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マルチチャンネル分光器とは?仕組みや用途・できることを解説

MCPD series

リアルタイムかつ効率的な分析が求められるシーンにおいて役立つのが、マルチチャンネル分光器です。

マルチチャンネル分光器は光を波長ごとに分けて分析する装置で、精密な医療検査や環境モニタリング、食品の品質管理など、さまざまな業界で用いられています。一度に複数の波長データを取得することで、複数の成分や特性を迅速に測定できる点が特徴です。

当記事では、マルチチャンネル分光器や分光器そのものの概要から、マルチチャンネル分光器の仕組み、分光スペクトルの測定でできることまで詳しく解説します。

目次

1. マルチチャンネル分光器とは?
1-1. そもそも分光器とは?

2. マルチチャンネル分光器の仕組み
2-1. スリット
2-2. コリメーター
2-3. 分光素子
2-4 検出器

3. 分光スペクトルの測定でできること

まとめ

1. マルチチャンネル分光器とは?

マルチチャンネル分光器とは、光を波長ごとに分離させてエネルギー分布(光源の分光分布)を素早く測定・分析する装置です。

マルチチャンネル分光器では、光ファイバーを通して取り込んだ光を分光装置本体で分離し、各波長に対応した受光素子を電気信号に変換します。これにより、可視光から紫外線までのさまざまな波長を同時に検出できます。

マルチチャンネル分光器の最大の特徴は、複数の波長を同時に検出し、スピーディに分析ができる点です。短時間での高速測定が可能で、分光分布の時間変化・点滅光といった測定にも対応できるという点から、医療や製造業などで特定の成分や物質を精密かつ迅速にモニタリングする際には特に有用と言えるでしょう。

1-1. そもそも分光器とは?

分光器とは、光を波長ごとに分けてそのエネルギー分布を測定する装置です。分かりやすく説明すると、光を波長に分けて分布を記録し分析する「分光」と、物質の特性を明らかにする「測定」の2つの工程を担う装置であり、光の性質を利用して物質の成分・特性を明らかにできます。

また、分光器にはマルチチャンネル分光器のほか、波長を個別に計測する「シングルチャンネル分光器」や特定の波長域を強調して分析する「分散型分光器」、試料に赤外線を照射して透過・反射した赤外線を検出する「赤外分光器」など、用途に応じた幅広い製品シリーズがあります。いずれも、医療分野での検査・モニタリングや、食品産業の品質管理、環境汚染のモニタリングなど幅広い業界で利用されています。

2. マルチチャンネル分光器の仕組み

マルチチャンネル分光器は、「スリット」「コリメーター」「分光素子」「検出器」などの要素で構成されています。分光器に入力された光はこの順番で各部品を通過し、最終的に分光されスペクトル情報として確認できます。

マルチチャンネル分光器の各構成要素に関する知識の習得は、マルチチャンネル分光システムの仕組み・原理の理解にもつながるでしょう。

ここでは、マルチチャンネル分光器を構成する各要素の概要や役割について詳しく解説します。

2-1. スリット

スリット(入射スリット)とは、測定光を入射するための狭い開口部、分かりやすく言うと光が通る隙間のことです。光ファイバーから入力・拡散された光を切り取る役割を果たしています。

マルチチャンネル分光器のスリット幅は、装置に入れる測定光量を決める上で特に重要です。スリットの開口が大きいと入射光量も増え、分光器エンジンの速度も早くなります。反対に、スリットの開口が小さいと入射光量は減るものの、波長分解能は上がります。

2-2. コリメーター

コリメーターとは、マルチチャンネル分光器のスリットから入射・拡散された光を平行光に変換する光学部品です。コリメーターは分光素子のサイズに応じて光の形状を整えるという役割を果たしており、スリットを通った光はコリメーターによって光学素子に反射します。

また、コリメーターには「コリメートレンズ」と呼ばれる光学レンズのほか、「コリメートミラー」と呼ばれる光学ミラーなどがあります。分光器の構造によってレンズ・ミラーを使い分けることが特徴です。

