COLUMN製品コラム
超高速分光干渉式厚み計の仕組みとメリットを解説

塗装膜やフィルム、半導体ウェーハなどの微細な構造をもつ製品においては、わずかな厚みの違いが性能に直結することから、精密な厚み測定が求められます。こうした場面で広く活躍するのが、「厚み測定器」です。
一口に厚み測定器と言ってもさまざまな種類が存在するので、測定対象や用途に応じて適切な種類を選ぶ必要があります。中でも「超高速分光干渉式厚み計」は、非接触・非破壊で測定でき、多くの現場で導入が進んでいます。
そこで今回は、厚み測定器の基本概要や種類を紹介した上で、超高速分光干渉式厚み計の仕組みや使用用途、導入によって得られるメリットについても分かりやすく紹介します。
1. 厚み測定器とは?
製造業の現場においては、製品の「厚み」が性能や品質を左右する重要な要素とされています。
たとえば、金属やプラスチックの塗装膜が規定の厚みに達していなければ耐久性や均一性、さらに見た目に問題が生じるほか、電子部品の基盤や半導体ウェーハのような精密製品では、わずかな厚みの違いが製品の動作性や信頼性に影響を及ぼすこともあります。
こうした各製品の厚みを正確に測定するために用いられるのが、「厚み測定器(厚み計)」です。測定対象は塗装膜やフィルム、半導体ウェーハのほか、プレス加工品や樹脂成形品といった製品そのものも含まれます。
1-1. 厚み計の種類
厚み測定器には、非接触で測定できる機器や、目視では確認できない多層構造のフィルムの厚さを測定できる機器など、測定原理に応じてさまざまな種類があります。
下記の5つは、幅広い業界で用いられる厚み測定器の代表的な種類です。それぞれの仕組みや特徴を理解することで、使用環境や測定対象に適した選択がしやすくなります。
●分光干渉式膜厚測定器 広い波長帯の光を測定対象に照射し、表面と裏面から反射する光の干渉パターン(強度スペクトル)を解析することで膜厚を測定できる厚み計です。反射光の強弱や波形の変化を、対象物の屈折率データと組み合わせて解析することで、高精度な測定が可能となります。 分光干渉式膜厚測定器は、主に透明フィルムや薄膜材料の測定に用いられます。 ●電磁式膜厚計 磁石がもつ「磁気(引っ張る力)」を利用して、塗膜の厚みを測定する厚み計です。細長い針状の「プローブ(探針)」を測定対象に接触させた際の磁束密度の変化から、膜の厚さを間接的に測定できます。 電磁式膜厚計は、主に鉄や銅などの磁性体の上に塗布されたメッキやペイント、樹脂膜といった非磁性体の厚み測定に用いられます。 ●渦電流式膜厚計 金属に電流を流すときに生じる「渦電流」の変化を利用して、塗膜の厚みを測定する厚み計です。コイルが内蔵されたプローブを測定対象に接触させ、通電させた際に生じる渦状の電流から、膜厚を間接的に測定できます。 渦電流式膜厚計は、主に非鉄金属上の塗装や被膜などの測定に適しており、渦電流の振幅から測定する「接触式」と渦電流の位相差から測定する「非接触式」の2タイプがあることも特徴です。 ●赤外線膜厚計 測定対象が赤外線を透過または反射する性質を利用して、膜厚を測定する厚み計です。測定対象素材に応じた赤外線の吸収率と膜厚の関係性を把握しておけば、赤外線を照射した際の透過光または反射光のスペクトル解析結果から塗膜の厚みをスムーズに推定できます。 ●超音波膜厚計 測定対象にプローブを接触させ、センサーから発信した超音波が基材(下地)に反射して戻ってくるまでの時間をもとに、膜厚を測定する厚み計です。 超音波膜厚計では、膜の厚さを「D=1/2×C×t」という計算式で算出します。Dは「膜の厚さ(m)」、Cは「測定対象の音速(m/s)」、tは「超音波が測定対象を往復する時間(s)」を示しています。 超音波膜厚計は塗膜だけでなく、金属や樹脂など幅広い材質の測定にも対応していますが、測定対象の材質によって音速が異なるため、正確な測定には事前の校正が必要です。 |
2. 超高速分光干渉式厚み計の仕組み
厚みの測定手法にはさまざまありますが、その中でも特に非接触・非破壊で高精度な測定を実現できる手法として注目されているのが「分光干渉法」です。
