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冷却遠心分離機とは?原理から製品の選び方・主要メーカーまで

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遠心分離機(遠心機)とは、試料を高速で回転させ、遠心力を利用して試料を密度の差で分離させる機器です。遠心分離機にはさまざまな種類がありますが、中でも摩擦による発熱が試料に影響を与えないよう回転部に冷却機能がある遠心分離機を、冷却遠心分離機と呼びます。特に、高速回転による摩擦熱が発生する超高速遠心分離機などには冷却機能が搭載されている場合が多くあります。

この記事では冷却遠心分離機の原理や選び方、主要メーカーの紹介を行うため、遠心分離機の導入を考えている方はぜひ参考にしてください。

目次

1. 【基礎知識】冷却遠心分離機とは?

1-1. 冷却遠心分離機と他の遠心分離機の違い

2. 冷却遠心分離機の原理

3. 冷却遠心分離機の選び方
3-1. 回転数や遠心加速度
3-2. 容量・本数
3-3. ローターの種類
3-4. 機器の形態

4. 冷却遠心分離機の主要メーカー
4-1. 株式会社トミー精工
4-2. サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
4-3. エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
4-4. ベックマン・コールター株式会社
4-5. 久保田商事株式会社

まとめ

1. 【基礎知識】冷却遠心分離機とは?

冷却遠心分離機とは、回転時の摩擦熱で試料が変性しないように、回転部を冷却できる機能が備わった遠心分離機です。研究機関や大学の研究・実験室において、細胞などの分離に使用されます。

1-1. 冷却遠心分離機と他の遠心分離機の違い

遠心分離機には、研究用と工業用の2種類が存在します。工業用遠心機は、化学品や繊維製品といった工業製品を生産する場面で使われる装置です。重力の何万倍もの遠心力で分離できるため、生産プロセスにおける不要物の除去や作業負担の軽減に役立ちます。

実験・研究などで活用される、研究用の遠心分離機にはさまざまなタイプがあり、用途目的に合わせて使い分けられています。冷却遠心分離機以外の研究用遠心分離機のタイプと特徴は、以下の通りです。

超遠心タイプタンパク質やウイルス、DNA、細胞内成分などの非常に小さい粒子の分離に使用可能です。冷却遠心分離機と同様に、摩擦熱を軽減するための冷却機能を備えています。中には、光学的分析機能付きの機種もあります。
低速タイプ真空採血管などの比較的大きな粒子の遠心分離や、試料のスピンダウンに使われるタイプです。スイングローターを使って、複数のチューブ・プレートを遠心処理できます。
恒温タイプ恒温機能を備えており、造血幹細胞への遺伝子導入などに使用されます。
小型タイプ机の上で扱える、小型卓上遠心機です。持ち運びが簡単なコードレスタイプの機種も多く見られます。研究サンプルのスピンダウンにも使用できます。

2. 冷却遠心分離機の原理

冷却遠心分離機は、遠心力によって試料成分を分離する機器です。遠心力とは、高速で回転する際に物体にかかる力のことです。比重が異なる成分を含む液体を置いておくと、重力の働きによって比重が大きい成分が下に沈殿し、比重の小さい成分は上層にたまります。

冷却遠心分離機では、重力よりも数百倍から数万倍もの遠心力を発生させて、短時間で試料成分を分離させる仕組みで遠心処理を行います。また、冷却遠心分離機は冷却機能を備えており、ほとんどの場合-20°Cから-40°Cの温度範囲で熱管理可能です。

3. 冷却遠心分離機の選び方

冷却遠心分離機と一口に言っても、さまざまな種類があります。冷却遠心分離機の選び方として、考慮するべきポイントを紹介するため、自社に合った機器を選ぶ際の参考にしてください。

3-1. 回転数や遠心加速度

冷却遠心分離機は、分離したい成分や分離方法に必要な回転数・遠心加速度はどれくらいかを考慮して選ぶのが重要です。冷却遠心分離機が生み出す遠心力を表すのが、遠心加速度という値です。
遠心加速度は、ローターの回転半径と遠心機本体の回転数の組み合わせによって決まります。機種選定の前に、必ず成分分離に必要な遠心加速度を把握しておきましょう。

3-2. 容量・本数

冷却遠心分離機で、一度に処理するサンプル容器の容量・本数も踏まえて、機器を選択する必要があります。一度の遠心分離作業で使うサンプル容器の本数や容量、形状によって、最適な機種・ローターの種類が異なるためです。

