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シリンジポンプとは?用途・使用目的や製品仕様を解説

製品番号19

シリンジポンプは、薬液や試薬を一定の速度で正確に送り出す装置であり、医療や研究など多様な現場で活躍しています。

特に医療分野では、わずかな投与量が患者の容態に大きく影響するような場面で、精密かつ安定した注入を実現する医療機器として不可欠な存在です。一方、実験分野では、研究条件に応じた緻密な液体制御が求められるため、多機能かつ柔軟な制御が可能な装置が重宝されます。

当記事では、シリンジポンプの基本原理や構造、医療用と実験用それぞれの用途の違いに加え、代表的な製品とその仕様について詳しく解説します。

目次

1. シリンジポンプとは?

2. シリンジポンプの原理

3. シリンジポンプの用途・使用目的
3-1. 実験機器としてのシリンジポンプ
3-2. 医療機器としてのシリンジポンプ

4. シリンジポンプの製品仕様
4-1. 2ch 独立駆動シリンジポンプ PUMP 33 DDS
4-2. 高精度 定圧/プログラマブルシリンジポンプ PHD ULTRA CP 4400
4-3. シリンジポンプ リモートコントロールモデル
4-4. シリンジポンプ 11 Elite-Nano Mite

まとめ

1. シリンジポンプとは?

シリンジポンプとは、薬液や試薬を一定速度で送り出す装置です。医療現場で使用される場合は、微量の薬剤を正確かつ持続的に投与するための医療機器として用いられ、実験室では化学薬品や試薬などを高精度に注入する実験機器として活躍しています。

いずれの用途においても、流量の精度が非常に高く、無脈動での送液が可能である点が最大の特徴です。非常に微細な流量でも安定した送液ができ、臨床での高濃度薬剤の投与や、材料研究・ナノテクノロジー分野などでの再現性のある液体供給が求められるシーンにおいて重宝されています。

2. シリンジポンプの原理

シリンジポンプは、シリンジ(注射器)の内筒をモーターで押し出すことで液体を一定の速度で供給しています。駆動にはステッピングモーターが一般的に使用されており、モーターの回転速度を制御することで流量を高精度に調整できます。この構造により、無脈動かつ安定した送液が可能です。

原理自体は医療用・実験用にかかわらず共通しており、微量かつ持続的な注入を必要とする場面に適しています。ただし、シリンジ内部の液体を押し出し切ると送液が停止してしまうため、構造上、連続送液が難しいという制約があります。

3. シリンジポンプの用途・使用目的

シリンジポンプには、医療用のシリンジポンプと実験用(主に動物実験や研究分野)で使用されるシリンジポンプの2種類が存在します。どちらも基本的な構造や動作原理は共通しており、シリンジをモーターで押し出して液体を送るという仕組みに変わりはありません。しかし、使用目的や運用環境、適用される法規制には大きな違いがあります。

医療用のシリンジポンプは、患者に薬剤を正確に投与する医療機器として用いられ、薬機法(旧薬事法)などの厳格な規制に準拠する必要があります。一方、実験用のシリンジポンプは、自由度の高い条件設定が求められる研究用途で活用されるため、構造や機能、管理方法も異なります。

ここでは、それぞれの用途について、医療現場と実験分野それぞれの視点から詳しく解説します。

3-1. 実験機器としてのシリンジポンプ

実験用のシリンジポンプは、主に研究機関などで行われる動物実験に使用されます。人間ではなくマウスやラットなどの実験動物を対象とし、薬剤を一定速度で投与したり、反応器に液体を少量ずつ加えたりといった目的で用いられます。

医療行為に該当しないため、薬機法上の「医療機器」としての規制対象とはならないケースが多いものの、使用環境によっては各種ガイドラインや基準への適合が求められることもあります。

3-2. 医療機器としてのシリンジポンプ

医療用のシリンジポンプは、医療機関において、人間(患者)に対して薬剤を精密に投与するために使用される機器です。特に、カテコラミンや抗不整脈薬など、わずかな投与量でも生体に大きな影響を及ぼす薬剤を、一定速度で安定的に注入する必要がある場面で不可欠な機器となっています。

医療現場において重要な役割を果たすことから、シリンジポンプは薬機法に基づいて「高度管理医療機器(クラスIII)」に分類されています。厳格な安全基準や規制の対象になっており、保守点検や管理に専門的な知識が求められることから、「特定保守管理医療機器」にも指定されています。

