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全光束測定システムとは?全光束の測定方法も分かりやすく解説

LEDの性能評価において、全光束は重要な指標の1つです。全光束とは、光源が周囲の空間に放出する光の総量を指し、LEDの明るさを数値で表す際に用いられます。全光束の測定方法やその重要性について、より深く理解したいとお考えの方もいるでしょう。

当記事では、LEDに関わる材料・チップ・パッケージ・モジュールなどのメーカーの担当者の方や、照明光学検査機関の担当者の方などに向けて、全光束測定システムについて専門的な視点から解説します。

目次

1. 【基礎】全光束測定システムとは?
1-1. 全光束とは?

2. 全光束の測定方法(1)積分球方式
2-1. 原理とメリット・デメリット
2-2. 選び方のポイント

3. 全光束の測定方法(2)配光測定方式
3-1. 原理とメリット・デメリット
3-2. 選び方のポイント

まとめ

1. 【基礎】全光束測定システムとは?

全光束測定システムとは、光源から放射される光の総量、つまり全光束を正確に測定するための装置です。LEDをはじめ、照明器具の開発や製造、品質管理の現場で広く利用されています。全光束測定システムには、主に積分球方式と配光測定方式の2種類があります。

1-1. 全光束とは?

全光束とは、光源からあらゆる方向に放射される光の総量を表す物理量です。光源の明るさの指標の1つであり、ルーメン(lm)という単位で表します。ルーメンが大きいほど、光源は明るく感じられます。

全光束は、光源全体の明るさを示すため、照明器具の比較や照明設計に利用されます。たとえば、異なる種類の電球の明るさを比較したい場合、全光束の値を比較すれば、どの電球がより明るいのか客観的に判断することが可能です。また、「部屋全体をどのくらいの明るさで照らすか」「照明器具をどのように配置するか」などを計画する際にも、全光束の値は重要な指標となります。

全光束と似た言葉に「照度」や「輝度」があります。照度は、ある面に入射する光の量を表し、単位はルクス(lx)です。輝度は、光源の表面の明るさを表し、単位はカンデラ/平方メートルです。全光束は光源全体の明るさを示すのに対し、照度はある場所の明るさ、輝度は光源の表面の明るさを示す点が異なります。

2. 全光束の測定方法(1)積分球方式

積分球方式とは、光源の明るさを正確に測るための一般的な手法です。光源を積分球と呼ばれる中空の球体の中に設置し、内部で光を何度も反射させることで、光を均一化します。この均一になった光を測定することで、光源から出る光の総量である全光束を算出します。

2-1. 原理とメリット・デメリット

積分球は、高反射率で拡散性のある特殊なコーティングを内部に施した球状の装置です。積分球の中心に光源を設置することで、その光は球内部で反射を繰り返します。連続反射により、光は方向に依存せず均一に分散され、球内の全体にわたりほぼ一様な明るさを生じます。

積分球方式では、この均一な明るさを測定することで、光源の全光束を得られます。光源の配光特性(光が特定の方向に集中するかどうか)に左右されることなく正確な値が分かるのが利点です。

積分球方式のメリット
積分球方式のメリットとして、測定時間が短いほか、暗室や複雑な装置を必要とせず、安定した測定環境を構築しやすい点が挙げられます。そのため、迅速かつ低コストでの測定が可能であり、さまざまな光源の相対比較にも適しています。

また、光源を球の中心に置くことにより、測定対象の方向性が統一され、光の方向による測定誤差が低減します。多くの光学測定において一般的に使用されている方法です。
積分球方式のデメリット
測定対象の光源の大きさに制限があり、光源が大きすぎる場合、球内での反射回数が不足し、均一化が十分に達成されないために測定精度が低下します。さらに、光源自体が発熱する場合、球内温度が上昇して測定結果に影響を及ぼす可能性があるため、特に高出力の光源の測定には十分な冷却や熱対策が必要です。