分光干渉法とは、広い波長範囲の光を測定対象に照射し、物体の表面や膜の界面で反射した光同士の干渉(波長)を解析することで膜厚を測定できる技術です。干渉パターンは膜の厚みと光の波長に応じて変化するため、得られたスペクトルの解析によって対象物の膜厚を精密に割り出せます。
分光干渉法の技術を応用して開発されたのが、超高速分光干渉式厚み計です。
超高速分光干渉式厚み計は、ミクロンレベルからナノレベルまでの微細な膜厚を非接触・非破壊で測定できる装置です。測定精度の高さや測定スピードの速さが特徴で、精密な厚み制御が求められる分野を中心に幅広い業界で導入が進んでいます。
2-1. 超高速分光干渉式厚み計の使用用途
超高速分光干渉式厚み計の代表的な使用用途としては、「半導体ウェーハ厚み測定」と「多層厚み測定」が挙げられます。
●半導体ウェーハ厚み測定 ウェーハとは、シリコンなどを素材とした円盤状の基盤のことで、半導体素子の土台として活躍します。 製造プロセスにおいて、ウェーハは成膜やエッチング、グラインドなどの各工程を経て加工されますが、過程で厚みが少しずつ変化します。超高速分光干渉式厚み計は、各工程の厚みの高精度な測定と適切な管理を目的として用いられます。 ●多層厚み測定 梱包材や光学フィルム、コーティング膜、電子部品の保護膜といった複数の層からなる製品は、層ごとの厚みを個別に管理する必要があります。 分光干渉式の技術を応用した超高速分光干渉式厚み計を用いれば、光の屈折率が異なる複数層の同時測定と多層膜厚の個別算出が可能です。 また、超高速分光干渉式厚み計は非接触式であるため、柔らかい素材や透明な樹脂シートにも適しており、測定対象物にダメージを与えることなく安定した高速測定が可能です。 |
製品の材質や構造を問わず、多様な現場で利用されている高性能で汎用性の高い厚み測定器と言えます。
3. 超高速分光干渉式厚み計を使用するメリット
超高速分光干渉式厚み計は、ほかの厚み測定器にはないさまざまなメリットがあります。ここでは、超高速分光干渉式厚み計の主なメリットを4つ紹介します。
●非接触・非破壊で行える 超高速分光干渉式厚み計は非接触・非破壊式の厚み測定器であり、測定対象に直接触れることなく厚みを測定できます。繊細な素材や変形しやすい製品にも対応でき、製品の品質を損なうリスクを最小限に抑えられます。 ●リアルタイムで測定できる 高速計測が可能な超高速分光干渉式厚み計を製造・生産ライン上に組み込むことによって、ほぼリアルタイムで厚みをモニタリングできます。この機能によって、生産効率の向上や不良品の早期発見が可能になります。 ●安定して計測できる 超高速分光干渉式厚み計は測定再現性・安定性の高さにも強みをもっています。多くの超高速分光干渉式厚み計には温度・湿度変化などの周辺環境の影響を最小限に抑える環境補正機能が備わっており、0.01%以下の繰り返し精度を実現した製品もあります。 ●さまざまな表面・環境を測定できる 超高速分光干渉式厚み計は、φ20μm程度の微小な測定スポットによって、粗さのある表面や厚みムラのある表面など、幅広い表面状態のサンプルの厚み測定が可能です。測定範囲・測定距離も広く、「200mm離れた位置からの測定」や「窓越しや液中(水中)越しの測定」など、特殊な環境下でも安定した測定を行えます。 |
まとめ
超高速分光干渉式厚み計は、非接触・非破壊かつ高速・高精度で測定を行える厚み計です。フィルムや半導体ウェーハの測定など幅広い分野で活用されており、安定した繰り返し精度や多様な測定環境への対応力も魅力となっています。
アズサイエンス株式会社では、超高速分光干渉式厚み計をはじめとしたさまざまな精密測定機器を取り扱っております。メーカーによって特徴や機能は異なるため、製品情報をよく比較検討した上で自社に適した超高速分光干渉式厚み計をお選びください。
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