シリンジポンプは定期的な点検や校正が義務付けられ、医療機関は日常点検や定期点検を適切に実施しながら安全性を常に維持する責任を負います。自施設で対応が困難な場合には、メーカーや保守専門業者に委託することも可能ですが、管理の徹底は医療機関側の義務です。

医療用のシリンジポンプは、単なる送液機器ではなく、人命に関わる医療行為の一環を担う精密機器です。

4. シリンジポンプの製品仕様

シリンジポンプは、使用目的や求められる精度によって多様な機種が存在します。医療機関で使用されるものから、研究・開発現場で高精度な制御を求められるものまで、用途に応じて最適な仕様が設計されています。

ここでは代表的なシリンジポンプ製品について、特徴や機能を紹介します。

4-1. 2ch 独立駆動シリンジポンプ PUMP 33 DDS

「PUMP 33 DDS」は、1台に2つの独立したポンピングチャンネルを備えた、多用途で高性能な実験用シリンジポンプです。動物実験や研究現場において、異なる条件での同時送液を可能にする柔軟性と高精度を兼ね備えています。

このモデルの最大の特徴は、各チャンネルが独立して制御可能な点です。流量・注入方向・シリンジサイズ・容量などを個別に設定でき、異なる2種類の薬剤を異なる速度で同時注入することも可能です。また、0.5μL~60mLの幅広いシリンジサイズに対応し、最小1.02pL/分という極微量でのスムーズな送液を実現しています。

PUMP 33 DDSは、実験の自由度と制御性を最大限に高める1台2役のシリンジポンプとして、多様な研究ニーズに対応している装置です。

4-2. 高精度 定圧/プログラマブルシリンジポンプ PHD ULTRA CP 4400

PHD ULTRA CP 4400は、HARVARD社が開発した高精度シリンジポンプで、定流量と定圧制御の両方に対応するモデルです。市販の圧力トランスデューサー(0~10VDC出力)との組み合わせにより、mmHg、kPa、psiといった多様な単位で設定された圧力を維持しながら送液を行うことが可能です。これまで定圧吐出に必要だった外部アンプや専用ソフトが不要となり、より柔軟な運用が実現されました。

最大適用力は200~1,000ポンド(機種による)と高く、小動物の全身灌流や眼球灌流、遺伝物質の投与などにも対応可能です。CEやRoHSなどの国際的な安全基準にも準拠しており、信頼性と汎用性を兼ね備えた1台です。

4-3. シリンジポンプ リモートコントロールモデル

シリンジポンプ リモートコントロールモデルは、Harvard Apparatus社のポンプを遠隔から操作・管理するために開発されたシステムです。研究現場での作業効率と柔軟性を高めることを目的に設計されており、最大4台のシリンジポンプを個別または同時にコントロールできます。離れた場所や別室に設置した装置でも、コントローラーを介して送液操作が行えるため、同時並行の実験や隔離環境での送液作業に大きく貢献します。

また、事前にプログラムされた流量プロファイルを保存・呼び出す機能を備えており、シンプルな操作から複雑な制御まで柔軟に対応できます。注入精度の高さはもちろん、複数の注入実験を効率的に制御できるため、マルチチャンネルでの薬剤投与や反応プロセスの同時制御が求められる場面で特に有効です。

正確性・効率・拡張性を兼ね備えたリモートコントロールモデルは、現代の研究環境に求められる信頼性の高い流体制御を実現します。

4-4. シリンジポンプ 11 Elite-Nano Mite

シリンジポンプ 11 Elite-Nano Miteは、1本掛けタイプの高精度プログラマブルシリンジポンプです。直感的に操作できるLCDカラータッチパネルと英数字キーパッドを備えており、PCを使わずに簡単なメソッドから複雑なプログラムまで、柔軟に設定・実行できます。

また、シリンジ駆動部が独立構造となっているため、遠隔操作が可能で、他のシステムとの連携や制御環境の分離も容易です。小型ながら精密な極微量送液(ナノリットルレベル)を高い再現性で実現できるので、薬物動態研究、マイクロ流体実験、細胞への微量注入など、繊細な作業を伴う研究に適しています。

まとめ

シリンジポンプは、微量で安定した液体送液が必要とされる医療・研究の現場において、非常に重要な役割を担っています。医療用では薬機法や医療機関の安全管理基準に基づく厳格な運用が求められ、特定保守管理医療機器として扱われる一方、実験用では研究ニーズに応じた柔軟な仕様で設計されており、構造や管理方法にも違いがあります。

目的に応じて適切な機種を選定し、正しく運用・保守することで、安全性と研究成果の再現性を両立できるでしょう。

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