また、自己吸収補正といった補正計算が必要です。測定する光源が黒い筐体(きょうたい)を持つ場合などは、その筐体で光が吸収されることにより、実際の光束よりも低く測定される可能性があります。

2-2. 選び方のポイント

積分球システムの選定では、まず測定対象の波長域に適した装置を選ぶことが重要です。可視光域のLED測定では一般的な積分球システムが使用できますが、紫外域や近赤外域のLED測定には、それぞれの波長特性に最適化された専用のシステムが必要となります。

測定精度を確保するためには、積分球のサイズも考慮が必要です。標準的な2インチサイズから、より大型のものまで、測定対象の発光量やサイズに応じて適切なものを選択しましょう。

3. 全光束の測定方法(2)配光測定方式

配光測定方式とは、光源から放射される光の方向性と強度を測定するシステムです。光源もしくは受光部を回転させることで、光源からの任意の方向における光強度を測定できます。単純に光束だけを評価する場合には、より短時間で測定可能な積分球方式が選択されることが多いです。

3-1. 原理とメリット・デメリット

基本的な原理としては、光源中心から受光器に向かって直進する光を分光器や照度計で捉え、ゴニオメーターと呼ばれる装置で光源または受光器を回転させることで、さまざまな角度から光の強さを測定します。

配光測定方式のメリット
積分球方式と異なり、自己吸収による測定誤差が発生しないことが挙げられます。また、光源から発せられる熱が測定器に直接影響を与えることも少ないため、大型で高出力な照明器具の測定に適しています。
さらに、光源の配光特性と全光束の両方を測定できるという利点があり、分光器を使用することでスペクトル特性や色度、演色性、色温度なども同時に測定することが可能です。
配光測定方式のデメリット
測定には暗室などの専用の測定環境が必要となり、光源の出力がある、すべての方向で測定を行う必要があるため、多大な時間を要します。
また、測定精度を確保するためには、光源と受光器の間に十分な測定距離が必要です。特にファーフィールド測定では、発光面の大きさの約5倍以上の距離が必要とされます。

3-2. 選び方のポイント

配光測定器を選ぶ際には、ファーフィールドとニアフィールドのどちらを測定したいのかをまずは考えましょう。ファーフィールド特性は、光源を遠距離から観測した場合の配光特性を示します。ニアフィールド特性では、光源を大きさや形を持った面光源として扱います。

その上で、ファーフィールド特性を測定したい場合は、光源回転タイプ・受光器回転タイプ・ミラータイプなどの配光測定器があります。

・光源回転タイプ
光源自体を回転させながら、固定された受光器で光を測定するタイプです。構造がシンプルで、比較的安価に導入できるのがメリットです。大型の光源にも対応しやすいという特徴があります。光源回転タイプの中には、光源が水平軸を中心に回転し、鉛直方向と水平方向の角度を測定する「水平回転軸固定タイプ」や、光源が鉛直軸を中心に回転し、水平方向の角度を測定する「鉛直軸固定タイプ」などがあります。

・受光器回転タイプ
光源を固定し、受光器を回転させて測定するタイプです。光源と受光器の距離が近いため、小型の光源の測定に適しています。「水平軸回転タイプ」「多受光器タイプ」などがあります。

・ミラータイプ
ミラーを用いて光を反射させ、測定するタイプです。光源と受光器の距離を長く確保できるため、光源の遠方界の配光を測定できるのが特徴です。

まとめ

光源の全光束を測定する方式には主に「積分球方式」と「配光測定方式」の2種類があります。全光束測定システムとして一般的なのは積分球方式で、光源を積分球の中心に置き、その内壁に光を拡散反射させることで、球内全体に均一な明るさを作り出します。これにより、光の放射方向に関係なく、全方向からの光量を短時間で正確に測定することが可能です。

アズサイエンスでは、大塚電子の全光束測定システムなどを取り扱っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

アズサイエンスが取り扱う全光束測定システムについてはこち

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