2-3. 分光素子

分光素子とは、マルチチャンネル分光器のコリメーターから入射した光を波長ごとに分離する光学素子です。分光素子にはさまざまな種類があり、中でも「回折格子(グレーティング)」「プリズム」「フィルター」の3つは代表的な分光素子とされています。

●回折格子(グレーティング)
光が障害物に当たると、光の波長が曲がって広がる「回折」が起こり、複数の波が重なり合って明暗の縞模様(干渉縞)が生じます。
回折格子はこの原理を利用した光学素子であり、格子状のパターンによる回折を利用して干渉パターン(干渉縞)をつくるために使用されます。分光器に用いられる回折格子の形状や刻線数の数によって、波長範囲や分解能が異なります。

●プリズム
ガラスをはじめとした透明の結晶を加工した光学素子であり、光の「屈折」を利用して分光する装置です。プリズムに入射した光は、波長によって屈折率が異なります。そのため、光の色ごとに異なる角度で曲がりながら分散されます。
この原理によって白色光がスペクトルとして分けられ、色の異なる光が現れます。プリズムは使用する材質や屈折率に分光の範囲や能力が依存するものの、光の損失を抑えつつ効率良く分光できるのが特徴です。

●フィルター(光学フィルター)
コリメーターから入射した光の中から、特定の波長のみを効率的に透過・抽出する光学素子です。フィルターは使用する結晶やコーティングの材質によって透過・抽出できる波長が異なります。
一般的な光学系フィルターは、1枚の素子に対して1つの波長を透過します。しかし、1枚の結晶に複数の異なるコーティングや多層のコーティングが施されたことによって、複数の波長を同時に透過できるフィルターもあります。

2-4. 検出器

検出器とは、分光素子によって分光された光を受光するための部品です。「ディテクター(Detector)」とも呼ばれます。

検出器本体に当たった光は電気情報として処理され、最終的にスペクトル情報へと変換されます。使用する材質によって検出できる波長が異なるほか、検出器の画素数によって感度や分解能が変わることが特徴です。

3. 分光スペクトルの測定でできること

マルチチャンネル分光器による分光測定・分析は、さまざまな用途に活用できます。分野ごとの主な測定用途は、下記の通りです。

●半導体分野
半導体分野においてマルチチャンネル分光器は、紫外域と近赤外域の透過光を測定し、吸光度スペクトルをもとに薬液の濃度を算出する際に用いられます。時間経過に伴う薬液濃度の変動を常にモニタリングし、製造工程の安定性を保つことが可能です。

●医療分野
医薬品の製造においてマルチチャンネル分光器は、人の目による測定・判断が難しい有効成分の濃度を短時間かつ高精度に分析することが可能です。また、原材料の発酵や培養のプロセスをリアルタイムで監視できるため、製造中の品質管理・維持にも寄与します。

●バイオ分野
マルチチャンネル分光器は、細胞培養やタンパク質解析において、成分濃度のリアルタイム把握とそれによる品質管理を支援します。また、分光分析技術はプラスチックごみの選別装置としても採用されており、リサイクル効率を高める一助となっています。このようにバイオ分野では、研究から環境保護まで多岐にわたり応用されていることが特徴です。

●電池分野
太陽電池の製造では、基板上の膜厚測定・反射測定のほか屈折率・結晶性の測定が求められます。マルチチャンネル分光器を大型基板の搬送機上に設置することで、非破壊・非接触でこれらのデータを同時に取得できます。結晶組成や膜特性のリアルタイム管理も行えて、製品品質の向上に大きく寄与します。

マルチチャンネル分光器とは、光を波長ごとに分離させてエネルギー分布(光源の分光分布)を素早く測定・分析する装置です。光ファイバーを通して取り込んだ光を分光装置本体で分離し、各波長に対応した受光素子を電気信号に変換することによって、さまざまな波長を同時に検出できます。

マルチチャンネル分光器による分光スペクトルの測定・分析は、半導体分野や医療分野、バイオ分野、さらに電池分野など幅広い業界で活用されています。

アズサイエンス株式会社では、マルチチャンネル分光器のほかにもさまざまな産業機器を取り扱っております。研究開発や成分分析に分光器を利用したい・分光器の製品情報を知りたいという方は、ぜひ一度アズサイエンス株式会社にお問い合わせください。

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