン捕集-高速液体クロマトグラフ法により測定する機器 ・4-アミノ-3-ヒドラジノ-5-メルカプト-1・2・4-トリアゾール法により測定する機器 ・厚生労働大臣が別に指定する機器 | 新築・増築・大規模修繕などが完了し、使用開始した時点から直近の6月1日~9月30日までの間に1回 |
(出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/)
浮遊粉じんの量・一酸化炭素の含有率・二酸化炭素の含有率は、1日の使用時間中の平均値を算出し、基準値と比較します。ホルムアルデヒド量の測定結果が基準を超過した場合は、空気調和設備や機械換気設備を調整するなどして低減策に務め、翌年に再測定を実施する必要があります。
3. ポータブルガス測定器の使い方
空気環境測定は、空気環境測定実施者の資格を取得した者しか実施できません。また、空気環境測定を事業とする場合には、物的・人的に一定要件を満たした上で都道府県に登録する必要があります。
ポータブルガス測定器の使い方について、次の3項目に分けて解説するため、正確な測定に役立ててください。
3-1. 測定時間
測定時間は、厳密に設定されている訳ではありません。しかし、空気環境の測定目的を踏まえて、多くの人が建物を使用している営業時間内などに測定するのが大切です。
浮遊粉じん・一酸化炭素・二酸化炭素は始業後から中間時に1回、中間時から終業前に1回測定し、2回の平均測定値と基準値を比較します。温度・湿度・気流は、瞬時値を測定し、基準値と比較して異常がないかを確認します。
3-2. 測定場所
測定場所は、「各階居室の中央部を測定点とする」規定が設けられていますが、居室の広さや空調方式・配置などを考慮して選定するのが大切です。測定対象の建築物が大きい場合は、床面積をもとに、あらかじめ測定が必要な場所の総数を把握しておく必要があります。1測定あたりの床面積は、自治体によって異なるため、注意が必要です。
最近では、セキュリティやプライバシー保護の観点から、建物・居室の入り口付近を測定場所とするケースも見られます。
3-3. 測定高さ
空気環境測定では、測定の正確性を確保する目的で、測定点の高さを統一する必要があります。大きい建築物では、複数の場所で複数回測定を実施する必要があるため、特に注意が必要です。
測定点の高さは、対象施設を利用する人が吸い込む可能性がある高さの空気を測定するために、床から75~150センチの間で行うように規定されています。測定ごとに高さを変えるのではなく、同一の高さで実施するのが大切です。
4. ポータブルガス測定器の校正
ポータブルガス測定器は、定期的に校正作業を行う必要があります。校正とは、専用ガスを用いて、機器が表示する濃度値と真のガス濃度に誤差がないかをチェックすることです。
ポータブルガス測定器をはじめとする測定器は、繰り返し使用していると、測定値に誤差が生じる場合があります。ポータブルガス測定器の校正は、測定の正確性を保ち、施設利用者の健康や安全を守るために重要な作業です。自治体の中には、空気環境測定に携わる業者に対して、校正実施の検査を行うところもあります。
まとめ
ポータブルガス測定器は、ビニールハウス内の環境管理からオフィスビルの安全対策に至るまで幅広く活用され、作業者や利用者の健康を守る上で欠かせないツールです。適切な時期・場所・高さで測定することはもちろん、定期的な校正を行うことで機器の精度を維持し、正しい情報に基づいた判断ができます。
日本の法律では3,000平方メートル以上(学校などは8,000平方メートル以上)の建築物に対して空気環境測定が義務化されており、必要な測定項目や基準が定められています。しかし、建物の所有者や管理者にとって空気環境測定は、法律上の義務を果たすだけでなく、快適性や安心感を提供するための大切な取り組みです。ポータブルガス測定器を活用して、適切な空気環境の管理を行いましょう。
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