3-3. ローターの種類

ローターは、遠心処理するサンプル容器を格納する部分です。冷却遠心分離機のローターには、アングルローターとスイングローターの2種類が存在します。アングルローターは、容器を斜めに固定できるため、高速回転にも耐えられるのがメリットです。ただし、沈殿物は斜めに溜まります。
スイングローターは、角度が固定されていないバケットに容器を設置するため、高速回転には適していません。しかし、回転軸に対して容器が水平な状態で回転することで、沈殿物が水平に溜まる点がメリットです。遠心処理を行う目的や条件に合わせて、ローターの種類を検討するのがおすすめです。

3-4. 機器の形態

卓上型・床置き型などの機器形態についても、検討しておく必要があります。通常、卓上タイプは床置き型よりも容量が小さいため、設置スペースが限られている場合でも導入可能です。

実験内容や研究作業スペースのレイアウト、設置場所、作業動線といった複数の要素を考慮して最適な形態を選びましょう。機能性や操作性といった観点も踏まえて検討しておくと安心です。

4. 冷却遠心分離機の主要メーカー

冷却遠心分離機は、製造メーカーによっても特徴が異なります。主要な遠心機メーカーの概要や、どのような冷却遠心分離機を扱っているのかを紹介するため、機種購入時に役立ててください。

4-1. 株式会社トミー精工

株式会社トミー精工は、1959年に設立されたメーカーです。東京都練馬区に本社を構え、医科・理科機器の製造販売を担っています。1960年代には、業界初となるボックスタイプのスイング型遠心機を発売し、遠心機デザインに大きな影響を与えました。
株式会社トミー精工では、高速冷却遠心機・多目的冷却遠心機などのほか、フロン類を使用していない微量高速冷却遠心機も取り扱っています。フロン類を使用しないグリーン冷媒を採用した微量高速冷却遠心機は、環境負荷や管理負担が軽減できる点がメリットです。

4-2. サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社

サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社は、1989年に設立された、分析機器の輸出入販売などを行う会社です。東京都港区に本社を構え、解析用製品のニーズに応えることで、生物学研究・バイオ医療研究・創薬研究といったあらゆる研究現場を支援しています。
具体的には、大容量と高速性を兼ね備えた大容量高速冷却遠心機や超大容量冷却遠心機、液体バッグ用冷却遠心機などを取り扱っています。液体バッグ用冷却遠心機は、血液製剤の生産・培養細胞の分離に適した、液体バッグ専用の機種です。

4-3. エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社

エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社は、himacブランドおよび遠心分離機事業を継承する形で、2020年に設立されました。茨城県ひたちなか市に本社を置き、グローバル展開する遠心機の総合メーカーとして、人々の健康・暮らしを守るために貢献しています。
取り扱い機器には、高精度な温度制御を実現できる高速冷却遠心機や、大容量化と省スペースを両立させた冷却遠心機などがあります。ローターはネジ固定もボタン操作も不要で、回転軸へ載せるだけでセッティング完了するのがメリットです。

4-4. ベックマン・コールター株式会社

ベックマン・コールター株式会社は、1998年に誕生し、アメリカに本社を置くグローバルカンパニーとして知られています。臨床検査分野とライフサイエンス分野において、事業を展開しています。

ベックマン・コールター株式会社の高速冷却遠心機は、高機能、かつ信頼性の高さが特徴です。チャンパー内を減圧することで、温度管理精度の向上と消費電力の低減を実現しています。また、フロア型の高速冷却遠心機シリーズには、運転履歴管理に加えて運転状況のリアルタイムグラフが標準装備されています。

4-5. 久保田商事株式会社

久保田商事株式会社は、1962年に設立されたメーカーです。東京都文京区へ本社を構え、医療機器や遠心機を主とする理化学機器の販売・メンテナンス・輸出などを行っています。

久保田商事株式会社では、アングル遠心に加えて多目的スイングローターやプレートローターの遠心にも対応したハイブリッド高速冷却遠心機を取り扱っています。1台で多くの遠心処理に対応できるため、ライフサイエンス研究の幅広い用途で使用可能です。

まとめ

冷却遠心分離機は、試料の品質を保ちながら効率的に分離・精製を行うための重要なツールです。特に細胞培養の分野では、試料が熱変性しやすいことから、一般的に冷却遠心分離機が使われます。

選定にあたっては、回転数や遠心加速度、容量・本数、ローターの種類、機器の形態など、さまざまな要素を総合的に考慮する必要があります。また、主要メーカーごとに特色や強みが異なるため、自社のニーズに最も適した機種を選ぶことが成功の鍵となります。

冷却遠心分離機 – 有機合成・濃縮装置

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